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プロジェクトファイブグループ
働き甲斐につながる人事諸施策を導入して、女性層の活用を図る。ファッションや生活様式に共感する商品の提案が働く楽しさにもつながる
正社員転換推進措置
所在地 | 愛知県 | 業種 | 小売業 |
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従業員数 | 560名 | パート労働者数 | 407名 |
事業概要 | その他の小売業 |
ポイント |
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1. 企業概要・人員構造
プロジェクトグループの中核会社である株式会社プロジェクトファイブは平成2年に、既に全国に展開されていた生活雑貨ブランドショップを岡崎市内にフランチャイズ出店するために設立された。その後も岡崎市内及び周辺地域に数店の同ブランドショップを開設していったが、平成13年からは他の生活雑貨やフットウェアのブランドショップ及びファッションブランドショップ展開にも取り組み、現在では東海地方に加えて関西地方及び北陸地方に、ブランド数では17ブランドにわたる52店舗をフランチャイズ及び自社経営により営業している。
これらのブランドショップのうち全体の半数を超える店舗については(社員数、売り上げ規模では全体の35%程度)、平成19年に設立された株式会社ウエイアウトにより経営されており、そこに就業する社員もウエイアウトに籍を置いているが、プロジェクトファイブとウエイアウトの就業規則や諸規定、人事関係ツールは同一の内容で、すべての人事管理は両社の統合された組織体制の中で行われている。
両社を併せた社員数は、正社員が153名に対してパートタイム労働者は407名となっている。その内の週の所定労働時間が30時間以上で社会保険に加入している137名を同グループでは「準社員」と呼び、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の108名を「パート」、週の所定労働時間が20時間未満の162名を「アルバイト」と呼称している。
ほとんどのパートタイム労働者は販売スタッフとして店舗に所属している。各店1~5名(兼務者を含む)の正社員と4~28名のパートタイム労働者という人員構成の中で、接客販売業務に加えて品出しや商品レイアウト、レジ打ち、ストック管理、環境整備等多くの販売付帯業務に携わっている。ただし、仕入発注、売上げ管理、社員の就業管理等の職務は店長をはじめとした正社員が行っており、パートタイム労働者の副店長や店長等役職への登用は行っていない。
パートタイム労働者の採用は店長の権限で行われ、初回の雇用契約は直近の2月又は8月の末日までで締結し、その後は6か月ごとに雇用契約を更新している。実際の勤務予定日時は、本人の希望申告も反映させながら月単位で勤務シフト表を作成し決定している。
また給与は時間給で計算されるほか、交通機関利用実費の通勤手当(自動車通勤者も同額)も上限を設けて支給している。
2. 取組の背景
同グループが展開するブランドはファミリーや女性をメインターゲットとするファッション衣料と雑貨を主に扱っている。特に創業時から出店を続けている生活雑貨のブランドは生活スタイルにおける独自の美学を提案するものとして現在も女性を中心に幅広い年齢層からの支持をうけている。その象徴として、販売スタッフとしてショップ運営の一翼を担っているパートタイム労働者の中には、かつてブランドコンセプトに惹かれてショップの固定客となっていた者もいる。
このことから、自身がファッションや生活の実践者であるため商品に対する知識・関心が豊富である女性層が、現行のショップ展開においては販売戦力として最も期待できると同グループは考えており、彼女たちによる就労ニーズにマッチする就労形態としてのパートタイム労働者に関する制度の構築を図り、パートタイム労働者が、働き甲斐や職場での一体感を持ちながら活躍できることを目指してきた。
3. 取組の内容
ランク別賃金テーブルを導入
同グループではすべてのパートタイム労働者(準社員、パート、アルバイト)を、担当させる職務のレベルに基づいて海に関わる仕事の役割階層から引用した「新人」、「スタッフ」、「クルー」、「マリーン」、「オフィサー」の5ランクに格付けして、店舗ごとに設定したランク別賃金テーブルにより時間給を支給している。
ランクごとの職務内容は次項に述べる「チャレンジアップシート」に記述されており、上位ランクに位置付けられている職務(チャレンジ職務)の遂行レベルが基準に達していればランクアップされる。
チャレンジアップシートを活用したランクアップ評価とフィードバック
チャレンジアップシート(以下「シート」という)は、新人とスタッフが共用される形でランク別に4種類作られている。シートには、実施すべき課業(詳細職務)と課業ごとの達成度に基づく配点数等が記載されており、対象者にとって現ランクのシートが「現行職務シート」、1ランク上位のシートが「チャレンジ職務シート」と位置付けられている。ランクアップ評価には上位ランクのシートが用いられ、対象者本人と評価者が課業ごとの達成度評価とその集計を行い、達成経過や評価理由等に関わるコメントをそれぞれが記入する様式となっている。
シートを使用した評価とフィードバックは、以下の手順で行われる。
- 店長から対象者に上位ランクのシートを配布
- 対象者は達成度の低い課業を自己確認して店長との面談に臨む
- 対象者と店長との面談で、レベルアップすべき課業とOJT方法を確認
- 次の評価実施までの間(ランクにより1~3か月間)、集中的にOJTに取り組む
- OJT期間終了後、対象者は上位ランクのシートを用いて自己評価を行い店長へ提出
- 店長はシートに上司評価、コメントを記入し本社のスーパーバイザーへ提出
- スーパーバイザーと採用教育担当は評価結果を調整し、ランクアップの可否を決定
- 店長は上記の結果を踏まえて対象者へフィードバック面談を実施
この評価とフィードバックの仕組みを「チャレンジアップ」と呼称しているが、実施サイクルはランクによって異なり、新人及びスタッフは1か月(毎月)、クルー、マリーン、オフィサーは3か月を1サイクルとしている(事業部により一部異なる運用をしている)。
評価結果によるランクアップは時間給の昇給も6か月ごとの契約更新時期を待つことなく翌月に即実施される。
店舗の全員に予算達成手当を支給
店舗が月間売上目標額を達成した場合に、所属する社員に対して「予算達成手当」を翌月の給与で支給している。パートタイム労働者にはランクにより設定された金額として数千円を支給しているが、これに対する期待や社員間の話題性は大きく、モチベーションアップや現場の一体感作りに役立っている。
年2回定期的に社員登用を実施
パートタイム労働者から正社員への登用については、年に2回の決められた期日に実施する。社員登用基準は、勤続1年6か月以上、ランクはマリーン以上とされており、登用希望者の中から店長が推薦を行い、事業部長が登用面接をしてその可否を判断している。
これらの手順や社員登用基準は、店舗に設置されて誰もが閲覧可能なマニュアル集に掲載されている。また個々のパートタイム労働者の社員登用希望や職場貢献状況は、チャレンジアップの面談や事業部長の2週間に1度の店舗巡回等を通じて平素から把握できているので、この登用システムは円滑に機能している。
ただ、同グループではここ5年間で10名の実績がある正社員登用者数をさらに増やしたいと考えているが、正社員になると勤務シフトや休日設定日等への制約が拡大するため、希望者は少ないのが実態である。
4. 成果と課題
設立以来25年間、ファッションと生活雑貨のブランドとそのショップを着実なペースで拡大してきた同グループは、販売業にとって必要な「自身が共感できる商品を顧客に提案し、販売する」仕事に喜びを感じ、「店の繁閑に応じた勤務体制を構築する」ことに適応できる、主婦層や若年層の女性をパートタイム労働者として活用してきた。実人員によるパートタイム労働者比率は72.7%、パートタイム労働者に占める女性の比率は88.2%に上っている。
その中でパートタイム労働者の年間退職率は約30%であるが、これは週の労働時間が20時間未満の学生を中心とするアルバイトがパートタイム労働者の40%を占めている状況に鑑みると高い定着率であると言える。
これらの成功要因はとしては、ランク別賃金テーブルの導入と評価育成制度や予算達成手当等のモチベーション向上施策等が挙げられるが、現場に設置されているマニュアルに基づいてこれらの制度が確実に運用されていることも大きな効果を上げていると考えられる。
今後の課題として同グループでは、パートタイム労働者にとってより一層の働きがいや社内での一体感につながる施策として、職場環境の充実や仕事外の生活支援等の福利厚生制度の充実を挙げている。