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株式会社ζ社

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業支援事業(雇用管理改善)より

キャディの育成とその不確定性の高い勤務形態に対して処遇安定を図るための独自の工夫を行う

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 生活関連サービス業・ 娯楽業
従業員数 191名 パート労働者数 126名
事業概要 娯楽業
ポイント
  • 長期の見習期間設定と実戦的な試験により、難しいキャディの育成に対応。
  • 時間給とラウンド手当の組み合わせ運用により、不確定性が高いキャディの勤務形態に対して処遇安定を図る。
  • より幅広い内容に対応できるよう、相談窓口に外部機関も活用。

1. 企業概要・人員構造

同社は昭和34年に設立され、翌年から東京近郊でゴルフ場の営業を続けており、現在は周辺地域でゴルフ練習場3か所及びテニスクラブ1か所の営業を併せて行っている。

現在の社員構成は正社員が65名に対して短時間社員(以下、便宜上「パート」と表記する)は126名となっているが、そのうち、勤続年数が2年以上で週の所定労働時間が30時間を超えて社会保険に加入している者(17名)を同社では「準社員」と呼び、それ以外の者(109名)を「アルバイト」と呼称している。これらの社員の多くはゴルフ場で就業しているが、3か所のゴルフ練習場及びテニスコートにもそれぞれ数名の正社員と10~20数名のパートが配置されている。そして各所で従事する職務は、キャディ、レストランホールサービス、フロント接客、設備用具準備等にわたっている。

パートの採用は事業所長の権限で行われ、配置される職務の勤務態様と本人希望に基づいて勤務日時を定めた雇用契約を直近の9月15日まで結び、その後は1年間の雇用契約を繰り返している。そして実際の勤務日と勤務時間は、本人から希望申告を受けて月単位で作成する勤務シフト表により決定している。

パートの給与は時間給で計算されるほか、交通機関利用実費又は自動車通勤ガソリン代実費の通勤手当(正社員と同一基準)が支給されている。また、キャディ職を除いて職務内容は正社員とは垂直分業されており、リーダー等への登用や他職種、他事業所への異動は行われていない。

2. 取組の背景

創業の翌年、昭和35年にオープンした同社の基幹事業であるゴルフ場では、都心から近い名門コースとして正社員中心の事業経営が行われてきた。その後、昭和56年にゴルフ練習場の事業を開始したことを機会にパートの活用も行われるようになり、ゴルフ場においてもパートの導入が進んで現在に至っている。

パート採用については、各事業所とも地域に広大な住宅地を有していることから、主婦と定年退職者層を中心に比較的高質な人材の確保が可能であり、その育成についても、セクションごとに特徴的なサービス手法をベテランの正社員が指導していく方法が採られてきた。

3. 取組の内容

見習い指導を重視したキャディの育成

キャディはゴルフ場特有の職種であり、業務内容や繁閑への対応等の仕事特性から主婦層を中心とした女性パートタイマーの活用が進んでいる。その中で、長時間にわたる接遇サービスに対する顧客からの評価がゴルフ場自体への評価ともなり得るところから、正社員・パートに関わらず新規採用者の育成については独自の工夫によるシステムが用意されている。

採用から少なくとも3か月間は、「見習いキャディ」として班長、副班長又はベテラン社員のラウンドに帯同させて、仕事の詳細や競技ルールを覚えることに専念させる。その後、キャディマスター室長からの推薦を得た者に対して支配人が顧客役になって実際にラウンドをする「見極め試験」を実施して、これにパスした場合に初めて「キャディ」として、顧客とのラウンドが認められる。

パートと正社員共通のラウンド手当を効果的に運用

キャディ業務の特性として、顧客数の見込み違いや天候事情等により予定通りには稼働できないことも多いことから、予定された勤務自体は保障しながらキャディとして実際に稼働した場合には処遇が厚くなるよう、「ラウンド手当」を設け、その支給方法を効果的に運用している。

パートのキャディ職の場合は、シフト表で定めた勤務時間に対して時間給が支給されるが、実際にキャディとしてラウンドした場合に、その時間分の時間給に替えて1万円の「ラウンド手当」が支給される。

一方、月給制である正社員に対する「ラウンド手当」は、基本給のラウンドした時間相当分と1万円との差額が支給されるため、キャディとして稼働した部分に対する処遇はパート、正社員が同一となっている。

見習いキャディ制度と見極め試験

管理職の推薦に基づく正社員登用制度を運用

パートから正社員への登用については、以下の要件及び手順で実施されており、社内報で全員に周知されている。

正社員への登用を希望する準社員(週30時間以上勤務、かつ勤続2年以上)は、ゴルフ場支配人又は練習場を統括する支配人の推薦を得て本社役員による正社員採用面接を受けることができ、これに合格すれば正社員への登用が決まる。

一方で、現場の管理者である所長や支配人は、日々のコミュニケーションを通して部下である準社員の就業志向と能力を把握しており、正社員採用の状況に合わせて適合者に登用推薦の声掛けをすることも可能である。

ただ現行の準社員にとっては勤務日の自由がなくなることや転勤に対するハードルが高く、この規定に基づく社員への登用は本年のキャディ職1名にとどまっている。

社内窓口と外部窓口、2本立ての相談窓口を設定

同社では勤務する全社員を対象にして「ヘルプライン」と称する相談窓口を社内と社外の双方に設定して、パートタイム労働法に定める相談窓口機能だけでなく、苦情処理やセクハラ・パワハラ相談、コンプライアンス通報等あらゆる内容に対処できる体制が採られている。

社内窓口は総務担当課長、外部窓口は同社の所属する企業グループ全体で委託をしている弁護士事務所を、2本の「ヘルプライン」として相談内容により社員がどちらの窓口でも選択できるよう、電話その他の連絡方法を社内報で全社に周知している。

4. 成果と課題

同社は、余暇活用事業に特有の繁閑に対応するためのパート配置を進める中で、仕事に必要なスキルとマインドを醸成する指導をサービスに精通した現場のリーダー、責任者が個々に行うことにより、サービスレベルと経営効率の両立を果たしてきた。120名を超えるパートの平均勤続年数が7年を超えていることは、今現在が安定した就業環境にあることを示している。

ただ、この状況下であればこそ、一人ひとりの仕事に対する努力度合いやサービス提供の成果等を評価し処遇にも反映する「評価制度」を導入し、新たな働きがいを喚起しながら仕事の質の維持向上を図っていくことが、パート活用における課題であると捉えている。

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