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株式会社ダブリュ・アイ・システム

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成27年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用均等・児童家庭局長奨励賞)

パートタイム労働者を正社員と区別せずに育成することで顧客サービスの質を向上させ、社会への貢献につなげる

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 小売業
従業員数 829名 パート労働者数 371名
事業概要 コンタクトレンズ販売事業を中心に、眼鏡及びデジタル補聴器販売事業、ペットヘルスケア事業
ポイント
  • 社内ライセンス制度により知識・スキル向上を狙う。ライセンス取得者には正社員とほぼ同等の手当を加算。
  • パートタイム労働者から正社員に転換できる制度を整備し、優秀で意欲的な人材を確保。
  • 接客ロールプレイング大会を通じ、サービスの質と業績の向上を目指す。
  • 委員会活動にパートタイム労働者も参画し、現場からの意見や提言を店舗運営改善に活かす。

審査委員はここを評価

医療機器なのにコモディティ化が進む同業界にあって、教育・評価・表彰や、それに応じた報酬により、人の質の向上を図り競争力を高めています。正社員化を明確に意識する「準社員」枠新設の好影響が期待されます。

1. 企業概要・人員構造

同社は1989年に設立され、コンタクトレンズの販売事業を中心に、眼鏡やデジタル補聴器、ペットヘルスケア事業を展開している。コンタクトレンズ販売事業の中核を担う「エースコンタクト」は全国に75店舗あり、コンタクトレンズ及び関連商品の対面販売を実施している。

エースコンタクトの各店舗では、パートタイム労働者が正社員と一体となって店舗を運営している。同社におけるパートタイム労働者は、「パート」と呼ばれるパートスタッフ1と、「準社員」と呼ばれるパートスタッフ2に区分されている。パートスタッフは全従業員の半数近くを占め、接客、販売、在庫管理等を担当する。

パートスタッフの勤務時間は、採用の際に本人の希望を考慮して個別に決定している。

2. 取組の背景とねらい

同社の中心的な事業はコンタクトレンズの販売であるが、コンタクトレンズは高度管理医療機器であること、視力向上は利用者の生活の質の向上に直結していることから、利用者の安全や健康に配慮したコンサルティングの重要性を強く認識している。

来店者のニーズを捉え、正確で分かりやすい商品説明・コンサルティングを実現するためには、店舗で直接お客様と接する機会の多いパートスタッフの技能を高めることが必要であるため、パートスタッフの処遇改善や教育訓練に力を入れている。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

時給は年2回見直し、社内ライセンス取得手当は正社員との均衡を考慮して決定

同社では、パートスタッフ用の就業規則において、その処遇を規定している。基本給は地域ごとに異なるが、年2回見直しを実施し、上限1640円まで10円単位で上げていく。社内ライセンス取得(後述)によって加算される手当は、正社員と実質的に同額に設定し、慶弔金も同様に支給する。賞与は業績に応じ、夏季及び年末にパートスタッフに対しても支給している。

評価表を用いて半期ごとに人事考課を行い、昇給等に反映

同社では人事考課マニュアルを整備し、人事考課のスケジュールや方法及び手続きを規定している。

パートスタッフに対する人事考課は、「店舗基本原則」と呼ばれる知識技術、接客技能、身だしなみや清潔感に関する項目のほか、従業員満足度、業務実績等、業務クオリティ全般について項目別に6段階で評価し、重要度に応じたウエイトをかけたものを加算した合計値で半期の評価を決定している。上長との面談で自己評価と上長(店長)評価を行い、グループリーダー又は部長が、店舗間のバランス調整をして最終評価を決定する。

人事考課の結果は昇給と賞与に反映される。また、正社員転換を希望する場合、この考課結果がA+以上であることが転換の必須要件になる。

店舗基本原則個人目標シート(イメージ)

人事考課表(イメージ)

社内ライセンス認定による手当支給

同社では、パートスタッフを含む全従業員を対象に社内ライセンス制度を導入し、年2回取得試験を実施している。ライセンスは担当業務ごとに3種あり、それぞれに3レベルを設定、上位ライセンス取得者には時給に手当を加算している。

取得試験の内容は、Grade-1は筆記試験のみ、Grade-2とGrade-3は筆記試験と実技試験がある。時間当たりの加算額は、正社員とパートスタッフでほぼ同等としている。

パートスタッフの大多数がGrade-1を取得しており、20名以上がGrade-2を、5名がGrade-3を取得している。

社内ライセンス取得による時給加算額

  レベル パート時給加算額 正社員給与加算
眼科アシスタント
スペシャリスト
Grade-2 30円 5,000円
Grade-3 90円 15,000円
販売受付
スペシャリスト
Grade-2 20円 3,000円
Grade-3 60円 10,000円
眼科受付
スペシャリスト
Grade-2 10円 2,000円
Grade-3 40円 6,000円

接客ロールプレイング大会を開催し、接客品質を向上

2010年度から、接客技術の向上と共有を目的として正社員とパートスタッフを対象とした接客ロールプレイング大会を年1回開催している。

まずは店舗代表を選抜し(自薦・他薦)、次にグループで予選を実施、予選を勝ち抜いた者が代表選手として決勝大会に進出する。

全国大会は取締役全員が審査員を務め、優勝者には15万円、準優勝者には10万円の賞金が授与される。表彰式では優勝者と準優勝者が模範となる接客を披露することで、高度な接客スキルの社内での共有を図っている。また、勤続3年未満の者を対象にしたジュニア大会も開催される。

そのほかにも、「お客様感謝の言葉表彰」として実際の接遇で良かったものを表彰し、社内で共有する制度や、「会員紹介キャンペーン」として期間中の会員獲得数に応じて表彰する仕組み等があり、パートスタッフを含む従業員のモチベーション向上を図っている。

新規に採用したパートスタッフに対し、段階的なOff-JTを実施

新規に採用したパートスタッフに対しては配属前研修を実施し、店舗配属後も入社から3か月目にフォロー研修を実施する。

配属前研修では4日間をかけて、就業規則や社会人としてのマナーや身だしなみ、コンタクトレンズに関する基礎知識、業務の基礎知識を指導し、店舗に出勤する際の不安を軽減するようにしている。フォロー研修では、基礎知識、商品知識、接客技術の向上を目指すとともに、同時期に入社したパートスタッフ同士の良好な人間関係の構築を目指している。加えて、フォロー研修では社内情報の共有化も図っている。

配属後の実務的な教育訓練は店舗で実施するOJT、Off-JTが中心となるが、そのほかにグループや本部が実施する研修、コンタクトレンズメーカーが主催する研修があり、必要に応じてパートスタッフも受講している。

研修開催の告知等の社内情報はグループウェアを通じて公開されており、パートスタッフも店舗に設置されたパソコンを用いて、これらの情報にアクセスができる。就業規則や各種規定、「お客様感謝の言葉表彰」において表彰された取組等も閲覧することができ、情報・ノウハウの共有を図っている。

パートスタッフの中でも正社員を目指す者を「準社員」に登用

同社では、パートスタッフの中でも正社員にキャリアアップしていくことを希望する層と希望しない層がいると考え、2つの区分を設定し、キャリアスタイルに選択肢を持たせる制度を導入した。入社時は全員がパートスタッフ1だが、要件を満たした者をパートスタッフ2に登用し、より社員に近い気持ちで目的や責任を持って働けるよう、「準社員」と呼んでいる。パートスタッフ2に登用されると、基本給や賞与の上限がパートスタッフ1よりも高くなる。

パートスタッフ1のうち、人事考課結果が「A+」以上で、本人の希望と上長の推薦がある者は、パートスタッフ2への転換試験を受けることができる。試験は面接試験のみで、店長とグループリーダーが面接官となって実施する。以前は「キャリアスタッフ」という準社員とほぼ同様の雇用形態があり、その面接試験を本部で実施していたが、日頃の様子をよく知るグループ単位で転換可否を判断した方が良いと考え、準社員制度の導入の2015年度と同時に、試験権限を委譲した。

例年、80名程度がパートスタッフ1からパートスタッフ2(準社員)に転換している。

パートスタッフの区分

  パートスタッフ1 パートスタッフ2(準社員)
職種・就業場所の異動 原則として無
ただし、本人が同意した場合はその限りでない
原則として無
ただし、本人が同意した場合はその限りでない
基本給の見直し(7/1,1/1) -10円~40円/時給 -15円~60円/時給
賞与(夏季,冬季) 0円~50,000円 0円~100,000円

パートスタッフ2から正社員への転換制度を整備

2014年度まではパートスタッフ1から直接正社員に登用される正規従業員登用制度があったが、2015年度以降はパートスタッフ2(準社員)を経てから正社員に登用される仕組みとなっている。

パートスタッフ2(準社員)として半年以上勤務した者のうち、直前の人事考課結果が「A+」以上で、配置転換に応じられ、上長の推薦がある者は、正社員転換試験を受験することができる。実際には本人からの申告を待つだけでなく、人事課より受験資格対象者リストをグループリーダーに渡し、グループリーダーや店長が本人に転換試験の受験を打診している。

年2回実施する転換試験は、一般常識を問う筆記試験、論文試験、営業推進部、人事課による面接試験で構成される。論文試験では、「正社員に転換した後の抱負」、「コンタクトレンズの良いところ・悪いところ」、「やってみたい接客」等、毎回異なるテーマを課している。面接試験では、正社員になりたい理由や店舗での活躍の様子、業務改善策等を問う。

合否はグループリーダー会議にて決定し、所轄のグループリーダーから本人に伝える。合格率は8~9割に達するが、合格に不十分と認定された場合には、グループリーダーが本人に丁寧に説明し、その後の指導につなげている。そのため、不合格者であっても離職するケースは少なく、次回の試験において明らかな成長がみられている。

2012年度から毎年20名前後のパートスタッフを正社員に転換させており、累計で100名を超えている。2012年度23名、2013年度26名、2014年度36名が合格しているが、20代~30代の若手が多いのが特徴である。転換後の昇級に制限はなく、パートスタッフ出身者の中には店長やグループリーダーまで昇格した女性もいる。準社員制度を導入した2015年度のパートスタッフ2(準社員)から正社員への登用者数は、上期9名、下期19名(予定)である。

業務改善のための委員会活動にパートスタッフも参画

同社では、各店舗から選出された代表者が集まり、業務環境やサービスの質改善を目指して意見を出し合う「アクティブ・コミッティ」という委員会活動を行っている。

店舗ごとに代表(アクティブ・コミッティ担当者)を選出し、更に複数店舗を統括するグループ単位で代表者を決定する。各グループの代表者は、1年間の任期の間、毎月「アクティブ・コミッティ会議」に出席し、店舗及びグループの代表として問題解決のために意見を出し合う。現在、グループの代表としてアクティブ・コミッティ会議に出席している従業員の25%をパートスタッフが占めている。

アクティブ・コミッティのこれまでの成果としては、店舗で使用する備品を定期的にリニューアルする仕組みや、店舗に来店事前予約システムを導入したこと等が挙げられる。

再雇用制度「Ace Partner Staff制度」で人材確保

同社でキャリアを積んだ人材を長期的に活用するため、自己都合で退職した従業員や、育児休業等の理由で長期休業中の従業員が、月に数日といったかなり短い時間や不定期での勤務であっても復職できる仕組みを導入した。

この制度については、退職時や休業取得時に伝えるだけではなく、随時、退職者・休業者に案内を郵送するなどして周知を図っている。この制度を利用して復職した場合、月に数日といったかなり短い時間での勤務も認められる。育児休業中や何らかの理由で退職した従業員が、本格的な復職前に知識をアップデートする目的で利用を希望することが多い。

福利厚生制度の一つとして、コンタクトレンズ支給プログラムや従業員割引制度を設ける

福利厚生制度として、制服貸与や交通費支給、慶弔金制度等を設けている。加えて、コンタクトレンズ支給制度や従業員割引制度があり、パートスタッフにも適用している。同社の従業員は、正社員・パートスタッフともに、顧客として来店したことが同社を知るきっかけであったコンタクトレンズ利用者が多いため、この福利厚生制度は好評である。

また、正社員のみならず、所定の条件を満たしたパートスタッフにも育児・介護休業の取得及び短時間勤務を認めている。これまで、13名のパートスタッフが育児休業を取得し、5名が短時間勤務の利用実績がある。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

同社では、従業員満足度を向上させることが顧客満足度の向上につながり、ひいては業績の向上をもたらすとの理念により、正社員とパートスタッフの区別を減らし、公平な制度設計になるよう意識している。

他方、制度を整備するだけでなく、実際にパートスタッフが働く店舗が「働きやすい職場」になるよう、工夫している。例えば、パートスタッフが初めて店舗に出勤する日には、店長が在店しておく、名札を用意しておくなど、受入態勢を整えるよう指導している。仲間として受け入れる姿勢を明確に示し、新規採用者の不安を軽減することにより、早期離職を防ぎたいと考えている。

パートスタッフをはじめとする従業員が働きやすい制度を整備することが、接客の質向上につながり、ひいては採用活動の質の向上にもつながると考えている。実際に、正社員採用・パートスタッフ採用の際に、応募のきっかけとして、顧客として来店した際の印象の良さを挙げる者が多い。

5. 取組の効果と今後の見通し

同社では、顧客満足度の向上には従業員満足度の向上が必須であると考え、種々な方策を導入し環境を整備してきた。その結果を測定するために、パートスタッフを含めた全従業員アンケートに職場の満足度を尋ねる設問を追加したところ、2014年度は85%が満足と回答した。

また、パートスタッフの離職率は2012年度49.2%、2013年度42.6%、2014年度40.2%と年々下がってきており、定着に効果が表れてきた。無記名の退職者アンケートにおいても「同社に勤務できて良かった」という回答が多い。

また、様々な研修の継続的な実施により店舗のサービスレベルが向上し、顧客満足度も向上している。2012年度・2013年度連続で、コンタクトレンズ購入先意向調査の「購入店に対する満足度」第1位を獲得し(GFK調査)、累計会員登録数も2015年2月までで200万人となった。

今後もアクティブ・コミッティ等、現場からの提言を活かし、想像力豊かに改善を続けていきたいと考えている。

コンタクトレンズ販売は業務内容が複雑で、変化も多いため、短い勤務時間で業務を覚えていくことは難しい。しかし、システムの改善により負荷を減らせる部分もあるため、現在は店頭用の新しいPOSシステムを開発している。来秋には、集計や商品管理の負担が軽減される見込みで、短時間勤務を希望する主婦や学生の更なる活用につなげていく意向である。

また、既に整備している諸制度の利用実績を増やすことで働きやすい環境を作り、若い人たちが安心して長期的なキャリアプラン・ライフプランを考えられる会社にしていきたい。そして、優秀な人材を確保するとともにサービスの質を向上し、顧客満足度の向上につなげていきたいと考えている。

従業員の声

店舗で人材育成や改善活動に取り組みながら店長を目指し、将来は本部の一員として全社に貢献できるよう、経験を積んでいきたい
(店舗勤務、販売、勤続6年)

2011年11月に入社。研修やOJTで親身な指導を受け、少しずつ業務を覚えていった。

2012年に接客ロールプレイングジュニア大会に出場。予選を通過し、本戦では優秀賞を受賞したものの最高位の獲得はできず、周囲の手厚いサポートに応えられなかったことに悔しい思いをした。この経験をきっかけに、今後同社に長期的に勤務し、本大会での上位入賞を目指すことを決意した。

その後、積極的に知識やスキルの向上に励み、2013年4月にキャリアスタッフ(現在の準社員)に、2014年7月に正社員に転換した。同年12月に第5回ロールプレイング大会で準優勝し、会員紹介キャンペーンでもグループ最優秀賞を獲得することができた。

現在は副店長を目指して、店長不在時に責任者を務められるよう管理業務を学んでいる。アクティブ・コミッティにはグループ代表として参加し、顧客サービスや環境の改善策を検討している。そして、店舗で十分な経験を積んだ後は、本部のメンバーとして若手の指導・育成にも尽力していきたい。

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