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株式会社α社
教育計画と連動して昇級基準表を活用し、昇給とモチベーションアップを図る
正社員転換推進措置
所在地 | 石川県 | 業種 | 生活関連サービス業・ 娯楽業 |
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従業員数 | 約200名 | パート労働者数 | 約150名 |
事業概要 | スポーツ施設提供業 |
ポイント |
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1. 企業概要・人員構造
同社は、現相談役が(株)北國銀行に勤務していた時に体調を崩し、医療と健康に着目したことを機に1987年に設立された。現在、直営事業所を6か所(石川県5か所、愛知県1か所)、受託事業所を10か所運営している。
パートタイム労働者(以下、同社の呼称である「エース」という)の構成は、約半数が同社の仕事を本業とする者であり、主婦が約2割、学生が約3割である。
エースは各施設での面接に合格した場合、採用に至る。面接官は施設長、本社人事担当1名もしくは外部の研修ディレクターが行う。
エースの雇用期間は、入社日から最初に到来する3月31日までを初回の契約期間とし、以降4月1日を始期として1年契約(更新あり)としている。
勤務形態については正社員が週5日、1日の所定労働時間を7時間30分としていることに対し、エースは週1~5日、1日の所定労働時間を4時間以上7時間の範囲で本人が希望した日及び時間を基にシフトを組んでおり、最も多い勤務形態は週5日、1日6時間勤務である。
エースの配属先は、若干名が本社に配属されるほか、9割以上の者がフィットネスクラブである。フィットネスクラブでのエースの仕事は、フロント(受付)・マシンやダンススタジオでのトレーナー・スイミングインストラクターの3つに大別される。正社員は異動の可能性があるが、エースは異動しない。
賃金は、正社員は日給月給制であるが、エースは時給制、そのほかに通勤手当、レッスン手当、衣服手当を支給している。時給は800~1,100円、レッスン手当はダンスやスイミング等その内容に応じて1時間当たり100~300円を加算している。衣服手当は1か月当たり2,000円を支給している。
賞与は1年以上勤務し、人事等級2等級以上である場合に、人事考課点数に応じて年2回(7月と12月)支給している。なお、退職金はエースに適用されない。
2. 取組の背景
同社の事業運営において、以前は主に繁忙期に限ってパートタイム労働者を活用していたが、トレーニング方法や人間の体のつくり等を習得する専門研修やお客様の指導方法等を習得する実務研修を通じて戦力として活躍するようになり、人件費を抑制できるメリットもあったことから、正社員よりパートタイム労働者を多く活用するようになった。
3. 取組の内容
教育計画書に基づくOJTで能力開発し、昇級基準表を用いて昇給とモチベーションアップを図る
同社はエースの能力水準を時給に連動させて等級に位置付ける昇級基準表を設けており、等級表に基づく昇給をモチベーションの一つとして考えている。以下の表は昇級基準表の概要である。
等級 | 時給 | 求められるレベル |
---|---|---|
見習い | 800円 | 気持ちの良い挨拶をすることができる。毎日日報を提出することができる |
1級 | 850円 | 基本的な接客スキル(レジ担当)が身についている |
2級 | 870円 | フロント担当:見学セールスの対応をすることができる トレーナー担当:カウンセリングの対応をすることができる |
3級 | 900円 | 後進の指導を行うことができる。事業所のイベントを企画することができる |
4級 | 1,000円 | 後進の指導を行うことができる。担当業務の管理を行うことができる |
エースはOJT担当者より同社が作成する教育計画書に基づき業務を教わる。教育計画書はフロント業務用とトレーナー・インストラクター業務用の2つがあり、フロント業務用の計画書には受付対応、セールス(プログラム及び商品)に関する事項が記載されている。一方、インストラクター業務用の計画書には、トレーニング機器の操作方法、お客様のカウンセリング(目的・目標の設定とプランニング)方法に関する事項が記載されている。
OJTの期間は週5日勤務する者で3か月程度、週3~4日勤務する者で6か月程度の期間を想定している。OJT担当者が各等級の仕事ができるようになったと判断した場合に施設長に報告、施設長が業務レベルの確認を行い、クリアしている場合は本社へ報告を行い随時等級がランクアップして昇級が行われる。同社では2等級に至ったものを一人前としており、OJT担当者は2等級以上のエースが担当する。1名のOJT担当者は4~5名のエースを担当している。
賞与に連動する人事考課の実施
同社は会社方針への理解、規律の順守、業務能力等の項目から成る人事考課表を設け、年2回人事考課を実施している。各項目は5段階評価となっており、この仕組みはエースを含む全従業員が対象となっているが、雇用区分や等級によって点数の配分が異なる。人事考課は、本人が施設長に自己申告を行い、施設長と30分程度の面談を実施し評価を決定する。人事考課の結果は、賞与及び昇級・昇給に反映される。
業務レベルを向上させる充実した研修制度
同社では、マナー研修、実務研修、専門研修、スイミングインストラクター養成研修の4つの研修をエースを含む全従業員を対象に実施している。
マナー研修は、入社直後に同社の正社員が講師となり、挨拶や表情のつくり方、身だしなみを教える。さらに入社1か月後に外部講師を招き言葉遣いやコミュニケーションの取り方を教える。
実務研修は、測定機器の使い方やお客様への指導方法を習得することを目的として実施する。
専門研修は、施設ごとにトレーニングの理論や人間の体の仕組みを学ぶ機会として外部講師を招き、月に1度実施される。
スイミングインストラクター養成研修は、インストラクターの業務に従事できるよう、教え方を習得する研修であり、希望者が受講することができる。
永年勤続の表彰制度を設け、従業員の定着を図る
同社は、エースを含む全従業員について、勤続10年になった者に賞状と3万円を支給し表彰している。勤続表彰により貢献を認めることで、当該社員のさらなるやる気を高め、定着率の向上を図っている。
公募により正社員転換を実施
同社は新規出店を予定する際や正社員の退職の際に、公募によりエースからの正社員転換を行っている。公募の期日までにエース本人が施設長に申請を行い、施設長が推薦文を本社へ提出する。後日、役員5名との面接を実施し、合格した場合は最初に到来する4月より正社員となる。直近では2014年に2名の転換実績があり、また、2016年4月に2名が転換する予定である。
4. 成果と課題
昇給や賞与の支給はモチベーションの向上や定着率の向上に寄与しており、現在平均勤続年数が約4年となっている。
正社員転換に関して課題として認識していることは、役員との面接時に正社員に求められる能力や意識のレベルに達していない者が多いため、希望者の多くを正社員に登用できないことである。