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株式会社日豊ケアサービス

平成28年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成28年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用均等・児童家庭局長奨励賞)

正社員と共通の等級制度や評価制度を整備し、これらと賃金制度を連動させている。短時間正社員制度を導入し、パートタイム労働者が正社員に転換しやすくするとともに、正社員も柔軟に働き方を選択することが可能。研修や福利厚生制度等も正社員と同一の取扱いを実現

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 大分県 業種 福祉
従業員数 115名 パート労働者数 17名
事業概要 有料老人ホーム・デイサービス・訪問介護事業等の運営
ポイント
  • 正社員と同一の職能資格等級制度を導入。人事評価も同じ基準を適用し、これらを賃金制度と連動させている。パートタイム労働者に対しても、資格手当等の各種手当を支給。
  • 正社員への転換制度を明確化するとともに、短時間正社員制度を設けるなど多様なルートを用意。正社員も多様な働き方が選択可能となっている。
  • 正社員と同じ内容で研修や資格取得支援を実施するとともに、同社が目指すサービス提供体制を踏まえた支援も実施。福利厚生制度等も同じ取扱い。
  • 制度の導入に当たっては、社内での理解を求めるために職員との対話を積み重ねている。

審査委員はここを評価

パートタイム労働者に正社員と同じ資格制度や評価制度を適用したり、正社員と同等の教育訓練機会を提供することに加えて、短時間正社員制度を導入して正社員への転換を推進することによって、定着の向上を図っています。

1. 企業概要・人員構造

同社は、1998年に創業し、大分県内で介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、老人デイサービスセンターの運営や、訪問介護、居宅介護支援、福祉用具貸与販売等、多様化するニーズに応えるための多彩な福祉サービス事業を展開している。

従業員は、フルタイムの正社員である「正規職員」、短時間勤務の正社員である「短時間正社員」、定年(65歳)を超えたフルタイムの元正規職員である「契約職員」、パートタイム勤務の「パート職員」で構成されている。契約職員を除いて、全員無期労働契約で雇用されている。正規職員は1週当たり40時間、短時間正社員は週30時間以上32時間以下、パート職員は週30時間未満が所定労働時間となっている。

パート職員17名のうち5名はヘルパーとして利用者宅での身の回りの世話を担当し、4名がデイサービス、2名が老人ホームでの日勤、5名が厨房勤務、1名が事務担当である。正規職員や短時間正社員は看護と介護の両方に携わるが、パート職員は限られた時間で勤務するためそのどちらか一方を担当し、正規職員と比べて業務の範囲は狭くなっている。パート職員の9割は女性で、40代~60代の主婦が半数程度、他は母子家庭の母や65歳以上の職員が多い。

各種取組が評価され、2011年と2014年に「くるみん」、2016年には大分県初の「プラチナくるみん」の認定を受けた。その他、2010年に「大分県男女共同参画推進事業者顕彰」の受賞、2010年には「おおいた子育て応援団(しごと子育てサポート企業)」の認証、2016年には「第1回おおいたワーク・ライフ・バランス推進優良企業表彰」の受賞企業に選ばれている。また、ワーク・ライフ・バランスや女性の働きやすさという視点で、多くのメディアに同社の取組が取り上げられている。

2. 取組の背景とねらい

2009年頃までは正規職員、パート職員含め年間20名以上が離職するなど、ピーク時の離職率は約27%もあり、離職者が非常に多かった。教育訓練を行い、仕事を覚えてもらっても、2か月~3か月で離職してしまうパート職員が多かったため、離職を防ぐための取組が喫緊の課題であった。また、県内に同業者が増え、地域の介護を担う人材が限られる中で、より魅力的な企業として特色を出していく必要もあったところ、2009年7月に財団法人21世紀職業財団より「職場風土改革促進事業実施事業主」としての指定を受け、パート職員の無期雇用化や各種制度の見直し、福利厚生の充実等に着手し、社員が継続して働ける職場づくりに取り組むこととなった。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

正規職員と共通の職能資格等級制度で格付

2010年に、全職員共通の職能資格等級制度を導入した。これは、担当する職務の難易度や範囲、量、保有資格、経験等に応じて等級が決まり、等級に応じて基本給である職能給が決定する仕組みである。給与は、正規職員・短時間正社員と週40時間勤務の契約社員は月給制であるが、週30時間未満勤務の契約社員とパート職員は時給制である。

等級は1等級から7等級まであり、正規職員(短時間正社員を含む)は1等級から7等級、パート職員は1等級から4等級に格付される。職能資格等級表に各等級に必要な資格、能力等が明記されており、昇格するための要件が明確になっている。3等級は主任補佐(副主任)、4等級は主任の位置付けであるが、2016年10月現在パート職員には該当者はいない。等級の昇格及び降格は、人事評価の結果で判定する。

職能資格等級表(介護職)<イメージ>

職務資格等級と連動した賃金制度

パート職員を含む職員の賃金は、職能給と役職手当、資格手当、通勤手当等の各種手当で構成されている。

職能給は職種別(介護職用、一般職用)の職能給表に基づき、職能資格等級と号俸で決定する。正規職員(短時間正社員含む)とパート職員の職能給表は異なる。そして、同一等級内で正規職員とパート職員を時間換算で比較した場合は、号俸が低い場合はほぼ同額かパート職員が若干高めであるが、号俸が高くなると正規職員の額が高くなるように設定している。これはパート職員の勤続年数が長くなり号俸が高くなった際、正規職員の待遇を良くしておくことで正規職員や短時間正社員への転換を促すためである。

パート職員の役職手当は主任、主任(副)、資格手当は看護師、准看護師、介護福祉士に支給され、いずれも時間単位で支給される。正規職員(短時間正社員含む)には管理職手当があり、役職手当や資格手当の種類はパート職員よりも多い。正規職員とパート職員共通の役職手当や資格手当は正規職員の額の方が若干高めの設定としている。これは、職能給と同様に正規職員や短時間正社員への転換を促すためである。

なお、通勤手当、正月手当、当直手当は正規職員と同一基準となっているが、現状ではパート職員には夜勤はさせていない。

正規職員と同じ評価シートで年1回評価を実施

2010年から、正規職員と共通の評価シートと評価基準により、年1回人事評価を行っている。評価項目は、「職務遂行のための基本的能力」についての項目は全職種共通、「技能・技術に関する能力」についての項目は事務管理・専門職系職種と介護系職種で内容が異なっている。まず自己申告で各項目について5点・4点・3点・2点・1点で採点し、直属の上司と面談しながら得点を決定する。総合得点を得点基準表に当てはめてS・A・B・C・Dのランクが決定される。面談時には、各評価項目の達成度の相互確認と併せ、次期の目標設定をしてもらう。「介護の質を高める」等の抽象的な内容ではなく、そのためにはどのようなことをしていくのか、具体的な行動目標を立ててもらうようにしている。

評価の結果は昇給、昇格に反映する。昇給については、S~Dのランクにより職能給の号俸が昇号、降号する。Sで2号俸昇号、Aで1号俸昇号、Cで1号俸降号、Dで2号俸降号するが、これまでに降号になったパート職員はいない。人事評価のランクが2回連続Sとなり、かつ上位等級の職務を遂行できると会社が判断した場合、等級の昇格を行っている。

評価シート(イメージ)

勤続6か月から正規職員への転換が可能

パート職員から正規職員への転換については、以前は内規で実施していたが、2009年に正社員転換制度を就業規則に規定して、制度として明確化した。

正規職員への転換の要件は、勤続6か月以上で、正規職員と同等の勤務(フルタイム勤務、当直、交替勤務等)ができること、転換前6か月以内に無断欠勤や無断遅刻、早退がなく、出勤率が8割以上であることとしている。所属長の推薦を受け、面接試験に合格すると正規職員に転換できる。子育てが一段落したり、夫が定年退職したのちに転換を希望する55歳~60歳のパート職員が多く、2007年からの転換者は18名となっている。

短時間正社員制度を導入

より柔軟な働き方を認めることで正規職員の離職を防ぐことや、パート職員のステップアップを目的として、2015年に短時間正社員制度を導入した。正規職員から短時間正社員への転換だけでなく、パート職員から短時間正社員へ転換し、さらに短時間正社員から正規職員への転換が可能となっている。

正規職員から短時間正社員への転換については、育児や介護、私傷病、ボランティア、自己啓発等の事由で制度を利用することができる。期間に定めはなく、希望により正規職員に復帰することができる。

一方、パート職員から短時間正社員への転換は、勤続6か月以上で所属長が推薦し面接に合格した者が転換できる。制度導入時は勤続5年以上を要件としていたが、より多くのパート職員を対象とするため、2016年10月に勤続6か月以上に変更した。2016年の実績としては、パート職員1名と正規職員1名が短時間正社員に転換した。

短時間正社員の勤務時間は、30時間以上32時間以下で個別に決定している。パターンとしては、1日6時間の週5日勤務や1日8時間の週4日勤務を想定しており、1日8時間の場合は夜勤の対象としている。月例賃金、資格手当、賞与、退職金は正規職員の規程を適用し、所定労働時間の割合に応じて支給している。

正規職員と同じカリキュラムで教育訓練を実施

正規職員と同じカリキュラムで充実した教育訓練を実施しており、無資格者であっても、採用後、安心して働けるよう、育成している。社内研修は、年間計画に基づき月1回各事業所で実施しており、2016年度の研修内容として、「ストレスチェック」、「権利擁護・身体拘束・虐待防止」、「感染症予防」等がある。社外の講習については、講習費、旅費、宿泊費を全額会社が負担している。2015年度は、介護技術講習、認知症ケア事例研修会、相談業務担当職研修会を3名のパート職員が受講した。

また、各種資格の取得も奨励しており、資格パンフレットの配布の他、資格の要件(実務経験期間等)を満たしているパート職員に対して、資格を取得するよう、直接声掛けも行っている。このような取組もあり、2016年度は2名が介護福祉士の資格を取得した。現在、同社は、喀痰吸引ができる施設を目指し、会社負担で資格取得を進めている。研修時間が長いこともあり、現在の有資格者は正規職員のみであるが、今後はパート職員にも広げていきたい。

パート職員による相談対応

入社時には、同じ職場のパート職員の中から指名された「メンター」が、業務の指導だけでなく、精神面でのフォローも行っている。メンターに指名されたパート職員は、知識やスキル、意識を高めるために外部研修に参加している。メンターによる相談は、勤務時間内に面談・メール・電話等により受け付けている。相談は月2回を限度とし、面談や電話の場合は1回1時間を限度としている。また、メンターがつく期間は3年間までとしている。原則としての回数や時間、期間を定めているものの、個人の状況に応じて柔軟に運用している。入社直後は不安や悩みを抱えやすく、数日で離職するパート職員もみられたが、相談相手が決まっていることでその都度悩みを打ち明けることができ、安心して勤め続けられる環境づくりにつながっている。2015年度の相談実績では、産休前後の相談、育児休業中、復帰前後の相談が多かった。

その他、全職員が利用できる「悩み事相談窓口」を設置し、人事担当者が対応している。これまでの相談事例では、パート職員から正規職員に転換したものの業務に慣れず退職を考えていたが、相談の結果退職を思いとどまったというケースがある。

すべての会議、行事にパート職員も参加

社内のすべての会議や行事にパート職員も参加できるようになっている。会議は、月1回の月例会議や、入居者のレクリエーション内容を検討するレク会議等多岐にわたる。利用者に関することや労働条件の変更等、重要な情報も定例会議の他、回覧や掲示によりパート職員にも情報の共有を図っている。

行事では、毎年8月に地元の盆踊り大会に参加し、2009年及び2010年には準優勝を果たしている。パート職員の参加により、職員同士の意思疎通がスムーズになり、風通しの良い職場風土が醸成された。

パート職員の意向を反映した勤務表の作成

かつては事業所ごとに公休日数がバラバラであったり、希望日に休日が取れないという不満の声が多かった。そこで全社でカレンダーを作成し、公休日数を統一し、各現場の主任が勤務表を作成する際は、あらかじめ正規職員とパート職員の要望を聴くようになった。年次有給休暇の取得希望も聴取し、休暇取得促進へつなげている。できる限りパート職員の要望を優先させて、家族や地域の行事への参加を促しており、パート職員からは計画が立てやすくなったと好評価を得ている。

正規職員と同一の福利厚生制度

健康診断は、法定を上回る全パート職員を対象に実施しており、インフルエンザ予防接種の費用も正規職員と同様に会社が補助している。

慶弔見舞金制度も正規職員と同じ規定を適用している。忘年会も自己負担なく参加ができ、年2回程度の職場ごとの懇親会には補助金を支給している。忘年会や懇親会には9割のパート職員が参加しており、正規職員とパート職員相互の親睦を深めている。

法定を上回る育児休業、介護休業制度

離職率を改善するため出産や育児、介護を抱える職員の支援に力を入れている。

育児休業は法定を上回る満2歳まで取得が可能となっている。妊娠をした職員には、社内制度や法律、給付金等について、独自に作成したリーフレットを渡して説明している。また育児休業取得者には、円滑な育児休業の取得と職場復帰を支援するために育児休業復帰支援プランを作成し、プランに沿った対応を実施している。パート職員の取得実績は2007年に1名となっている。

介護休業も法定を上回る100日まで利用可能となっている。介護を理由とした離職者を出したくないという思いから、法定の対象家族以外についても、会社が認めた場合は休業が可能となっている。2008年に1名、2012年に1名、いずれも100日間介護休業を取得している。

ワーク・ライフ・バランスについての取組

定時帰宅や年次有給休暇取得促進を全社を挙げて取り組み、ポスター掲示の他、会議等での勧奨を行って、ワーク・ライフ・バランスを推進している。パート職員の定時帰宅は徹底されている他、年次有給休暇の取得日数も徐々に増加しており、平均取得日数は2012年から2015年までで2日増加した。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

最も苦労した点は、人事評価制度等新しい制度を導入する際に、パート職員には不要ではないかという意見や反発があったことである。雇用形態による区別をなくし、一人ひとりが働きがいと誇りを持って、安心して長く働き続けられる職場を目指すことが会社の方針であることを理解してもらうため、多くの対話を重ねた。その結果、現在では新しい取組の提案にも好意的に耳を傾けてくれるようになった。

入社後3年程度でステップアップのための職務変更(職務の幅や配置転換)や、新施設開設時の昇進を打診することがあるが、職務が変わることや責任が重くなることを望まず退職するパート職員も多かった。そこで、事前に本人の意向を確認するなど工夫したところ、退職者の減少につながった。

5. 取組の効果と今後の見通し

各種取組の効果として、勤続年数が伸び、離職者が減少した。2010年度の65歳未満のパート職員の勤続年数は1.9年だったが、2012年度3.4年、2013年度~2014年度も4年~5年程度で推移し、直近の2015年度では4.4年と伸びており、正規職員の勤続年数に近づいている(正規職員勤続年数2015年度5年)。パート職員の離職者は2007年度~2009年度には年平均8.3名だったが、徐々に減少し2015年度では2名となっている。

また、正規職員と同一基準での人事評価制度や研修機会の提供等により、仕事への意欲や責任感が高まった。施設利用者家族へのアンケートでは、「施設のサービスに満足している」と答えた人の割合が2012年の54%から2016年は68%と上昇しており、競合が激化する中でも空き部屋が減少してきていることから、職員の応対がお客様から支持を得ている結果だと考えている。

プラチナくるみんの取得や同社の取組が各種メディアで取り上げられたことにより、パート職員の応募者が増加し、新卒者が志望動機の一つにくるみんの取得を挙げるなど、求人にも一定の効果を上げている。

正規職員を増やすことで定着を進め、稼動を高めるとともにより質の高いサービスを提供していきたいと考え、正規職員への転換を進めてきた結果、現在は業務や責任の範囲の拡大を望まないなど、正規職員を希望しない者がパート職員として勤務している状況となっている。2007年4月においては、全職員82名中パート職員25名であったが、2016年10月においては、全職員115名中パート職員17名と全職員に占めるパート職員の割合が半減している。

今後は、事情によりフルタイム勤務ができない人を新規で雇い、短時間正社員制度等も活用し、将来的には正社員になって欲しいと考えている。介護職の経験がなく資格を持っていない人でも積極的に採用し、会社で援助をして資格取得を推進していく予定である。

従業員の声

パート職員から短時間正社員第1号に
(有料老人ホーム勤務、介護職、勤続7か月)

介護職のパート職員として2016年に入社した。介護職は初めてで、1日4.5時間勤務で有料老人ホームの入居者の身の回りの世話を担当してきた。賞与が支給されたり、勤務時間が延びることで社会保険に加入できること等待遇面で魅力があったことや、会社の薦めもあって、2016年10月から短時間正社員になった。

短時間正社員になり、1日6時間、週5日勤務で、入居者の身の回りの世話だけでなく、体温測定等健康管理も担当するようになった。パート職員の時は勤務時間が短くて休憩時間が無かったが、今は休憩もあって余裕を持って仕事ができるようになった。新しい仕事も増え、少しでも入居者の気持ちの支えになれるよう、意欲を持って仕事に取り組んでいる。

短時間正社員第1号になったことで、職場に制度を知ってもらうきっかけになったと感じている。また、4.5時間から6時間に勤務時間が延びたことで、人手が増えたと他の職員から喜ばれている。今まで以上に入居者に目配りできるようになり、転倒防止等にも自分が役立てているのではないかと実感している。

今後は、介護職員初任者研修を修了するなど、さらなるキャリアアップを目指し、いずれは正規職員への転換を目指していきたい。

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