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株式会社γ社
計画的な教育研修でパフォーマンスを高め、正社員転換を促進
正社員転換推進措置
所在地 | 東京都 | 業種 | サービス業 |
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従業員数 | 23,073名 | パート労働者数 | 12,391名 |
事業概要 | その他の事業サービス業 |
ポイント |
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1. 企業概要・人員構造
同社は、1982年の創業以来30年以上にわたって、コールセンターアウトソーシングを中心としたCRM1ソリューションを企業に提供している。全国各地に25の拠点を持ち、取引企業は約5,000社にのぼる。
雇用区分はTYPE1(正社員)、TYPE2(専門職の契約社員、フルタイム)、TYPE4(短期雇用、フルタイムと短時間勤務)と、3つに分かれている。
TYPE4社員の9割以上は、コールセンターのオペレーターであるコミュニケータを務めている。TYPE4社員の中からコミュニケータのとりまとめを行うリーダー等に任命されている者もいる。週の労働時間は3~4時間からフルタイムに近い時間までと様々で、拠点ごとにクライアントの特性に合わせて決定している。1回の雇用契約期間は3か月又は6か月で更新の上限や定年はなく、70歳以上のTYPE4社員もいる。
1 Customer Relationship Management。
2. 取組の背景
これまでのコールセンターに求められる役割は、単純な問い合わせ対応や案内であったが、現在では、商品やサービスを利用するお客様のリアルタイムな声を集めて分析し、企業の経営判断の土台となる活きた情報へと変化させることが求められるようになってきた。そのため、高いスキルと深い知識を持ったコミュニケータを育成するため、様々な教育研修の実施や表彰制度を活用して、個々のパフォーマンスを高めるための取組を行っている。
3. 取組の内容
TYPE4社員の役割と賃金体系
短時間勤務であるTYPE4社員のほとんどはコミュニケータであるが、アシスタント・ディレクター、チーフ・リーダー、リーダーの役割を担う者もいる。コミュニケータからリーダーへ、リーダーからチーフ・リーダーへのステップアップのためには研修を受講する必要があるが、試験等は課されていない。チーフ・リーダーからアシスタント・ディレクターへの登用に当たっては、上司の推薦や人事評価結果が要件となり、課題レポートプレゼンテーションによる面接試験に合格することが必要となる。
それぞれの役割と賃金体系は以下の通りである。
役割 | 役割内容 | 賃金体系 | 雇用体系 | 評価制度 |
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アシスタント・ディレクター(A-Dir) |
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時給制 基本給(エリア別×格級別テーブル)+管理者JOB給(業務加算給) |
雇用期間 原則6か月以下 |
「姿勢・スキル評価」 |
チーフ・リーダー(C-LD) |
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リーダー(LD) | ||||
コミュニケータ(CM) |
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時給制 エリア別基本給+基本給2(評価給)+JOB給(業務特性に応じ加算) |
「CM評価」 |
役割に応じた評価制度
アシスタント・ディレクター、チーフ・リーダー、リーダーに対しては年2回「姿勢・スキル評価」を行っている。「姿勢・スキル評価」では、「業務姿勢」と「業務スキル」の各項目を採点し、評価点を算出して基本給額を決定している。
姿勢・スキル評価
コミュニケータに対しては年2回「CM評価制度」を実施している。
「全社共通評価指標」は「CM姿勢」を評価項目とし、全社統一の評価項目で業務取組姿勢(協調性、責任感等の7項目)を評価する。「JOB別評価指標」は、「勤怠」等の4指標とし、指標ごとの評価項目や配点は、業務特性に応じてJOBごとに設定している。業績等を勘案して、所属部署ごとに評価テーブルを設定し、時給に反映させている。
多種多様な教育研修
プロフェッショナルなお客様対応のためには、知識に加えて「正確さ」「迅速さ」「丁寧さ」といったテクニックが必要となる。同社では、心地の良い応対テクニックを身につけるため、言葉遣いや対人コミュニケーション力等を磨くための各種研修を用意している。また、個人情報や企業情報を取り扱う上でのセキュリティについても学んでいる。
主な教育研修プログラム
研修 | 内容 | 実施方法 |
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入社時研修 |
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拠点ごとに、TYPE1もしくはTYPE4のリーダーが講師となり2週間から1か月程度 |
業務研修 |
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新たなクライアントや商品を扱う際や変更点があった際、各拠点のTYPE1もしくはTYPE4のリーダーが講師となり実施 |
フォローアップ研修 |
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フォローが必要な従業員に対して不定期に実施 |
CRMリテラシー研修 |
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コミュニケータでリーダーを目指す人を対象に実施 |
これらのほか、チーフ・リーダー、アシスタント・ディレクター等を目指す者を対象とした研修も実施している。
タイプ変更による正社員転換を実施
TYPE4社員にキャリアアップの機会を提供し、人材の有効活用を促進するため、毎年3月と10月にTYPE4社員からTYPE1社員へのタイプ変更を行っている。
タイプ変更の対象者の要件は、「担当する業務において必要十分な経験を有し、同一業務を担当するTYPE1社員と比較して遜色ない成果を上げていること」となっており、要件を満たす者がいた場合には、本人の了解の下に上司から提出された推薦を所属部門長が精査し、本部主管部門に対して申請を行う。
選考は、適性検査と個別面接を主管部門が実施し、合否を判定する。2014年3月から2015年2月までのタイプ変更者は21名で、制度を導入した2008年からの累計人数は約150名に上る。
各拠点で業務特性に合わせた福利厚生を提供
多くの拠点では広い面積を使った休憩室や仮眠室が整備され、仕事時間と休憩時間のON/OFFの区別に配慮した環境となっている。また、無料のドリンクサービスやマッサージチェアを設置している拠点もあるなど、リフレッシュするための工夫がされている。
在宅勤務の導入
多様な働き方の一つとして、2015年8月から在宅勤務を導入している。事務職のみを対象としており、育児中のTYPE4社員数名が在宅勤務を行っている。
より身近な相談窓口の設置
2015年4月のパートタイム労働法改正を契機に、各拠点の人事に相談窓口を開設した。4月から8月までの相談総数は86件で、1営業日に1件のペースで相談が寄せられている。身近に相談窓口が設けられたことで、労務トラブルは減少しており、相談窓口が機能している成果と考えられる。
各種相談窓口
内容 | 担当 | |
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働く相談窓口 | 労務問題・職場環境・退職等「働く」ことに関する相談窓口 | 各拠点の人事 |
心のカウンセリング | 悩み・ストレス等に関するカウンセリングルーム。電話又はメールで対応 | 専門のカウンセラー |
セクハラ/パワハラ ホットライン |
セクハラ、パワハラに関して、電話や対面でカウンセリング | 専任カウンセラー |
企業倫理ホットライン | 法令違反や不正行為等のコンプライアンス違反についての通報窓口 | 弁護士 |
ほめる文化を醸成する表彰制度
数多くの現場のスタッフの頑張りに感謝し、その成果をほめたたえ、その文化の中で「次のやる気」を生むことを目指し、CRM Awardsという表彰制度を設けており、多くのTYPE4社員が表彰されている。
各賞の選出基準に則り、設定された表彰枠数に準じて受賞者を選出し、エリア長・本部長の承認の下、表彰する。受賞結果はイントラネットで配信するほか、受賞者の写真にどのようなポイントが評価されたのかというコメントを付けて、社内に掲示している。また、受賞者はIDカードを提げるストラップの色が変わるため、一目で分かるようになっている。
表彰概要
種類 | 表彰部門 | 副賞 | |
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全社表彰 | 上期・下期表彰 | Dialogue賞、 Productivity賞、 Sales賞、LD賞 ※同じ賞を3回受賞で殿堂入り |
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年間ベスト | 上期・下期各受賞者の中から各賞1名を表彰 |
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エリア表彰 | エリア賞 | 各エリアで表彰部門、表彰対象、表彰人数を独自に企画・設定 |
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選出基準
賞の種類 | 選出基準 |
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Best Dialogue | 応対品質スキルの高い人を選出 |
Best Productivity | 1時間当たりの平均受発信件数、平均処理件数の多い生産性の高い人を選出 |
Best Sales | セールストークにより商品及びサービスの受注・成約を取り付ける業務において、獲得件数が多い人を選出 |
Best LD | コミュニケータの成長に大きな成果を上げたリーダーを選出 |
エリア賞 | エリアで企画した表彰基準に則り、対象者を選出 |
4. 成果と課題
CRM Awardsでは多くのTYPE4社員が表彰されており、日頃の頑張りを会社がきちんと評価することで、より意欲的に仕事に取り組んでくれていると感じている。また、TYPE4社員からTYPE1社員への転換を積極的に実施することで、優秀な人材の継続雇用が可能となった。
課題としては、TYPE4社員としてリーダー等マネジメントを行っている者について、人事管理面でトラブルになるケースが見受けられるため、今後はマネジメント教育にさらに力を入れていきたいと考えている。
現在TYPE4社員にはリーダー等の役割はあるものの、等級制度やTYPE1社員と共通した人事制度はない。しかし、TYPE4社員の上位層とTYPE1社員の下位等級で役割が重なっている部分があることから、その整理を含めて2016年度からすべての雇用形態に共通の人事制度ポリシー(仕事軸の格付け、成果に応じた報酬)を適用し、TYPE4社員に職務Grade制度を導入する予定である。
また、会社の将来的な成長を支える人員増強が必要だが、若年層や優秀な人材の採用が難しくなってきていることもあり、有期契約労働者の無期契約化を見据えながら、優秀なTYPE4社員については、契約期間5年を待たずにTYPE1社員への転換を図っていく。TYPE1社員になると転勤が必須となり転換に当たっての障害になっているケースもあることから、地域限定社員の新設も検討している。