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株式会社ケア21

平成28年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成28年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
最優良賞(厚生労働大臣賞)

正社員と共通の人事評価制度や昇給・賞与支給基準により均衡待遇を図るとともに、キャリアアップのための教育研修・資格取得支援を実施。パートタイム労働者の定着や満足度の向上、収益力強化も実現

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 大阪府 業種 福祉
従業員数 3,230名
※有期契約の短時間勤務のヘルパー除く
パート労働者数 599名
事業概要 訪問介護、訪問看護、居宅介護支援、施設介護、保育事業等その他福祉事業
ポイント
  • 「人は誰でも成長できる」という会社としての考え方の下、正社員とパートタイム労働者共通の人事評価制度により、社員区分にかかわらない人事評価を実施。その結果を昇給や賞与に反映。
  • 昇給や賞与の支給基準についても、正社員とパートタイム労働者で同一のものとしており、これにより均衡待遇を図っている。
  • スキルアップの意欲を後押しするため、資格取得費用補助や、資格取得後の時給アップの仕組みを導入。
  • コミュニケーション力向上等、多彩な研修を用意するとともに、動画配信等受講しやすい工夫も実施。
  • 社長自らが社員に対し、正社員比率を高めるという目標・メッセージを発信するなど、積極的に正社員転換を推進。
  • 早期離職を防止するため、チューター制度や定期的なフォローアップ研修で、社員一人ひとりの悩みや不安に対応。

審査委員はここを評価

正社員とパートタイム労働者に関して、共通の評価制度を適用するだけでなく、評価結果を同じ基準で昇給や賞与に反映させるなど、待遇の均等・均衡が行われています。能力開発機会も共通に提供し、正社員転換も積極的に取り組んでいます。

1. 企業概要・人員構造

同社は1993年に設立され学習塾を運営していたが、2000年より訪問介護事業を開始し、その後、介護付き有料老人ホーム、グループホーム、デイサービス等の施設介護事業、訪問看護事業、保育事業等幅広く医療・福祉関係の事業を展開し、運営している。現在は近畿圏、首都圏を中心に仙台から福岡まで全国約340か所の事業所を有している。

社員は、月給制の正社員と1年間の有期労働契約で時給制の労働者に大きく分かれている。時給制の労働者の職種は、介護職、看護職、事務職、調理補助、ドライバー、ケアマネージャー、清掃職等多岐にわたっており、労働時間も様々である。時給制の労働者には、労働時間が正社員と同じフルタイム勤務と、正社員より短い短時間勤務の2つのタイプがある。時給制の労働者は介護職に従事する者が最も多い。また、扶養の範囲内で働くことを希望する、子育て期が終わった女性が多い傾向にある。以下では時給制の労働者のうち短時間勤務の者をパートタイム労働者と呼ぶ。

なお、正社員及びパートタイム労働者の他に、訪問介護事業所においては有期契約で短時間勤務を含むヘルパーが約8,000名在籍しており、うち2,000名程度が毎月働いているが、今回の事例では取り上げない。

正社員とパートタイム労働者は、従事する職務内容自体に大きな違いはないが、正社員には判断や指示をすることが求められ、さらに、勤務地の変更やすべてのシフトに入ることが必要である。また、役職者は正社員が担っているといった違いがある。一方、パートタイム労働者のうち希望者は管理者と相談の上、夜勤がない、勤務地を限定するなどの配慮がなされている。

2. 取組の背景とねらい

社長は、創業時より、「社員の働き方は社員が自分で選択する」と社員に提言しており、社員の都合に合わせて労働時間を選べるような制度としている。

また、「人は誰でもいつからでも伸びる、年齢や性別も関係ない」という同社の考え方の下、パートタイム労働者も社員と同様に研修を行い、能力や貢献度等を評価している。研修等の各種教育訓練は、より質の高いサービスの提供を目指す重要な取組として位置付けられており、経営理念においても「人を大事にし、人を育てる」ことを掲げている。

このため、「正社員」、「パートタイム労働者」といった社員区分による拘束度の差や労働時間の長短の要素を除き、賃金等の待遇を同等とすることを基本的な考え方としている。したがって、人事評価制度や昇給・賞与の仕組みも同一のものとするなど均衡待遇に向けた取組が行われてきた。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

正社員・パートタイム労働者で共通の評価制度により社員区分にかかわらない人事評価を実施

「人は誰でも成長できる」という同社の考え方に基づき、2009年より独自の人事制度として、絶対評価と加点主義による「誰伸び人事制度」を導入している。この制度は、毎年11月から翌10月までの事業年度を評価対象期間とし、年に1回、正社員・パートタイム労働者共通の「誰伸シート」を使用して人事評価を実施するものである。

「誰伸シート」は、職種ごとに約20種類作成しており、評価項目の内容や項目数は職種ごとに若干の違いはあるものの、13項目程度の「求める人格像」と16項目程度の「実現力」について、「できている(1点)」、「できていない(0点)」の基準により評価する。

前年と比べ、できている項目がどのくらい増えたかを評価する加点方式で評価しており、自己評価と直属上司による評価をともに実施し、面談でフィードバックをしながら評価点を決定していく。面談では、評価決定理由等を確認し、今後の課題認識、目標設定を行う。

「誰伸シート」には、評価結果とともにそれぞれが面談結果を踏まえた自らの評価に対するコメントを記載し、それが人事課へ提出される。

評価者によって評価結果に差がでないよう、全社評価会議を開催し、評価結果の平均点について、極端に高い、低いといった事業所がないかチェックするとともに、評価者間のブレを補正して最終評価点としている。2015年10月に実施した際のパートタイム労働者の平均点は81点であった(平均点とは、評価点を100点満点換算したもの。なお、この平均点は、フルタイムも含んだ時給制の労働者全体の平均点である。以下、本文中にパートタイム労働者の実績数値を表記している記述は、すべて同様である)。

評価項目や評価手順は正社員とパートタイム労働者で同じものとなっているため、社員区分に影響されない人事評価となっている。

誰伸シート(ケアスタッフ用)イメージ

評価結果は昇給と賞与に反映、正社員と同じ基準で昇給・賞与を支給

前述の人事評価制度により最終評価点が決定されると、結果はそれぞれの昇給や賞与に反映される。

昇給については、昇給に当てることができる原資を枠として、平均評価点=平均昇給額となるよう評価点ごとの昇給額を決める。

昇給額は月額で定めており、正社員は月給にそのまま加算される。パートタイム労働者は、月額で定められた昇給額を時間額に換算した額(昇給額を正社員の月平均所定労働時間で除して算出した額)を時間給に加算している。このため、正社員とパートタイム労働者で評価点が同じであれば、時間当たりの昇給額は同額で支給されることとなる。なお、この人事評価制度は加点方式で行っているため、人事評価の結果、降給となることはない。また、人事評価の都度、昇給することとなるが、累積された昇給額について上限の設定もない。

パートタイム労働者も労働組合に加入しており、昇給額は労働組合からの要望も踏まえつつ決定し、公平性・透明性の観点から、平均昇給額については、労働組合を通じて全事業所に周知している。

賞与については、年2回の業績賞与と年1回の勤続賞与があるが、これについても、正社員・パートタイム労働者は同じ基準により支給されている。

業績賞与は前年利益の一定割合について、社員区分にかかわらず、同社で働く人たちに公平に配分しようという考え方の下で支給されている。賞与に当てる原資のうち、2割は各事業所へ均等に配分、1割は赤字事業所への補てん、残り7割を各事業所の実績に応じて配分する。本社は各事業所に対する配分額までを決定し、個々の賞与額は、事業所の管理者が、事業所へ配分された額を踏まえ、前述の人事評価点を参考に決定している。2015年12月のパートタイム労働者の業績賞与の平均支給額は、正社員の平均支給額を2万円下回る程度であった。これは、両者の就労時間数の差等によるものである。配分基準に社員区分を考慮する要素はなく、パートタイム労働者の中には、支給された賞与の額が正社員より高い者もいる。

勤続賞与は勤続年数により決定されており、これも社員区分にかかわらず決定されるが、勤務時間数には影響されないため、継続就業へのインセンティブとなっている。

このように、正社員もパートタイム労働者も同じ評価項目、同じ評価手順で評価を実施し、その結果を社員区分にかかわらず昇給や賞与に反映する仕組みにより、同社が目指す「社員の働き方は社員が自分で選択する」環境を整えている(※)。

社員区分にかかわらない人事制度

※ 正社員は、役職に就くと等級が上がったり、役職手当がつくことにより、時間当たりの賃金がパートタイム労働者より高くなることがある。

全社的な表彰制度の実施

全社的な表彰制度として、業務改善提案賞、ほめったさん賞、ルーキー賞等の個人向けの表彰と、コンプライアンス賞、優秀賞等団体向けの表彰を設けている。

毎年11月に全社員が参加する決起大会(事業年度の期首に開催される運営方針を発表する場)において、パートタイム労働者も含む全社員を対象として表彰しており、受賞者には賞状や商品券が贈られる。

業務改善提案賞は全事業所で業務改善提案の多かった者、ほめったさん賞は「ありがとうほめカード」を多く書いた者、ルーキー賞は所属長が推薦した者等が表彰されている。「ありがとうほめカード」とは、他の社員を褒める気持ちを書くカードで、「感謝する気持ち」、「人を褒める気持ち」が大事との考えから制度として行われている。特にリーダーとなる者にはこのカードを書くことが重要な習慣と位置付けている。

2015年11月の決起大会では、正社員43名、パートタイム労働者71名が表彰された。受賞したことが直接待遇に反映されることはないが、受賞者が「誰伸び人事制度」による評価点が低い場合には、評価結果が再検証されることはある。

全社員を対象とした一定期間ごとのフォローアップ研修

就業時の不安要素を取り除くことによる早期離職の防止を目的に、正社員、パートタイム労働者を問わず、入社した全社員に対し、入社後3か月、6か月、2年目、3年目の節目でフォローアップ研修を実施している。

各フォローアップ研修の受講は必須とされ、対象となる正社員・パートタイム労働者が、業務時間内に一緒に2時間程度、各節目で受講している。一定の地域ごとに同期入社の者を集めて、複数事業所合同で行うため、社員同士の悩みの共有や解決方法の相談等の場としても機能している。

2016年 フォローアップ研修テーマ

研修名 目的 内容(抜粋)
3か月 プロ意識について考える 入社時に設定した目標設定の進捗評価
グループワーク
6か月 チームビルディング 介護現場でのチームワークを考える
チームの一員としてのかかわり
2年目 2年目の挑戦 入社1年の振り返り
先輩社員の体験談、グループワーク
3年目 キャリアデサイン 3年目以降のキャリア形成について

キャリアアップ支援のため資格取得講座の費用を補助、取得時には時給アップ

スキルアップ、キャリアアップを支援するため、試験対策講座受講費用を補助する仕組みを設けている。費用の5割~7割を会社が補助し、対象となる資格や補助の水準等は、正社員とパートタイム労働者で同じ取扱いとなっている。例えば、介護福祉士受験対策講座では、先着30名までとしているが、数万円~十数万円の費用がかかるところ、本人はテキスト代15,000円のみ負担すれば受講できるようにしている。パートタイム労働者を含む全社員に周知した上で、希望者を募っている。講座は関連会社が運営しており、受講者の出席状況等を把握できるため、会社が随時声掛けを行うなど資格取得に向けた後押しも行っている。

資格を取得した場合は、資格手当が加算される。月額で支給され、パートタイム労働者は資格手当を時間換算した額を基準として、時給に加算(20円~100円)される。資格手当が支給される対象の資格は10種類以上ある。

2015年11月~2016年7月で資格取得支援制度の利用者は194名であり、うち24名がパートタイム労働者であった。また、資格を取得し、資格手当の支給対象となったパートタイム労働者は、2015年11月~2016年6月で108名だった。

幅広い研修カリキュラムと動画配信等の受講促進に向けた工夫

同社では、職務に密接に関連した内容以外の研修にも幅広く注力している。例えば、コミュニケーション力等を高めるためのコーチング研修や、メンタルヘルス研修、人権虐待防止研修等も実施している。マネージャー研修等実質的に正社員向けとなっている研修を除き、パートタイム労働者も各種研修を受講することができる。任意に受講できる研修については、月4回程度、カリキュラムを全社員に周知し実施される。メンタルヘルス研修や人権虐待防止研修等は全社員受講が必須のカリキュラムとされている。

事業所は各地に所在しているため、研修を地域拠点や事業所単位で実施し、正社員もパートタイム労働者も受講しやすくなるよう、配慮している。また、事業所の代表者が受講した研修については、研修後に事業所の全社員に対して代表者が講師となり伝達研修を行っている。その他、社内のイントラサイトに研修動画を配信するなどの工夫も講じている。

教育・研修体系

積極的な正社員登用の推進

積極的な正社員登用を進めているのは、より質の高いサービスを提供するためには、すべての社員が安心して働ける環境であること、離職率を低くすることが大事だと考えているためである。

正社員登用は随時実施されており、所属長が、「面接シート(正社員登用専用)」に必要事項を記載の上、面接し、登用要件を満たしていることを確認できれば、所属長の裁量で正社員に登用することができる仕組みとなっている。

正社員への登用要件は、①勤続3か月以上、②経営理念に賛同している、③直近1年以内に懲戒処分を受けていない、④フルタイム勤務ができる、⑤原則、シフト勤務に制約がない、⑥原則、勤務場所の変更に応じられる(転居は伴わない)こととしている。

正社員登用については、パートタイム労働者に対し、採用時の面談で説明する他、人事評価の面談等でも毎回希望を聴取しており、社内のイントラサイト等でも周知している。また、社長自ら、社員向けのブログで正社員比率を高めていくという目標やメッセージを発信している。

パートタイム労働者は、職務と保有資格により時給が決定されるが、正社員は役職者に登用されることがあることから、役職が上がるごとに等級テーブルが変わり収入が増える。正社員になることにより、仕事に対する責任は増すが、その分、やりがいが増え、上の役職へとキャリアアップを目指すこともできる。パートタイム労働者からフルタイム勤務の時給制の労働者になったのちに、正社員に転換するケースが多いが、フルタイム勤務の時給制の労働者を経ずに正社員に転換することも可能である。パートタイム労働者が正社員に転換し、その後、部長職まで昇進している例もある。パートタイム労働者の短時間勤務のタイプから正社員に転換した者は、2014年11月~2015年10月で12名、2015年11月~2016年10月で17名となっている。

離職防止に向け、管理者面談、入社後アンケート及び入社後面談を実施

中途入社の正社員・パートタイム労働者は全員、入社1か月後を目安に管理者と面談を行い、現在困っている問題等についてヒアリングを受ける。その後、「入社後アンケート」を実施し、職場環境や人間関係で感じていること、悩み等を記入してもらう。アンケートには、人事課に設置した中途入社者フォロー担当者との面談希望記載欄があり、希望者は中途入社者フォロー担当者との面談をすることができる体制を構築しており、安心して長く働けるよう取り組んでいる。

また、入社時にコンプライアンスマニュアルを配布しており、あらゆる相談に対応するコンプライアンスホットライン窓口を周知している。窓口として、社内総務人事部長の他、常勤監査役及び社外窓口として弁護士事務所を明記している。

チューター制度により入社後の相談体制を構築

2016年3月よりチューター制度を導入している。正社員・パートタイム労働者ともに、不安や悩みを抱えやすい入社直後から1年間、新入社員1名につき1名のチューターを任命している。チューターは、主にメンタル面のフォローができる者を、人事評価とは関係のない同年代の同僚の中から任命しており、新入社員の不安や悩みの相談役としての役割が期待されている。チューターには、役職者や正社員に限らず、パートタイム労働者が任命されることもある。チューター制度により不安や悩みに対する早期解決を図ることができ、離職防止に役立っている。

全社員が提案できる業務改善提案制度

サービスを利用される方の満足度の向上のため、全社員から業務改善提案を、随時募集している。現状の課題から改善内容、予想される効果を記入した提案書を提出することとしており、パートタイム労働者からも業務改善に資する提案がなされている。積極的な提案がなされるよう、提案者には提案が採用されるかどうかを問わず、図書カードが進呈される。なお、先に述べた業務改善提案賞は、この提案の数が多かった者に贈られる。

従業員満足度調査を実施し、結果は社内のイントラサイトで公表

年に1回、正社員・パートタイム労働者に対し、「従業員満足度調査」を実施している。給与明細に調査票を同封し、職場環境や人間関係、教育訓練、セクハラ・パワハラ等について尋ね、会社への満足度を調査している。率直な意見を吸い上げるため、記名を求めない様式となっており、調査結果は社内のイントラサイトに掲載し、誰でも閲覧できるようになっている。なお、2016年の調査票回収率は79.8%であった。

自己申告制度により、異動や職種変更等の希望を定期的に把握

年に1回、「自己申告シート」により、①勤務地変更希望、②職種変更希望、③資格取得予定、④育児・介護休暇制度取得希望、⑤健康状態やプライベート等の不安や悩み等について把握している。これも正社員・パートタイム労働者ともに実施されている。

「自己申告シート」は直属の上司が回収するのではなく、今後の希望をダイレクトに会社に伝える趣旨から、本社へ郵送する仕組みとなっている。

「自己申告シート」の提出は任意であるが、提出者全員と面談し、事情を聴いている。所属長、課長、部長や社長等の管理職で、対応の緊急性や必要性を協議し、本人とも話合いを行った上で対応している。2015年10月には1,212名がシートを提出しており、そのうち377名がパートタイム労働者であった。

正社員と同じ待遇を目指すため福利厚生制度も充実

パートタイム労働者も正社員と同じ待遇を実現するため、パートタイム労働者の福利厚生の充実にも力を入れている。パートタイム労働者に対しても、慶弔時には見舞金の支給と年次有給休暇とは別の有給休暇である慶弔休暇を付与している。慶弔休暇の日数、見舞金の額ともに、正社員とパートタイム労働者で同じ取扱いとしている。

また、夏期休暇(最大3日)、冬期休暇(最大4日)を有給の特別休暇制度として、在籍月数と勤務日数により比例的に付与している(夏期休暇の例:在籍3か月以上の場合、正社員で3日、週3日勤務のパートタイム労働者で2日)。

健康診断についても、パートタイム労働者も含めた全社員を対象に毎年定期的に実施している。胸部エックス線検査や肝機能検査等の検査項目は一般健診項目としており、受診費用は受診者が希望したオプション部分を別にして会社が負担している。

ファイブアタックシートで退職理由のヒアリングと環境改善へ

退職希望者が出た時は、同社が独自に導入している「ファイブアタックシート」を使って直属の上司等が退職希望者と面談を実施し、状況を改善する方法を検討するために退職事由をヒアリングする。ファイブアタックシートとは、退職希望者に対して、5回面談し、毎回の面談の記録を記入し、報告することで、退職理由の真意を突き止めることにより、社内環境の改善を分析しようとするツールである。面談は、本人や家庭の都合による退職等会社側の状況改善では対処が困難な場合を除き、直属の上司の他、社長やマネージャー等も実施する。毎回の面談記録は退職事由のデータ蓄積・分析ツールにもなり、退職を希望するに至った状況等職場の課題を把握して、退職せず就労を継続してもらうための職場改善方法の検討に活用している。

正社員・パートタイム労働者ともに定年制を廃止、エイジフリーの働き方が可能に

同社は、社長の提言により、2014年から定年制を廃止した。定年制廃止に関しては、当初、社内でも懸念の声があったが、幾度となく協議を重ねることで実現に至った。定年制がなくなることで、同社の「社員の働き方は社員が自分で選択する」という考え方、すなわち社員の都合に合わせて労働時間を選べることに加え、「いつまで働くのかは社員が自分で決める」ことも可能となった。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

社長の方針や経営理念に基づき、パートタイム労働者の待遇について正社員と同等としていく取組が進められてきたが、逆に正社員から不満の声が上がることもあった。特に賃金について差をつけてほしいという声もあり、会社の取組に対する理解を求めることに苦労した。社員区分にかかわらず、全員が同じ方向を向いてサービス向上に当たるためには同じ待遇にしていく必要があり、そのための取組であることについて、話合いや面談の場を設け、理解を求めてきた。

また、「人を大事にして育てる」という信条を持ち、正社員・パートタイム労働者の区別なく研修の機会を付与し、新卒のみならず中途採用にもフォローアップ研修を丁寧に行っていることを同社ならではの特徴と考えている。人に感謝し人を褒めること、前向きに考えて何とかしていこうと取り組んでいくことが、同社の社員として重要であること等を、あらゆる研修や面談の機会等を通じ、全社員に浸透させている。

5. 取組の効果と今後の見通し

パートタイム労働者の初任給の改善は、離職理由として、正社員との待遇の差や、パートタイム労働者の待遇が低いことが挙げられたこともあり、正社員とパートタイム労働者の昇給、賞与額のみならず、そもそもの募集時の賃金格差の縮小にも取り組む必要性があると考え、行ってきた。その結果として、例えば2013年時点で最も格差が大きかった介護職(無資格・大阪)の初任給で比較すると、2013年には正社員の賃金の時間給換算額とパートタイム労働者の時給の格差は183円であったが、2016年には98円まで縮小するなど、いずれの職種においても時給差が縮まっている。

正社員とパートタイム労働者の初任給における時給格差の推移(単位:円)

区分 地域 2013年 2014年 2015年 2016年
サービス提供責任者 大阪 178 178 113 113
サービス提供責任者 東京 136 136 61 61
介護福祉士 大阪 177 177 112 112
介護福祉士 東京 135 135 60 60
無資格 大阪 183 163 123 98
無資格 東京 140 140 80 80

また、サービスの質の向上を目指し、安心して長く働くことができる職場づくりのため、正社員とパートタイム労働者共通の人事評価制度や多角的・計画的な教育研修等に取り組んだ結果、パートタイム労働者の平均勤続年数は伸び、離職率は低下してきている。平均勤続年数は2013年10月で2.04年であったところ、2016年10月には2.47年に伸び、離職率は2013年11月~2014年10月では21.8%であったところ、2015年11月~2016年10月には17.0%へと改善している。離職率が低下し勤続年数が伸びることで、勤務年数に応じて支給される勤続賞与の支給実績も上がっている。パートタイム労働者への具体的な平均支給額は、2013年に比べ2015年は20%程度増額しており、パートタイム労働者の収入面における改善にもつながっている。

また、パートタイム労働者のモチベーションも向上し、前述した「従業員満足度調査」でも従業員の意識の変化が窺える。無記名式であるため、正社員とパートタイム労働者を比較することはできないが、「あなたの会社は良い会社だと思いますか」という問いに対し、「良い」または「ほぼ良い」と回答した者の割合は、2011年の47.3%から2016年には55.0%へと上昇している。

同社のサービスの利用者に実施している満足度アンケートにおいても、「満足」・「大変満足」の回答は2012年の89%から2015年では91%へと上昇している。さらに「大変満足」だけの回答を見ても、2012年は27%だったところ2015年には35%まで高まっており、顧客の満足度の向上にも寄与しているものと思われる。

さらに、企業としての収益向上にも影響がみられた。施設稼働(入居)率は、2013年10月期における年間平均88.3%から、2016年10月期は93.2%へ、施設年間売上は、2013年10月期で約70億円だったのが、2016年10月期で約100億円へといずれも伸びている。これらは、パートタイム労働者の平均勤続年数の伸長、離職率の低下、多様な教育訓練の実施、正社員転換の推進等の結果、パートタイム労働者のスキルアップやキャリアアップが図られたことにより任せられる仕事の範囲が拡大するなど、人員の層が厚くなり運営体制が強化されたことも奏効したものと考えられる。

同社は、同一労働同一賃金を目指している。また介護の仕事では、働く者のモチベーションが、ケアの質向上につながり、それが利用者への満足につながっていくと考えている。このことから、「正社員の待遇のみを良くして、パートタイム労働者の待遇の改善に取り組まない」という考えではなく、違いをできるだけ少なくするように、さらなる待遇改善を目指していきたいと考えている。今後は、パートタイム労働者の管理職登用や役職に手を挙げる仕組みを検討したいとも考えている。「自分の働き方が自分で選べる」、それを応援できる会社であるよう、これからも取り組んでいく。

従業員の声

事業所の事務を担当するパートタイム労働者から本社の主任代理として
全事業所の研修運営を担当(本社勤務、人事、勤続14年)

訪問介護事業所の事務を担当するパートタイム労働者として2002年に入社した。当初は子育ての時期だったため17時までの勤務であった。子どもが大きくなり時間の融通が利くようになっていた中、2009年に本社への異動と併せて正社員に転換した。本社で人事制度に携わる仕事をしないかと社長から声を掛けていただいたのがきっかけであった。

正社員となってまず業務量が多いことに戸惑ったが、自分に与えられた仕事をこなすというそれまでの狭い視点から、会社の方向性を実現しようとする広い視点に変わった。経験のない人事の仕事であったが、キャリアアップのための支援制度(会社が融資を行い、分割で返済する制度)を利用して、キャリアコンサルタント資格も取得した。正社員転換後は一般職から業務リーダー、副主任、そして現在は主任代理とキャリアアップし、全事業所の研修業務全般と一部新卒採用業務を担当している。

将来は、キャリアに悩める人のサポートをする部署をつくり、働くということの大切さを若い人に伝えていけたらと思っている。


事業所の事務を担当する時給制の労働者から本社の副主任として
総務人事事務業務を担当(本社勤務、人事、勤続11年)

事業所の介護保険の請求業務等事務を担当するフルタイム勤務の時給制の労働者として2005年に入社し、2010年から本社での勤務となった。その後1か月くらいで正社員へ転換した。転換前からフルタイム勤務であったため、より報酬アップが見込める正社員へ転換した。

正社員に転換すると、これまで指示を受けて仕事をしていたものが、まとまった仕事に責任を持って当たることとなった。業務内容は一事業所の事務から全事業所的な業務へと変わり、その内容も役所への対応等難易度も上がったが、研修を受講するなど会社のサポートも受け、職務を遂行していった。正社員になって業務量が多くつらく思ったこともあるが、やりがいも大きかった。

正社員では副主任にまで任命されたが、現在は家庭の都合のためパートタイム労働者に戻って短時間勤務で働いている。職場には若い人たちも多く、今後は、これまでの経験を活かし周囲のサポートができる存在でありたいと思っている。

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