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株式会社AOKI

平成28年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成28年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
優良賞(雇用均等・児童家庭局長優良賞)

目標に対する到達度等を評価し、その結果を昇給・賞与・報奨金に反映する仕組みを整備。計画的な研修と社内資格制度により販売員を育成するとともに、ライフスタイルに合わせた働き方への転換を推進するなど、働きがいを感じる職場環境の向上に取り組む

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
9.その他
所在地 神奈川県 業種 小売業
従業員数 5,760名 パート労働者数 2,980名
事業概要 紳士服・婦人服及びファッション商品の企画販売
ポイント
  • パートナー社員の基本給をエリア社員と同一水準に設定。販売員としての期待行動や販売目標に対する到達度を評価し、結果を昇給・賞与・報奨金に反映。
  • 社内資格制度を整備し、教育担当社員のサポートの下、正社員同様、パートナー社員を入社から短期間で販売員に育成。
  • 正社員への登用やライフスタイルに合わせた社員区分の転換に柔軟に対応できる制度を整備。有期の労働契約のエリア社員やパートナー社員を無期の労働契約に転換することで定着率向上を図る。
  • 組織や労働環境等について社外に相談できる窓口の整備やメンターの配置により、働きやすい職場環境づくりに取り組む。

審査委員はここを評価

勤務形態や勤務地による社員区分を設定し、短時間労働者も全員無期契約で安定的な育成等を可能にしている点が注目されます。待遇においても、働き方が不利にならないような工夫がみられます。

1. 企業概要・人員構造

同社は1958年に、当時は1着が大卒初任給に匹敵したスーツの価格を、ビジネスマンが日替わりで着用できる世の中にすることを目標に創業し、現在は北海道から鹿児島まで、全国に約700店舗を展開している紳士服(スーツ)専門店である。

同社では、正社員2,360名、エリア社員(勤務地が限定された正社員)420名、パートタイム労働者であるパートナー社員2,980名を雇用しており、各店舗には、店長以下2名~3名の正社員及びエリア社員と、4名~5名のパートナー社員が配置されている。

ほとんどのパートナー社員が店舗に所属する販売員であり、その約7割が、勤務店舗の近隣に居住して扶養の範囲内で働くことを希望する主婦層である。勤続年数は10年を超える者も多く、毎年40名ほどの者が60歳を迎えた後も勤務を続けている。

社員の雇用形態と人数

区分 正社員 エリア社員 パートナー社員
(パートタイム労働者)
契約形態 無期契約 ※1
給与形態 月給 時給
週の労働時間 40時間 37.5時間以下
勤務形態 時間と曜日のシフトあり 個別契約
勤務地要件 全国 エリア内
(通勤可能範囲)
店舗限定 ※2
職務変更・登用 あり なし
賞与 あり
退職金等 退職金 退職慰労金
人数 2,360名 420名 2,980名
内訳 1,610名 180名 330名
750名 240名 2,650名

※1 「契約形態」・・・エリア社員とパートナー社員(定年後の継続雇用者と繁忙時に雇用するアルバイトを除く)は2016年9月より有期労働契約から無期労働契約に変更(後述)。

※2 店舗が閉鎖される場合には、パートナー社員の住まいを考慮の上、近隣店舗への異動を検討し、本人に異動候補店舗と勤務条件を提示し、可能な限り他店舗への異動を実現できるよう配慮。

2015年度に、パートナー社員の区分に「コミュニティ社員」という区分けを設けた。「コミュニティ社員」は「パートナー社員」のうち、転居を伴わない転勤が可能な者で、「エリア社員」への登用も可能となる新たな社員の区分である。しかし、「コミュニティ社員」でも、勤務時間や曜日のシフトに対応が困難な社員がいることから2016年9月に制度を見直し、それぞれの勤務状況に応じて、「パートナー社員」、「エリア社員」に登用し直し、「コミュニティ社員」という区分を廃止した。これにより社員区分は「正社員」、「エリア社員」、「パートナー社員」の3区分となり、勤務形態と育成・役職への登用の仕方の違いによる明確な区分けとなった。

2. 取組の背景とねらい

同社の店舗で活躍する社員の半数以上がパートナー社員である。パートナー社員の一人ひとりがやりがいを持って接客・販売に従事し、長期間にわたって正社員と同様のパフォーマンスを発揮することができれば、会社の業績と従業員満足度の向上につながる。同社にとっても、パートナー社員にとっても働きがいのある人事制度を構築し、維持していくことは、企業として重要なテーマであると考え、取組を進めてきた。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

人事考課や販売成績を複合的に待遇に反映し、パートナー社員の挑戦意欲と働きがいの向上を目指す

仕事に必要な能力の習得状況や個人の努力の結果が業績として評価され、自身の待遇が向上することは、多くのパートナー社員にとって働きがいを維持するために重要な要素と考えている。そのため、仕事における基本行動、店舗及び会社の業績、個人の売上高等にかかわる期待レベルや予算額を明示して、その達成度を、昇給額、賞与額、報奨金として還元するシステムを複合的に設けている。昇給、賞与等の個別の制度の中で、パートナー社員の目標を分かりやすく掲げ、就業時間のハンディ等にも配慮した評価を行う各制度は、パートナー社員の活躍推進に大きく寄与していると考えている。

①基本給について、エリア社員と同じ賃金水準を実現

勤務地を居住地から通勤可能な範囲に限定しているエリア社員と、勤務店舗を限定して雇用契約を結んでいるパートナー社員には、育成方法に大きな違いはなく、給与も均衡待遇を図っている。このため、パートナー社員の初任給(時給)はエリア社員の初任給の時間換算額(初任給を所定内労働時間で除した額)に当てはめると同額になるように設定している。

また、その後の昇給額も、同一となるように(時給は5円単位としているため、切捨て・切上げによる差は生じる)設定している。

②販売員としての期待行動と目標に対する到達度を人事考課で評価して、毎年の昇給額に反映

パートナー社員の人事考課は2003年からスタートし、2012年からは現在の方法で年2回、上期(5月)と下期(10月)に実施している。職種ごとに定められたパートナー社員用の評価シートに基づいて、評価を行う。なお、正社員やエリア社員においても評価方法は基本的には同じだが、パートナー社員とは評価項目や評価点のウェイトが異なるため、別の評価シートを使用している。

評価の内容は、販売基本姿勢や基本業務遂行等の「行動評価」と、所属店舗の粗利益高や個人の販売成績等の「業績評価」で構成されている。「行動評価」の評価項目は、お客様に対する姿勢、本人の身だしなみ、報連相(ほうれんそう(報告・連絡・相談))、勤怠状況、コミュニケーション等の約20項目を設定し、それぞれに1点~4点を付与し、全項目の合計点数を「行動評価」の評価点としている。「業績評価」の評価項目は、店舗の生産性と個人の販売成績となっており、店舗の生産性は予算との差異を、個人の販売成績については全国の同一売上規模店の中でのランキングをポイント化して、「業績評価」の評価点としている。

人事考課では、接客態度やチームプレイ(例えば、ある社員が接客中に他の社員が効率良く片付けを行うなど)が結果として店舗全体の生産性に結び付くとの考えから、日頃の勤務態度が反映される「行動評価」を重視しているため、「業績評価」より「行動評価」のウェイトを高く設定している。一次評価は店長、二次評価はエリアマネージャーによって行われるが、その全項目の評価ポイントの合計点数に基づいて5段階の総合評価(A、B+、B、B-、C)が決まり、上期、下期の総合評価を基に年間評価(半期ごとの総合評価と同様の5段階評価)を決定して、翌年度の昇給額(数円~数十円程度)に反映している。いずれの評価も絶対評価としており、本人のやる気と実績が向上することによって、昇給額も高くなる仕組みとなっている。

さらに、エリアマネージャーが、定期的に人事考課のフィードバック面談を実施し、評価結果とともに翌年度の昇給額をパートナー社員に伝えている。面談の場を重要なコミュニケーションの機会と捉え、職場に対する改善提案のヒアリングも併せて行っており、面談のやり取りを報告書として人事部に提出することで、本人の申出に確実に対応するようにしている。また、被評価者本人もフィードバック面談に対する意識向上と実施の徹底を図るため、「面談実施報告」を人事部に提出している。

③会社と店舗の業績に応じて、年3回の賞与を支給

パートナー社員においても店舗の業績に応じた賞与(年2回、7月と12月)と会社の業績に応じた決算賞与(7月)が支給される。賞与は、社員区分ごとの支給基準に基づいて支給され、パートナー社員に対する支給額は、数千円~数万円の範囲となっている。

店舗の業績に応じたパートナー社員の賞与額(各期ごとに決定)

店舗予算達成率 95%未満 95~100%未満 100~105%未満 105~110%未満 110%以上
勤務時間 20時間以上 3,000円 5,000円 10,000円 20,000円 30,000円
20時間未満 2,000円 3,000円 6,000円 12,000円 15,000円

④店舗営業成績や個人販売成績に応じた様々な報奨金制度

2012年に導入した各種報奨金制度は、パートナー社員も対象としている。

特に「個人売上高報奨金制度」では、月ごとに販売目標額を細かく段階設定しており、同じ達成額であれば、パートナー社員の報奨金を正社員よりも高額にしている。これは、短時間で同じ成果を上げているパートナー社員が、より生産性が高いと評価しているためであり、パートナー社員が不公平感を覚えることがなく、挑戦意欲の向上につながる仕組みとしている。

さらに、直接販売に従事しない後方業務(裾上げ後のパンツと上着をセットするなど)を担当するパートナー社員にも業績還元ができる「月間業績評価制度」や、販売機会の少ないパートナー社員であっても本人の努力で報奨金が支給される「ファンド制度」があり、それぞれ月単位で集計された実績に基づいて算定された報奨金が翌月の給与に含めて支給されている(2015年度は毎月の平均で、パートナー社員を含む全社員の約47%がこれらの報奨金のいずれかを受給)。

販売報奨金制度

報奨金 内容 特徴
個人売上高報奨金制度 毎月の個人の売上高に応じて毎月支給 報奨金の還元率は正社員よりパートナー社員の方が高い
月間業績評価制度 月間の店舗の粗利高の目標達成率100%以上に達した場合に毎月支給 店舗に勤務する全社員に支給し、パートナー社員についても勤務時間に応じて支給
ファンド制度 重点商品やその時期のお勧め商品を販売するごとに毎月支給 例:重点商品1点ごとに50円~1,000円の範囲で支給

多彩な表彰制度で販売意欲を向上

モチベーション維持と向上のために、1990年代から表彰制度を実施している。現在は、販売成績や業務改善を対象とする表彰の他、感謝の手紙等でお客様からたくさん褒められた社員に対する「顧客満足大賞」、リピーターをたくさん作った社員に対する「固定客大賞」等、15種類以上の多彩な表彰が行われている。いずれも社員区分による違いはない。2015年度の受賞者は733名で、うちパートナー社員は111名となっており、各賞の受賞者の2割~3割がパートナー社員である。

また、パートナー社員のみを対象とする「人時(にんじ)生産性大賞」を設けており、時間当たりで高い販売実績を上げたパートナー社員が表彰されている。

中でも、年1回開催される「年間表彰式」では、社長や役員から直接表彰を行っている。特に優秀な表彰者については、表彰者本人と家族を旅行に招待する「家族報奨旅行」や海外の最新動向を学習する「海外学習会」に参加する機会が与えられている。制度を開始した2012年~2015年までの間、「家族報奨旅行」は各年2名~6名、「海外学習会」は2名~13名のパートナー社員が対象になっている。

このように、表彰式や報奨イベントに、受賞者のみならず、家族も招待することは、家族の会社に対する理解や本人の職場への帰属意識の醸成に役立っていると考える。

主な表彰制度(一覧表)

表彰名 表彰対象者
年間MVP大賞 コーディネイト大賞、個人売上高大賞、人時生産性大賞、固定客大賞、顧客満足大賞の全部門での総合成績が優秀な者
コーディネイト大賞 仕事、旅行、礼装、レディスの各商品を購入された方の客単価が優秀な者
個人売上高大賞 年間の個人売上高実績の優秀な者
人時生産性大賞 勤務時間1時間当たりの成績が優秀な者
固定客大賞 リピーターが1年間でたくさん増えた者、年間のリピーターのお買い上げ金額が大きい者
顧客満足大賞 はがきやメール、電話等でお客様相談室あてにお褒めをたくさん頂いた者
ベストプラクティス大賞 顧客満足や営業利益につながる改善提案を行った者
メルアド獲得大賞 メール会員の登録者数を多く獲得した者
ゾーンAJ推薦特別賞 各数字項目では表彰に至らなかったものの、各分野で優秀な成績を収めているなどの理由で、上長が推薦した者
A-1グランプリ大賞 全社の接客コンテストで優秀な成績を収めた者

表彰式

家族も招待して開催された受賞パーティー

スタイリスト制度で、全社員をプロの販売員として育成

スタイリスト制度は、パートナー社員を含むすべての新入社員に対し、採用から1年程度の期間で販売員に育成し、さらに高い挑戦意欲を与えるための制度である。「スタイリスト制度」は、商品知識やファッションコーディネート力を身につけた販売員に与えられる、店舗での接客販売の技術を認定する同社独自の社内資格である。現在、パートナー社員の約8割が、このライセンスを取得している。

ライセンス取得に向けては、手厚い学習システムが用意されている。まず、入社時には全員に「シルバーライセンス認定講座テキスト」が配布され、テキストを使用した自宅等での自習とともに、店舗の教育担当社員による学習指導が、入社から1か月の間に週2日のペースで行われる。また、その間の自習支援教材として、社内のイントラサイト内でのデモンストレーション動画によるテーブルワークの学習やe‐ラーニングによる各種確認テスト等知識の定着を図ることができるシステムも準備されており、パートナー社員も利用できる。

これらの初期教育と試験を想定した商品ピックアップ・テーブルワークのトレーニングを修了した者が挑戦できるライセンスの認定試験は、年1回~2回、筆記とテーブルワークにより行われ、合格者には「シルバースタイリスト」のライセンスと店頭で着用するバッジが与えられる。なお、合格後も毎年3回の学習会を受講し、筆記試験を受けて合格しないとライセンスを維持できない仕組みとなっている。

さらに、上位の資格として「ゴールドスタイリスト」ライセンスを設けている。「ゴールドスタイリスト」ライセンスの受験資格は、「シルバースタイリスト」認定者のうち、年間の個人売上高や顧客満足度等、いくつかの個人実績基準をクリアした者に与えられ、レポート提出、筆記試験、面接試験に合格し認定される。現在の認定者306名のうち、60名以上がパートナー社員である。

全員に配布される「シルバーライセンス認定講座用テキスト」

ファッション基礎セミナーを定期的に受講することで、販売力を維持・向上

シーズンごとに展開される新商品情報や世界のファッション動向等をタイムリーに学習できる集合研修として、地域ごとにパートナー社員を含むすべての社員を対象として年2回の「ファッション基礎セミナー」を開催している。2015年の受講者約6,000名のうち80%がパートナー社員であった。この研修は、お客様の満足度や販売成績の向上につながるものとして、社内でも高く評価されている。

「ギアチェンジパッケージ」により、パートナー社員から正社員等への転換推進

パートナー社員からエリア社員、エリア社員から正社員への登用を、同社では社員区分間での異動ができる「ギアチェンジパッケージ」として実施している。登用は、人事考課の際に、“期待通りの成果を出している”という評定の「B」以上を取得していることが条件で、この要件を満たした希望者は、地域を統括するエリアマネージャーと面談を行い、今後の希望や勤務条件(勤務地域の範囲や休日等の労働条件変更部分)の確認手続きを経て、エリア社員に登用される仕組みとなっている(2016年9月以降毎月数名)。

また、エリア社員から正社員への転換は、直近半期の評価がB(期待通り)以上であれば、本人の希望と店長の推薦に基づいて、エリアマネージャーによる面接試験を行い、正社員への転換を決定している(2015年度21名)。

「ギアチェンジパッケージ」は、介護・看護・育児・自己啓発等の事情等自身の状況に合わせて、ギアチェンジ適用申請により働き方を変更できる制度で、2014年から導入された。具体的には、正社員が地域限定のエリア社員や勤務時間を短縮したパートナー社員のような働き方を希望した場合に、現在の社員区分や職位を維持したまま、3年間を限度に、限定的な勤務を行うことができる制度である。仮に3年間が経過したのちに、元の正社員やエリア社員として勤務できない状況の場合も、働き方に見合った社員区分に変更し、就業が継続できる。さらに、その後状況が改善された場合は、元の区分へ戻ることもできる。前述のパートナー社員からエリア社員、エリア社員から正社員への登用もこのパッケージの一環として行われており、正社員、エリア社員、パートナー社員それぞれが双方向に転換可能な制度となっている。このため、すべての社員にとって、ライフサイクルの変化に応じて働き方を変えることができる、ワーク・ライフ・バランスを支援する制度となっている。

ギアチェンジパッケージ適用申請書(育児用イメージ)

業務改善提案制度の実施、労使委員会の開催により、職場の改善提案を活性化

日々の業務の中で改善したほうが良いと感じたことを本社へ提案できる制度として、「ベストプラクティス制度」がある。提案は、店舗から専用のウェブページを利用して投稿でき、事務局である本社の経営戦略室が提案内容に関係する部門に転送する。その後、提案が実際の業務に採用されたかの確認(採用の可否)や、提案者へのフィードバックといったフォローを経営戦略室が行っている。

提案が採用された場合は、想定される営業利益への貢献度に応じて500円~3,000円の賞金が提案者に贈られる。賞金は高額ではないが社員の関心は高く、パートナー社員も多くの提案を行っている。2015年度は全体で24,600件もの提案があり、43件が採用されて業務改善に結び付いている。提案者は、表彰制度の中で「ベストプラクティス賞」として表彰される。

また、毎月1回本社において、職場環境の改善を目的とした労使委員会が開催され、正社員、エリア社員、パートナー社員の各代表が参加し、職場からの要請や改善提案を受け、職場改善について意見交換を行う。就業規則の変更や人事制度の制定に関する検討もこの委員会で行われている。

相談窓口体制を刷新し、パートナー社員を含む全社員への就業支援を強化

同社では、社員相談窓口を社内と社外の両方に設けている。

仕事や生活に関する様々な悩み等を会社に知らせることなく安心して社外で相談できる「EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)サービス」を設け、その趣旨と利用方法を記載した「EAPカード」を、パートナー社員を含む全社員に配布している。EAPサービスでは、パートナー社員を含む全社員に対する定期的なストレスチェックも行っており、心身ともに健康で活躍できるような環境づくりに取り組んでいる。

社内の相談窓口としては、2015年に「PS研究推進室」を新設した。常時相談の受付ができるよう6名の専従スタッフを配置し、専用相談ウェブページを設置している。「PS」には、Partner SupportとPartner Satisfactionの両方の意味を込めており、パートナー社員を含む全社員を支え、満足度向上のための取組を行っている。また同室では、相談事例の必要性に応じて、上司に対する事情確認やコミュニケーション改善の指導も行っている。管理職向けの管理職相談窓口を同室に新設し、パートナー社員本人と正社員である上司が、ともに問題解決を早期に図れる体制を敷いている。その結果、離職する社員の減少がみられ、直近では熊本での地震災害時の社員のケアを早期に行えたことで、安定した店舗運営体制の早期復旧にも貢献できたと考えている。

さらに、全国20ゾーン(おおむね都道府県単位)ごとに、各2名のメンター(正社員またはエリア社員)を配置している(7割が女性)。メンターは、パートナー社員を含む新入社員の指導という本来の機能に加えて、現場により近い場所で仕事にかかわる相談対応や支援業務を担っている。

いずれのルートにおいてもパートナー社員からの相談は多く、年間200件を超える相談数の約半数を占めている。

パートナー社員の雇用期間の定めを廃止し、定着率と業績の向上を目指す

パートナー社員及びエリア社員の雇用契約は、1年契約で毎年4月の昇給に合わせて更新をしていたが、2016年9月から、定年後の継続雇用者と繁忙時に期間を定めて雇用するアルバイトを除いて、正社員と同じ期間の定めのない契約に変更した。また、エリア社員は、それまでは正社員とは異なる待遇であったが、正社員として位置付けられ、転居を伴う転勤がないこと等により、手当や賞与等の一部の待遇の差はあるものの、退職金の支給や休業制度が拡充されるなど、正社員の待遇と同等程度の水準になった。

このことは多くのパートナー社員にとって働くことへの安心感と会社への帰属意識が強まり、パートナー社員の定着率や業績の向上につながると考えている。

法定水準を上回る育児・介護休業制度で、育児と仕事の両立を支援

パートナー社員についても、正社員と同じく法定水準を超える2年間の育児休業を認めている。出産後は育児休業が100%利用されており、現在は約70名が育児休業を取得しているが、そのうち約30名はパートナー社員である。

また、育児休業後に利用できる時間短縮勤務についても、法定では3歳までとなっているが、小学校1年生の4月末まで取得することが可能となっている。

ジョブリターン制度で、一度離職した社員を積極的に受入れ

2015年に、一度退職した社員が5年以内に復職したいと希望すれば、元の社員区分で会社に戻ることができる「ジョブリターン制度」を導入した。この制度はパートナー社員にも適用され、導入から1年半が経過しているが、現在も月3名~4名程度のペースで復職しており、そのほとんどがパートナー社員である。人手不足に陥りやすい店舗にとって、「ジョブリターン制度」は、優秀な人材を確保する有益な手段となっている。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

同社では、諸制度を運用するに当たって、社員区分における違いを設ける積極的な理由がある場合を除き、パートナー社員を含む全社員に一律に適用している。さらに、個人売上高等の実績額や実績件数の評価に際しては、パートナー社員は就労時間が少ないことを配慮し、十分なアドバンテージを与えるなど、パートナー社員の挑戦意欲が喚起できる工夫を凝らしている。

5. 取組の効果と今後の見通し

店舗での販売の中核を担うパートナー社員の活躍により、2015年度は、前年度と比較して売上高101.2%、お客様単価103.9%と業績の向上につながった他、お客様からのお褒めのメールやはがきの件数も2015年度は対前年度比123.2%となっている。

「ギアチェンジパッケージ」や「ジョブリターン制度」を導入し、他の諸制度もできる限り社員区分を超えて適用することにより、パートナー社員を含む全社員が多様な働き方の下でのイコールパートナーとして位置付けられるようになった。また、個人の事情に合わせた柔軟な勤務形態を可能にしたこれらの取組は、雇用の継続性、安定性を高め、人材の定着にも大きな効果をもたらした。その結果、パートナー社員の平均勤続年数は2014年度の10.4年から2015年度は11.1年に伸びている。

さらに、2016年9月には、パートナー社員の雇用を期間の定めがない契約(無期雇用)に転換し、コミュニティ社員を廃止し、多くのコミュニティ社員をエリア社員に登用したことは、社員にとって仕事の安定につながり、活躍の場を拡大するものであった。それと同時に、同社にとっても、馴染みのお客様の顔が分かる販売員が地域密着型の店舗づくりに寄与し、支えるという体制が構築できた。パートナー社員の多くは、生活に根ざした体験や経験を持ち合わせた主婦層であるため、スーツ等の重衣料を扱う同社では、その経験に専門販売力が加わったパートナー社員の力は、一層大きく評価される。パートナー社員の正社員やエリア社員への積極的な登用は、人材の確保が困難な現在において、採用計画人数の達成に向けて優秀な人材の確保にも寄与している。

今後は、社員がやりがい、生きがいを持って長く安心して働ける職場環境づくりをさらに進め、パートナー社員の退職金制度等の待遇についても拡充を検討していきたい。

従業員の声

パートナー社員から「シルバースタイリスト」ライセンスを持つエリア社員にステップアップ
さらなるキャリアアップを目指す(店舗勤務、販売職、勤続2年6か月)

2014年3月に、6.5時間勤務するパートナー社員として現在の店舗に入社した。販売員としての経験がなくゼロからのスタートだったので、上司・先輩からのきめ細かな指導がありがたく、配布されたテキストで商品知識を順を追って習得することもできた。

販売員としての研修の機会は多く、エリア内の大型店に担当講師が来店して、季節の商品紹介やファッショントレンド等が学べる年2回の「商品知識勉強会」は、パートナー社員全員が参加できる。また、丸1日のカリキュラムで開催される「新人スタイリスト研修」には、新入社員として参加させてもらった。おかげで入社の翌年には「シルバーライセンス」を取得できて、一人前の販売員になることができた。

2016年4月には、フルタイム勤務で職務内容も広がるコミュニティ社員(旧社員区分)への転換を申請して、実現した。

さらに、本年9月、社員区分の制度変更が行われた際にエリア社員となることを勧められた。エリア社員となると近隣店舗への転勤もあり、フルタイム勤務となって時間と曜日のシフトにも応じなければならないが、生計主体者として大学と高校へ通う家族を支えていく状況にあるので、より一層仕事にウェイトを置く決心をして転換することを決めた。

エリア社員となった実感や覚悟はこれから沸いてくると思うが、当面の目標は、高い販売実績や多くの顧客を持つ者が受験できる社内資格、「ゴールドスタイリスト」の認定を得ることである。

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