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(株)AOKI

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業支援事業(雇用管理改善)より

継続的に働きやすい環境を整備し、有能なパートタイム労働者の戦力化を図る

4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
9.その他
所在地 神奈川県 業種 小売業
従業員数 約5,700名 パート労働者数 約3,000名
事業概要 織物・衣服・身の回り品小売業
ポイント
  • ユニークな表彰制度・報奨金制度でパートタイム労働者のモチベーション向上を図る。
  • 柔軟な働き方を選択できるギアチェンジパッケージ。
  • 一度離職しても復帰できるジョブリターン制度。

1. 企業概要・人員構造

同社は1958年、日本経済が高度成長期を迎え、当時スーツ1着の価格がサラリーマンの月給に匹敵する時代に「ビジネスマンが日替わりでスーツが着られる世の中にしたい」という想いを胸に創業。半世紀以上経た現在では、全国に700店舗を展開するスーツ専門店である。

各店舗には、店長以下2~3名の正社員・エリア社員と4~5名のコミュニティ社員・パートナー社員が配置されている。

従業員の雇用区分は以下のとおりである。

呼称 正社員 エリア社員 コミュニティ社員
(パートタイマー)
パートナー社員
(パートタイマー)
契約形態 無期契約 有期契約
給与形態 月給 月給 時給 時給
現在の人数 2,350名 350名 40名 2,960名
所定労働時間 8時間 8時間 5~8時間 5~7.5時間
就業形態 無制限 職種限定かつ地域限定
勤務地要件 全国異動あり 同一都道府県限定 居住地限定 居住地限定
店長職登用 × ×
賞与 あり
退職金 あり なし
退職慰労金 なし あり

有期契約の社員は、エリア社員、コミュニティ社員(後述)、パートナー社員で構成される。中でもコミュニティ社員は、昨年導入した新しい雇用形態である。

パートナー社員の大半は、扶養の範囲内で働くことを希望する、近隣に居住する主婦層である。各自のライフスタイルに合わせて働くことのできる環境が整備されているため、勤続年数が10年~20年以上の者もおり、60歳を迎えるパートナー社員は、毎年40名前後いる。

契約期間は、採用時は3か月の試用期間を設けているが、その後は原則として2年間である。特段の事情がない限り、ほとんどの者が契約を更新している。

パートタイマーのうち(コミュニティ社員、パートナー社員)社会保険に加入しているのは、約1,850名である。賞与、退職慰労金については、有期契約社員全員に支給している(詳細は後述)。

2. 取組の背景

1990年代前半に同社の正社員比率が7割を超え、人件費の増加が課題となっていた。その後の景気後退とともにコスト削減が必至となり、パートタイマーを積極的に活用するようになった。

現在では、パートタイマーは店舗の第一線でお客様にサービスを提供する重要な人財であり、同社では大切な戦力である。彼らのモチベーション向上・維持のため、後述する表彰制度等、様々な施策を行っている。

3. 取組の内容

パートタイマーに新規雇用区分を設置し、能力・意欲ある者を登用

従来、パートタイムで働くことのできる雇用区分はパートナー社員のみであったが、昨年「コミュニティ社員」という職務内容をレベルアップさせた雇用区分を新たに設置した。

コミュニティ社員を導入した理由には、①販売や商品の陳列だけでなく、店舗運営のサポートや店長不在時の責任者になりたいという能力・意欲のあるパートナー社員のために、勤務地を限定したまま、職務内容をレベルアップさせた雇用区分を新設しモチベーションの向上を図る、②正社員やエリア社員が育児や介護等の理由により、働き方が制限される時期の受け皿としての機能を持たせる、という2つの狙いがあった。

パートナー社員からコミュニティ社員への転換は、本人が希望すれば、エリアマネージャーの判断によって可能となる。転換試験はなく、日頃の行動面の評価を重視し、能力・意欲のあるパートタイマーであれば、積極的にコミュニティ社員に転換している。これまでに転換申請を行った者は、ほぼ全員がコミュニティ社員に転換した。現在、コミュニティ社員は40名で、そのうち39名がパートナー社員からの転換者である。今後は400名規模に増員を図りたいと考えている。

賞与・退職慰労金の支給

パートタイマーについても正社員同様に年2回(7月、12月)の賞与及び年1回(7月)の決算賞与が数千円~数万円の範囲(金額は会社及び店舗の業績によって異なる)で支給される。また勤続3年以上の者には、退職慰労金制度が適用され、所定労働時間に応じて下記の金額を支給している。

退職慰労金区分 支給額(金額は勤続年数により異なる)
パートナーA(週の所定労働時間30時間以上) 35,000円~95,000円
パートナーB(週の所定労働時間20時間以上30時間未満) 26,000円~74,000円
パートナーC(週の所定労働時間20時間未満) 17,500円~47,500円

全体の生産性向上を重視した人事評価制度

パートタイマーに対し、半年に1度(上期、下期)人事考課を実施している。

評価内容は「基本姿勢」と「基本業務」から構成されており、お客様に対する姿勢、本人の身だしなみ、報連相、勤怠状況、コミュニケーション等約20項目の評価項目が設定され、それぞれ5段階(A、B+、B、B-、C)で評価する。

基本的に行動面の態度評価を重視しているため、個人売上成績については、評価項目には含まれるもののウエイトは低い。その理由としては、店舗全体の生産性を向上させるためには、チームプレイ(例えば、ある社員が接客中に他の社員が効率良く片付けるなど)が大切であるという考え方が根源にある。社員間の助け合いやお客様に対する良い接客態度が結果として、店舗全体の生産性に結び付くことを重視し、行動評価のウエイトを高く設定している。上期、下期の総合評価を基に、翌年度の昇給額(数円~数十円程度)が決定する。

人事考課のフィードバックは、エリアマネージャーが行っており、評価結果とともに翌年度の昇給額を本人に伝えている。

多様な報奨金制度を用意し、パートタイマーの働きに報いる

パートタイマーについても正社員同様の報奨金制度が適用される。特に①「個人売上高報奨金制度」では、パートタイマーに還元する報奨金の割合は、正社員よりも高い。その理由は、勤務時間の短いパートタイマーが正社員と同じ販売高を稼ぐということは、「生産性が高い」と認識しているためである。

また、裏方業務(裾上げ後のパンツと上着をセットするなど)を担当するパートタイマーに対して還元する報奨金制度も設けており、縁の下の力持ち的存在を全社員が認識し、評価している。

報奨金 内容 特徴
①個人売上高報奨金制度 毎月の個人の売上高に応じて毎月支給 報奨金の還元率は正社員よりパートタイマーの方が高い
②月間業績評価制度 月間の店舗の粗利高の目標達成率100%以上に達した場合に毎月支給 パートタイマーについても勤務時間に応じて支給
③ファンド制度 重点商品やその時期のお勧め商品を販売する毎に毎月支給 例:重点商品1点ごとに 50円~1,000円の範囲で支給

ユニークな表彰制度

モチベーション維持と向上のため、表彰制度も充実している。中でも1年間の個人の販売成績やお客様満足度、会社への貢献度等に応じて表彰される「年間表彰式」では、受賞者の家族を招き、家族の前で社長が表彰するというユニークな表彰式を開催している。表彰者の2割~3割がパートタイマーである。

上記以外にもユニークな表彰として、パートタイマーのみが表彰される「人時(にんじ)生産性大賞」があり、時間当たりの生産性の高いパートタイマーに対して表彰される。そのほか、感謝の手紙等でお客様からたくさん褒められた社員には、「顧客満足大賞」が、リピーターをたくさん作った社員には、「固定客大賞」等、計15種類以上の表彰が実施されている。

柔軟な働き方を選択できるギアチェンジパッケージ

同社は2014年9月に「ギアチェンジパッケージ」という制度を導入した。「ギアチェンジパッケージ」とは、ワークライフバランスのさらなる向上を図るために、個人の事情(介護・看護・育児等)を考慮し、本人の申請により一定期間柔軟な働き方の選択ができる制度である。また、その事情が解消した時には、再び元の社員区分に戻ることができる制度である。この制度を活用すると、働き方の「シフトアップ」、「シフトダウン」を自らの希望により選択できる。

育児・介護等の理由により働き方をシフトダウンしたいと希望する社員は、ギアチェンジ申請によって最大3年間は現在の社員区分と職位を維持したまま、勤務地や勤務時間等を限定して働くことができる。その後3年経過しても限定する理由が消滅しない場合には、正社員からエリア社員に転換することができ、さらに勤務地や職務内容もより限定したいという社員は、コミュニティ社員もしくはパートナー社員に転換することもできる。このギアチェンジパッケージは、多様な働き方が選択できる制度として、社内では好評である。

ギアチェンジパッケージを利用した正社員転換

パートナー社員が職域を広げ、エリア社員への転換を希望する場合には、人事考課の際に“期待通りの成果を出している”という評定の「B」以上を取得していることが条件となる。この条件を満たした希望者は、地域を統括するエリアマネージャーと面談を行い、将来の希望や勤務条件(勤務地域範囲や休日等の労働条件変更部分)の確認手続きを経て、エリア社員に登用される仕組みとなっている。また、エリア社員から正社員になるには、エリア社員としての働きぶりが評価され、本人の希望と上長の推薦があれば、面接試験を経て正社員に転換する仕組みとなっている。

現在では、パートナー社員からエリア社員へは3か月ごとに10名程度が転換し、エリア社員から正社員へは年間10名が転換している。

法定水準を上回る育児休業制度で育児と仕事の両立を支援

パートタイマーについても、正社員同様に法定水準を超える2年間の育児休業を認めている。現在は、全社で70名程育児休業を取得しているが、そのうち30~40名はパートタイマーである。

また育児休業後の時間短縮勤務についても手厚く、法定水準を超える「小学校1年生4月末まで」時間短縮勤務を可能としている。今後はさらに「小学校4年生4月末まで」若しくは「中学校1年生4月末まで」の期間について時間短縮勤務を拡充していく方向である。

一度離職しても復帰できるジョブリターン制度

2015年1月、一度退職した社員が5年以内に復職したいと希望すれば元の社員区分の範囲に戻ることができる「ジョブリターン制度」を導入した。導入から半年経ち、月2名程度のペースで復職社員がいる。もちろんパートタイマーについても当該制度は適用される。

人手不足状態に陥りやすい店舗にとって、当該制度は優秀な人材を「取り戻す」有用な手段と受け止められている。

4. 成果と課題

ギアチェンジパッケージやジョブリターン制度の導入により、働き方の多様性が広がったため、正社員にとってもパートタイマーの位置付けが受け入れやすくなった。また、各人の諸事情に合わせて自由度のある勤務形態を可能にした当該制度は、多様な働き方を実現でき、雇用の継続性、安定性を確保する上で有用な制度と感じている。

コミュニティ社員やパートナー社員は、近隣地区に住んでいる主婦層が大半を占め、地域に根付いている者が多い。今後はパートナー社員の勤務地を一店舗に限定にするなど、馴染みのお客様の顔が分かる販売スタッフを増やし、地域密着型の店舗づくりを目指していきたいと考えている。

加えて、従業員自身がやりがい、生きがいをもって長く安心して働ける職場環境づくりを進めるため、今後は、有期契約社員(エリア社員、コミュニティ社員、パートナー社員を含む)を無期契約の限定正社員に転換させ、退職金等の処遇についても整備していきたい。

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