ここから本文です

(株)ヤオコー

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(小売業)より

権限移譲とやる気や主体性を引き出す仕組みで戦力化を図る

1.労働条件の明示、説明
2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 埼玉県 業種 飲食料品小売業
従業員数 17467名 パート労働者数 14915名
ポイント
  • パートタイム労働者主体の業務改善事例発表会の実施、店舗での権限移譲。
  • 目標管理による評価の実施で、スキルアップと評価の納得性向上。
  • 社員に準じた賞与の支給、福利厚生の適用。
  • パートタイム労働者向け社内報の発行による情報の共有化。

(1)企業概要・人員構造

同社は、埼玉県を地盤とするスーパーマーケットで、首都圏に131店舗を展開している。「生活者の日常の消費生活をより豊かにすることによって、地域文化の向上・発展に寄与する」を経営理念に掲げ、地域の特性に合わせた売り場づくりを目指す「個店経営」を推進している。

標準的な店舗の人員構成は、店長(1)、次長(1)、主任(11部門に各1)、リーダー、サブリーダー、担当という構成になっており、主任以上は基本的に正社員の職務であるが、パートタイム労働者のうち週20時間以上勤務するパートナー社員の中からも90名程度が主任に任命されている。

正社員は、店長、次長、主任として、主に管理的業務(数値管理、採用、勤怠管理)を担い、売場作りや接客等の現場業務も行う。パートナー社員と、週20時間未満勤務するヘルパー社員は主に「担当職」として品出し、接客、レジなどの現場業務を行うが、発注や値引きの決定なども行っている。主任に任命されたパートナー社員は、現場業務に加え、売場作りやシフト作成、ミーティングの開催等を担い、サブリーダーは主任の補佐として位置づけられている。パートタイム労働者は所定労働時間によって3つに区分され、週20時間以上のパートナー社員が10,000名超と一番人数が多くなっている。

従業員数と雇用区分

雇用区分 人数 定義 賞与 退職金 持株会 共済会
正社員 2,408名 フルタイム(1日7.75時間)
契約社員 144名 フルタイム
定年後再雇用又はスペシャリストの中途採用が該当
×
パートナー社員 10,471名 週20時間以上、1日4時間以上、6か月契約 ×
ヘルパー
社員
637名 週20時間未満、1日4時間未満、6か月契約 ×
アルバイト社員 3,807名 6か月以内契約学生アルバイト × × × ×

(2)取組の背景

(3)取組の内容

スキルアップを目指した技術認定制度

販売している惣菜のほとんどは店内で調理されており、惣菜の調理を担当しているのが、技術認定の資格を持つパートナー社員である。技術のスキルアップを目指し、惣菜、寿司、ベーカリーの部門ごとにそれぞれ4つのカテゴリーについて試験が行われ、大きさや重さなどの基準を満たす商品を作ることができるか判定を行っている1。試験は概ね月1回実施され、毎回10名前後の希望者が受験している。試験に合格すると名札の下にシールが貼られ、4つのカテゴリー全てに合格するとエキスパートとして認定される。また、取得した技術認定の数に応じた「技術認定手当」が時給に加算される。

1 4つのカテゴリー:(例)惣菜部門「おはぎ」、「とんかつ」、「えび天」、「かつ重」

業務改善への取組を評価する事例発表会の実施

全店の中から10店舗前後が参加し、業務改善活動の成果を発表する「感動と笑顔の祭典」を毎月開催し、これまでに約90回実施している。発案から発表までをパートナー社員が主体的に取り組み、改善活動の成果を、幹部や店長、パートナーなど300人以上の参加者の前で発表している。発表者全員に「チーム賞」、「メンバー賞」などを与え、最も優れた発表者を「ベストメンバー賞」に選んでいる。2013年7月の祭典では、「地域一番のお魚屋さん!」をテーマに、加工作業のスピードアップにより、お客さまがいつ来ても買いたい商品が揃っている売場をつくるなどの取組をした店舗の発表者が「ベストメンバー賞」に選出された。年間のベストメンバーの中から、その後の成果も見ながら半期ごとに5名程度を選び、アメリカのスーパー視察旅行に招待している。

発表会には、経営陣や店長などの幹部層が必ず参加し、パートナー社員との交流の場としても機能している。祭典の内容や結果はDVD化して全店に配布し、併せて社内掲示板での掲示や、パートナー社員向けの社内報でも周知している。

パートナー社員が運営するクッキングサポートの設置

全店舗に調理のデモンストレーションを行う「クッキングサポート」コーナーが設置され、専任で採用されたパートナー社員が運営を担当している。使用する食材からメニューまで、パートナー社員に任されている。例えば、小中学校の給食献立表を掲示して夕飯とかぶらないよう促したり、昼の番組で紹介された商品をすぐ置くなど、パートナー社員が発案して工夫をこらし、お客様の献立作りのサポートを行っている。

人事評価に基づく昇給、昇格を実施

パートナー社員の基本給は基本時給と地域時給で構成されている。基本時給は担当職、管理職の2区分に分かれ、担当職は更に初級、中級、上級の3小区分、管理職はリーダー、主任の2小区分に分かれ、小区分ごとに1~15、若しくは1~20号俸となっている。

初任時は初級5号俸に格付けされ、年2回の人事評価で号俸が上下する。人事評価は、企業理念、コミュニケーション、フレンドリーサービス(接客応対)等のカテゴリーを細分化した項目ごとに1~5点で採点を行い、1年間の累計点でS、A、B、C、Dを判定し、号俸の上下を行う。

初級の10~15号俸に達し、店長の推薦があると中級の5号俸に昇格する。中級から上級への昇格も同様である。

担当職から管理職への任命は、店長及び地区担当部長の推薦を経て発令されている。

目標管理による評価の実施

人事評価は、育成計画表2と個人カルテ3を使用して、半期ごとに自分の目標を決め、日々実践して進捗や結果を主任と確認し、また新たな目標を決めるというサイクルで年2回実施している。

前期を振り返り、今期何をできるようにするのか、主任と互いに確認して目標とする項目を決定する。次に、目標とした作業をOJTで指導を受けながら実践し、半年後にどのレベルまで達したのか、主任と確認しながら評価を付けていく。自ら掲げた目標の達成度を評価することで、スキルのレベルアップを図ると同時に、評価の納得性や透明性を高めている。

2 育成計画表:各部門の作業項目別に習熟度を確認し、目標を明確にするための自己啓発や教育のためのツール
3 個人カルテ:育成計画表と連動し、半期ごとに日常業務や作業の習熟度などを反映する評価シート

社員に準じた賞与の支給

社員とできるだけ平等にという考えから、支給基準は正社員と異なってはいるが、パートナー社員、ヘルパー社員にも賞与を支給している。年2回の定期支給に加え、業績に応じて決算賞与が支給される。

春と夏の賞与は、等級(初級~主任)ごとのポイントに、ポイント単価、評価対象期間の累計労働時間、評価係数をかけた額が支給される。評価は基本時給の昇給の判定と同じ評価結果を用いており、昇給判定時の評価はS~Dの5段階だが、賞与の判定はS、A、AB、B、BC、C、Dの7段階評価となる。

賞与を支給して努力と成果に報いることで、やる気を引き出し、経営への参画意識を高めている。

パートナー社員から正社員へのステップアップの仕組み

入社時は初級からスタートし、中級、上級へ昇格をしていく。店長及び地区担当部長の推薦が承認されると、担当職(初級、中級、上級)から管理職のリーダー、主任に格付けされる。また、本人の希望により、月給制の正社員・契約社員への転換試験に応募できる。

パートナー社員から正社員への転換は、年2回、書類選考→上長推薦→筆記試験→面接→健康診断→審査という流れで行われる。2013年上期には11名が正社員に転換した。

ステップアップの仕組み

ステップアップの仕組み

パートナー社員によるパートナー社員のための社内報の発行

企画から取材、編集までパートナー社員が全てを担当するパートナー社員向けの社内報「Partner」を毎月発行し、全員に配布している。20ページ前後の紙面は全面カラー刷りで、パートナー社員の顔写真も豊富に掲載されている。掲載内容は、「感動と笑顔の祭典」の報告を中心に、他店舗や新店舗の紹介、「計数のページ」(2013.10月号では「荒利益ってなに?」)や「商いのこころ」(ヤオコーのこころを持ったメンバーとして行動するための事例紹介)等の連載企画、下期経営方針についての社長メッセージ等、パートナー社員のモチベーションを高める取組のほか、経営に関する知識の共有、人事制度等に関する情報提供など多岐に渡る。業務改善事例の共有及び情報発信のツールとして活用されている。

正社員に準じた福利厚生制度

パートナー社員、ヘルパー社員は共済会の会員となっており、福利厚生施設の利用や貸付金制度、慶弔金の支給対象となっている。慶弔金については、共済会とは別に会社からも支給され、金額は正社員と同額になっている。

年次有給休暇は、正社員と同じく法定を上回る日数が付与されており、さらに、時効消滅した直近の年次有給休暇を1日単位で病気やけが、介護その他の目的で取得することができる「特別療養休暇」も用意されている。

「入社のしおり」を用いた入社時研修での労働条件の周知徹底

毎月各店舗を回り、新規採用のパートナー社員、ヘルパー社員に対して入社時研修を行っている。研修では、同社で働く上で必要なことがまとめられた「入社のしおり」を配布し、経営理念の徹底、働く上でのルール、衛生管理、接客等の業務における注意を促すだけでなく、勤怠管理、職務等級制度、給与体系、慶弔関係、保険・税金関係に関する説明を行い、労働条件の理解を促している。

(4)成果と課題

業務改善活動の成果を発表する場である「感動と笑顔の祭典」は、日々の創意工夫と発表への取組への努力を評価することが、パートナー社員のモチベーションアップにつながっている。また、毎月継続して実施することで、業務改善の意識が現場に定着し、仕事の質を高める効果も上げている。

現状の課題として、入社3年までの離職率を改善したいと考えている。定着率向上のためには、現場のマネジメントが重要であると認識し、店長、次長、とりわけパートナー社員と接することの多い主任に対し、メンバーの人材育成に向けた教育を行うことに力を入れている。また、働き方のニーズが多様化する中、より細かな勤務時間の希望に対応できるようなシフトの仕組みづくりなども、定着率の伸張には有効ではないかと試行錯誤しているところである。

パートナー社員に責任と権限を与え、スキルアップに繋がる教育の機会を設けながら主体的に働いてもらうことで、働く喜びを感じとってもらいたいと考えている。パートナー社員に本気で期待していることを伝えることで、パートナー社員の戦力化が進んでいく。パートナー社員の自主性を活かしていくという取組が、結果的に会社の競争力を高め、好業績を生み出していると考えている。

一覧へ戻る