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株式会社仁科百貨店

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成27年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用均等・児童家庭局長奨励賞)

正社員と一部重複した職責制度と、能力技能育成と連動した人事考課の実施によりパートタイム労働者のスキル向上と適正処遇を実現

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
所在地 岡山県 業種 小売業
従業員数 1,696名 パート労働者数 1,392名
事業概要 食品スーパーを倉敷市を中心に岡山県南部地域で経営
ポイント
  • 正社員の職責制度と一部重複した職責制度でパートタイム労働者のモチベーションを向上。
  • 能力技能育成と連動した定期的な人事考課等による昇給・昇格の実施。
  • 「能力技能育成シート」を活用した計画的な能力開発と技能の習得状況把握。
  • 技能認定試験によって高い技能を有するパートタイム労働者に手当を支給。

審査委員はここを評価

職責制度、能力向上と連動した昇格、能力評価シート活用、技能検定試験等を組み合わせ、一貫した取組として、パートタイム労働者の人材育成を図っています。教え合う職場の雰囲気作りに成功している点も素晴らしいです。

1. 企業概要・人員構造

同社は1900年に創業した万屋「浜中屋」を起源とし、1949年に株式会社仁科百貨店を設立・法人化し現在に至る。コンセプトショップ「フードバスケット」という食品スーパーを主力形態とし、倉敷市を中心に岡山県南部地域に31店舗を展開している。

同社の従業員の雇用区分は、正社員、専門社員、契約社員、パートタイマーからなり、所定労働時間が週40時間の正社員、専門社員、契約社員に対して、パートタイマーは週35時間を上限としており、このパートタイマーがいわゆるパートタイム労働者に当たる。パートタイマーの契約期間は3か月更新であり、賞与は一定の職責以上のパートタイマーに対して支給される。

パートタイマーは、全従業員の8割超を占め、店舗のレジ、販売等の業務に従事している。一方、正社員は本部業務のほか、店舗においては店長、青果・鮮魚等の売場チーフ又は担当者として、店舗規模により2~20名が配置されている。小規模店舗では、パートタイマーのみで売場が構成されるケースもある。

なお、同社では、他社に先駆けてダイバーシティ(多様性)を推進する取組を行っており、パートタイマーも正社員同様、65歳を超えても働く能力と意欲があれば、実質的にエイジフリーで活躍できる機会が与えられている。このような取組により、独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構が行う「高年齢者雇用開発コンテスト」において、2004年度に理事長表彰を受賞している。

2. 取組の背景とねらい

同社の正社員は、育成の観点から定期的に人事異動による転勤があるが、それまでその店舗で培ってきたこと全てを後任の正社員に引き継ぐことは期間の制約から難しい。実務に関することは後任の正社員が引き継ぐものの、これまでの担当者の店舗への思いや姿勢、あるいは顧客や地域との関係を受け継ぎ、実際に中心となって店舗の雰囲気をつくっていくのは、その店舗でずっと働き続け、地域に根差したパートタイマーである。

そこで、意欲と実力を兼ね備えたパートタイマーには、正社員の補助に留まらず、最大限能力を発揮してもらいたいと考え、パートタイマーの能力育成・発揮を促進するための人事制度の構築、改善を進めてきた。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

正社員の職責制度と一部重複した職責制度

パートタイマーのやる気を後押しすることが重要との考え方から、働きや貢献に応じた処遇制度の実現に向け、正社員の職責制度と一部重複したパートタイマーの職責制度を構築している。具体的には、パートタイマーの職責をP-1からP-4までの4つに区分し、上位2職責は、正社員の下位2職責と重複させている。

パートタイマーの給与体系は職責給(職責レベルによる処遇)を根幹に据えている。正社員と重複した職責にあるパートタイマーの時間給は、同じ職責の正社員の時間当たり平均給与(賞与を除く)を基準に設定しており、同一労働同一賃金を意識した制度設計としている。

正社員とパートタイマーの職責制度

正社員 パートタイマー
職責6 部長  
職責5 次長、教育店長
職責4 課長、店長
職責3 係長、バイヤー、SV、店長、副店長
職責2 主任、SVアシスタント、店舗チーフ P-4 店舗チーフ、管理業務を担当
職責1 本部担当、店舗担当、サブチーフ P-3 店舗担当、サブチーフ
  P-2 売場内の単一又は複数の作業を完結
P-1 補助業務を担当

定期的な人事考課等による昇給・昇格の実施

パートタイマーの人事考課を年1回、職責・部門ごとに人事考課表を定めて行っている。人事考課結果については、職責の昇格と同一職責内での昇給とに活用している。

評価項目は、大きく分けて、①情意考課、②加点要素(人事考課項目にはないパートタイマーの優れた点を評価)、③業績考課の3つの領域から成る。そして、①情意考課の具体的な項目については職責ごとに異なる比重で定めており、上位2職責(P-3、P-4)では管理能力、下位2職責(P-2、P-1)では業務遂行能力を主としている。①情意考課の評価項目は、別途実施する「能力技能育成シート」(詳細は後述)による評価結果とも連動させており、「能力技能育成シート」を用いた評価結果が人事考課におけるオペレーション貢献度、育成貢献度の考課に反映される仕組みとなっている。人事考課は、本人が自己評価した後、部門チーフが一次評価し、店長が二次評価する。評価結果は全て素点として点数化され、素点の合計点によってS・A・B・C・Dの5段階の「評語」が決まる。評語は各々について換算ポイントが定められており、ポイントは累積され、後述するように職責の昇格及び昇給の基準となっている。なお、人事考課結果については店長又はチーフから本人に対してフィードバックされる。

人事考課表のイメージ(青果・P-1用)

評語の換算ポイントと分布調整率

評語 換算ポイント 分布 備考
S 5 5% P-1、P-2は店舗内で分布調整する。
P-3、P-4は全社で分布調整する。
A 4 15%
B 3 60%
C 2 15%
D 1 5%

職責の昇格は、年1回の人事考課と昇格試験等により決定する。P-1からP-2への昇格は過去1年間の人事考課ポイントが4ポイント以上であれば自動的に昇格するが、P-2からP-3、及びP-3からP-4への昇格は、過去2年間の人事考課ポイントが累計8ポイント以上であるほか、店長・スーパーバイザーの推薦が必要とされ、店舗間異動や土日祝日出勤が可能であること、勤務時間が一定以上であることが要件となり、レポート等による昇格試験が課される(P-3からP-4への昇格には役員面接も課される)。

昇級は、職責内における昇号により実施しており、昇号は人事考課ポイントを基本として、店舗や全社で分布を調整して決定される。

昇格基準

昇格区分 累積ポイント 累積期間 推薦 昇格試験 週当契約時間 店舗間異動 出勤
P-1→P-2 8P~ 1年
P-2→P-3 16P~ 2年 店長・SV 30H以上 土日祝出勤可
P-3→P-4 16P~ 2年 店長・SV 役員面接 30H以上 土日祝出勤可

一目で分かりやすい「能力技能育成シート」を用いて従業員のスキルアップを計画的に推進

パートタイマーが現在の能力を認識した上で、1年後の到達目標を設定し、その時々で何をすべきか、また、必要な時期に適切な指導を受けることができるよう「能力技能育成シート」を採用している。「能力技能育成シート」は、店舗別・部門別(青果・鮮魚・精肉・惣菜・加工日配・レジ)に定められており、所属する従業員の能力開発の到達状況が一枚のシートにて一目で分かる形となっている。なお、このシートの開発は、社内の経験豊富なスーパーバイザーの協力を得て部門ごとに行った。

運用においては、まず年間計画(2月21日から翌年2月20日)を作成し、その年間計画を3か月ごとの目標に分けた管理表を作成する。そして、その目標を達成するための教育指導について、週別の教育スケジュールを立て、それに沿ってチーフが週1回は必ず教育指導を行い、また毎月の習得状況の評価をチーフが行う。週別の教育スケジュールには、いつ、誰が、誰にどのような教育をするのかが記されるようになっており、その状況は店長が毎週、本部メンバーが毎月チェックしている。また、チーフによる教育指導及び評価の実施状況については店長やスーパーバイザーが確認し、進捗の遅れがある場合には指導する。そしてこの店長による監督状況についても、常務取締役や人事部長等の経営層が把握して評価する形となっており、多層的に制度の運用を確実にする仕組みとなっている。また、上位2職責(P-3、P-4)については、特に教育計画の立て方・教育の進捗状況を本部において把握し、不足する点があれば、店長及びチーフに対してフォローを行っている。

能力技能の各評価項目についての達成基準は、①マニュアルを読んでいる・教えてもらっている、②サポートを受けながらできる、③独力でできる、④自己のレベルアップをしながら人にサポートすることができる、⑤独力でできる人を育成できる、⑥部門管理業務(チーフと同じ業務)ができる、の6段階に設定されている。運用においては、各項目についてその従業員が目標とするレベルを淡いグレーで着色し、更に到達しているレベルを濃いグレーで、前期から変化があったところを黄色で着色する形としており、各従業員が各項目についてどのレベルまで達成しているかが視覚的に分かるようになっている。この「能力技能育成シート」は、職場の従業員全員が共通理解を持って常に意識して取り組めるように、店舗の壁面にバインダーを使って掲示し、随時書き込んでいく形をとっている。

能力技能育成シートのイメージ

「能力技能育成シート」を用いて長期的な目標を3か月ごとのステップに落とし込み、更に一週間単位の確実な実施というサイクルによって着実な努力と成長を確認できることが、パートタイマーの意欲につながっている。また、個々の達成度が全員に一目瞭然な点については、同社の家庭的な社風が功を奏し、自分も頑張ろうと奮起するきっかけとなり、お互いに教え合うなど良い循環を生んでいる。

能力技能育成シートの掲示状況

技能認定試験によって高い技能を有するパートタイマーに手当を支給

毎年5~6月に、各部門において必要な作業項目を初級・中級・上級にレベル分けし、技能認定試験を実施している。100点満点中80点以上と合格基準は高い。服装や身だしなみの不備のほか、既定の作業時間や切り身等の重量をオーバーした場合も不合格になるなど合格には高いレベルが求められるため、上級ともなると合格率は25%程度と厳しい。

同社には勤続年数の長いパートタイマーが多いが、そういったベテランのパートタイマーにとっても難しい目標があることが、高いモチベーションの維持に寄与している。合格すると、各級とも1科目ごとに「技術加算」として職責給に上乗せして手当が支給される。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

同社では全体的にパートタイマーの定着率が高いことから、店舗運営に問題意識がなく、教育指導を充実させる意味を理解できないことが多い。現状で十分うまくいっているのだから、更に教育指導する必要がないと感じるためである。しかし、どんなにうまく回っている店舗であっても、正社員が異動したりベテランパートタイマーが離職したりといった些細なきっかけによってたちまち不具合が生じ、そこで初めて計画的な教育指導の重要性に気づくものである。そのため、本部から何度も足を運び、「能力技能育成シート」等を活用した教育指導や評価の必要性を繰り返し説明してきた。

5. 取組の効果と今後の見通し

パートタイマーにやりがいを実感してもらい、活躍を促す制度を進めたところ、離職率が平成26年から平成27年にかけて1.5%程度低下した。また、これまでチーフにしかできなかった業務を、P-3のパートタイマーが代行可能になり、正社員の勤務にも余裕が生まれるようになった。

P-3以上のパートタイマーは、会社にとって大きな戦力だが、その割合はまだ十分ではないため、会社として積極的に昇格を促進していきたいと思っている。そのためにプロジェクトチームを結成し、パートタイマーのための説明会を開き、P-3への昇格を希望するパートタイマーを募ったところ、105名の立候補が上がった。この候補生を中心に、育成のための研修にも、引き続き注力していく予定である。

同時に、現行制度では昇格するために一定の期間が必要であるが、優秀なパートタイマーについては、当該期間を経ずに早期昇格できる仕組みづくりに着手している。その一環として、昇格を早める方向で年に1回の評価を3か月に1回とする評価制度を検討し、モデル店での実施を始めたところである。

こういった積極的な取組が社内に良い影響を与えているためか、店舗売上も上昇傾向にあり、全体に良い方向へ向かっていると感じている。今後は、将来を見据えた店舗経営の考え方や取組による成果を分かりやすく明示することによって、全体の意識をより高めていきたいと考えている。

従業員の声

家庭的な雰囲気を大切に、部門のチーフとして9年間勤務
(精肉部門、チーフ、勤続23年)

現在、部門チーフとして職場の信頼が厚い同氏は、勤続23年になるベテランである。初めてのパート先として勤務し何も分からなかったが、店長から教わったことを、一つ一つ自分のものにしてきた。できる仕事が増えると任されるようになり、自分で考えた仕入れ数と販売数が合致する、工夫して商品が売れる、顧客の反応等、仕事への意欲は楽しさとともに増していった。

同社ではパートタイマーの定着率が非常に高く、勤続年数が長いため、家庭的な雰囲気で居心地が良い。職場では、分からないことはできる人が教える、という雰囲気が定着しているため、お互いに教えあい、励ましあい、店舗全体で教育をしていこうという風土ができている。チーフとしての指導においては、上位の職責になることで、給与も上がり、責任のある仕事を任されると新たな仕事の喜びにつながることを積極的に伝え、やる気を引き出す声かけを心掛けている。

来年には定年の年齢を迎えるが、同社では引き続き活躍することができるので、健康に留意し、できる限り働き続けたいと思っている。また、自分が培ってきた仕事のノウハウや長い年月をかけて顧客と築いてきた関係を若い方へ積極的に引き継ぎ、店舗全体を盛り上げていきたいと願っている。

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