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F社

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル・好事例集(金融・保険業)より

人事評価を実施し半期ごとの賞与支給や多様な昇給方法でモチベーションを向上。正社員転換を推進し優秀な人材を確保

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 非公開 業種 銀行業
従業員数 非公開 パート労働者数 約25%
ポイント
  • 人事評価を実施し半期ごとに賞与を支給。
  • 多様な昇給システム。
  • 充実した教育訓練支援。
  • 段階的転換による正社員転換制度の推進。
  • ワーク・ライフ・バランスへの取組。

(1)企業概要・人員構造

同社は、地域社会との絆の深化をテーマとし地域に密着した銀行として営業展開している。

全従業員数の約1/4を占めるパート社員(パートタイム労働者)の主な職務は、支店での窓口業務や後方支援事務、本部事務であり、そのうち窓口業務に従事する者が7割程度を占める。窓口業務は、入出金、口座作成、税金納付、各種手続受付など基本的銀行業務から、スキルや資格がある者は投資信託業務や保険加入業務などの正社員レベルの高度な業務を行う者もいる。

支店における窓口業務の標準的な人員体制は、担当責任者である主任職配下に正社員が1名配置され(小規模店舗では配置されない場合もある)、その配下に2~3名のパート社員が置かれて窓口業務を行う。正社員はパート社員の業務に加えて本部連絡業務や資産運用相談対応など難易度の高い職務を担当しつつ、パート社員の取りまとめを行い、窓口業務のリーダー的役割を果たしている。また、正社員にはパート社員にはない個人毎の業績目標が設定される。正社員もパート社員も転居を伴う転勤はなく、転居を伴わない支店異動はある。ただし、パート社員の異動範囲は一定の通勤時間内に通える範囲に限られ、正社員より狭く設定されている。

標準的な窓口業務体制

パート社員は入社当初6か月間の有期契約で雇用され、次契約から1年間の契約となる。所定労働時間は、育児や介護など家庭の事情等により様々であるが、正社員の1日7時間45分に対し、7時間程度になる者が多い。出勤日は基本的に正社員と同じであるため、パート社員の9割程度は社会保険に加入している。また、人事区分的に1日の勤務時間が7時間未満のパート社員を「ショート」、7時間以上を「ロング」として分けているが、役割や職務などその他に違いはない。パート社員の人員構成は40歳前後の女性が多く占めており、金融業務経験者が多いが、未経験者も3割程度を占めている。

(2)取組の背景

銀行の事務処理は、機械化により職務が標準化傾向にあることから、人的コストの効率化を図るためパート社員の活用が進んでいる。しかし、遂行する業務は専門性が高く、かなりのスキルと経験が要求される場合もある。家庭の事情等によりフルタイムで働けない人でも、正社員同様のスキルを身に付ける機会があり、経済的にもやりがいも高いレベルを目指せる仕組みづくりをすることが、パート社員にとっても銀行にとっても大切であると考える。また、パート社員から優秀な人材を育て確保することも重要な人材開発であると考えている。

(3)取組の内容

人事評価を実施し半期ごとに賞与を支給

同社は、パート社員の意欲や実績に応えるため、上期と下期に支店長による人事評価を実施し、半期ごとに賞与を支給している。

支店長は、勤務姿勢や実績、取得した資格や上司である主任へのヒアリングなどを参考に、各人の評価を6段階で決定する。評価決定に当たって、根拠も評価シートに付記する。その後、本部で必要な調整を行って最終評価が決定し、評価に対応する賞与が支給される仕組みである。支給額は正社員に比べ少額であるが、勤続 6 か月未満かつ最低評価以外は支給される(最低評価となる者はごく少数であり、勤続 6 か月以上ならば最低評価でも支給となる)。

なお、評価に当たっては、事前にパート社員本人と支店長とで個別面談を実施している。面談では、勤務姿勢のフィードバックや業務指導・助言を行う。

また、面談は、パート社員から不満や不安、要望などを聴くコミュニケーションの場としての機能も有している。

多様な昇給システム

パート社員が行う職務には、スキルと経験が重要である。このため、それらを反映した3つの要素からなる昇給システムを構築し、毎年1回4月に昇給を実施している。

第1に、勤続1年、3年、5年、10年等の区切りの勤続年数に到達したときに、時間給が昇給する仕組みがある。

第2に、職位の昇格時に昇給する仕組みがある。パート社員は、ビジネス・スタッフ、クリエイティブ・スタッフ、セールス・スタッフの3職位に分かれ、入社時はビジネス・スタッフから始まり、支店長が正社員レベルの窓口業務が遂行できると認めたものはクリエイティブ・スタッフに、さらに近隣の外回り営業も行い個人ローンや個人年金等の獲得が期待されると認められるとセールス・スタッフに昇格する。昇格は、その職位にふさわしいとする支店長推薦と、窓口業務遂行能力をチェックする「オペレーションスキルチェック表」の結果や実績等により判断される。職位の構成は、ビジネス・スタッフが最も多いが、クリエイティブ・スタッフもパート社員の1/4近くを占めている。セールス・スタッフは、パート社員でも特殊な職務であり、数名しかいない。

第3に、人事評価により昇給する仕組みがある。賞与支給額決定に使われた半期の評価2回分により、4月に通年の総合評価を決定し、評価に応じた昇給額を決定している。

多様な昇給システム

なお、昇給後の新しい時給は、4月から新たに始まる契約期間に適用されるのが通常であるが、支店長が特段の手続きをすることにより、契約期間の途中でも昇給できる仕組みもある。

充実した教育訓練支援

前述のとおり、パート社員の3割程度は金融業務未経験者であるが、職務を行うに当たっては一定の専門性が求められる。そのため、入社1か月以内に、本部で2日半にわたる入社時研修が実施されている。

そこでは、実物を使った端末操作訓練、各種事務処理のシミュレーション訓練及びコンプライアンス教育が行われる。パート社員の採用時期は一定ではないため対象者が少ない場合もあるが、必須研修の位置付けから対象者が1名であっても実施されている。

入社時研修履修後は、支店において正社員からOJTを受ける。また、金融業務未経験者は、4か月間の指定通信教育講座を銀行の費用負担で受講する。その後は、正社員と同様の研修機会が与えられ、希望者はテラー研修やCS研修、テレビ会議方式の本部による事務研修等に参加できる。

さらに、銀行が認める一定の公的資格取得時には、正社員と同額の資格奨励金の支給があるほか、後述する正社員転換時に求められる「証券外務員資格」や「生命保険募集人資格」の受験費用を3回まで銀行が負担する制度がある。

段階的転換による正社員転換

能力あるパート社員のモチベーション向上に資するため、また、優秀な労働力の確保のため、正社員転換制度を推進している。転換制度は、パート社員からフルタイム勤務の臨時職員を経て正社員となる段階的なものとなっている。

まず、勤続3年以上のパート社員が希望し、「証券外務員資格」又は「生命保険募集人資格」のいずれか一つ以上を有していて支店長推薦があれば、本部の経営管理部長の面談選考を経て臨時職員(有期雇用契約で退職金がないこと以外は正社員と同じ待遇の職員)へ転換する。選考の際には、前述の「オペレーションスキルチェック表」の点数や適性・意欲が考慮される。

次に、臨時職員として2年間以上勤務した者が希望し、「証券外務員資格」及び「生命保険募集人資格」のいずれも有し支店長推薦があれば、経営管理部長の面談選考を経て正社員に転換する。適性や意欲・能力等が正社員水準であるかが判断基準である。

なお、臨時職員及び正社員への転換は、毎年12月に各支店に通達して希望者を募り、翌1月には決定する。転換希望者数と転換実績者数は年度によって増減があるものの、臨時職員への転換及び正社員への転換ともほぼ同数で、両転換合わせて毎年4~5名程度の希望者があり、2~3名程度が転換している。制度を導入した平成20年以降、それぞれの累積転換実績はどちらも十数名に及ぶ。

ワーク・ライフ・バランスへの取組

同社はパート社員の働き続けやすい職場環境構築のため、ワーク・ライフ・バランスにも注力している。

パート社員の慶弔見舞金や慶弔休暇は、労働時間にかかわらず正社員と同基準で支給・付与されるほか、所定外労働もほとんどない。平成20年には、男女を問わず育児休業取得促進や有給休暇取得促進に取り組んだことなどで「くるみんマーク認定1」を受けており、パート社員の育児休業取得者も少なくない。希望者には、仕事の勘を取り戻すための復職前研修を各支店で実施するなど、育児休業から復職しやすい支援策を講じている。

パート社員の納得性を高めるため面談等を実施

パート社員に納得して働いていただくため、雇い入れ時には支店長より各パート社員へ労働条件通知書の交付と併せて労働条件や職務内容について説明しているほか、契約更新時においては、支店長が各パート社員と個人面談を実施し労働条件通知書の交付・労働条件の説明に加え、前述の人事評価時の面談同様、勤務姿勢のフィードバックや要望などを聴取する機会を設けている。

また、本部経営管理部をパート社員の相談窓口として設定し、相談体制を構築している。

(4)成果と課題

正社員転換については、その後に主任職になって活躍している例も複数あり、上昇志向のあるパート社員のモチベーション向上に寄与している。今後も、優秀な人材確保の観点から正社員転換をさらに推進すべきと考えている。転換希望者にとって最も障害となっているフルタイム勤務については、フルタイムで働けない事情が払拭されるまで個別計画的なキャリア形成支援や相談体制を整備し、転換後すぐに能力に見合った職務を遂行できるようにするなどの施策も検討している。

また、育児休業から復帰する者に対し、現在は支店ごとに行われている復職前研修を、本部で取りまとめてより充実した内容で実施することにより、パート社員のキャリア継続に寄与したいと考えている。

  1. 企業が、次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」)に基づき全従業員の仕事と子育ての両立を図るために策定した計画(行動計画)に掲げる目標を達成するなど一定の要件を満たした場合、申請することによって次世代法に基づく「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣が認定する

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