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株式会社ε社

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業支援事業(雇用管理改善)より

各人が望む家庭と仕事の「時間配分」を十分に反映した勤務体制を作り、キャリアアップの一環としての正社員登用制度も積極的に行い、人材の定着を図る

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 福祉
従業員数 約2,860名 パート労働者数 約1,920名
事業概要 社会保険・社会福祉・介護事業
ポイント
  • 勤務時間、勤務日の希望を丁寧にヒアリングし、家庭と仕事の両立ができるように配慮したシフト体制を実施。
  • 経営理念の浸透に重点を置いた入社時研修、職員同士の推薦による表彰制度によりモチベーションの向上を図る。
  • 正社員登用制度により能力活用と長期雇用を促進。

1. 企業概要・人員構造

同社は、平成16年に創業し、サービス付き高齢者向け住宅の運営、デイサービス、訪問介護を中核に据え、そのほか多様な高齢者福祉事業を全国で展開している。グループ全体の拠点数は全国に127拠点あり、そのうち同社の高齢者福祉の拠点数は、96拠点である。

雇用区分は、無期雇用である正社員と有期雇用である非正規社員に分かれ、さらに正社員においても、正社員(総合職)と地域限定正社員の区分がある。正社員は約900名、非正規社員は60歳以上の定年退職者等からなる契約社員(月給社員)が約25名、時間給パートタイマーが約1,800名、訪問介護等を担当する登録ヘルパーが約130名である。時間給パートタイマー及び登録ヘルパーのうち約4割がフルタイム勤務、約6割が短時間労働者(パートタイム労働者)である。

雇用区分のまとめ

  雇用期間 勤務時間 給与体系 賞与 退職金
正社員 無期雇用 フルタイム 月給制 あり あり
地域限定正社員 無期雇用 フルタイム 月給制 あり なし
契約社員 有期雇用 フルタイム 月給制 あり なし
時間給パートタイマー 有期雇用 フルタイム又は短時間 時給制 なし なし
登録ヘルパー 有期雇用 短時間 時給制 なし なし

※以下、文中では時間給パートタイマーと登録ヘルパーを「パートタイマー」とする。

同社では、正社員と非正規社員の仕事については、介護サービスの業務については違いがないが、職責、職位の面で違いがあり、管理職、リーダー等の役職には正社員が就く。

パートタイマー(時間給パートタイマー及び登録ヘルパー)の雇用期間は、原則として初回は3か月、その後は1年以内としている。入社後の3か月については、会社・パートタイマー双方にとって非常に大切な時期であり、会社が適正を見る期間でもあるが、パートタイマーにとっても会社をよく見極める期間だと捉えている。

2. 取組の背景

介護サービスに携わる人材確保の必要性が高まる中で、採用したパートタイマーが職場に定着し、長期勤続へとつなげていくためには、会社が働きやすい職場環境を整備していくことは必須である。

パートタイマーは家庭を持つ女性が多いため、1日又は1週のうち、一定の時間を家族のために使いたいという者も多く、その気持ちを十分に尊重した上で勤務時間や勤務日を設定することが定着率向上につながっていく。また、企業理念の浸透や担当業務のマッチングに十分に時間を掛けることも、同じく定着率向上につながると考えている。そのため、経営理念を浸透させる研修や、勤務の希望については丁寧なヒアリング等を実施してきた。

3. 取組の内容

採用面接時の入念なヒアリングにより入社後のミスマッチを予防

パートタイマーは女性が多く、家庭との両立に配慮する必要がある。そのため、面接の際に応募者本人の希望を詳細に聴取できるように、「勤務可能な時間帯」、「希望の勤務地」、「通勤可能な範囲」、「給与について配偶者の扶養の範囲内で働きたいか」「将来的な正社員登用への希望の有無」等の項目が記載された全社共通の面接記録票を使っている。面接では、子育てのために夜は在宅しなければならず夜勤はできない、保育園に預けているため18時で退社したい、子どもを送り出してから出勤するので早番はできない、夫が土日は休みのため自身も家にいたい等の要望が出される。当初希望していた事業所では、応募者が希望する時間帯に人員が足りている場合は、通勤可能な他の事業所を提案する。エリアごとに事業所間の調整を行うブロック長を配置しており、また、日頃から同じエリア内の所長間の情報交換が行われているため、そのような柔軟な対応が可能である。

経営理念浸透を念頭に置いた入社時研修の実施

首都圏の事業所においては、雇用区分・職種に関わらず、入社したすべての人を対象とした入社時研修(「初任者研修」という)を毎月1回、本社で実施している。内容は、社長自身による企業理念の講話(2時間程度)、ホスピタリティ・傾聴・ビジネスマナー研修、グループワーク等であり、その全部を1日かけて行う。原則として、入社後の受講可能な直近の日に受講する。会社のトップが直接話すことにより、単に介護職員として入社したという意識にとどまることなく、経営理念、会社の方向性、目的を共有でき、ひいては最終目的である理念の実現を果たすことができると考えている。遠方の事業所を開設する際は、社長が直接出向き、同様の研修を行う。出席は、勤務時間として扱い、交通費も支給する。

採用以降の研修としては、職種別の研修がある。介護職、サービス提供責任者、生活相談員、ケアマネージャ-、看護師、調理スタッフ、まとめ役となる介護リーダー、調理リーダー等、高齢者サービスを行っていく上で中心的な職種や職位ごとに、月1回又は2~3か月ごとに1回研修を行っており、パートタイマーも必要に応じて参加している。

費用の補助により資格取得を促進

介護の資格を持たないパートタイマーが、入社後に介護職員初任者研修を修了し、本人からの申請があった場合は、受講修了後半年が経過した際に、自己負担した受講費用全額を本人に支払っている。

契約更新時期に人事評価を実施

契約更新時には、過去1年間の勤務評価を行い、更新後の昇給有無及び昇給額を決定する。

パートタイマーの勤務評価については、所属組織の目標を踏まえ、個々人が期待される役割をどのくらい果たせたかという視点で、各事業所の管理職が、評価している。その評価結果に基づき昇給の有無を判断し、昇給額、昇給根拠を記載した文書を作成して本部に提出し、本部にて昇給額の最終決定を行っている。

正社員登用制度により能力を積極的に活用し、長期雇用の促進を図る

パートタイマーが正社員登用を希望し、所属長が推薦した者は、転換試験(筆記テストと役員面接)を受けることができ、合格した者は正社員に登用される。正社員に登用された者は、地域限定正社員(通勤が2時間以上の場所への異動はない)となるが、パートタイマーは現在の住居から通えるからこそ勤められるという人がほとんどであるため、地域限定正社員への登用希望が多い。処遇は、有期雇用から無期雇用に変わり、時給制から月給制になり、賞与も支給されるようになる。年間の転換実績は約50名(グループ全体では約100名)である。

会社の多様な事業展開や全国展開を職員のキャリアアップ等に活用

同社は、サービス付き高齢者向け住宅を中心に、デイサービス、訪問介護、グループホーム、医療対応型介護、看取りのケア、老人ホームの運営等、様々な高齢者サービスを展開しており、職員が希望し、会社が認めて異動した場合は、これまでとは異なる業務を経験することができる。なお、訪問介護等、介護保険範囲内のサービスを十分に理解した上で行うべき業務もあり、実務に加え、介護保険法の知識が深まるものもある。

異動は、年に1回の職務申告制度に基づき申し出ることができる。この制度はパートタイマーも含めて全社員対象だが申出は任意である。パートタイマーは社内での異動よりも正社員転換の希望の方が多い。

社内での異動に加え、グループ企業内での異動も可能であるため、保育資格を有する正社員が介護職からグループ内の保育を行う他の会社への異動をしたこともある。

また、パートタイマーの配偶者が転居を伴う転勤となった場合、パートタイマーが、同社及びグループ企業の事業所へ異動することが可能であり、この対応は全国展開している強みでもある。実際にパートタイマーが千葉県から神奈川県に異動した実績がある。

職員間で選ばれた職員を表彰し、モチベーションの向上を図る

半期に一度、事業所ごとに、職員各人が「頑張っているのでMVPとして推薦したい」と思う人を投票により1名選出し、本社にて表彰を行う(「MVP制度」という)。日頃、同じ職場で仕事をしている同僚からの推薦であるため、現場に即した現実的な評価である(所長に投票の権限はない)。全職員、全職種が対象であり、直近では72名が表彰された。3回以上選出された者は「殿堂入り」という扱いになり、パートタイマーで殿堂入りした者もいる。

個人の働きぶり・パフォーマンスにスポットを当てたMVP制度により、職員同士が良いところを褒め合い認め合う社風が促され、推薦された者も推薦した者もより一層頑張ろうと「やる気」を高めることができる。

4. 成果と課題

パートタイマーについては、本人が「どのように働きたいか」という点を尊重してきた結果、勤続が10年を超える者、会社創設当時から継続して勤務している者もおり、長期勤続に結びついている。

今後も引き続き、長く働ける環境を整えていきたいが、そのためには職員の子どもの預け先の確保の必要性を強く感じている。

育休終了後の子どもの預け先がないため、職場復帰できない、短時間しか働けないという声を聞くことがある。グループ企業の中に、保育を中心に展開している企業もあるため、許認可事業である保育事業に係る制約については理解しているものの、行政の許認可で行う保育以外の部分で、子どもを預け、子育てしながら働ける環境づくりに寄与できないか、今後検討していきたい。

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