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イオン九州株式会社

平成28年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成28年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用均等・児童家庭局長奨励賞)

キャリアアップや働き方を選択できる人事制度に改め、計画的な教育システムを整備し、パートタイム労働者の多様な働き方を実現。人事評価や資格取得による加給も実施

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 福岡県 業種 小売業
従業員数 16,653名 パート労働者数 13,485名
事業概要 総合スーパー、医薬品販売、ホームセンター、自転車専門店の経営
ポイント
  • パートタイム労働者が本人の意向や業務遂行レベルに合わせて職位をステップアップできる人事制度に見直し。正社員登用までの道筋も整備し、パートタイム労働者のキャリアアップを実現。
  • 職位ごとに評価表を整備し、本人と上長による評価を実施。評価は昇給や賞与に反映。
  • パートタイム労働者に対して計画的な教育・育成システムを整備。現場OJT、段階を踏んだ教育の実施により、基本的な心構えから専門知識までを習得。
  • 各種資格取得を支援し、資格取得者には正社員と同額の手当を支給。

審査委員はここを評価

短時間労働者の多様な就業ニーズに対応した人事制度を導入し、定期的な面談の実施等により、自発的なキャリア開発を無理なく促しています。認知症サポーター始め多様な資格制度も充実しています。

1. 企業概要・人員構造

同社は1972年、福岡ジャスコ株式会社として創業した。2003年、商号をイオン九州株式会社へ変更し、総合スーパーとして九州各地に170店舗を展開している。食料品、衣料品、住居関連商品、医薬品等を取り扱う総合スーパーの他、ドラッグストア、ホームセンター、自転車専門店を経営している。

パートタイム労働者13,485名のうち、店舗で主力となるのは「コミュニティ社員」であり、時給制のパートタイム勤務と日給月給制のフルタイム勤務がある。パートタイム勤務であるコミュニティ社員は約10,000名である。他に、「スクールアルバイト」と呼ばれる学生アルバイトが約700名、65歳以上の「シニアアルバイト」が約970名(いずれも週20時間未満が主)、数週間から2か月程度の期間限定で採用する「シーズンアルバイト」が約850名(2か月以上の雇用になるとコミュニティ社員へ転換)、平日の短時間勤務のみ(1日4時間)の「レギュラーアルバイト」が約150名となっている。

また、コミュニティ社員の中には、一般的な業務に従事する者の他に、薬剤師等の専門技術を持つ「エキスパート」約50名が含まれる。パートタイム労働者のほとんどが近隣に在住しており、50代の子育てが一段落した主婦層が約6割を占めている。

コミュニティ社員の約8割が店舗に勤務している。店舗勤務のコミュニティ社員の6割が食品担当、2割が生活用品担当、残り2割が衣料品を担当している。コミュニティ社員の定年は65歳で、それ以降はシニアアルバイトとして再雇用しており、70歳まで働く者が多い。

なお、正社員は1日8時間の週40時間勤務であり、他に地域限定・1年契約のフルタイム勤務の契約社員(技術職)がいる。

2. 取組の背景とねらい

従来の人事制度では、パートタイム労働者に、勤務年数に応じた昇格試験の受験とランクアップを義務付けていた。しかしながら、パートタイム労働者から「ランクアップするのではなく、現在の職位のまま業務に専念したい」、「今の職場で業務を続け、専門技術に磨きをかけていきたい」といった声が聞かれた。また、昇格試験は筆記試験が必須であったため、実務は得意でも筆記試験が負担となり、昇格試験を辞退するパートタイム労働者も多かった。

そこで同社は、パートタイム労働者の多様な働き方を実現させるべく、2014年8月から、新たな人事制度を始動した。キャリアアップしたい者が昇格しやすくなる一方で、「昇格せずに現場で働き続けたい」、「昇格するのではなく専門知識を深めたい」といった希望も尊重し、評価できるようにした。

人事評価の項目を見直し、「お客さま満足につながる実務とスキル」と「チームとしてのがんばり」も評価することにした。賃金は、毎回の評価ごとにリセットされる「評価給」から、積み上げ式の「能力給」へと移行した。

また、社内外の資格取得者は、登用試験における筆記試験を免除し、昇格試験(面接試験のみ)にチャレンジしやすくした。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

正社員と同様の昇格試験を受け、ステップアップできる仕組みを用意

同社のコミュニティ社員の大部分を占めるのが、半年間の雇用契約で時給制、希望の時間帯にパートタイムで勤務をする、「C1」「C2」資格のコミュニティ社員である。

コミュニティ社員は、職責や契約期間、勤務時間や勤務場所によって全部で7段階の資格がある。

コミュニティ社員の区分と資格

資格 人数 給与・
契約
期間等
職責 詳細
C1 8,300 半年契約・時給制・
パートタイム勤務
  • 決められたルール・マニュアルに基づき、上司の指示の下、業務が遂行できる
  • 2年目以降も、希望すればC1のまま働き続けられる
  • 2年目以降のC1は、年1回の人事評価を実施、昇給あり
C2 2,000
  • チームメンバーへの教育・指導ができる
  • チーム内の補佐業務とお客さま対応ができる
  • 年2回人事評価を実施、昇給あり
  • 賞与支給
エキスパート 50
  • 業務に必要な公的資格、専門知識、専門技術を有し、該当部署で専門スキルを発揮する
J2 400 一年契約・日給月給制・フルタイム勤務
  • 実務に強い売場販売主任、実務に精通している
  • 販売主任代行、販売主任、売場担当、スタッフに該当
日給月給で働く場合
【要件】
  • 年間勤務時間1984時間
  • 指定の時間で勤務可能であること
  • 転居を伴わない異動あり
【制度】
  • 長期休暇制度あり
  • 育児短時間勤務等、ライフステージに合わせた働き方が可能
  • J3以上は、正社員転換試験の対象者
  • 社員と同様の教育・研修を受講
  • 家族手当あり
  • 年収ベースで正社員の約85%
  • 賞与支給対象
正社員転換対象 J3 10
M1 22
  • 課題形成のためのスペシャリティ・マネジメント力を発揮できる
  • バイヤー、本社スタッフ、中小型店店長、店次長、販売課長に該当
M2 2
M3 3

コミュニティ社員は、試験を受け、「C1」→「C2」→「J2」→「J3」→「M1」と昇格していく。「J2」への昇格試験からはコミュニティ社員と正社員で共通の試験内容、資格になるが、それ以前は別々の資格となっている。例えば高卒の正社員は入社後すぐに「社員1級」という資格になり、昇格試験を受けて「社員2級」→「J1」→「J2」と昇格していく。

C1からC2への昇格を希望する場合には、イオンスタディ・ベーシックの修了が要件であるが、各店舗により登用基準が異なり、店舗ごとの裁量に任されている。希望者は、1次試験として筆記試験を受験する。試験は年1回実施される。社内外のイオンベビーアドバイザーや寿司マスター、DIYアドバイザー等の資格を取得している者については、筆記試験を免除している。

1次試験合格者はエリア単位で行われる面接を受ける。面接では主に今後のキャリアビジョン等について聞いている。面接後合否を決定し、毎年2月21日に登用している。J2以上の昇格は、試験及び面接は人事教育部が実施し、合否を決定する。毎年20名~30名が日給月給制のコミュニティ社員(J2)に新たに登用されており、現在総計477名が日給月給制のコミュニティ社員として活躍している。このうち171名が主任、4名が課長に昇格している。

時給制のコミュニティ社員がJ2、J3の資格になった場合、日給月給制へ区分変更することも可能となる。日給月給制への区分変更を希望する者は、「区分変更申込書」を上長に提出し、年1回の登用試験を受験する。各試験の受験要件は、①指定の時間で勤務可能であること、②指定の社内研修を受講していること、③指定のテーマでレポートを提出していることの3つである。

正社員転換試験を整備し、J3以上のコミュニティ社員が受験可能

さらに2008年から、日給月給制のコミュニティ社員から正社員へ転換する正社員登用制度を整備した。

正社員への登用は、J3以上のコミュニティ社員が対象である。要件を満たした希望者は、エントリーシートと所定のレポートを店長等に提出し、人事教育部実施の登用試験を受験する。試験の内容は、一次試験としてWEB上の適性検査と知的能力検査を受験し、最終試験が面接である。2015年の受験者のうち4名を正社員に登用した。これまで正社員に登用した者は、総計19名である。

登用試験には何度でもチャレンジが可能だが、不合格の場合は、結果を本人にフィードバックし、次回の参考にしてもらっている。複数回連続して不合格になっている者には、上長が指導を行っている。登用制度は各店舗の社員用掲示板に貼り出す他、社内のイントラサイトやメールで周知している。

年2回の評価を実施し、能力給と賞与に反映

2年以上勤務しているコミュニティ社員全員に対して、C1は年1回、C2は年2回の人事評価を実施している。

C1のコミュニティ社員は「C1評価表」を用いて、同社のマニュアルやルールに基づいた行動の実施度を評価する。C2のコミュニティ社員は、C1の評価項目に加え「C2評価表」で役割に応じた行動を評価する。

評価表は業務ごとに約11種類あり、評価対象者がA~Dの自己評価を記入した後、上長がA~Dを付ける一次評価(直属の上司)と二次評価(直属上司の上長)を行い、評価を決定する。評価後は、上長が約30分の面談を実施し、結果をフィードバックしている。

C2評価表(イメージ)

時給制のコミュニティ社員の賃金は、資格給、地域給、部門給(特定部門のみ)、能力給で構成されており、前者3つは一律であるが、能力給は人事評価の評価結果を反映して決定している。ただし能力給は、評価によっては減額もあり得るが、能力給が0円未満になることはない。例えば、B評価(+5円)の者が翌年以降、2年連続でD評価となっても、能力給は0円のままである。

C2の場合は、賞与(年2回)にも反映する。賞与計算式は、「賞与単価」×「実労働時間」×「考課乗率」であり、考課乗率に評価結果を反映している。

賃金のイメージ

考課ランクと能力給のイメージ

考課ランク A B C D
考課点 80以上 79~60 59~40 39以下
能力給(昇給) 10円 5円 0円 -5円

なお、日給月給制のフルタイムのコミュニティ社員の場合は、資格に応じて社員と同じ評価表を使用し、それぞれ設定した目標の達成度を評価する。評価結果は賞与(年2回)に反映している。制度を別にしているのは、パートタイムのコミュニティ社員については業務遂行を、フルタイムのコミュニティ社員については目標に対する成果を評価のポイントとしているためである。フルタイムのコミュニティ社員で、J2以上の者は、正社員の資格と対応させ、評価の方法、基本給の設定、昇給の上がり幅、職位の昇格試験内容等を正社員と共通のものとし、課長や主任への役職登用の対象にもなる。フルタイムのコミュニティ社員へ転換することで、よりキャリアアップの道が広がるような仕組みにしている。

表彰制度「ありがとう大賞」を実施し、モチベーション向上につなげる

同社では毎年、お客さまからお褒めの言葉をいただいた者や、地域活動や社会貢献活動等をしている者を「ありがとう大賞」として表彰している。イオンで働いている全員が対象となり、正社員やコミュニティ社員の他、直接雇用ではない警備員や清掃員等も含まれる。

各店舗の「ご意見承りBOX」に投函された「ご意見承りカード」や、お客さまからのお褒めの声の中から、社長とお客さまサービス部門の役員が大賞を選定する。2015年度は32名が受賞し、うち28名がコミュニティ社員であった。表彰式では表彰状と記念品を授与し、役員と会食をする。毎年、表彰者の写真とコメントを掲載する「ありがとう大賞」という冊子を作成する他、社内報でも表彰者を紹介している。表彰式の模様はDVDに撮影して、受賞者に配布している。

他にも2013年より、イオン九州独自の「チェックアウトサービスコンクール」も実施している(年1回)。チェッカー業務担当者のスピードや正確さ、サービスレベルを競うコンクールである。店舗代表を選出し、事業部代表を選び、本選(本社研修室)に出場する。最優秀賞と、優秀賞を選定するが、受賞者の約8割がコミュニティ社員である。

各種の教育制度を整備し、正社員と同様の教育・研修を実施

同社では、社員の学びを重要視し、階層別教育と職位別教育、実務訓練と機能別教育・自己啓発等の多様な教育プログラムを導入している。コミュニティ社員が入社すると、まずはOff-JTとして基礎教育を受けつつ、現場で先輩社員や上長のOJTを受ける。

Off-JTは、全社員を対象とした基礎教育の「イオンスタディ・ベーシック」と、C2とJ2のコミュニティ社員を対象とし、売場責任者代行を育成するための「イオンスタディ・ステップアップ」がある。これは正社員と同様の内容である。

イオンスタディ・ベーシックは、入社後10か月程度の技能であり、マスターしていない項目については上司のOJTを受ける。イオンスタディ・ベーシック修了後、C1にとどまるかC2を目指すか選択できる。さらに、各種アドバイザー教育を受講し、アドバイザー資格やマスター資格に挑戦することもできる。

また、全社員を対象に、認知症サポーターやサービス介助士といった資格の他、人権教育や行動規範研修、ISOや環境社会貢献といった機能別教育・自己啓発を実施している。特に認知症サポーターは、2013年度から福岡県とともに取組を始め、今は九州各県に徐々に広がっている。新店舗の開店時には、コミュニティ社員を含めた全員が同研修を受講し、受講者は名札にマークを付けることとしている。

J2以上の職位のコミュニティ社員は、正社員と同様の階層別教育として、動機付け教育(入社3年目の正社員と同様)、J2登用研修、J3候補者研修を実施する。他にもイオングループ共通の職位別教育として若手集合研修、コース別の各種研修を受講させる。

同社では、全社員に個人別ファイルを作成し、各種教育の受講履歴や業務遂行度を把握している。このファイルをもとに、面接等を通じて登用を目指すかなども含め本人の意向を確認し、受講すべき教育等を指示している。また、各種の研修は、電子掲示板や店舗内掲示板に掲示して全社員に周知している。

社内資格を設定し、社員と同様の教育で資格取得を支援する

同社では「アドバイザー」や「マスター」という社内資格を多数用意している(資格や研修資料はイオングループで共通、研修の運営や資格認定は同社で実施。また、DIYアドバイザー等の社外資格では同社独自で研修を実施するなど資格の取得を支援しているものもある)。

社内資格を取得するためには、研修を受講する必要がある。アドバイザーやマスターは、1年間の基礎知識研修(半年間毎月1回、本社またはエリアで終日の研修)と、さらに1年間の実践研修を受講する必要がある。その後、模擬訓練、面接と筆記試験を受け、合格した場合は認定証が交付される。

職務区分にかかわらず社内の資格を取得することができ、資格を取得した場合には、正社員と同額の手当を支給している。例えば、鮮魚士2級は2,000円、3級は1,000円を支給している。なお、時給制の者には時給換算し、時給単価に上乗せしている。

社内資格一覧

部署 社内アドバイザー資格(豊富な商品知識、販売技術を持つスペシャリスト)
食品 イオンリカーアドバイザー、イオンおさかなアドバイザー
衣料 イオンベビーアドバイザー、イオントラベルアドバイザー、
イオンファッションアドバイザー
住居、余暇 イオンペットケアアドバイザー、イオンビューティーアドバイザー、
イオンハンドクラフトアドバイザー
社内マスター資格(標準化された技術を持つ人材)
鮮魚士(2級、3級)、寿司マスター、農産マスター、ホットデリカマスター、グリナリーマスター、ガーデニングマスター

こうしたアドバイザーやサービス介助士等の資格保持者は、写真付きで各売場に掲示して、お客さまが専門知識を持つスタッフをすぐに分かるようにしている。

コミュニティ社員が能力を発揮できるよう「マイストア委員会」を導入

同社では2013年より、「マイストア委員会」というコミュニティ社員が主体のQC活動を導入している。店舗ごとに3グループ~4グループあり、お客さま満足への取組を実施したり、店舗の抱える課題の解決に取り組んだりしている。コミュニティ社員のレベルでは解決できない課題があれば、正社員が本社に持ち帰り、課題解決の支援を行う。

また、年1回の「ベストプラクティス発表会」を開催しており、マイストア委員会の活動で提案された好事例を発表している。2015年には、同社の穂波店が提案した「トップバリュ商品の拡販」がベストプラクティス賞を受賞した。これは、トップバリュ商品の試食やアンケートを実施し、約1500件のお客さまアンケート結果をトップバリュ商品開発会社に伝え、商品改善や販売手法改善に反映させたという取組である。同発表会での発表は、コミュニティ社員が行い、プレゼンテーション用の資料もコミュニティ社員が中心となって作成している。優秀な取組は、イオングループのベストプラクティス発表会で紹介される。

年2回の面談を通じて、昇格意向の確認や困っていること等を聞き出す

パートタイムで時給制のコミュニティ社員全員に、各店舗や本社で、年2回の雇用契約面談を実施している。コミュニティ社員との面談は本人と上長に加え、人事総務課長等の原則三者で行う。働き方の希望や将来の意向、取得したい社内外の資格を確認している。この他に面談では、有給休暇の希望、兼業の状況、扶養控除の範囲内で働きたいかなどの意向確認も行っている。このような面談を通じ、有給休暇も本人の意向に沿った取得ができている。

なお、フルタイムで日給月給制のコミュニティ社員についても、自己申告書を毎年提出させ、働き方等の意向を確認している。

また、短時間雇用管理者を設置し、コミュニティ社員の相談窓口になっている。さらに、全社員が利用できる通報制度があり、困った時には電話で相談できる体制を整えている。

社員と同様の育児休業制度を設定、コミュニティ社員も制度を利用

同社では、コミュニティ社員は、正社員と同様の育児・介護休業制度、育児短時間勤務制度を利用できる。育児休業は子が3歳まで、育児短時間勤務は子が中学校を卒業するまで利用でき、2016年9月時点で、42名のコミュニティ社員が育児休業を取得している。また、2014年からダイバーシティの取組を開始し、イクボス企業同盟にも参加し、ワーク・ライフ・バランスの実現を目指している。2016年には、同社は九州で初めての「えるぼし」に認定された他、「くるみん」の認定も受けている。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

同社では、パートタイム労働者の多様な働き方が実現できるよう、2014年からコミュニティ社員の人事制度を改めた。制度の改定についてはどのようにコミュニティ社員にやる気を高めてもらうかが課題であり、不満のあった昇格試験の内容について有資格者には筆記試験を免除することや、3段階あった職位を2段階に統合し「キャリアアップを目指す者」と「現時点の職位のまま専門性を高めていく者」双方の道を設けること等を盛り込んだ。しかし社内からは「筆記試験を免除することには不安がある」、「レベルが下がってしまうのではないか」といった懸念の声があり、従来の概念を変えていくことが大変であった。労働組合も交え、このままでは定着が進まないことを説明し、教育訓練の内容を整理することによってレベルを下げないようにすることや、教育訓練の成果を正社員への登用につなげていくこと等についても検討しながら、様々な社内での調整を行った。その結果、制度の導入後は現場からは不満の声は聞かれず、現場のコミュニティ社員からは「自分たちの頑張りを評価してくれて嬉しい」、「今の業務を評価してくれるから、やる気が湧く」等といった反応が出ている。

5. 取組の効果と今後の見通し

昇格試験を経てランクアップをしていくことが義務であった旧コミュニティ社員制度から、本人の意向によりキャリアアップの道を選べる現在の制度にしたことにより、これまで昇格試験対策に費やしてきたエネルギーを実務に反映させることができるようになり、コミュニティ社員一人ひとりが自らの持ち味を発揮し、多様な働き方ができるようになったと感じており、実際の登用にもつながりやすくなっている。

また、従来は正社員とは異なる教育・研修を実施していたが、正社員と同様の各種研修を計画的に実施することにより、コミュニティ社員のキャリアアップに対する意欲が向上している。資格取得が目指しやすくなったことから、アドバイザー等の資格受験者が増え、マスターの資格はほとんどのコミュニティ社員が取得している。その結果、資格取得者が現場で適切に指導をして作業を行うことができ、作業効率が上がった。また、これまでは正社員登用試験にエントリーする者は毎年約6名~7名であったが、2016年度は17名がエントリーした。正社員登用試験の合格者の大半が女性であり、意欲のある者が多いため、正社員転換後は役職に就くことも多くなり、結果的に女性の役職者も増えている。

マイストア委員会を導入した結果、業務改善や商品宣伝について、コミュニティ社員が主体的に考えるようになってきている。本部の指示を遂行するのみならず各店舗が地域の特性を活かした取組を考え、チャレンジしていくようになった。さらに、同委員会での取組がイオングループのベストプラクティス発表会で評価され、ベストプラクティス賞を受賞したことは、社内での反響も大きく、コミュニティ社員のモチベーション向上につながっている。

これらの結果、お客さまへのサービスレベルも向上し、「ご意見承りBOX」等を通じてお客さまから良い反応がもらえるようになった。自らの取組がお客さまの反応に表れるため、コミュニティ社員の仕事へのやりがいも増し、生産性数値も向上するという好循環が生まれている。2015年度の人時生産性は前年度より29.2円上昇し、2015年度の人時売上高は前年度より94円上昇した。

今後の課題は、コミュニティ社員のさらなる定着率の向上やより上位の職位を目指してもらう意識付けである。正社員がリードするだけでなく、コミュニティ社員がリードできるような風土づくりを目指し、いずれはコミュニティ社員のみで運営する店舗も考えていきたい。地域限定の正社員制度の導入も検討中である。

また、本社で実施する教育は、事情により通えない者もいる。公平性を期すために、場所の制限を受けない教育が実施できないか検討している。さらに、各資格の手当額も、難易度に合わせて見直していきたい。

「九州でNo.1の信頼される企業(お店)になる」ことを目指し、ここで働きたいと思う者を増やせるよう、コミュニティ社員の希望の働き方を実現できる取組を引き続き行っていきたい。

従業員の声

様々な業務を担当し、現在はサービスカウンター業務で活躍中
(店舗勤務、サービスカウンター業務担当、勤続13年)

以前は福祉業界に勤務していたが派遣社員としてイオンの店舗に勤務し、派遣契約終了後、時給制のコミュニティ社員として採用された。入社当初は食品レジを担当し、その後イートインコーナーを1年間担当、今年からサービスカウンターを担当している。現在の区分は日給月給制のコミュニティ社員(J2)である。クレーム対応を積極的に引き受けるなどの頑張りを店長が評価し、今では新たに在庫管理等の仕事を任されている。これまでは意識しなかった売上目標等も把握できるように努力している。

サービスカウンター業務は、まだまだ分からないことが多く、周囲の先輩や同僚に業務を指導してもらいながら、勉強中である。現在は特に担当したい業務や、キャリアアップへの意向は無いが、引き続き職場の仲間と楽しく、やりがいを持って働きたいと考えている。ゆくゆくは昇格し、他の店舗でも活躍できるようになりたい。


各種教育で指導方法を学んで昇格を目指し、水産部門で活躍中
(店舗勤務、水産担当、勤続8年)

当初は派遣社員としてイオンの店舗での水産業務を担当していた。魚を捌く専門技術を身につけたいと思い、技術を学べる環境の他社に一旦転職して専門技術を学び、しばらく勤務したのちに時給制のコミュニティ社員として同店に再び入社した。職務I(旧制度の職位。現在のC1に当たる)から入社後1年で職務IIとなり、翌年さらに職務III(現在のC2に当たる)に昇格した。入社以来、水産部門に従事し、現在の区分はJ3である。

積極的に昇格を目指し、J2とJ3の登用試験にチャレンジしたが、それぞれ1度は不合格になった。不合格になった際は、自らの真剣味が足りないと思い、必死に勉強し直して翌年の試験に備えた。努力の甲斐があり、翌年は合格を果たした。昇格すればするほど、できる業務が増えるため、やる気が湧いている。現在は、社内資格の鮮魚士2級も保持している。

後輩に指導する立場であるが、社内の教育や研修、特に登用研修で学んだ指導法や傾聴スキルは大いに役立っている。もともと教えることが好きなので、より分かりやすい指導ができるように、学びを深めたいと考えている。

業務の手が空いたら積極的に他の部門を手伝い、仲間とコミュニケーションを取るようにしている。将来的には様々な業務を覚えて、マネジメントに携われるようになりたいと思う。

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