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株式会社サンリッチ三島
平成28年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用均等・児童家庭局長奨励賞)
働きぶりを評価し、時給や賞与といった待遇に反映するとともに、豊富な教育研修機会の付与、充実した福利厚生制度により人材の定着が進み、業務に精通するパートタイム労働者が増加。サービスの質が向上し利用者や地域における評判の向上に寄与
正社員転換推進措置
所在地 | 静岡県 | 業種 | 福祉 |
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従業員数 | 83名 | パート労働者数 | 49名 |
事業概要 | 有料老人ホームの運営 |
ポイント |
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審査委員はここを評価
就業形態にかかわらず社員の能力を高めることを重視しており、多様な研修機会の提供、実施後の丁寧なフォローアップ、「個人別スキルアップ研修カード」による能力伸張の確認等、トータルな人材育成策の取組が注目されます。
1. 企業概要・人員構造
同社は、1993年より静岡県三島市で、介護付有料老人ホームを運営している。施設は鉄筋コンクリート10階建てで、一般居室122室(定員155名)の他、定員17名の介護センター8室があり、現在の入居者は130名である。
同社の職員数は83名で、常勤の正社員が34名、非常勤のパートタイム労働者が49名となっている。パートタイム労働者には、子育てが一段落した主婦が多く、採用時には介護経験の無い場合が多い。パートタイム労働者はすべての部署に在籍し、看護、介護、清掃、事務、調理、フロントの宿直業務を担当している。正社員はクレーム対応、入居者の身体介護、緊急時呼出等の重い責任を負っているが、パートタイム労働者の担当する業務は、正社員と比べると範囲と責任が小さく、役職に就くこともない。そのため、パートタイム労働者の時給額は正社員の時給換算額よりもやや低い。
正社員の勤務時間は、担当業務によって異なるが週40時間程度、パートタイム労働者の勤務時間は本人の希望により異なるが、1日3時間~5時間、週3日~4日程度である。
正社員の平均年齢は48.3歳、パートタイム労働者の平均年齢は59歳と、ともに高いのが特徴である。パートタイム労働者49名のうち、65歳以上が20名おり、最高齢は78歳男性である。
2. 取組の背景とねらい
同社は、「地域のオンリーワン・ナンバーワン」として高いレベルのサービスを提供することを目指しており、その実現のため人材育成を重要視している。加えて、介護という業務の性質上、個々の入居者に対する継続的な信頼関係の構築が肝要であるため、すべての職員が長期的に働けるような環境整備が必要だと考えている。
そうした考えから、正社員・パートタイム労働者にかかわらず人材を育成すべく、様々な研修機会を設け、また、職員が長く働き続けられるように待遇の改善や福利厚生の充実に取り組んでいる。職員間の関係が良いことで勤続が長くなり業務経験を積んだ職員が増えれば、利用者に提供するサービスの質の向上につながると考えているため、職員間のコミュニケーションを密にするための取組も実施している。
3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組
自己評価と面談による人事評価を実施し、その結果を昇給・賞与等に反映
2013年度から、年に一度、全職員の人事評価を実施している。それまでは、年2回の面談による人事評価を行っていたが、その方法では働きぶりが数字に表れにくい業務を担当しているパートタイム労働者の努力の評価が難しく、自己評価式の「個人別業務達成度測定表」を導入することにした。
職員は、個人別業務達成度測定表を使って、「方針」、「食事介護」、「服薬介助」といった業務に関する34項目についてその達成度を1~5で自己評価する。所属長は、提出された測定表をもとに面談を実施し、職員の自己評価結果を確認するとともに、日頃の働きぶりの振り返りを行う。なお、所属長は自己評価の結果を確認するのみで、原則として自己評価結果に変更を加えることはない。
面談の結果、課題を把握した場合には、所属長が指導し、また、必要に応じて他部署が直接指導を行うこともある。例えば、フロント業務を担当するパートタイム労働者が、看護師から手洗い指導を受けたこともあった。さらに、所属長では問題が解決できない場合には、施設長が指導を行っている。この仕組みや測定表の様式に、正社員とパートタイム労働者の間で違いはない。
個人別業務達成度測定表(イメージ)
個人別業務達成度測定表を使った人事評価の結果は、昇給と賞与(年2回)、正社員転換の判断に反映させている。5割以上の項目で「4」以上の自己評価となっている場合は、昇給実施及び賞与支給の対象となる。また、正社員転換の判断に当たっては、人事評価の結果が判断材料の一つとされている。
昇給については、人事評価の結果に加えて、資格取得状況、勤務年数、職種及び総合的な貢献度を勘案しており、この仕組みは正社員と共通である。業務の特性上、チームワークが重要となることから、職種を単位として昇給を実施する年もあり、2015年は、人事評価の結果をもとに、宿直フロント業務を担当するパートタイム労働者6名全員に対して昇給を実施した。正社員・パートタイム労働者の昇給の基準と昇給額の目安は事務所に掲示することにより公開している。資格取得に関しては、資格手当の支給も行われており、その額は正社員とパートタイム労働者で共通である。
また、人事評価の反映とは別に、待遇改善の一環として、土曜日、日曜日、祝日等に勤務した時間給1,100円以下のパートタイム労働者に対しては、時間給に100円を加算している。これには、待遇改善を通じてサービスの低下を防ぐ目的もあり、パートタイム労働者に対してのみ行っている制度である。2016年度は、対象となるパートタイム労働者32名全員に対して実施している。
昇給と賞与及び退職慰労金の支給は創業時より実施している。給与に関しては地域の同業他社よりも高く、正社員と近い水準になるよう賃金表に規定している。退職慰労金の額は、勤続年数に応じて額が決まる点では正社員と共通だが、金額の水準は正社員よりも低い。
雇用区分の分け隔てなく、永年勤続と各種功績を表彰
2013年度から、5年ごとに永年勤続者表彰制度を実施している。正社員とパートタイム労働者の双方が対象となっており、2013年度の表彰式は、創業20周年記念式典に併せて開催され、パートタイム労働者11名が永年勤続5年、6名が永年勤続10年、1名が永年勤続15年で表彰された。次回の表彰は2018年度に行う予定である。
なお、2012年度までは、各種の功績に報いるため、頑張っているで賞、迅速賞、こつこつ賞等様々な表彰区分を年度ごとに設定し、幹部役員が日頃の働きぶりをもとに、総合的に評価した上で正社員とパートタイム労働者が同数になるように受賞者を決めていた。しかし、2013年度に東日本大震災の復興支援旅行を実施したことをきっかけに、災害を意識した職員間の連携強化やモチベーション向上につなげるため、表彰よりも福利厚生の充実を重視する方針に転換し、現在はこれらの表彰制度は一時的に中止している。2017年度には、こつこつ賞等の一部の表彰を再開する予定である。
豊富な研修機会とカードを使ったスキルアップ促進の取組
正社員・パートタイム労働者を問わず、採用後はオリエンテーションを行い、独自の研修マニュアルによるOff-JTを実施する。研修マニュアルでは、施設の理念や勤務心得から感染症対策まで幅広く63の分野を扱っており、施設内に設置し閲覧可能としている他、自宅に持ち帰って読むことも可能である。Off-JT終了後は報告書を提出させ、内容の理解度を所属長と施設長が確認し、不明な点があれば日々の業務の中でOJTを行ってフォローしている。なお、研修時間はすべて勤務扱いである。
また、同社では毎月スタッフ会議の場で勉強会を開催している。テーマは、研修マニュアルの中から一つをピックアップし、講師は社長が務める。この勉強会は施設設立当初より開催しており、自由参加で毎回平均20名程度が参加している。パートタイム労働者の参加者は毎回2名~3名程度だが、参加できなかった職員全員に書類を回覧することで、全体で研修内容を共有している。
他にも全職員を対象とした年に一度の内部研修や、不定期の外部研修、リスクマネジメント研修等の業務に関する各種の研修を実施している。2015年度の内部研修は、入居者の身体状況に応じたサービス内容の改善見直しをテーマとして開催し、全参加者は60名、うちパートタイム労働者は26名であった。また、2014年度の外部研修は普通救命の講習に28名が参加し、うちパートタイム労働者は6名だった。さらに、内部研修の開催後には研修の要点を回覧して再確認を行うとともに共通認識を促すことで、参加した職員の理解の促進と参加できなかった職員のフォローに努めている。なお、業務に関する各種の研修は、年間研修計画表により全職員に明示しており、担当業務以外であっても、希望すれば誰でも受講できるようにしている。
こうした研修の機会を十分に活用し、一人ひとりの職員がスキルアップを図っていけるよう、同社では、「個人別スキルアップ研修カード」を作成し、業務到達の目安と、スキルアップに必要な研修及び資格を明示している。面談や日々の顔合わせの際には、このカードに基づいて研修の受講や資格の取得を促している。
個人別スキルアップ研修カード(イメージ)
氏名 | 生年月日 | ||
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入職日 | 有する資格 | ||
配属 | 平成○年△月×日 | 介護サービス課 介護員 パートタイム労働者 | |
平成○年△月×日 | 介護サービス課 介護員 正社員 | ||
平成○年△月×日 | 介護サービス課 課長 | ||
平成○年△月×日 | 研修担当者 | ||
スキルアップ研修内容 | 平成○年△月×日 | 個人情報保護ガイドライン説明会 | |
平成○年△月×日 | 介護福祉士資格取得研修 | ||
平成○年△月×日 | 内部研修 胃ろう | ||
平成○年△月×日 | 救命講習 | ||
希望する研修 | ●内部研修 ○介護技術 ●指導監督職管理研修 | ||
希望する資格 | ●介護福祉士(平成○年取得済) ●介護支援専門員(平成○年取得済み) | ||
新規資格取得 | 取得日 ヘルパー2級 |
*●は会社要望、○は本人希望
資格取得援助制度を整備し、雇用区分にかかわらず資格取得を支援
2000年より資格取得のための援助制度を導入した。通信教育受講料(教材費含む)及び合格後の実務者研修等の費用を援助している。援助制度の利用に当たって、正社員とパートタイム労働者で差はない。援助の内容と要件及び該当資格は以下の通りである。
資格取得援助制度
援助の内容 |
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要件 |
①1年以上勤務していること ②勤務態度が良好であること ③資格取得後1年を超えて勤務する意思があること |
該当資格 |
看護師、介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士、管理栄養士、調理師、理学療法士、作業療法士、健康運動指導員、介護員実務者研修課程修了者、介護員初心者研修課程修了者、筋力向上指導員、衛生管理者、社会福祉施設長資格 |
これまでこの制度を利用して、介護福祉士や調理師資格を取得したパートタイム労働者が複数名おり、現在も介護福祉士の資格取得を目指して同制度を利用しているパートタイム労働者がいる(毎年1名程度の実績あり)。特に子育てを終えた女性が取得にチャレンジすることが多い。上司が取得を勧めるなど、職員のキャリアアップに積極的に取り組んでいる。なお、該当外の資格に関しても、職員が希望した場合には取得支援を実施している。
正社員への転換制度を整備し、転換後に役職に就任した者も
2000年に、パートタイム労働者から「正社員としてこの施設で働きたい」という声が上がったことを契機に、正社員転換制度を導入した。転換要件は、①1年以上の勤務経験、または1年未満であっても能力が著しく高いと認められること、②1日8時間、週40時間の勤務ができること、③所属長の推薦があること、④面接試験に合格することである。
転換の希望はいつでも申し出ることができる。実際に転換するためには、正社員のポストに空きが出るまで待たなければならないが、新規採用よりも優先して転換させている。転換実績は累積で12名であり、2012年度に2名、2013年度に1名、2014年度に1名となっており、これまでに、申し出たパートタイム労働者は全員が正社員に転換している。転換時の平均年齢は44.7歳であった。
転換後の昇進に上限はなく、本人の意欲と能力・適性に応じて決められている。これまでに、正社員へ転換した者のうち6名が役職に就き、うち3名は副施設長を筆頭に役員となっている。
正社員転換制度については、就業規則及び雇用条件通知書に明示する他、毎年度、回覧でもパートタイム労働者に対し周知している。
コミュニケーション促進のため視察研修等を実施
同社では職員間のコミュニケーション促進とモチベーション向上のため、2013年度から、すべての職員を対象として視察研修や演劇鑑賞等の旅行を実施している。
これまでに実施した視察研修・演劇鑑賞等
年度 | 内容 | 参加人数 | うちパートタイム労働者 |
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2013年 | 福島県内の被災地視察 | 52名 | 13名 |
東京スカイツリー見学 | 50名 | 19名 | |
2014年 | ウィーン少年合唱団のコンサート鑑賞 | 28名 | 9名 |
劇団四季のミュージカル鑑賞 | 66名 | 24名 | |
イルミネーションツアー | 64名 | 24名 | |
2015年 | 劇団四季のミュージカル鑑賞 | 61名 | 25名 |
ミュージカル鑑賞及び防災センターでの研修 | 62名 | 27名 | |
2016年 | 歌舞伎鑑賞 | 70名 | 34名 |
サーカス鑑賞 | 65名 | 31名 |
これらの費用は会社が全額負担し、宿泊先は、毎回一流のホテルを選定している。これは、一流のサービスを体験することが、施設利用者へのサービスの質の向上につながることを期待しているためである。希望制で実施しているが、日程を3回に分けることで子どもを持つパートタイム労働者も含め、なるべく多くの職員が参加できるように配慮している。
この他にも、参加希望者で費用を均等割にして、近隣リゾート施設に旅行する機会も設けている。16時に仕事を終えてリゾート施設に宿泊し、翌日10時に出社するという仕組みで、2015年度には20名が参加し、そのうちパートタイム労働者が3名であった。熱海や箱根のリゾート施設に宿泊し、食事や温泉を楽しむことで、リフレッシュになるだけでなく、職員間の日頃のコミュニケーションも円滑になるという効果があった。
アンケート・意見箱等により職員の意見を把握
同社では設立当初より、記名式のアンケートを全職員に実施している。アンケートの種類は年度により異なるが、2015年度時点では、働き方への要望や苦情・不満、メンタルヘルス及び労働時間に関するもの等、6種類があり、それぞれ年1回実施している。課題を共有するためアンケート結果は職員に回覧し、要望があった場合には所属長が本人と話合いをして実現につなげている。例えば、2015年度に行ったアンケートでは、パートタイム労働者からエプロンの支給要望があったため、速やかに支給を行った。最近はアンケートへの回答量が増えており、サービスの質の向上に向けた意見が出されることも増え、職員の意欲を実感している。
また、職員用のタイムカード機械の横に、職員専用の意見箱を設置し、無記名で意見を投函できるようにしている。しかし、これまでに意見箱に寄せられた意見はなく、むしろ記名式のアンケートに不満や要望が寄せられており、会社としては、風通しの良い職場になっており、社内のコミュニケーションが円滑に行われていることを実感している。
職員間の情報共有を進めるために、事務所にホワイドボードとノートを設置して、入居者の特記事項や申し送り事項、その日の予定を記載している。困りごとやささいな相談もホワイトボードに記載し、部署をまたいだアドバイスや解決策を集めており、職場全体でサポートしていく体制を整えている。その他にも、会議の議事録や研修書類は回覧しており、情報共有に正社員とパートタイム労働者の間で差は設けていない。
その他、産業医と外部の労働相談窓口の連絡先を雇用条件通知書に明示し、困ったことがあればすぐに相談できるようにしている。
同社の事務所は部署ごとのコーナーを特に設けておらず、施設長や社長専用の部屋もない。そのため、事務所で全職員が顔を合わせることができ、誰もが情報を共有し、意見を交わすことのできる場になっている。
また、パートタイム労働者の中からパートタイム労働者代表を決めて、定期的に意見を聞く機会も設けており、勤務時間が短く、上司や社長とのコミュニケーションの機会が不十分になりやすいパートタイム労働者に対しては特に配慮している。
アイスクリームデーといったユニークな取組等、福利厚生を充実
ロッカーや休憩所等の福利厚生施設や制度の利用、費用補助については、全職員に共通である。事務所には飲料を用意し、いつでも必要な時に水分補給できるようにしている。また、4年~5年前より、毎年7月~9月に「アイスクリームデー」を設け、その日には事務所に高級アイスクリームを用意し、すべての職員に一つずつ支給するというユニークな取組をしている。
慶弔見舞金制度(結婚祝金、出産祝金、死亡弔慰金)があり、死亡弔慰金以外は正社員とパートタイム労働者で同額が支給される。2015年度は、パートタイム労働者1名に出産祝金を支給した。また、入居者の通夜・葬儀等に出席する場合にも、正社員と同額の手当を支給している。
法定を上回る育児休業(子が3歳まで)と介護休業(分割取得が可能)を整備し、パートタイム労働者も正社員同様に取得できる。2015年度はパートタイム労働者1名が育児休業を取得した。子の看護休暇及び介護休暇も正社員と同様に取得でき、休暇期間は有給扱いである。
さらに、「生涯現役労働の支援」を掲げて、働く意欲があり健康であれば、年齢にかかわらず可能な限り雇用継続を行っている。定年は60歳であるが、65歳まで継続雇用を行うとともに、65歳を超えても希望があれば雇用している。正社員で働いていた者が、60歳以降はパートタイム労働者で働き続けるケースも多く、今後も、生涯健康で働ける環境づくりを進め、人材不足の社会を乗り切りたいと考えている。
4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点
「地域のオンリーワン・ナンバーワン」を目標にし、その実現のために、全職員の人材育成の努力を怠らないようにしている。人材育成には人手と時間がかかり、会社にとっては費用負担が大きいが、より時間をかけて人材を育成するようにしている。例えば、パートタイム労働者の採用応募者のうち介護業務未経験者には7日間程度の勤務をさせて適性を判断する体験勤務を行っている。体験勤務後に適性に不安が残る場合であっても採用し、引き続き研修と指導を行うことで業務に慣れてもらうよう努めている。
また、1名で夜勤を担当させるまでには、他社よりも長い、半年以上の育成期間を設けている。他の職員によるフォローがより必要となるが、「時間や手間を惜しまず、長い目で人材を育てよう」という考えを、社長や施設長より、機を捉え何度も職員に伝えることで、職員の理解や協力を促している。
パートタイム労働者を含めた全職員の待遇の改善も必須であると考えており、全職員が「地域で最高のサービスを提供している」という自尊心を持てるよう、近隣の他社よりも給与水準が高くなるように時給を設定している。こうした、人材を大切にする発想には、正社員もパートタイム労働者も違いはなく、日頃から分け隔てなく接するとともに、パートタイム労働者の評価にも目を配り、可能な限り待遇が正社員とパートタイム労働者で同等のものとなるよう努め、パートタイム労働者の活躍機会の拡充に努めている。
5. 取組の効果と今後の見通し
適切な待遇や福利厚生の充実により、他社と比較して、同社の離職率は低く抑えられており、2014年度には9.1%、2015年度には9.8%であった。また、2016年3月時点で、パートタイム労働者の平均勤続年数は4.7年であり、勤続20年以上が1名、15年以上が1名、10年以上が2名、5年以上が15名である。退職者数も、2013年2名、2014年3名、2015年2名と、この水準を保っている。いずれの退職者も勤続10年以上であり、時間をかけた人材育成により早期の退職が少なく、安定的な人材確保につながっているとともに採用コストが低く抑えられている。
長く勤務することで、主体的に業務に取り組むパートタイム労働者が増え、業務改善を上司に提案する姿も多くみられるようになった。ルームサービスの提供や配膳等では、ベテランのパートタイム労働者が正社員に業務手順をアドバイスすることもある。正社員と同様の研修機会を設けることにより、パートタイム労働者の安全意識や感染症対策への意識が高まっており、定期的な勉強会を通じて、会社の方針や考え方を浸透させることができ、職員間の連携が強化されている。
また、様々な待遇に関しては、文書に明記して公平に運用しており、さらに苦情や不満は各種のアンケートを定期的に実施することで把握に努め、さらなる職場環境の改善につなげている。
こうした成果が、全体としてサービスの質の向上につながっている。2015年に行った入居者満足度調査(アンケート)では、職員対応に対する評価は「良い」が77.7%、「普通」が22.3%、「悪い」が0%であった。入居希望の問合せも多く、最近は県内外から視察や研修受入れの依頼を受けることも多くなり、サービスの質の高さについて地域や社会からの評価が高まっていると感じている。パートタイム労働者を含むすべての職員を大切にし、その活躍機会の拡充を図っていることがサービスの質や評判の向上に貢献していると考え、今後も職員の人材育成や内部研修の充実を図り、資格取得支援や、正社員転換制度利用者の応援を続けていくつもりである。
従業員の声スキルアップに努め、今後も長く勤めていきたい
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