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(株)イング

パートタイム労働者雇用管理改善マニュアル(平成27年度版)より

充実した教育訓練の実施、人事考課による適正な評価及び給与への反映等、労働環境を整えることで有能な人材確保を目指す

1.労働条件の明示、説明
2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
8.職場のコミュニケーション等
所在地 大阪府 業種 教育・学習支援業
従業員数 約700名 パート労働者数 約600名
事業概要 その他の教育、学習支援業
ポイント
  • 育成型の人事考課を毎年実施し、評価結果を賃金に反映。
  • 正社員と同等の充実した福利厚生制度を導入。
  • 充実した入社時研修、社内Off-JT等で、能力開発を支援。

1. 企業概要・人員構造

同社は、昭和44年に英語教育を目的として設立された。その後、人生のあらゆるステージにおいて人々に貢献できる企業を目指し、現在では、幼稚園・小学校受験、中学・高校・大学受験、大学生・社会人の資格取得、英会話、就職支援等、教育の場を多岐に広げている。教育サービス分野の拡大に併せて、事業展開地域も、創業の地の大阪から、和歌山・奈良・京都等、他府県へと広がっている。

非常勤社員(パートタイム労働者)は、各地区の学習塾にて授業・補講(集団・個別)を担当する非常勤講師として勤務している。現在の非常勤社員は約600名であり、男女比は6対4の割合である。契約は1年更新で、約8割が学生、残り2割は社会人である。授業は一講座80分で、本人の希望に基づいて担当するクラスを設定している。ほとんどが週20時間以内の勤務で、社会保険に加入しているのは約1割である。業務内容は正社員の講師と同等であるが、非常勤社員は塾の企画運営には責任を持たないため、賞与、退職金は支給していない。

2. 取組の背景

非常勤社員は同社にとって大きな戦力であり、事業の拡大のためには優秀な人材の確保が最大のポイントとなっている。高い業務品質で継続して勤務してもらうためには、その人材のモチベーションをいかに高めるかが、大きな課題であった。そこで、業務品質を高めるための教育訓練の充実と、安定した雇用を維持するための労働環境の改善を目的として取組を始めた。

3. 取組の内容

労働条件の確実な周知

労働条件については、労働条件通知書兼雇用契約書にて、採用時及び更新時に所属長が面談の上明示し、双方において署名・捺印することで毎年締結している。さらに、労働条件、福利厚生等については、非常勤社員就業規則、非常勤講師細則(主に賃金に関する事項)、非常勤社員マニュアル(福利厚生制度、総務・人事関係社内届出等に関する事項)に明確に規定し周知している。

非常勤社員からの日々の相談も、所属長が対応することとしている。

人事考課に基づく賃金制度

賃金は時給で、決定方法については、非常勤講師細則に規定し周知している。昇給は年1回(毎年4月)人事考課の結果に基づいて行っている。

人事考課は、半年に1回実施しており、生徒(受講者)のアンケート、成績率アップ度等を材料として行っている。考課項目は、①生徒・保護者からの評価、②成績向上への努力と成果、③塾運営への協力度、貢献度、④規律性、責任感、⑤学力テストと生徒アンケートにより評価される学研塾講師検定の結果、となっており、明確な評価基準を設けている。

考課結果に基づき、毎年の更新時に本人にフィードバックが行われる。そして、考課結果は4月の昇給時に反映される仕組みになっている。昇給額は、評価結果に応じて、非常勤講師給与表に基づき、クラス指導と個別指導別に、ランク(C、B、A、S)と級(初級、中級、上級)により決定される。

各種手当の充実

各種手当としては、通勤手当が支給されるほか、通常業務以外に業務が発生した場合には、その業務内容に応じて、教案・教材作成業務手当、新人非常勤講師研修手当、研修会運営業務手当、合宿等参加手当等、各種手当が支給される。

充実した報奨金制度

営業成績等、会社に対する貢献度に応じて一時金を支給することで、社員のモチベーションを高めている。貢献度の評価期間は1年単位としている。評価基準は、生徒のアンケートで肯定的な評価が80%以上であるか、年度当初の目標を達成したか等である。金額は一人1回あたり2万円以内である。また、特に顕著な功労があった社員に対しては、社長より特別報奨金が支給される場合がある。

非常勤講師採用時研修による人材育成

採用時には、非常勤講師育成方針に基づいたスキル研修を行っている。勤続年数が長くリーダー的な役割を担う非常勤社員が中心となり、指導マニュアル、非常勤講師事前研修プログラムに基づき、約1か月間、新人の非常勤社員を育成している。指導マニュアルの内容は、経営理念から始まり、教育観、授業ステップ、服務規律等、内容は豊富である。また、研修プログラムの内容は、「授業デビュー」を目指すものとなっている。

この採用時研修は3つのステップで構成されている。ファーストステップは、契約や就業規則についての説明、指導マニュアルや経営方針の伝達、及び授業見学となっている。セカンドステップでは、模擬授業を実施し、ステップアップシートにその感想・課題を記入させている。さらに、サードステップで授業実習を行わせて、最終チェックで事前研修修了の判断を受けることになっている。ここで不合格となった場合には再研修となるなど、徹底した育成プログラムとなっている。さらに、学研塾講師検定を受験し5段階評価を受けることで、自身の講師レベルを自覚するとともに、更なる向上に向けてのモチベーションを高めている。

相互研鑽による能力向上

講師としての能力を継続的に高め続けるために、月1回スキルアップ研修を実施している。教科毎に正社員と非常勤社員が集まり、教え方等について、ディスカッションやフィードバック、事例検討等を行っている。

一次試験免除による積極的な正社員登用

正社員登用については、正社員転換の試験制度を設けており、試験に合格したら正社員になることができる。非常勤社員は正社員登用を希望すれば、所属長の推薦を受けて一次試験(教科の筆記試験、面接)が免除される。二次試験(論文、面接)の合否は、本社が判断し、毎年、学生の非常勤社員のうち1~2名が新卒入社している。また学生以外であっても、申出により一次試験が免除されて正社員転換が可能である。

正社員と同等の福利厚生制度

以下の制度については、非常勤社員も正社員と同様に対象となっている。

  • 会社補助金制度
    取締役会の承認を得て活動している各種同好会に対し、補助金を支給している。
  • 慶弔制度
    結婚・出産・死亡等に対して、5千円から3万円の慶弔金が支払われる。
  • 学費免除、及び割引特典制度
    本人の入学金は免除、学費・教材費・ゼミ合宿参加等については費用が3割引となる。また、本人の紹介者は入学金が半額になるなどの特典を利用できる。これらの免除や特典は、大学生に限らず、非常勤社員全員に適用される。
  • 福利厚生施設、宿泊施設の利用制度
    会社が契約している各種施設を、安価で利用できる。

社内イントラネットによる情報共有

社内イントラネットには、非常勤社員を含めて全社員がアクセスできる。ここでは経営情報等も開示されているため、経営に対する信頼感を高めることにつながっている。

4. 成果と課題

適正な評価、正社員と同等の福利厚生の実施等の労働環境の整備を進めてきた結果、非常勤社員の帰属意識が向上し、定着率が高まったことで、平均勤続年数は5年前の1~2年から約3年に伸びた。また、各種研修を充実させた結果、非常勤社員自身も子どもの成長に大きく関われることにやりがいを感じるようになった。すなわち、仕事という枠を超えて自分の価値を高めることができるという実感が、非常勤社員のワークモチベーションの向上につながり、同社に対してプラスアルファの付加価値をもたらしている。こういった高い職業意識を持った非常勤社員の存在は、今や同社にとっては、なくてはならない存在となっている。

今後は、非常勤社員の意見をさらに取り入れ、制度を柔軟に改定しながら、労働環境の整備・改善を進め、有能な人材の確保により一層注力していきたい。

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