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株式会社オーティーエス

平成28年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成28年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用均等・児童家庭局長奨励賞)

人事評価を待遇に反映することで、パートタイム労働者の意欲を喚起。また、一人ひとりのパートタイム労働者の声に耳を傾け、希望を着実に実現することを通じて、職場としての魅力向上に取り組む

1.労働条件の明示、説明
2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
9.その他
所在地 東京都 業種 運輸業・郵便業
従業員数 724名 パート労働者数 580名
事業概要 ファッション関連商品の検品や値札付け等の倉庫における管理業務
ポイント
  • 多段階の人事評価とその結果を時給に反映。また、その結果をパートタイム労働者にフィードバックすることで意欲の向上を図る。
  • 業務の多様性に対応した豊富なメニューによる研修を実施するとともに、場所や時間に配慮するなど、パートタイム労働者が参加しやすい研修となるよう工夫。
  • パートタイム労働者から契約社員、正社員へとステップアップできる転換制度とパートタイム労働者のライフサイクルも踏まえた転換への後押し。
  • 入社後アンケートや面談を実施して要望を把握することにより、職場環境の改善を推進。

審査委員はここを評価

正社員の協力を得て、パートタイム労働者が真に欲する「働きやすさ」を、徹底的に追求しています。これにより、定着・育成のみならず、今の時代に採用力まで向上させているところに、企業としての強い意志を感じました。

1. 企業概要・人員構造

同社は、1986年にファッション関係の商品を扱う倉庫業として創業し、ファッション関連の企業に対して、物流や品質管理等裏方からサポートする事業を担ってきた。業務としては、倉庫で預かった洋服や靴、バッグ等の商品を、顧客(荷主)の指示に従って加工や検品等を行った後、百貨店やセレクトショップへ配送することが中心となっている。

事業場(センター)は、本社に併設の葛西(100名/パートタイム労働者数。以下同じ)、臨海(113名)、堀江(96名)、湾岸(147名)、新砂(123名)の5か所となっている(この他、本社に所属するパートタイム労働者が1名)。同社の雇用形態は、正社員、契約社員、パディの3つの区分がある。パディとは同社独自の呼称であり、契約社員とパディはパートタイム労働者である。契約期間はいずれも1年となっている。契約社員には、もともとパディとして勤めていて転換制度を利用した従業員が多く、いずれは正社員に転換することが想定されている。

入荷から加工、検品、出荷までの一連の現場作業のほとんどをパディが担っており、正社員は必要に応じて応援に入る程度である。

パディは、事業場の近隣に住む40代~50代の主婦が中心である。パディの中には、パディとしての勤務形態のまま、無期雇用に転換した者も10数名いる。業務上チームワークが重視されるため、パディの間にリーダー等の役割は設けていない。

パディの1日当たりの基本勤務時間は5.5時間である。ただし、勤務時間には幅があり、最も短いパディが1日2時間、最も長いパディで1日7時間15分である。週の勤務日数は2日以上5日までの間で選択でき、平均は4日程度である。契約社員は1日7時間の週5日勤務となっており、現在17名である。契約社員の主な業務は、事務処理や取引先との折衝等となっている。正社員は1年単位の変形労働時間制が適用され、1日の所定労働時間は7.5時間で、1年に12回土曜日の出勤が義務付けられている。主な業務は、パディを含む従業員のマネジメントや社外対応等である。

2. 取組の背景とねらい

同社では、10年ほど前、入社してもすぐに辞めてしまうパディが多く、人材確保に苦労した時期があった。人材を募集しても思うように応募者が集まらない期間が続く中で、職場環境の改善やパディの活躍機会の充実を通じて、職場としての魅力を高めていこうと考えるに至り、パディにとって働きやすい環境づくりに取り組み始めた。

その取組の効果もあり、定着率が向上するとともに応募者も増加し、現在では全従業員の8割近くをパディが占めている。また、実際に現場作業をこなしているのはパディであるため、パディのスキルの向上がサービス品質や顧客満足度の向上に直結する。そうした背景から、現在では人材確保の目的にとどまらず、業績向上のためにも、パディの活躍推進に取り組んでいる。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

三者による人事評価とその結果を時給等に反映

毎年10月1日付けで全パディを対象に、能力や勤務態度、貢献度等について総合的な評価を行っている。また、その結果を反映して、翌事業年度(10月から翌年9月まで)の時給を改定している。さらに、正社員・契約社員等に転換する際にも、この評価結果を考慮している。評価は、かつては専用の様式である「パディ評価シート」に評定点を書き込むことで行っていたが、現在は同シートに記載された評価の観点を参照した上で、総合的な評価を行っている。正社員及び契約社員の場合には、上記とは異なる評価の仕組みが適用されている。

評価は、係長・主任等の直属の上司が一次評価、副事業場長またはフロア長が二次評価、事業場長が最終評価を行い、それぞれが評価シートに新年度の時給とその理由を記入する。評価結果を点数で示すといった仕組みにはしておらず、新年度の時給を三者が検討することをもって人事評価としている。事業場長の評価の後、全社で調整することとしているが、現場の評価を重視しており覆ることはあまりない。過去には、最大で100円の昇給となった事例もある。新しい時給が適用される際には、対象となる全パディと係長または主任クラスの正社員が面談し、評価結果をフィードバックしている。面談に当たっては、一人ひとりの労をねぎらうとともに、さらに能力を伸ばせるよう課題も指摘している。この面談の機会を設けていることで、勤務状況をきちんと把握した上で評価し、時給を決定していることがパディ自身にも伝わって、互いの信頼関係の構築につながっている。また、この仕組みによって、勤務状況が確実に時給へ反映されることがパディにも認識され、日々の業務に対する意欲の向上につながっている。

なお、賞与に関して、規程上はパディには支給しないこととなっているが、2008年度は業績が良かったためパディに対しても支給した。退職金に関しても、20年以上勤続したのちに退職するパディに対しては功労金を支給する場合がある。

永年勤続表彰制度をパディにも適用

同社では、正社員と同様にパディにも永年勤続表彰を行っている。表彰対象は、勤続10年・15年・20年・25年・30年の従業員であり、該当者には表彰状と記念品を贈呈している。表彰授賞式は、毎年10月に行う事業計画発表会後の懇親会の場で行っており、都内に会場を借りて、すべての正社員・契約社員と、表彰対象であるパディを招待している。表彰状は、立食パーティーの場で会長から手渡しで贈られる。記念品は、キーケースや財布等が多い。

5年ごとの節目には、パディを含む全従業員を招いて懇親会及び表彰授賞式を行っている。2015年は創立30周年に当たる記念の年であったことから、全従業員を招いて懇親会及び表彰授賞式を開催した。この年の表彰受賞者43名のうち、パディは24名であった。

業務に即して行われる多様な社内研修

同社では社内研修委員会が設けられており、毎年、年度初めに年間計画を立案して、すべての従業員を対象に業務に即した研修を実施している。研修テーマは、「品質管理」や「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」、「パソコン」等多岐にわたり、事業場ごとに行う作業が異なることから、研修テーマも事業場ごとに設定している。なお、研修は、テーマによって必須研修と任意研修に分かれている。実施スケジュールは事業場ごとに定め、同一事業場で複数回開催することで、勤務時間の短いパディでも参加しやすいよう配慮している。研修受講後には報告書の提出を求めており、「学校を卒業して以来となる研修は嫌だったが、受けてみて非常に有意義だった」等、パディからも高く評価する声が出ている。報告書を通じて寄せられた意見は、次回以降の研修計画に反映させている。

2015年度からは、正社員からパディまですべての従業員が受講する全体研修として、「コミュニケーション研修」と「ビジネスマナー研修」を開催している。どちらも一日かけて行う研修であり、2016年度までの2年間で全従業員が参加する計画である。目的は、正社員もパディも、顧客に対して同じレベルのマナーや礼儀をもって対応できるようになることである。ホテルに会場を借りて、1回につき100名~160名が参加する大規模な研修であり、グループワークやロールプレイも取り入れた参加型となっている。研修の後には、懇親会を開催し、正社員やパディといった区別なく、交流を深める機会となっている。

この他にも、全従業員を対象とした研修として、安全衛生委員会が毎年自転車講習を企画している。また、プライバシーマーク委員会が、毎年プライバシーマーク制度(個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者等に対する認定制度)の定期教育を実施するなど、教育研修の機会を豊富に設けている。

正社員・契約社員へとステップアップできる転換制度

パディから契約社員、また、契約社員を経て正社員へとステップアップできる転換制度が設けられている。正社員及び契約社員への転換は本人の希望に基づいて進められるが、要件として、①過去2年間の勤務成績が優良であると上司が判断していること、②正社員あるいは契約社員と同様の勤務時間で勤務することが可能であること、③所属長の推薦を受けていることを設けている。その上で、契約社員には、社長及び執行役員が昇格を承認した場合、正社員には、昇格試験としての小論文試験と社長及び執行役員による面接試験に合格した場合に転換することができる。

転換は、原則として毎年1月に実施される。2016年1月には、契約社員へ転換した者が2名、契約社員を経て正社員へ転換した者が1名おり、近年はほぼこのペースで転換が実施されている。パディの大部分が主婦であり、勤務時間の都合上、転換を希望する者は少ない。半面、希望すれば、多くの場合転換が実現している。1991年~2016年までの間に、契約社員への転換は20名、正社員への転換は11名の実績がある。

なお、2017年1月1日付けの転換者から、転換の仕組みが変更される予定となっている。転換の対象は従来と変わらないが、契約社員への転換は、社長及び執行役員の承認に代えて、執行役員及び所属長の承認をもって認められることとなる。また、正社員への転換の場合、昇格試験は小論文試験のみとなり、面接試験はなく、執行役員及び所属長の承認をもって認められることとなる。

本人の希望に基づいて、パディのまま無期雇用に転換する制度も設けており、転換の条件は、所属長の推薦と執行役員による承認である。これまでに10名超の転換実績がある。

いずれの転換制度も、入社時に就業規則について説明する際や、人事評価をフィードバックする面談で説明している。特に優秀なパディに対しては、上司や同僚が積極的に転換を促す場合もあり、職場の風土として、パディのキャリアアップを後押ししていこうとする雰囲気がある。その一方で、パディの中には配偶者控除が受けられる、扶養の範囲内で働くことを希望する者も多くおり、これを外れてしまう転換制度に関しては、さらに積極的に周知していく必要があると感じている。具体的には、パディの子どもが中学生になるタイミング等を見計らって、優秀なパディに声を掛けるようにしている。

コミュニケーション機会の確保と働きやすさ向上のための細やかな取組

すべてのパディに対して、入社後1か月が経過した時点でアンケートを実施している。アンケートは、「入社して良かったと思うこと」、「困っていることや戸惑っていること」等、15の質問から構成されている。アンケートの結果は、人事担当等限られた者だけが見られる仕組みとしており、これにより上長には直接伝えづらい悩みや不満も把握できるようになっている。アンケートの回答から職場環境に課題があると考えられる場合には、回答者の名前は伏せた上で人事が事業場へ問い合わせて、課題の解決を図っている。この他、年1回の評価及び時給改定時にも必ず個人面談を実施し、現況把握を行っている。正社員に対しては、入社後3か月経過時と1年経過時に同様のアンケートを実施している。

また、数年に一度、人事担当がパディを含むすべての従業員に直接ヒアリングを実施している。1名につき15分程度をかけて様々な要望を聞く機会としており、受け付けた要望は上長へフィードバックして、職場環境の改善につなげている。パディからあがる要望には、「冷蔵庫が小さい」といった細かなことから、「設備のレイアウトを変更してほしい」という大がかりなものまで様々あるが、そうした要望の一つひとつを直接人事担当が拾い上げて、改善を図っていくことで、個々のパディがより活躍しやすい職場環境の実現へとつなげている。

さらに、事業場ごとに、月初めに30分程度かけて、パディも含めた全従業員が参加する全体朝礼を実施している。会長、社長及び執行役員が毎月交代で出席し、会社としての方針を伝え、業務状況等の情報を共有する場として重視している。また、会社の方針や最新の様々な情報をタイムリーに伝えることで、所属意識や一体感を醸成することにつなげている。

その他にも、採用後の時給や勤務体系等の諸条件を採用面接時に必ず説明するとともに、入社直後にはオリエンテーションを実施し、労働条件の確認や就業規則の説明、プライバシーマーク保持に伴う遵守事項の説明等を行っている。こうした機会を設けることが、就業に対する様々な不安を払拭することにつながっており、入社1か月後のアンケートでも評価が高い。また、採用面接時には、パディが希望する勤務条件を詳しく確認した上で採用し、希望に合わせて確実に勤務日時を設定することや、子どもの体調不良等により勤務当日の朝に休暇の申出があった場合には、正社員の応援や事業場間の人手のやり繰りで現場に負荷がかからないようにしている。こうした細やかな対応を行うことで、パディにとって働きやすい職場となる工夫をしている。特に、保育園や学校と常に連絡が取れるよう、勤務中も携帯電話を持つことを認めていることは、パディの間でも評判が高い。

入社1ヶ月アンケート

充実した福利厚生制度や仕事と家庭の両立支援制度

パディも正社員と同様に福利厚生施設を利用できるようになっており、自社所有リゾート施設等を正社員と同じ条件で利用することができる。また、労災の上乗せとしての見舞金制度があり、入院時と通院時の支給額は正社員と同額である。

さらに、パディと正社員がコミュニケーションを深められるよう、部署ごとに忘年会あるいは新年会を積極的に行うようにしている。開催する際には、パディ1名につき3千円を会社が補助しており、これはパディに対してのみ行われている補助制度である。子どもが小さいために参加できないといった場合を除いて、9割以上のパディが出席しており、従業員間の親睦を深める貴重な機会となっている。

また、月初めの全体朝礼の際、その月に誕生日を迎えるパディに対して、会長、社長及び執行役員が声を掛け手渡しでプレゼントを贈っており、日頃接点の少ない会長等とパディがコミュニケーションを取るための貴重な機会にもなっている。なお、正社員の場合には、社長との食事会の場で社長から誕生日プレゼントを手渡しているが、主婦が中心となるパディの場合には、夜の食事会に出席するのは難しいことから、全体朝礼で渡すこととしている。

仕事と家庭の両立支援に関しては、法定通りの育児休業制度、介護休業制度を正社員と同じ条件で利用することができる。入社時の就業規則説明の際に必ず説明しているため、パディの間では十分に認知されており、特に育児休業に関しては、常時4名~5名のパディが取得している。取得者のほぼ100%が休業後には復職している。

また、パディに対しても私傷病時等の休職制度があり、正社員と同様に勤続1年以上の場合に対象となり、最長1年間休職することができる。休職期間中は無給だが、私傷病の場合でも在籍のまま療養に専念できる安心感があり、パディにも利用者がいる。

希望者には定年後の再雇用を実施

パディの定年は65歳としているが、定年後も勤務を希望する者については、健康状態や勤務状況等を考慮の上で再雇用している。定年後も再雇用を希望するパディが大多数であり、過去3年間に定年を迎えたパディ20名のうち、全員が再雇用を希望し、会社も受け入れている。また、一度退職して同社を離れたパディに対しても、再雇用を望んだ場合には状況に応じて受け入れている。なお、正社員に対しても定年後再雇用の制度を実施しており、再雇用時の雇用形態は本人との相談によって決めている。

60歳以上が全従業員の1割以上に上るなど高齢者は以前より増えており、一方でパディの主な業務が立ち仕事であることから、定年を前に辞めていくパディもいる。しかしながら、現在は再雇用で活躍している同僚の姿を見て、自身も再雇用を希望するといったケースが以前より増えている。例えば、現在の最高齢パディは76歳の工業用ミシンの担当者で、修理技術を駆使して洗濯ネームを縫い付けるなど現役のスペシャリストとして活躍している。こうした、熟練した技能を持つ高齢のパディの活躍は、他のパディにとっても模範となっており、会社として彼らの活躍を後押しすることの効果は大きい。

健康の維持・増進への積極的な取組

法定上は検診対象とならない者も含めて、すべてのパディが、会社が費用を負担して健康診断を受診することができ、パディの95%が受診している。健康診断に併せて、産業医による「健康セミナー」を各事業場で実施しており、パディを含むすべての希望する従業員が出席できる。30分程度のセミナーで、多くの事業場でほぼすべてのパディが出席している。以前は、自身の健康診断結果を見ても、それが意味することが分からないというパディが多かったが、「健康セミナー」開催の効果もあり、現在では二次検査の受診率も、100%に近い水準になっている。

熱中症対策の一環として、各事業場には無料の給水機を設置し自由に利用できるようにしている。夏場には作業場の気温が高温になる場合もあり、会社として積極的な水分補給を奨励している。その他にも、作業効率の向上と安全衛生上の配慮から、休憩は昼休みの1時間に加えて、午後にも15分設けている。軽作業に当たるパディが、常に健康に働けるよう配慮している。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

取組のきっかけが、「職場としての魅力を高めて人材確保につなげたい」ということにあったこともあり、パディ自身の意見や希望を把握し、取り入れることを重要視して取り組んできた。例えば、人事担当によるヒアリングは、担当者が一人で10か月以上をかけてすべてのパディと面談して行い、その過程で把握した意見や要望には一つひとつ対応してきた。その他にも、パディは業務上チームワークが重要となるため、リーダーのような役割やランク付けはあえて設定しないこととしている。実際に職場で働くパディの声に耳を傾け、その一つひとつを実現につなげていくことで着実にパディが活躍しやすい環境を整えてきたことが、同社の取組の特徴となっている。

取組の過程では正社員の協力が欠かせなかった。例えば、勤務日の朝の急な欠勤連絡にも、正社員が事業場間の人手のやり繰りをし、また、時には正社員を応援に派遣することで、現場にしわ寄せが出ず、安心してパディが休暇を申し出ることのできる体制をとっている。人事や管理部門だけでなく、各職場でパディとともに働く正社員の理解と協力があることは、取組を続ける上で必要不可欠な要素となっている。

5. 取組の効果と今後の見通し

同社のCS(顧客満足度)委員会では、2010年から取引先企業を対象として、同社に対する満足度の調査を毎年実施してきた。この結果を見ると、2010年には10点満点のうち平均8.1点だったのに対し、2015年には8.5点まで改善している。評価されたポイントとしては作業の正確性とスピード、メールや電話での応対の仕方や来社時の挨拶等が挙げられ、礼儀に関しては、以前に比べて良くなったと社外から直接人事担当へ意見が寄せられたこともある。これは、会社としてパディへの教育機会を拡大し、フィードバックと動機付けの仕組みをもつ評価制度の運用により個々のパディの能力や意欲が高まった結果だといえる。また、その効果は業績にも表れてきている。具体的には、2014年10月~2015年9月までの1年間に、対前年度比で、人件費率がマイナス1.2%、営業利益率はプラス2.2%となっている。

さらに、パディの活躍を推進する様々な取組の結果、働きやすい職場との認識につながり、現在勤めるパディからの紹介による勤務希望者が増えている。同社では、紹介されて入社したパディが一定の勤務条件で3か月以上勤務すると、紹介したパディに最大5万円の紹介手当が支給される紹介制度を就業規則に定めている。2009年10月~2010年9月にかけての1年間に紹介制度で入社したパディが5名であったのに対し、2014年10月~2015年9月までの1年間では21名に増加している。加えて、通常の募集広告に対する反響も増えており、採用増につながっている。パディの採用数は、2013年10月から2014年9月までの1年間に93名であったのに対して、2014年10月~2015年9月までの1年間では、175名となっている。募集枠そのものを大きくしたという事実はあるが、広告の回数を減らしたにもかかわらず、応募者が増加しており、様々な取組の結果、職場としての魅力が高まり、そのことが地域における評判の向上につながったためではないかと考えられる。

人材確保という点でも奏功しており、パディの定着率は徐々に向上している。例えば、2010年には11名であった永年勤続表彰の対象者数が、2015年には24名まで増加している。面談等の機会に人事担当がパディと話をしていても、「以前よりも職場環境が良くなった」、「この職場が好きだからこの先も長く勤めていきたい」といった声を聞く機会が増え、様々な取組の結果、パディにとって働きやすい環境が実現しつつあることを実感している。

一方で、現在も退職していくパディはおり、その理由としては「もっと時給の良い職場で働きたい」という点を挙げられることが多い。今後は、時給の見直しも含めて、待遇全体の底上げを図っていきたいと考えている。

正社員や契約社員への転換制度に関しては、上司や同僚の評価では転換候補となるものの、本人が家庭の都合で望まないケースも多いため、今後は、定期的な家族状況の把握も含め、あらかじめ計画的に意識付けを図ることが重要だと考えている。

最近ではダブルワークを希望するパディが増えてきているため、兼業している仕事がどのような内容かを把握し、同社での仕事に支障がないか、また、パディ本人に負担がかかりすぎていないかを確認するなどの注意が必要となっている。

従業員の声

パディから契約社員、正社員へと短期間にステップアップ
今後はシステム設計にチャレンジしたい(湾岸事業場勤務、事務、勤続4年)

2012年にパディとして入社し、2014年に契約社員に、さらに2016年1月に正社員に転換した。パディとして働いていた頃は商品の入荷や検品、出荷といった作業が中心であったが、正社員となった現在は事務を担っている。

前職もパートタイム労働者であったが、この会社は正社員とパディがコミュニケーションを取りやすい職場だと感じている。例えば、作業過程で分からないことがあっても、周囲に尋ねるとすぐに答えてもらえるため、入社した当初から働きやすさを感じていた。また、契約社員や正社員への転換に当たっても、上司や同僚を始め、周囲から声を掛けられたことが後押しになった。

契約社員になった当初は、パディとして働いていた頃と比べて、電話による顧客対応が増え、また、不良品が出た際に限られた時間の中で対応しなければならないなど戸惑うこともあったが、周囲のサポートもあり、時間とともに慣れていった。正社員となった現在は、担当するブランドに関する問合せにすぐに対応できるようになったことにやりがいや楽しさを感じている。また、後輩の指導にも当たるなど、より責任ある立場となり、仕事に対して一層の充実感を得ている。職場を離れても、休日に店舗で自身のかかわった商品を手に取ると、自分の仕事が社会に役立っていることが実感できてうれしく思っている。

今後も、応援してくれる周囲のためにも、スキルアップに努めていきたい。特に、パソコンの扱いに慣れていることもあり、入荷や出荷のシステムの再設計にチャレンジしてみたい。

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