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E社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(金融・保険業)より

勤務評価と等級制度で公平性を確保、自己申告書と個人面談で定期的に要望等を聴取

1.労働条件の明示、説明
3.教育訓練等の能力開発
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 非公開 業種 銀行業
従業員数 非公開 パート労働者数 約1割
ポイント
  • 勤務評価と等級制度により公平性を確保。
  • 自己申告書と個人面談で定期的に要望等を聴取。
  • 入行時からの教育訓練とフォローアップでスキルとモラルを向上。
  • 柔軟性のある段階的正行員転換制度。
  • ワークライフバランスを推進する年次有給休暇取得促進。

(1)企業概要・人員構造

同行は、設立から80年余りを数える金融機関である。

人員構造は、正行員とビジネススタッフに区分され、ビジネススタッフはパートタイマー(パートタイム労働者)と嘱託により構成される。パートタイマーは1日の所定労働時間を最長7時間までとし、嘱託は正行員と同じフルタイム勤務である。ビジネススタッフは圧倒的に女性が多く、パートタイマーは小学校就学前程度の子を持つ者が、嘱託はパートタイマーよりも年齢層の高い子を持ち、長い労働時間を確保しやすい者が多い。パートタイマーは、育児や家庭と両立しやすい就労や扶養配偶者範囲内の就労を希望する者など、その所定労働時間は様々であるが、1日5時間半程度の勤務時間とする者が多い。

パートタイマーと嘱託の職務内容は基本的に同じであるが、フルタイム勤務で働く嘱託には、正行員ほどではないが、仕事の完結を期待される程度が重くなっている。賃金制度は、時給制であるパートタイマーに対し嘱託は月給制であり時間単価がパートタイマーよりもいくぶん高くなる。人員比較では、パートタイマーと嘱託は同程度である。

パートタイマーは、主に支店の預金や為替窓口の受付業務や後方事務に係る職務に従事する。パートタイマーの職務内容は窓口での入出金業務や端末オペレーションなどの定型業務であるのに対し、正行員は定型業務に加えて非定型業務として個人ごとに営業目標が設定された投資信託や保険などの資産運用商品の販売、また、法人に対する融資の営業等にも携わる。

人事異動については、正行員は異動範囲に限定のない正行員と転居を伴わない異動のある地域限定正行員があるのに対し、パートタイマーは転居を伴わない異動がありうるが、その雇用実態を考慮して比較的近隣の店舗に配置されるよう配慮されている。

パートタイマーの契約期間は、1年間の有期雇用である。契約更新の可否判断は勤務評価により行われる。

社員区分と概要

(2)取組の背景

パートタイマーが有する能力を高め、その能力を十分に発揮すること、モチベーションの向上、納得性が高く公平性の確保された賃金制度や、やりがいに応える仕組みづくりが求められていた。また、家庭等との両立が図りやすく働き続けやすい職場環境構築のため、年次有給休暇を取得しやすい職場風土づくりを目指した。

(3)取組の内容

労働条件の丁寧な説明

採用時及び契約更新時には、所属長より雇入れ通知書をパートタイマーへ手交しており、併せて内容を説明している。異動がありうるため、雇入れ通知書には異動の可能性がある旨、記載されている。

勤務評価と等級制度により公平性を確保

パートタイマーに対して、毎年1回の勤務評価を実施している。これは、「お客様対応」「コンプライアンス」「改善努力」など8つの評価項目について、5段階で評価するものである。

パートタイマーは、3等級に区分されており、従事する等級ごとの具体的な職務遂行基準を定めている。勤務評価の実施は、その職務遂行基準に対し、期待するレベル水準の達成度合いを評価することとなる。

評価は、パートタイマーの自己評価の後、所属長評価により決定する。各項目の評価結果は点数化して総合得点を算出し、それを昇格・昇給に反映している。評価に際しては、後述する個人面談でパートタイマーからのヒアリングも行っている。

昇格は勤務評価の結果を考慮し、勤務年数などを加味して総合的な判断により決定する。一方、昇給は、勤務評価の結果に応じて予め定められている金額を上乗せすることにより行われる。

勤務評価と等級制度により、賃金制度に公平性を持たせつつパートタイマーのモチベーション向上を図っている。

自己申告書と個人面談で定期的に要望等を聴取

年に1度、担当異動希望や転換希望などを申告する自己申告書により、パートタイマーの細かな要望把握に努め人事に反映している。

また、半年に1度、所属長によるパートタイマーの個人面談を実施している。定期的にコミュニケーション機会を持つことで、仕事に対する助言や指導のほか、年収調整希望1、職場と職場以外も含む広範囲な悩みや不安等の聴取に努めている。

入行時からの教育訓練とフォローアップでスキルとモラルを向上

銀行業務を遂行するためには、コンプライアンスを遵守するとともに専門的な知識が求められる。そのため、入行時から定期的に教育訓練やフォローアップを行い、パートタイマーのスキルとモラルの向上に努めている。

まず入行時には、研修所においてコンプライアンス研修及びビジネスマナー研修を実施する。金融業務未経験者は、さらに銀行業務に関する教育を実施し具体的な職務内容の習得を支援する。支店においてはOJTが実施される。

入社1年後と5年後にはフォローアップ研修が実施される。研修では、モラルの向上と維持に重きが置かれ、また職務における不安や悩みを聴取・対応する目的がある。その他、定期的にテラー研修やロビーアシスタント研修等が研修所で実施されており、希望者は受講できる。

それぞれの研修の研修時間は、パートタイマーの事情を考慮して長時間にならないよう配慮されている。

また、金融商品販売資格取得時には奨励金を支給している。

柔軟性のある段階的正行員転換制度

同行では、パートタイマーから嘱託へ転換した後に正行員へ転換する、段階的転換が一般的となっている。制度上、パートタイマーから正行員への転換も可能であるが、職務内容や責任の程度、労働時間の長さなど労働環境の急激な変化を伴うため、嘱託を経た転換が多く希望されている。

パートタイマーから嘱託への転換は、本人が希望し、所属長の推薦、勤務評価や本部での面接内容から決定される。子どもが小さいためフルタイムで働けない者がパートタイマーとして就労し、子が大きくなると嘱託への転換を希望するケースが多い。

行員への転換は、本人が希望し、①証券外務員資格等金融商品販売資格を保有していること、②資格取得が一定水準以上であること、③所属長推薦があることを要件とし、勤務評価結果を考慮し面接を実施の上、選考される。

正行員転換は、事前に行内通達により全ビジネススタッフに周知して実施される。

1 扶養配偶者範囲内となるような就業調整の必要性の有無を問うもの

ワークライフバランスを推進する年次有給休暇取得促進

パートタイマーについても正行員と同様に、年次有給休暇の取得を促進しており、働き続けやすい環境整備を図っている。3日間の連続休暇のほか、入学式、授業参観等の学校行事への参加、ライフイベントのための休暇取得を促す4日間のファミリー休暇を制定するなど、年次有給休暇を取得しやすい職場風土づくりによりワークライフバランスを推進している。

(4)成果と課題

連続休暇とファミリー休暇の取得率はほぼ100%である。家庭の事情等により柔軟な働き方を求めるパートタイマーにとっては、年次有給休暇取得促進の取組は、定着化に一定の効果が上がっていると考えられる。

現在、出産や育児などで、やむを得ず退職する行員にアンケートを実施し、将来、パートタイマーなどでの復職希望を尋ねている。一定の要件を満たした元行員を嘱託で採用後正行員に転換する制度の運用と併せ、復帰を希望する元行員へ声掛けをするなど、より積極的に復職機会の拡大を推進していきたい。

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