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株式会社オリエンタルランド

平成28年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成28年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
最優良賞(厚生労働大臣賞)

計画的・体系的な教育プログラムにより、一人ひとりのキャリアを支援。透明性の高い人事制度によりキャリアアップと待遇の改善を同時に実現

1.労働条件の明示、説明
2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 千葉県 業種 生活関連サービス業・娯楽業
従業員数 23,219名 パート労働者数 18,728名
事業概要 テーマパークの経営・運営及び、不動産賃貸等
ポイント
  • 東京ディズニーリゾートで働きながら、今まで以上に“豊かな人生”を歩んで欲しい、“キャストであることの誇り”を実感できる場にしたいとの願いを込めて、「経済的な安定」と「心の豊かさ」の実現を目指す新準社員人事制度を2016年4月に導入し、準社員の労働条件や待遇、キャリア形成支援をさらに充実させた。
  • 生活年収を考慮した時給幅設定により、「経済的な安定」を担保。
  • グレード(資格)の役割を明確にし、評価・昇給・昇格等の基準を分かりやすく整備し、納得性・透明性・公平性のある人事制度を実現。また、グレード制度に対応した体系的な教育を実施、多様な価値観を持つ準社員一人ひとりのキャリアを支援。
  • 教育制度や人事評価制度の見直しにより、仕事の「楽しさ」や「働きがい」を実感し、「心の豊かさ」の実現を目指す。
  • 独自施策の実施による、部門や役割を超えた交流の促進を通じて、風通しの良い企業風土を醸成。

審査委員はここを評価

パートタイム労働者の働きがいや成長を重視し、期待する役割を明確にした資格制度を中心に、評価・待遇や能力開発・キャリア支援、提案・相談の仕組みを体系的に整備して、良好な労働条件や待遇、職場環境を一層充実させています。

1. 企業概要・人員構造

同社は、千葉県浦安沖を埋め立て、商業地・住宅地の開発と大規模レジャー施設の建設を行い、国民の文化・厚生・福祉に寄与することを目的として、1960年に設立された。ディズニー・エンタプライゼズ・インクとのライセンス契約に基づき、1983年に「東京ディズニーランド」を、また2001年には「東京ディズニーシー」を開園した。現在、子会社等を通じて行っている商業施設や直営ホテルの運営を含め、舞浜の地に一大リゾートを展開している。2013年度には、2つのパークの年間入園者は3,000万人の大台を突破し、同年度以降その水準を維持している。リゾートの価値を高め続けるため、大規模開発の推進やサービス施設の充実といったハード面の継続的な強化のみならず、さらなる「人財力(※)」の強化が重要であると考え、2016年度より新しい人事制度を導入した。

東京ディズニーリゾートで働く従業員は、「キャスト」と呼ばれる。キャストは、正社員と準社員からなり、正社員は、総合職、専門職及びテーマパークオペレーション職に区分される。準社員は、スタンダート、パートタイム、シーズナルに区分される。約23,000名の従業員のうち、パートタイム労働者に当たる準社員が約18,000名と全従業員の約8割を占める。準社員は、テーマパークの最前線で来場者を迎える重要な役割を担っている。主に、アトラクション案内、清掃・警備業務、商品・飲食施設での接客、調理業務等、様々な業務を行う。なお、テーマパークオペレーション職(キャストの人財育成とテーマパーク運営を担う)は、昨年度まではテーマパーク社員として、正社員とは区分された有期雇用の契約社員であったが、2016年4月より無期雇用の正社員の一つの職種として位置付けられ、本人の希望や評価・実績等に応じて、マネージャーや部長といった管理職への登用も目指すことができるようになった。

準社員は、自らの希望する働き方に応じて「ワークスタイル」を選択することができる。「ワークスタイル」とはいわゆる雇用区分のことで、週5日の短時間勤務で、社会保険に加入する「スタンダード」(約13,500名)、週2日~3日勤務で主婦や学生が中心の「パートタイム」(約5,000名)、年末年始等の繁忙時期に1日~2日から最大で4か月の期間で勤務する学生が中心の「シーズナル」(約200名)の3種類がある。勤務は15分刻みのシフト制である。

準社員のワークスタイル(雇用区分)一覧

スタンダード パートタイム シーズナル
勤務日数 週5日勤務 週2日~3日勤務 繁忙期の短期勤務
社会保険への加入 あり なし
※労働時間等により加入となる場合あり
雇用保険への加入 あり なし
※労働時間等により加入となる場合あり
契約更新 半年ごと 半年ごと なし

※ 正社員の所定勤務時間は週37.5時間。準社員はいずれも短時間勤務。

業態特性として、季節や天候により、来場者数が左右されやすく、業務の繁閑差がある。準社員が安心して働けるよう収入安定を目的として、最低保障勤務時間を設定している。スタンダードは月114時間以上、パートタイムは月40時間以上の勤務を保障している。最低保障勤務時間については、雇用契約書に勤務時間や日数に加えて明示し、雇入れ時及び更新時に説明を行っている。

※ テーマパーク運営において、キャスト一人ひとりの心のこもったホスピタリティの提供は決して欠かすことのできない重要な要素であることから、ホスピタリティの源泉となる人材を、同社では「人財力」と表記している。

2. 取組の背景とねらい

多様化する労働環境の中で、同社の仕組みや制度はそれに柔軟に対応していく必要があると考えている。しかし、制度だけに頼るということではなく、準社員一人ひとりが自らの役割を自覚し自立心をもって仕事に臨める支援をすること、そして若い世代の多い準社員が自社での経験を糧にして将来を見据えられるように支援していくことが企業としての責任であると考えている。

そこで、「安心・楽しい・働きがい」をキーワードに、今まで以上により“豊かな人生”を歩んで欲しい、“キャストであることの誇り”を実感して欲しいという思いから、働きがいや成長を実感できる職場環境づくりに向けて、2016年4月、2005年以来約10年ぶりに準社員人事制度を改定した。個々人の希望する働き方に合わせた「ワークスタイル」を選べる制度や経験とともに新たな役割に挑戦するグレードアップの枠組みは継承しつつ、準社員の生活の安定と成長支援を目的とした賃金制度と教育制度を充実させた。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

グレード制度とキャスト間による自主的な教育の取組

従来から、準社員には、業務内容や習熟度合いに応じて、「M(見習い)・A(新人)・G(一般)・I(トレーナー)・C(リーダー)」と5段階のグレードで昇格していく仕組みが設けられており、すべての「ワークスタイル」に適用される。スキルアップを中心とした育成の方向性に、マインド面でのフォローアップを加え、グレードごとに期待する役割を明確化している。グレード制度は従来からあったが、グレード制度の中間に位置するGグレードは、新制度導入前の役割は「独力で標準的なオペレーションができ、状況に合わせ自ら進んで行動している」ということのみであった。しかし、Gグレードにはベテランの準社員も多く、トレーナーではないものの、後輩・仲間の相談に乗ったり、アドバイスをしている準社員も多く、その相談やアドバイスがGグレードにおいてどう位置付けられ、どのような役割が求められているのか分かりづらいということが課題となっていた。新準社員人事制度導入の際に、この課題を解決すべく、Gグレードの役割は、「自ら進んで行動するとともに、後輩に対して、スキル面でアドバイスを行い、マインド面で良き相談相手になる」役割が求められることを明確化し、すべてのグレードにおいて期待される役割を明確にした。

準社員に期待する役割

* 下線部は、新準社員人事制度で明確化された役割部分
※ SV・・・スーパーバイザー(正社員の役職名で時間帯責任者)

グレードは業務内容や習熟度合に応じて昇格する。上位グレードへの昇格機会は4月と10月の年2回あり、いずれも準社員の成果や貢献度に応じて決定される。MグレードからAグレードへは、通常2か月~4か月程度で昇格する。Gグレード以上への昇格にかかる標準的な期間は、Gグレードへは入社後1年~1年6か月、Iグレードへは入社後4年~5年、Cグレードへは入社後6年~7年程度となっている。2015年度の昇格人数では、MグレードからAグレードには約6,000名(100円昇給)、AグレードからGグレードには約1,700名(10円~20円の昇給)、GグレードからIグレードへは約300名(20円~30円昇給)、IグレードからCグレードへは約150名(30円~50円昇給)が昇格している。

IグレードやCグレードの準社員の間では、トレーナー同士でのトレーニング計画ミーティングやリーダー同士での業務改善ミーティングが自主的な活動として展開されている。正社員からの指示ではなく、規定されたOJTを超え、日々の業務の中で、準社員一人ひとりの成長をより促すためには、どのような教育が効果的かを話し合うミーティングや、チーム力を高めるための業務改善策を検討し、スーパーバイザー(正社員、時間帯責任者。以下「SV」という。)に提案するといったボトムアップの活動である。内容は安全やサービス等ロケーションごとに様々であるが、行動基準の最優先順位にある安全に関する取組は多数行われている。また、会社主導の安全衛生活動とは別に、炎天下で来場者を迎える準社員の熱中症対策のための安全チームを作るなどの事例がある。トレーナーやリーダーとしての能力を高める効果があると同時に、職場全体のチームワーク力の向上や個々の能力の向上にも寄与している。

生活年収を考慮した時給幅の設定

準社員の時給は、基本時給(個人のスキルや役割に紐づく基本給)と調整給(職種・業務に紐づく加算給)で構成されており、グレード別に設定されている。賃金の時給幅設定に当たっては、入社時の時給だけでなく、準社員の生活やキャリアを考慮し、例えば、Cグレードの準社員の時給水準は、月間150時間勤務した場合、生活関連サービス業に従事する20代の販売・サービス系正社員の年収水準と同等になるように設計されている。さらに正社員登用の道が開かれていることにより、キャリアと時給が連動し、階段状にステップアップと待遇改善が実現している。賃金制度とキャリアアップ体系は、全準社員に配布されている「準社員人事制度ガイドブック」により公開されており、準社員自らが年収の予測とキャリアアップ設計を行うことが可能となっている。

グレード別時給設定幅

グレード 基本時給※ 制度改正前との比較
Cキャスト 1,150円~1,350円 上限250円増
Iキャスト 1,100円~1,250円 上限200円増
Gキャスト 1,020円~1,150円 上限130円増
Aキャスト 1,000円
Mキャスト 900円

※ 基本時給にプラスして、職種別加算調整給を支給(一例)
・フードサービスキャスト +50円 ・パーキングロットキャスト +100円 等

フィードバックシートを用いた評価制度の実施

SVが半期に一度、「評価フィードバックシート」を用いて、キャストとして業務遂行上求められる要件である「パフォーマンステーマ」とグレードごとに求められる知識・スキル要件である「スキルテーマ」に沿った評価を行う。

パフォーマンステーマは、準社員として働く上で求められる行動要件であり、全グレード共通の「基本要件」とグレードごとに異なる「グレード別役割付加要件」で構成される。基本要件は、同社のディズニーテーマパーク共通の行動規準であるSCSE(※)と執務態度の5つに分類され、それぞれのキーワードに対する内容が示されており、その内容について、「模範的で手本となり、周囲に影響を与えている」から「課題が多く、指導しても改善がされていない」まで4段階で評価が行われる。

スキルテーマは、5段階のグレードごとに求められるスキル要件である。評価基準表を開示しており、フィードバックの際には、評価の根拠を明確に説明している。それにより、納得性、公平性、透明性といった質の高い評価フィードバック面談が実現している。また、評価フィードバックシートには、準社員本人も、自分が努力したポイント、課題として感じているポイントを記入する欄を設けており、本人の意見も聞きながら、一人30分程度の時間をかけて丁寧に面談を行っている。また、評価者の役割の重要性に鑑み、SVの評価者研修にも力を入れている。

※ SCSEとは、ディズニーテーマパーク共通の行動規準である「The Four Keys~4つの鍵~」Safety(安全)、Courtesy(礼儀正しさ)、Show(ショー)、Efficiency(効率)で、その並びがそのまま優先順位を表している。

フィードバックシートのイメージ

評価と連動した待遇への反映

半期に一度、フィードバックシートを用いた4段階の評価をもとに、昇給の根拠となる3段階の評定を行う。3段階の評定結果と連動した昇給が行われるが、標準評定者は半期で10円、優秀評定者は20円の昇給が行われる。昇給機会は年2回あり、年間で最大40円の昇給が可能である(試用期間中や入社1年前後の新人は除く)。フィードバックシートにおいて、指導事項があった場合には、昇給が行われないことがあるが、降給することはない。「安心」を掲げる人事制度において、降給はなじまないため、指導事項を次への育成につなげている。

評価と連動した昇給・グレードアップの連動(イメージ)

準社員の貢献により応じられるように賞与支給制度を変更

準社員の賞与制度は従来年2回の支給だったが、テーマパークという事業特性を考慮し、年間のイベント(ハロウィン、クリスマス等)に支給を合わせることで、準社員への慰労をより分かりやすく伝えたいということから、2016年4月より、年5回(8月・10月・12月・2月・5月)の支給に変更した。支給金額は、グレード別に設定している他、より多く勤務した準社員に高く支給するため勤務時間実績で新しく段階を設けた(2016年度は月100時間以上の勤務の場合年間6万円~12万円、月150時間以上勤務の場合年間12万円~24万円として設定)。なお、試用期間中等、一部のグレードは支給対象外となる。

グレード制度に対応した教育

東京ディズニーリゾートにおけるディズニー・ユニバーシティ・プログラムにより体系的な研修が実施されている。ディズニーのフィロソフィーやキャストとしての行動基準について学ぶプログラム(Tips on Magic)は入社時研修として、準社員を含めた全従業員共通で実施される。その後実施される各部門の導入研修、職場でのOJTや実地研修、グレードに連動した段階別ステップアップ制度に応じた研修等を通じ、ディズニーテーマパークでの行動規準を繰り返し伝えることで、その徹底を図っており、教育研修についても人事制度の改定と併せて一部見直しを行った。段階別ステップアップ制度では、全9種類の教育プログラムが用意されており、グレードに求められる意識や行動を伝える研修内容となっている。

2015年度からは、ディズニー社の協力の下、海外のディズニーテーマパーク体験、教育プログラム受講、現地従業員とのディスカッションを行う海外研修が実施されている。応募資格は、G、I、Cグレードであり、部門と全社選考が行われ、毎年40名程度が参加できる。応募条件にグレード要件を課しているのは、ある程度の経験を積んだ準社員が参加することの意義が大きいと考えているからである。参加前には課題を課し、研修終了後には報告会を実施する他、研修で学んだことを仕事の中で実践し、仲間と共有するよう、参加者には研修目的を説明している。刺激的な現地交流を経験した参加者の帰国後のモチベーションの高まりは予想以上であり、各職場でそれぞれの経験が活かされている。

キャリア支援の取組

2016年度からビジネススキル研修と社外体験研修が実施されている。日常業務で必要な教育に加え、将来のキャリアに対する不安を払拭するため、自己啓発として選択できる機会を増やし、キャリア支援を拡げる目的である。社内だけでなく、社外でも通用するビジネススキルを身につけ、個々の強みを引き出し、キャリア構築を支援したいと考えている。

現在、ビジネススキル研修は、ロジカルシンキングとコーチングの2プログラムが実施されている。各プログラムの定員30名に対して、150名~200名の応募があり、開催回数を増やすことを検討している。勤務外の扱いで半日の研修を2日間実施するものであり、参加費は500円徴収することとし、自己啓発としての位置付けを明確にしている。来年度以降は、準社員の希望等に鑑み、他の研修プログラムの開催等も検討していく。

社外体験学習は、2016年度はブルーベリー農園や野菜農園での実習、農産物直売所での実習を日帰りバスツアーで実施した。農園での実習は、収穫したブルーベリーや野菜で料理を作り、食への理解を深めた。また、農産物直売所では直売所の売上げを上げるための方法を議論し、チーム対抗で競うといった内容であった。社外体験学習は、職種との連動を考えて企画されており、食に関連する社外体験活動はフード関連の職種向けに実施した。テーマパークの外で食に携わる人々とふれあい、食に対する視野を広げ、職場でさらに誇りを持って働いてほしいという思いからである。2016年度内には、エンターテイメント職種向けに、テレビ局の番組制作の体験学習を実施する予定である。

さらに、準社員が将来のキャリアを描く支援の取組として、人事制度の改定と併せて、働き方モデルを作成、公開した。「現在の役割の中でよりパフォーマンスを高めたい」、「ロケーションのリーダーを目指したい」、「教えること・伝えることに興味がある」、「経験を活かして活躍の場を拡げたい」、「スーパーバイザーを目指したい」、といったカテゴリーに分け、11種類の働き方モデルを作成している。働き方モデルのパネル展示を行った際には、正社員が質問攻めにあうほど、反響が大きかった。「このままの自分で良いのだろうか」と自らのキャリアを振り返り、将来について考える機会につながっている。働き方モデルは評価面談やキャスト相談室(後述)での相談の際に活用している。

社員登用制度の実施

準社員から正社員への登用制度があり、テーマパークオペレーション職及び専門職(調理)になることができる。応募要件は、①募集職種に関する部署での所属要件、②勤続6か月以上であることが必要である。内部登用を行うのは、テーマパークオペレーション職及び専門職(調理)のみであるため、テーマパーク内での業務経験が必要とされる。筆記試験と面接試験(マネージャー及び部長)で合否が決定される。新制度になってからの第1回目の告知は2016年11月の予定である。なお、従来より正社員への登用の道は開かれていたが、準社員からテーマパーク社員(契約社員)の転換を経ての正社員登用であった(※)。これが、2016年4月の新準社員人事制度の導入により、テーマパーク社員(契約社員)がテーマパークオペレーション職(正社員)及び専門職(調理)に位置付けられたことで、準社員から直接正社員に転換できるようになった。

また、テーマパークオペレーション職及び専門職(調理)に応募できない準社員は、中途採用や新卒採用を通じて、正社員になることができる。中途採用や新卒採用を行う際には、準社員に案内をしており、準社員経験者が採用されている。同社が好き、接客が好きという理由から、準社員から正社員として入社し、活躍する者は少なくない。内部登用や新卒採用で入社し、現在は部長やマネージャーとして活躍している例もある。

※ テーマパーク社員への登用は、毎年十数名から多い年には30名程度の登用実績があった。

従業員のアイデアを活かす制度~I have アイデア~

準社員を含む全従業員を対象に、新しいサービスや商品等への提案を受け付ける“ I have アイデア”という制度を継続的に実施している。毎年2,000件前後の応募があり(2015年度は約2,200件)、そのうち約9割が準社員からの応募である。募集は、通年で行われているが、期間を区切ってテーマ募集を行うこともあり、部門ごとに選考委員がおり、表彰は年1回実施される。通常1回当たりの表彰件数は20件程度である。売上げやコスト面での検討の結果、すべてのアイデアが実現されるわけではないが、グッズ開発、メニュー開発、サービス提案等で実現したアイデアもある(例えば、アニバーサリーボードを持ってゲストが写真撮影をできるサービスの提供等)。

I have アイデア 表彰式

「アイデアを募集し、ボトムアップの風土をつくる」ことを目的としており、ゲストとの接点が多い準社員の柔軟で自由な発想を期待している。

社内情報の共有及びコミュニケーションの促進

全社の取組として、月1回、社内報を発行している。食堂やキャストアクティビティセンター(準社員を含む従業員全員がコミュニケーション・ラウンジとして自由に利用できる施設であり、様々なサービスを提供する「場」)に設置、自由に持ち帰ることができる。また、映像を用いて、各種イベントや教育機会等の情報を提供している。詳細情報については、週1回オフィスや休憩室に設置されている掲示板へ掲載を行っている。

また、職場ごとの取組として、主に準社員を対象に自己紹介カードやスキルアップシートの取組を行っている部署がある。例えば、自己紹介カードは、担当している職場に写真付きで貼り出されるが、標準的なユニット(※)には、約200名の準社員がおり、シフト制で顔を合わせる機会が少ない者同士のコミュニケーションや新人配属のお知らせ等の情報共有としても活用している。スキルアップシートは、スキルアップごとに管理者からシールが配布されカードにシールを貯めていくもので、スキルアップの喜び、実感とともに、管理者とのコミュニケーションツールとして活用されている。リーダー層においては、ユニット単位で月1回の全員出席日を設けるなど社内情報の共有やコミュニケーションの促進の工夫を行っている。

※ 一つまたはいくつかの施設や部門等をまとめた同社での職場の単位。

独自の施策によるモチベーションの向上

準社員の働きがいや成長を支援しつつ、仲間とともに成長できることの喜びを実感してもらえるように様々な施策を複合的に実施している。

準社員のモチベーション向上のための施策例

サンクスデー 一年に一度、閉園後のパークを貸し切り、上司が日頃の感謝の気持ちを込めて準社員をおもてなしする準社員だけのプログラム。社長のスピーチやセレモニー、スペシャルメニュー等があり、いつもと違ったパークを楽しむことができる。準社員に対して、社員から感謝の意を伝える機会を提供することで、準社員の働く安心感や準社員同士の一体感醸成につなげる効果がある。この時の「キャスト」は正社員が担うことから、通常、事務棟で管理業務に従事する正社員や役職者が、コスチュームをまとい、来場者をおもてなしすることの大変さや喜びを体感できる機会にもなっている。2015年度は、約16,000名の準社員が参加した。
キャストカフェ 異動が少ない準社員同士が部門を超えて、お互いの取組等を共有する場を設けることで、準社員が多くの仲間に出会い、様々な価値観に触れて視野を広げ、各々の自主的なアクションにつながることを目指すコミュニケーションプログラムである。自社のユニバーシティルームに会場を設け、2015年度は約500名が参加し、2016年度は3倍の約1,500名の参加を計画している。
ファイブスター
プログラム
SCSEに基づく良いゲストサービスを行った準社員を含むキャストに上司がその場で直接メッセージを記入したカードを渡すプログラム。カードをもらったキャストは、オリジナルの記念品がもらえる他、特別なパーティーに参加できる。
スピリットオブ東京
ディズニーリゾート
準社員を含む全従業員同士で優れたホスピタリティを互いに認め合うプログラム。2015年度は、約37万枚のメッセージが交換された。メッセージ交換の結果を基に選ばれたスピリット・アワード受賞者には、ネームタグに着用できるピンが授与される。
長時間勤務表彰、
永年勤続表彰
勤続の節目を迎えた準社員に、累積勤務時間に応じて東京ディズニーリゾート・ギフト券等の記念品、勤続年数に応じてピンが授与される。2015年度は、15,000時間以上の長時間勤務表彰が約2,300名に授与された。
カヌーレース パークオープン前のアメリカ河で、カヌーを漕いでタイムを競うスポーツイベント。職場の仲間と上司が一緒に汗を流し、好成績を目指す。上位チームが参加する決勝戦は、役員チームがエキシビションレースに参加する。チームは職場単位だけでなく自由に組むことができ、コミュニケーション力の醸成に寄与している。2016年度は、約230チーム、約3,000名が参加した。

カヌーレースの様子

準社員からの相談に応じる体制の整備

所属上司を通さず、直接面談ができるキャスト相談室を設けている。相談室には、キャリアカウンセラーの資格を持つ正社員が在籍し、メールや電話、来訪等の様々な方法で相談を受け付けている。相談室の周知は、入社時に周知(はがきサイズの紙面を配布)、相談室の連絡先等が記載された携帯用のカードを配布、ポスターをロッカー等に掲示するなど、複数の方法により行っている。相談内容は、コミュニケーションの悩み、仕事上の悩み、仕事と家庭の両立等の相談が多く、1日に1名~2名の相談がある。必要に応じて、人事部門等と連携できる体制を整備している。

仕事と育児・介護の両立支援制度

育児・介護休業制度の周知は、準社員用就業規則(紙面、社内のイントラサイト)で行っている。育児・介護休業法の改正を前倒しで実施し、2016年10月から、子の看護休暇及び介護休暇の取得単位を1日から半日に変更、介護休業の同居要件についても撤廃し、運用を開始している。制度改正があった場合は、職場への掲示や準社員用通達で情報提供を行っている。2015年度の準社員の取得実績は、育児休業207件、子の看護休暇457件、介護休業8件、介護休暇167件であった。2013年度の実績は、それぞれ68件、313件、3件、28件であったことから、いずれも増加している。

現在、育児休業中の準社員は100名程度おり、休業者に対して2016年10月分から社内報の郵送を開始した。育児休業の状況は個人差があるため、休業者の意見に耳を傾けながら、育児休業中の準社員への情報提供や支援の方法について検討していく意向である。

また、退職後から1年以内に復帰した場合、在籍時の時給及びグレードを加味して復帰できる再雇用制度がある。制度の利用事由は限定していないが、現在の利用事由は、就職活動や留学後の復帰が主である。この再雇用までの期間を退職後1年から3年へ延長することを検討しており、育児を理由として退職した場合の復職支援・両立支援につなげていきたい。そのために、復帰しやすい環境づくりに向けての取組も行っていきたいと考えている。

安全衛生活動及び表彰制度の実施

入社時に携帯用リーフレット(名刺サイズの三つ折り)を配布し、安全意識を高めている。リーフレットの中で、「安全ルールを守ること」、「危ない状態や行動を危ないと感じ、放置しないこと」、「自分自身の安全と健康・体調を守ること」について、具体的行動事例を挙げて啓蒙している。職場配属後も、業務特性に合わせた安全衛生活動を日々実施している。日常の安全衛生維持及び向上に顕著な功績をあげ、他の模範となった組織や個人を称え、従業員の安全意識の高揚につなげるための表彰も行っている。この表彰制度は全社の表彰制度の1項目となっており、全社表彰式には社長も参加する。組織表彰はユニットごとの活動であり、現場の最前線にいる準社員の活動への主体的なかかわりは、安全な職場環境の維持向上に寄与している。2015年度の組織表彰件数のうち準社員が主体的に関与した案件は、KYT(危険予知トレーニング)活動、ハザードマップの作成、KAIZENフォーマット(各チームでのKAIZEN活動をフォーマット化し、他チームへ横展開する活動)、ながら唱和(「スマホを操作しながら」等、危険な「ながら行為」を取り上げ、朝終礼等の場で、全員で唱和する活動)等5件であった。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

従業員が働きがいや心の充足感を感じながら、安心して働くことができる職場環境を整備していくことは、経営の使命だと考え、これまでも成長支援や仕事と生活の調和に関する様々な課題に取り組んできた。同社には、性別に関係なく、様々な個性や考え方を尊重しあい、「人財力」を支える企業風土がある。人事制度は、状況に合わせながら常に改定していく必要があると考え、新準社員人事制度についても、準社員の意識調査や日々の意見をもとに、納得性の向上や将来が描きやすくなるよう、各部門と議論を重ね策定した。

5. 取組の効果と今後の見通し

2016年4月の準社員人事制度の改定の柱は、、①「M・A・G・I・C」の5段階のグレードの役割を明確にし、評価・昇給・昇格といった制度全体をより分かりやすくし、納得性を高める、②グレード別教育を拡充し、個々のキャリア支援に取り組む、③各グレードの役割に応じた時給上限を引き上げるの3点であった。

特にキャリア支援については、中位グレードであるGへの昇格後3年目に、マンネリ化を防止するため、初心に立ち返れるよう、おもてなしや準社員に求められる役割等について来場者の声等をもとに考える研修を行うこととした。また、トレーナーやリーダーとしての役割が求められる上位グレードのIやCについては、当該グレードへの昇格前に、その役割を理解させ、昇格後の戸惑いを少なくし精神的な負担を軽減させる支援を目的とした「キャスト役割理解研修」を新たに導入した。これらのグレード別の教育プログラムへの2015年度の参加者数は約17,000名であったが、2016年度は約25,000名の参加を見込んでいる。

上位グレードの役割を担うようになると、それまでと比べてゲストとの接点が減少する傾向がある。準社員の中には、後輩の育成や昇格することよりも、来場者との触れ合いを働く喜びとしたいと考え、中位グレードに留まることを希望するキャストもいることから、同社では、上位グレードへの昇格ありきの考え方ではなく、準社員一人ひとりの働く目的が多様化していることを理解し、本人の働く価値観を尊重し、個々人の望むキャリアを支援したいと考えている。社外体験学習や働き方モデルの作成・公開についても、「今だけでなく将来のことも考えてほしい、自社内で昇格することや正社員になることだけがすべてではない、準社員こそダイバーシティの宝庫。会社として“豊かな人生”をサポートしたい」という思いから実施している。

人事制度や教育プログラムの改定については、従業員満足度調査や各種アンケートを定期的に実施し、課題を把握した上で実施した。その他、アンケートに基づき各職場レベルでの改善策についても継続して取り組んでいる。

その結果、2010年度から実施している従業員満足度調査では、「働くことに誇りを感じる」準社員の比率が全体の8割を越える高水準を維持できており、勤続年数の伸長もみられ、ボトムアップKAIZENアイデアを提案する“I have アイデア”への参加率も向上し、準社員がモチベーション高く勤務していると感じている。また、2015年度の準社員の年次有給休暇取得率は94.4%となっている。

テーマパーク運営において、準社員一人ひとりの心のこもったホスピタリティの提供は決して欠かすことのできない重要な要素である。今後も、全従業員がこれまで以上に働きがいや成長を感じることのできる環境づくりを推進するため、準社員の声を聞き、各取組の検討・改定を重ね、ホスピタリティ力をさらに高めていきたい。

具体的には、定着していくように人事制度のブラッシュアップ、育児・介護制度の見直し、グレード別研修やビジネススキル研修等の研修のバリュエーションを増やすことや内容の検討、2020年の東京オリンピックを控え「おもてなし」やサービスを継続的に向上させていく取組等を考えていきたい。

従業員の声

キャスト力を磨き、働く楽しさを後輩たちに伝え続けていきたい
(アトラクション運営部アトラクショングループ勤務、準社員(Iキャスト)、勤続3年6か月)

ディズニーフィロソフィーやキャストの役割を後輩たちに伝える重要な役割である、入社時研修の講師“ユニバーシティリーダー”に憧れ、「あのお姉さんみたいになりたい」と目指す目標ができた。その後、ユニバーシティリーダーに選抜され、1年間大役を担った。海外研修にも参加し、経験や視野が広がった。「自分からコミュニケーションを取ることの大切さ」、「伝えるためには人の話を聴く力が欠かせない」等、様々な経験から仕事のやり方や将来について考えるきっかけにつながった。現在、Cキャストのトレーニングを受講中であり、さらにキャスト力を磨く努力をしている。キャスト力を上げることで、自分ができるフィールドが広がるのではないかという思いが強くなり、将来はスーパーバイザーとなれる、テーマパークオペレーション職の内部登用に挑戦したいと考えている。今回の人事制度改定により、各グレードのキャストの役割が明確にされたことで、自分の立ち位置がはっきりした。仕事に対する充実感を日々感じながら業務に励んでいる。働くことの楽しさ、やりがいを後輩たちに伝えていきたい。

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