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(株)成城石井

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業支援事業(雇用管理改善)より

充実した教育制度・コンテスト開催等によって理想の接客像を共有、優秀なスタッフは積極的な社員登用にて事業拡大を推進

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
8.職場のコミュニケーション等
所在地 神奈川県 業種 小売業
従業員数 4,050名 パート労働者数 3,135名
事業概要 飲食料品小売業
ポイント
  • OJTシートを共通様式とした教育内容・質の標準化。
  • リーダーやチーフリーダーへの役職登用を推進し、職位に応じた賃金構成によりモチベーションの向上を図る。
  • 本人が活躍の場を選べる正社員転換制度。

1. 企業概要・人員構造

同社は1927年、世田谷区にて食品店として創業。1980年代以降、他の食品店では扱いのない良質の国内外の商品を中心とした品ぞろえが好評を呼び、駅に直結する商業テナントビル等に次々と出店し、2013年には100店舗を超える。また実店舗以外にネットショップも構えるほか、主力商品であるワインを売りに飲食店舗も展開する。

同社では、店舗規模によっても異なるが、パート社員・アルバイト社員(パートタイム労働者)が店舗人員の約7割を占める。また店舗以外では本部、セントラルキッチン(集中調理施設)においてパート社員が活躍している。アルバイト社員・パート社員の主な業務は、店舗であれば品出しやレジ、惣菜づくり、鮮魚・精肉加工等である。一方、本部では一般事務、書類整理、データ整理等、セントラルキッチンでは製造ラインでの作業を担当することが多い。

「アルバイト社員」と「パート社員」は所定労働時間によって区分されており、前者は週30時間未満勤務、後者は週30時間以上勤務で社会保険の対象となっている。アルバイト社員に賞与は支給されないが、パート社員には年に2回、人事評価結果に基づいて賞与が支給される。

2. 取組の背景

食にこだわる人たちの「食のライフスタイルスーパー」というコンセプトを体現するため、よりお客様のニーズに寄り添ったサービスを可能にする従業員教育に力を入れている。現場の約7割を占めるパート社員・アルバイト社員の能力を最大限に引き出すために、多方向からの研修や教育制度が必要と認識し、OJTとOff-JTを組み合わせた充実した研修を行っている。

また、正社員の配置が少ない小規模店舗が増えているため、さらにパート社員・アルバイト社員の戦力化を進めることで質の高い店舗運営を継続させたいと考えており、リーダー登用や正社員転換等を積極的に行っている。

3. 取組の内容

職位や職能に応じた賃金構成

パート社員・アルバイト社員に対する給与は、基本給と職位給で構成される。基本給は、人事評価結果に基づき、年1回昇給の機会がある。後述する「リーダー」や「チーフリーダー」に登用され、他のパート社員・アルバイト社員を指導する立場にある者に対しては、時間当たり一定の「職位給」が加算される。

また、鮮魚加工能力が特に高いなど、特別な技能を持つ者に対しては技能給として基本給に加算される。

また人事評価に連動した賞与が年に2回あり、それをふまえた年間考課の結果に基づいて、年に1回の昇給がある。

Off-JTと計画的OJTを組み合わせた教育訓練

採用時には、本社にて半日~1日の入社時研修がある。経営理念やコンプライアンス関連の研修に加え、レジスタッフについては本社にある設備を利用して基本的なレジ打ちの研修も行う。この研修を本社で一括して行うことにより、現場の教育負担を一部軽減することが可能となっている。

店舗に配属されてからは、同じ店舗で働く正社員もしくはリーダー・チーフリーダー職に就くパート社員・アルバイト社員によるOJTが始まる。かつては店舗によりトレーニング内容にばらつきがみられたが、現在は本社の開発したOJTシートを共通様式として利用しており、教育内容・質の標準化が図られるとともに、身につけるべきスキルが可視化された計画的なOJTとなっている。

また、ワインやチーズ等の商品知識を学ぶための「商品スクール」研修が本社にて別途行われている。自主的に参加する場合と、店舗から派遣される場合とがある。パート社員・アルバイト社員を対象としたものは内容を厳選して短期間で学べるようにアレンジされており、受講のしやすさも配慮されている。

接客コンテストを通じさらなる接客品質向上を目指す

年に1度、パート社員・アルバイト社員を含む、全スタッフを対象とした接客コンテスト「ファイブスター・コンテスト」が行われている。各店舗から代表を選出し、1次予選、2次予選を勝ち抜いた者については、パート社員を含めた全従業員が集まる会社の経営方針説明会の場で、最終選考が実施され、最終選考で表彰された者は、「ファイブスター」の称号とともに、後述の海外研修に参加する権利が与えられる。

コンテストはロールプレイ形式で行われる。例えばチェッカー(レジ)部門であれば、最初の挨拶、金銭のやりとり、商品を袋に入れお客様にお渡しし見送る、というレジの一連の動作の中に、お客様との質疑応答を加えた内容のロールプレイで、その立ち居振る舞い全体が評価対象となる。接客部門では、本人が選定した商品を、5~6分の間にお客様にお薦めするロールプレイを行うが、ただ商品の詳細を述べるのではなく、お客様のニーズを聞きだしながら、お客様に最適な商品をお薦めしていく、という非常に高度な内容のコンテストとなっている。

ファイブスター・コンテストで評価される接客こそが、同社の目指す接客の最高峰であり、これを直接、多くのパート社員・アルバイト社員に見てもらうことで、日頃の自分の接客姿勢を見直す機会にしてもらいたいと考えている。

選抜者対象の魅力ある海外研修

同社では、パート社員・アルバイト社員を含む全スタッフを対象とした年に2度の海外研修を実施している。参加資格は前述のファイブスター・コンテストで入賞した者、全日本スーパーマーケット協会の主催するチェッカー検定で1級を取得した者のほか、大きな成果を出したスタッフから選抜される推薦枠もあり、毎回15名ほどが参加している。

行き先はアメリカ・イタリア・スペイン・フランス等多岐に渡り、ワイナリー訪問や現地スーパーマーケット見学等、同社で取り扱っている商品に関する知識をより深められる内容となっている。参加者本人の商品知識をさらに深めるのみならず、この経験を各店舗に持ち帰ることで、日常の業務や接客等に活かせる重要な機会となっている。

リーダー、チーフリーダーへの登用

パート社員・アルバイト社員の中に「リーダー」、「チーフリーダー」という役職がある。リーダーやチーフリーダーは、他のパート社員・アルバイト社員の指導的な立場であり、経験を積んだ人材が登用される。

リーダー、チーフリーダーへの登用は、勤続1年以上で週の所定労働時間が20時間以上のアルバイト社員及び勤続1年以上のパート社員が対象である。登用に際しては、所属長が推薦書を提出し、これをエリアマネージャーが承認する。推薦書にはこれらの役職に登用する条件がチェック項目として記載されており、そのチェック項目を満たした者が推薦対象となる。

また、パート社員・アルバイト社員がリーダーに登用された場合、登用時(及びその後も年に2回)に本社で実施されるリーダー研修を受講する。これらの研修では、他のパート社員・アルバイト社員を教育していくためのリーダーシップ、コーチング等を学ぶ。さらに、店舗を超えたパート社員・アルバイト社員の横のつながりを作ることも、この研修の重要な目的の一つである。正社員であれば部門会議等で他の部署・店舗で働く従業員と顔を合わせる機会があるが、パート社員ではその機会があまりない。しかし、他の店舗でリーダー職に就いている他のパート社員・アルバイト社員とのつながりをつくることは、モチベーション向上やスムーズな店舗運営にも寄与すると考えている。

準社員・契約社員を経て正社員へ転換可能

同社には、パート社員あるいはアルバイト社員から正社員に転換できる制度がある。転換に際しては、パート社員・アルバイト社員から直接正社員に転換するのではなく、まず一旦、準社員もしくは契約社員に転換することになっている。準社員・契約社員への転換に際しては、所属長が推薦書を提出し、人事部で面接、筆記試験を実施し、合格者を決定する。リーダーへの登用の際と同様、推薦書には転換する条件がチェック項目として記載されており、そのチェック項目を満たした者が推薦対象となる。

準社員もしくは契約社員に転換した者は、1年間勤務すれば、正社員転換試験(面接のみ)を受けることができ、合格した者が正社員に登用される。

正社員登用には無期雇用のエリア限定社員もしくは全国勤務社員のいずれかを選択することができる。なお、エリア限定社員と全国勤務社員は相互に転換することが可能となっている(年に1回、申告制)。2つの正社員区分間で月例給与に差はないが、賞与で係数をかけて差をつけている。

4. 成果と課題

充実した研修制度により、接客やレジの技術を含め、質の高い店舗運営が可能になっている。また、店舗でのパート社員に対する教育や評価制度は店舗ごとにばらつきがあったが、OJTシートを導入することでシステム化が可能になった。近い将来、このOJTシートと連動した等級、職位、昇給制度を導入し、さらに透明性の高い人事制度を構築していく予定である。

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