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(株)ウェルクル

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業支援事業(雇用管理改善)より

充実した教育訓練と正社員転換制度の導入により、専門性の高い優秀なパートタイム労働者を確保することで、業績を拡大

1.労働条件の明示、説明
2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 大阪府 業種 サービス業
従業員数 41名 パート労働者数 25名
事業概要 専門サービス業
ポイント
  • スキルアップ研修や研修補助金制度等による教育訓練の強化、ならびに正社員転換制度等を活用することで、有能な人材を確保。
  • 職務内容が正社員と同じパートタイム労働者には、正社員と同等の時給を支給するなど、正社員との均衡待遇を推進。
  • パートタイム労働者の希望を考慮した柔軟な雇用形態、労働時間制度を設定。

1. 企業概要・人員構造

同社は、地域職域の健康増進事業に特化したコンサルティング事業を目的として2004年に創業された。

平均寿命の延伸と医療技術の進歩により、少子高齢化が進み、医療費だけでなく現役世代の介護費負担はますます増えている。この問題を個人の健康だけでなく、社会全体、ひいては将来の子ども達の問題と捉え、健康増進計画企画立案、特定保健指導、職域従業員・地域住民の保健指導・健康相談、ならびに健康管理に関するソフトウエアの開発・販売等に積極的に取り組んでいる。

独自開発の検診データ分析支援ソフトである「マルチマーカー」は全国の3分の1を超える市町村や多くの企業に採用されており、地域で活躍する保健師・管理栄養士の強力な支援ツールとなっている。一方、保健師・管理栄養士が常駐しない企業や事業所には、同社の保健師・管理栄養士が訪問し、コンサルティングから実際の保健指導まで実施している。

同社の従業員は現在41名で、おもに事業推進部門、業務管理部門、システム開発部門に所属している。そのうちパートタイム労働者は25名(男性1名、女性24名)である。数名の事務的職務担当者を除き、ほとんどのパートタイム労働者は事業推進部門に所属し、健康増進のコンサルティングや保健指導に従事している。

本人の希望を考慮した結果、所定労働時間は1日5時間から7時間半勤務、所定労働日数は週1日~2日程度から週5日等、勤務形態は多岐にわたっている。そのために、シフト制に基づき所定労働時間を設定している。保健師・管理栄養士の時給は、年齢・経験、業務内容を考慮して決定されている。これらは、労働条件通知書に明記し、職務に応じて適正な給与を支給することを採用時に伝えている。契約期間は業務の進捗状況に応じて、一年を上限に決定している。

パートタイム労働者は、子育てをしている女性が多いこともあり、本人の希望に基づき、扶養内での働き方、社会保険に加入する働き方等を選択させている。現在では、約半数が社会保険に加入している。

2. 取組の背景

同社の事業の中心を担う保健師や管理栄養士は専門性の高い資格であり、保有者には有能で高い職業意識を持っている女性が多い。顧客に対して高品質なサービスを提供するためには、継続的に知識と経験を重ねてもらう必要があるため、会社としてはフルタイム勤務を求めていたが、出産・育児等家庭内の事情で退職せざるをえない状況が多かった。

そこで、パートタイム労働者のライフステージに合わせて、働き方を柔軟に選択できればこの状況が改善できる、という社長の思いから、短時間勤務を認めることとした。例えば小さい子どもを持つ女性は、最初はパートタイム労働者として入社するが、子育てが終了し、働ける環境が整った時点で正社員となることができる。

これを制度化することで、本人の就労意欲が高まるとともに、会社としても有能な人材の確保が可能となっている。さらに、パートタイム労働者と正社員との均衡待遇を図ることで、従業員間のコミュニケーションも良好になると考えている。

3. 取組の内容

正社員転換制度を活用した有能な人材の確保

有能なパートタイム労働者については、正社員転換を図っている。正社員転換制度の積極的な活用を促すため、就業規則に規定し、全従業員に周知した。正社員転換の可否は、継続勤務6か月以上のパートタイム労働者を6段階に格付けし、5等級(①自分の判断で業務処理ができる。②リーダーの指示の下、小グループをまとめることができる。)となった時に、本人の希望、所属長の推薦の下、筆記試験、面接により決定することとした。

実績としては、2010年には2名のパートタイム労働者が正社員転換した。そのうち1名は、2014年に主任に昇格している。また、2014年にも1名が正社員転換した。

更新時の評価面談

パートタイム労働者の契約更新時には、保健指導の指導者としての能力レベルを社長自らが面談した上で、6段階に格付けし評価している。能力評価の結果を基に、昇給・昇格等が行われる。福岡支店、札幌支店においては、支店長が面談し評価をしているが、最終決定は社長が行うことによって評価基準を合わせている。

パートタイム労働者と正社員の時給同等による均衡待遇の推進

保健師と管理栄養士については、パートタイム労働者と正社員は同じ職務内容であるため、パートタイム労働者の時給は正社員の時間賃率(賃金の1時間当たりの単価)と同等にしている。しかし、転居を伴う異動・配置転換の有無等の違いがあるため、賞与、退職金は支給していない。

マネジャー手当の支給

知識・スキル・能力・経験に優れたパートタイム労働者には指導的な役割を与えている。さらに、保健指導担当者の指導に当たっているパートタイム労働者には、正社員のマネジャーと同額のマネジャー手当を支給している。

研修や資格取得支援によるスキルアップ支援

パートタイム労働者を含めた従業員の能力開発を積極的に図るために、業務管理部の主任を推進者として選任し、従業員の教育訓練を計画的に企画・実行している。

研修については、パートタイム労働者も含めて全従業員が参加している。種類としては、採用時研修(1時間から2時間)、個人情報保護に関する研修(1時間/年1回)、スキルアップ研修(1時間から2時間/月1回)等がある。法令・制度ならびに疾病メカニズムの理解、指導スキルの向上に加え、最新の各学会ガイドライン等に関する研修も定期的に行うことで、科学的根拠(エビデンス)に基づいた保健指導スキルの向上に努めている。加えて、社員間での仕事に関する情報共有、保健指導対象者の事例検討等も活発で、日々の業務改善にもつながっている。

さらに、社外の研修を受講した場合には、資格と受講料に応じて会社が金銭を補助する研修補助金制度や、資格取得を促すための支援・助成制度を設け、継続したスキルアップを支援している。

所定労働時間変更に伴う社会保険適用の通知

受託業務が契約期間の途中で急速に拡大し、勤務実態が入社時の契約内容と合わなくなる場合がある。そのような場合に備えて、「週20時間以内の勤務であったパートタイム労働者が、週20時間以上の勤務が常態化していると認められた場合、翌月から労働契約を変更し、雇用保険に加入する。」という通知を書面にした上で労働条件通知書に添付し、入社時に明示している。

相談窓口体制の周知

所定労働時間、勤務日、雇用形態が異なるパートタイム労働者の労務管理上の疑問や様々な意見要望については、本社の業務管理部の主任が相談窓口となり常時対応している。労務管理上の疑問については本人に回答し、意見要望については直属の上司に対応を依頼している。状況に応じて、社長にも報告、連絡、相談ができており、管理体制が整っている。このように、現場の意見要望等を会社が率直に聞き、迅速な対応を行うことにより、パートタイム労働者が安心して働ける環境を整えている。

ワーク・ライフ・バランスへの取組

創業後まもなく社内の職場環境の整備による業務効率向上を目指して、社長自らが中心となり、「しごと緑化計画推進委員会」を立ち上げた。2012年7月からは、この委員会を「職場意識改善委員会」と改め、年次有給休暇の取得率向上、時間外労働の削減に加えて、多様な事情を抱えた従業員に配慮した労働時間の設定等、ワーク・ライフ・バランスの向上推進に取り組んできた。

具体的には、ノー残業デーの設置、半日単位の年次有給休暇制度の導入、突発的な特殊事情での欠勤は事後に有給休暇振替を可能とする制度の新設、申出により出勤時刻を繰り上げ繰り下げる事ができる制度(時差出勤制度)の導入等を行い、子どもの急な発熱時の病院への付き添い、学校行事への参加等の労働者の個々の事情に配慮した働きやすい環境の実現を図っている。また、有給休暇取得に当たっては、給与明細に残日数を記載し、取得を促している。

さらに、次世代育成支援対策として、一般事業主行動計画を策定し、育児休業中の従業員の原職復帰をサポートするために、育児休業前より今後の働き方(労働時間の設定等)についての検討を始めるなど、育児と仕事の両立支援も積極的に行っている。

社内コミュニケーションの向上

クラウド型 社内SNS 「Salesforce Chatter」には職務や勤務場所に関わらず社長も含め全従業員が参加している。スマホ対応も可能で、いつでもどこでもアクセスすることができ、会社の経営情報についても一部共有できる仕組みになっている。普段は、連絡事項の伝達が中心である。遠方への出張がある場合等社員間の連携が必要な場合には、このツールを利用することで、組織全体で効率よく働けるようになった。また、互いに自由な意見を述べるツールとしても活用されているため、社長、管理職、一般社員、パートタイム労働者間のコミュニケーションが活性化し、日々の業務遂行に役立っている。

4. 成果と課題

2004年の創業当初はパートタイム労働者が1~2年で入れ替わることが多かったが、上記のような仕組みを導入することにより、定着率は確実に高まっている。現在ではパートタイム労働者の平均勤続年数は2~3年に伸びており、最長は4年になっている。これによって創業の地の関西から、札幌、東京、福岡へと全国展開が可能となり、業績拡大に大きく貢献している。

パートタイム労働者から正社員に転換できるだけでなく、正社員からパートタイム労働者への転換も可能とするなど柔軟な対応ができることで、一人当たりの業務負荷が分散できるようになった。責任も分担しあえるようになり、パートタイム労働者にとって働きやすい環境が整いつつある。

今後の課題としては、パートタイム労働者の評価の適正化がある。現在の評価基準では、昇給・昇格に反映する明確な基準がないため、職業能力評価基準を使った職務評価を実施するなど、制度化に取り組み、パートタイム労働者の雇用管理の一層の改善を図っていく。

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