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特定非営利活動法人ハローハンディキャップ・タイム

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル(平成27年度版)より

職員個々の価値観を尊重し、そのニーズに対応する一方、処遇や研修等の社内制度にも反映させ、安心して働ける職場づくりを目指す

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 埼玉県 業種 福祉
従業員数 125名 パート労働者数 87名
事業概要 社会保険・社会福祉・介護事業
ポイント
  • 個別研修と集合研修を実施し、パートタイム労働者全体のスキルアップを支援。
  • パートタイム労働者の意見を反映し、各種手当を充実。
  • 職場内の会議をコミュニケーション活性化のために積極的に活用。

1. 企業概要・人員構造

同法人は、平成16年に設立し、現在埼玉県久喜市を中心に10の事業所を有している。障害があっても地域の中で当たり前に暮らし、働き、余暇を楽しむことができるよう「ノーマライゼーション」の精神を法人の理念とし、障害福祉サービス事業(居宅介護、重度訪問介護、行動援護、同行援護)、移動支援事業、生活サポート事業、福祉有償運送サービス事業、児童発達支援事業、放課後等デイサービス事業、共同生活援助事業(グループホーム)、作業所等、複数の事業を展開している。

職員は、法人事務や各事業所の管理を主に担う正社員とヘルパー職を中心としたパートナー(ほとんどがパート社員)の雇用区分で構成されている。社内でヘルパー職をパートナーと呼称するのは、同法人の経営理念であるノーマライゼーションの精神によりヘルパーも「相棒、共同の相手」であるという考え方からである。なお、パート社員については、労働時間数を基準に、細分化して雇用契約を締結している。

パート社員の雇用区分のまとめ

名称 1か月の所定労働時間 社会保険・労働保険の加入 雇用期間
常勤パート 120時間以上~160時間以内
  • 雇用保険
  • 健康保険、厚生年金保険
無期雇用
短時間パートA 80時間以上~120時間未満
  • 雇用保険
無期雇用
短時間パートB 80時間未満
  • 適用無し
1年更新

訪問サービス(訪問介護、行動援護、同行援護等)と施設内サービス(デイサービス、グループホーム、作業所等)では労働時間管理の方法が大きく異なるため、それぞれの事業の特徴と社員のニーズのマッチングをしながら人員配置を行う必要がある。訪問サービスはお客様の希望する時間にサービスを提供することが求められ、施設内サービスと比べて早朝や夜間での勤務が必要となることもあるため、その時間に対応可能なパート社員や正社員の配属が多くなる傾向にある。一方、施設内サービスについては、開所時間が平日の日中の施設もあるため、子育て中のパート社員の割合が多い。管理職、サービス提供責任者は、主として正社員がなるが、施設内勤務については常勤パートが担当している事業所もある。

2. 取組の背景

正社員・パート社員一人ひとりが自信を持って、よりよい支援(福祉サービスの提供)を行うためには、労働条件や、風通しのよい職場環境を整備することは欠かせない。そのため、正社員・パート社員の要望をヒアリングし、毎年度、賃金、労働条件に反映してきた。また、内部研修・外部研修を継続的に行い、社員の資質向上に努めてきた。

3. 取組の内容

パート社員の意見を反映し、各種手当を充実

多様なサービスの提供により、業務そのものも多様化しており、またそれに伴いパート社員から様々な要望が生じやすい。そのため、業務ごとのバランス、正社員とパート社員の処遇のバランスに配慮し、各種手当を充実してきた。以下がその内容である。

主な手当の概要

①夏休み期間の業務への加算
80~120時間勤務の短時間パートAに対して、夏季等の繁忙期に労働時間の合計が100時間を超えた場合、超えた分以降の時給を100円増額。
②早朝夜間勤務割増手当
法律の深夜割増の対象とはならない時間帯である20時~22時、5時~8時の間に勤務した者に対しては、正社員・パート社員関わらず、当該勤務が所定内労働時間の範囲であっても時給に25%割増した賃金を支給(法律の深夜割増の時間帯を上回る時間帯に対して割増賃金を支給)。
③お盆時期、年末年始時期の割増手当
お盆の時期(8月13日から8月16日)、年末年始(12月29日~1月3日)に勤務した場合、時給を35%割増して支給。
④特別手当(支給時期は2通りあり)
  1. 毎月支給
    常勤パートに対して、毎月定額3,000円を支給(正社員は毎月定額16,000円を支給)。
  2. 一時金を年3回支給
    パート社員全員(常勤パート、短時間パートA、短時間パートB)に対して、実労働時間数に応じて一時金を支給(一時金の総額が確定した後、各人の実労働時間に応じて比例配分する)。
⑤勤続手当
勤続1年あたり、100円を年に2~3回程度一時金として支給(例 勤続10年の場合は、100円×10年=1,000円を年に数回支給)、正社員は年数×1,000円を支給。
⑥資格手当
介護福祉士の資格を有する常勤パートに月2,000円を支給(正社員も同様)。短時間パートA及び短時間パートBは、年に2~3回、1,000円~2,000円を支給。

個別研修と集合研修を実施し、パート社員全体のスキルアップを支援

雇用区分にかかわらず、個々の社員が能力を高めていくことが事業運営においても、社員のキャリア形成においても重要だと考えている。そのため、多種多様な教育手法・研修内容を取り入れ、社員のスキルアップを支援している。なお、同法人が実施する研修については、原則として全社員(正社員、パート社員とも)を参加対象としている。

研修の概要

①初期研修
担当 法人事務局
時期・時間 入社初日に2時間程度
目的
  • 業務への不安を軽減させる
  • お客様との良好な関係作りをイメージできるようにする
内容
  • 法人の歩みと目的と理念、事業概要や業務内容
  • 組織図、人員配置図、連絡先
  • 障害福祉サービスの体系
  • 障害者白書、権利条約、障害者虐待防止法
  • 障害者からの希望、よりよい接し方
  • 就業規則・社有車使用規程(抜粋)
  • 服装身だしなみ規程、業務心得等
②OJT
担当 1人につき1人の指導担当者
時期・時間 主に入社時
目的
  • 業務への不安を軽減し、理解を促進させる
  • お客様との関係作りを円滑に進めることができるようにする
内容
  • 入社後20時間までは、パート社員1人に対し、1人の指導担当者がつき、福祉サービスの実務を指導し、利用者との関係作りをサポートする。
  • 入社後20時間経過した時点で、パート社員の業務の習得状況や本人の希望を確認し、必要な場合は引き続き同行による指導を行う
③定期研修
対象者 全社員(公休日の者も参加した場合賃金を支給)
時期・時間 年間のスケジュールを組み、実施している
目的
  • 継続的に実務を学ばせる
内容
  • 虐待防止研修
  • 救急救命
  • 重度障害者への支援
  • 接遇マナー
  • 実技指導
  • 運転技術、安全対策
  • 腰痛予防
④外部研修
目的
  • 資格取得
  • 各人が必要な能力の向上を図る
内容
  1. 資格取得支援
    同行援護、行動援護、有償移送、サービス提供責任者の業務に必要な資格について、取得費用の全額又は半額を補助。事業運営上必要な者については法人が受講料を全額負担し、受講時間を勤務時間とみなして賃金を支給。それ以外の者であって、本人が希望した場合は、受講料を半額負担している。
  2. 能力向上支援
    常勤パートを対象に1年に2回まで、自ら希望し法人の承認の得た外部研修について、受講費用及び賃金を負担している(受講時間を勤務時間とみなして支給)。研修は、介護技術の向上や対人スキルを高めるもの等様々である。
⑤事業所別研修
時期・時間 随時
目的
  • 継続した技術の向上を図る
内容
  • 支援技術向上のための研修(事業所ごとに求められるスキルは異なり、お客様個別のニーズに対応するためには、外部での一律の研修だけではなく、事業所内での独自の研修が必要なため、事業所ごとに研修を立案し、実施している。)

雇用条件の転換制度

毎年度末の面談時やパート社員から希望があった際、法人からの働きかけ等により、労働条件の変更を行っている。例えば、短時間パートAが120時間以上の勤務を希望した場合は、常勤パートに転換し、社会保険に加入してもらっている。事業運営上、人員確保が必要なため労働時間延長への変更を推奨し、希望があった場合はほぼ承認している。

正社員転換する場合、原則として常勤パートからの転換となる。転換希望があった者について、理事会の議決を経て転換する。勤務時間の延長や正社員転換の実績は、毎年いずれも2~3名程度である。

全社員を対象に健康診断を実施

一般定期健康診断については、常勤パートだけでなく、短時間パートAや短時間パートBについても全員受診できることとしている。また、冬期のインフルエンザ予防接種についても全員接種できることとしており、さらに希望者への腰痛予防バンドの貸出も行っている。

地域住民への配布用の「連絡カード」により、外出を伴うパート社員の業務をサポート

外出に伴う福祉サービスは、パート社員が単独で業務を行うことも多い。その際、地域住民からの協力の申し出や業務内容についての質問があっても、利用者への支援業務に集中せざるをえず、十分な対応ができないこともある。

そのような場合に、法人の名称、電話番号を記載した名刺程度の大きさの「連絡カード」を渡して、法人の事務局宛に連絡してもらうことにした。事務局に問い合わせがあった際は、障害者支援業務その他障害者に関すること全般について丁寧に説明し、障害者への理解も深めてもらうように努めている。その結果、パート社員が単独で業務を行う場合も、より安心かつ集中して取り組めるようになった。

ワーク・ライフ・バランスに配慮した勤務体制

毎月の勤務割については、出勤不可の日を記載した表を提出してもらい、その希望に基づき出勤日を決めている。なお、正社員・常勤パートの場合は、短時間パートよりも出勤日数・出勤時間が多いため、概ね、休業日の半数は、本人希望、半数は法人が指定する日となるようにしている。

育児休業、介護休業について、法律で定められた期間を超える休業や、復職後の出勤日数調整の希望等にも対応している。また、私傷病による休業についても、原則として復職できるまでの間、休業を認めている。休業の希望があった際には、継続して在籍できること、休業の事情が消滅した際は職場復帰できることを伝え、様々な事情に直面した従業員が安心して休業できるよう努めている。休業したパート社員から職場復帰への意思表示をしてもらうことも多く、長期雇用へ結びついている。

また勤務時間変更の希望には、施設を異動させることでも対応することができる。施設内サービスである通所施設と入所施設では稼働時間が異なり、入所施設には早朝の業務がある。そのため通所施設は子育て中の若年齢パート社員、入所施設は子育ての終わった年齢層の者が比較的多くなっている。家庭の事情等により、希望の勤務時間帯に近い施設に異動することができる。

職場内の会議をコミュニケーション活性化のために積極的に活用

事業所ごとに、ヘルパー会議、指導員会議、支援員会議等の会議を、毎月1回、2時間程度開催し、ヒヤリハット・利用者への支援の仕方・利用者の状況についての情報交換をしている。会議の際に、パート社員から報告や相談が多いのはヒヤリハット事例である。安全に、ケガがないように利用者を支援していくための方法を話し合うことで、パート社員の業務における不安の軽減につながっている。

また法人を統括する事務局の社員も参加し、理事会・法人での決定事項、法人の方針等も伝達している。事務局が参加することで、支援現場での細かな情報を入手し、各事業所の運営状況や課題を把握できるので、今後の課題解決へ向けて法人として検討することができる。

なお、上記の会議のうち、夏季(夏休み前後)と冬季(年末年始のいずれか)の年に2回、10時から12時までの会議の後に法人が昼食(お弁当)を提供したり補助金を出したりし、親睦を図っている。親睦を兼ねた会議の場合、通常の会議よりパートタイマーの出席率が高くなる。訪問サービスに従事する従業員は、各人によって勤務時間が異なり同時に集まることが難しいため、平日と土曜日に分け、平日は午前中、土曜日は夜に会議及び親睦会を開催し、できるだけ参加しやすいようにしている。

4. 成果と課題

パート社員の希望に配慮した処遇改善を重ねてきた結果、パート社員の半数以上は概ね5年以上の勤続となっており、長期の雇用につながっている。

昨今の求人を出しても応募者が集まりにくい現状から、在籍しているパート社員の能力活用や一度退職したパート社員の復職にも力を注ぎ、人員の確保を図りたいと考えている。そのためには、これまで以上に各人のライフスタイルや価値観を尊重し、希望に合った労働条件で勤務の継続ができるような体制作りが必要であると感じている。また、高齢パート社員には早朝や夜間の勤務を担ってもらってきたという実績があるため、今後も、高齢パート社員の人材活用を積極的に行っていきたいと考えている。

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