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株式会社鴻仁

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成27年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用均等・児童家庭局長奨励賞)

パートタイム労働者にも正社員と同様の目標管理を通して技能向上を奨励し、顧客サービスの質を高め事業発展を実現

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 岡山県 業種 サービス業(他に分類されない)
従業員数 166名 パート労働者数 46名
事業概要 医療法人の給食、受付、診療報酬請求、清掃等の業務請負、受託及び人材派遣
ポイント
  • 正社員と同様に、一週間ごとに目標を設定し進捗を管理する「週報」や、四半期ごとに実践的な個人目標を立てて管理する「個人成長目標カード」を活用して人材を育成。
  • 雇用形態に関わらず、全従業員を年1回、貢献度と成長度から評価し、結果を昇給に反映。
  • 意欲が高いパートタイム労働者を段階的に正社員に登用。
  • 雇用形態に関わらず、全従業員が経営理念を理解し、長期計画を共有。
  • コミュニケーション機会を多く持ち、パートタイム労働者から現場の声を聴取して業務改善やサービスレベル向上に活かす。

審査委員はここを評価

自身の成長目標を軸にした上長とのコミュニケーションが、パートタイム労働者の意欲向上やスキルアップ、職場・業務の改善につながるとともに、経営理念等の組織の方向性を従業員で共有することにも寄与しているのでしょう。

1. 企業概要・人員構造

同社は、岡山中央病院等を運営する社会医療法人「鴻仁会」のグループ会社として1988年に設立した。「岡山セントラルキッチン(以下OCK)」における病院給食事業、医療法人の受付や診療報酬請求業務、清掃業務等の請負、医事スタッフの人材派遣を担っている。

同社では、正社員、フルタイム契約社員、ショートタイムパートの3つに雇用形態を区分し、全従業員の約25%を占める短時間勤務のショートタイムパート(パートタイム労働者)を、医療法人の受付やカルテ管理、OCKでの調理補助や食堂スタッフ、清掃業務等に配置している。ショートタイムパートは時給制で、多い者は1日6~8時間で週4日程度、少ない者は週に数回短時間又は午前のみ/午後のみと、各人の都合に合わせて勤務時間を決めている。年1回、後述の年間評価の結果に応じて昇給し、賞与はないが、業績に応じて臨時手当を支給する。夜間受付に従事する男性5名は、例外として日給制で契約している。

正社員とフルタイム契約社員は、所定勤務時間は同じだが、役割や責任の大きさが異なる。例えばクレーム対応や派遣先との調整は、原則として正社員が担当している。

2. 取組の背景とねらい

同社では、全従業員が企業理念や価値観、「原点」と称する組織の風土を共有して業務を遂行することが重要であると考えている。そのため、全従業員が高い意欲で勤務し続けることができるように、制度の整備を進めている。

2009年までは組織的な人事評価制度は実施していなかったが、現在の代表取締役が就任してから大きく方向転換し、2010年以降、雇用形態や役職の有無による責任の差異とは別に、人物及び業務内容について全従業員を対象に公平に評価する方針を明確化し、諸施策を導入してきた。全従業員のやる気を引き出し、一丸となってサービスの質を向上することによって収益を向上し、事業を発展させることを目指している。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

評価表を用いて1年間を振り返り、結果を昇給に反映

年1回、評価表を用いて、従業員の人事考課を実施している。まず本人が評価を記入し、面談を経て上長が評価する。更に上の職位の管理職が、全体のバランスに配慮して総合評価をつける。自己評価、上司評価、総合評価の3つの段階で、組織の方向性に沿った行動をしているか、日頃の身だしなみは適切か、業務遂行能力は十分か等を評価し、評価結果は昇給に反映する。2015年度は、ショートタイムパートの約7割が基準を満たし昇給した。2015年度、ショートタイムパートの間に最大で200円程度の時給額の差が出ている。また、週報(詳細は後述)を提出していれば、ベースアップを受けることができる。高評価者を対象に、年度末に評価手当として賞品を支給している。

人事評価表

業務報告と評価の基礎を兼ねる週報を活用

同社の業務内容は多岐にわたり、OCK以外の拠点は各地に分散しているため、評価に当たっても、それぞれの事情を斟酌する必要がある。そこで2012年に、全従業員を対象に、各人が1週間を振り返って目標管理と業務報告を行う「週報」を導入した。

手順としては、①本人が今週の目標を決めて記入、②本人が日々振り返りを行い進捗状況等を記入し1週間ごとに上長に提出、③上長がコメントを記入して返却、④本人が内容を確認し、上長に提出、⑤部長が内容を確認、⑥教育部が内容を確認し本人に返却、⑦本人がファイリングして適宜見直し、年度末に1年分を教育部に提出する。

入社当初は、書く作業に苦手意識を持ち負担に感じる者もおり、慣れるまでは上長の関わり方や指導力が問われるところである。年間評価を決める人事評価表(前述)には、週報提出率の記入欄があり、内容だけでなく提出すること自体が昇給につながることもあり、ショートタイムパートの提出率も、正社員(92.1%)や契約社員(92.2%)と同等レベルの91.6%となっている。

週報は、コミュニケーションツールとしても有効で、現場における業務上又は環境的な問題点を見つけるのに役立つことから、通常は主任、係長、部長クラスまで、また内容によっては社長が目を通し、速やかに改善している。

2015年度スタッフ週報(抜粋)

四半期ごとに自己評価を記入する個人成長管理

業務の質を高めるためには、従業員一人ひとりの成長が欠かせないと考え、全従業員を対象に「個人成長目標カード」を導入した。まず本人が、個人として成長するための目標を立て、四半期ごとに実践的な課題を設定する。上長は、四半期ごとにマンツーマンで面談し、進捗状況や、現状の課題を確認するとともに、業務に対する技術的な不安や職場への不満等を聴取し、適宜指導の上、次の四半期に向けた課題を設定する。上長は予算等の数値を管理するだけでなく、一人ひとりの話を直接聞くことで、信頼関係を深めながら、個人の成長を促し業務の質の向上を図っている。

2015年度 個人成長目標カード

フルタイム契約社員を対象とした正社員転換制度を導入

2010年に、フルタイム契約社員を対象とする正社員転換制度を導入した。2010年度1名、2011~2013年度各3名、2014年度4名の転換実績がある。

2014年12月に、正式に就業規則に規定し、ショートタイムパートはフルタイム契約社員を経て、正社員に転換することができることとした。ショートタイムパートを採用する際にも、面接試験の際に、フルタイム契約社員を経て正社員に登用する制度があることを説明することとした。ショートタイムパートからフルタイム契約社員へは、随時、上長と面接の上で転換可能である。2015年度に1名がフルタイム契約社員に転換予定である。

正社員転換試験は、年1回実施しており、勤続期間が1年以上で、本人が希望し、上長の推薦を受けた者が受験できる。試験内容は、企業理念等の理解を問う問題と志望動機や貢献したい点を記述する筆記試験及び面接試験で、本人の意欲を重視している。合格率は毎回異なるが、おおよそ50%程度である。不合格者には、上長から具体的に理由をフィードバックし、再度の挑戦を促しており、翌年に合格した事例もある。

勉強会等で情報を共有し、経営理念の理解促進と技能の向上につなげる

各部門では、月1回、専門性を向上するために勉強会を実施しており、これは雇用形態に関わらず参加することができる。また、年1回、部署ごとに雇用形態に関わらず全員で「顧客に喜ばれるためにこういった行動をします」といった目標を掲げた「宣言文」を作成し、勉強会で発表している。全員で同じ目標を持ち、方向性を合わせて接遇のレベルアップに取り組む。そのために、スキルアップに役立つ情報を共有する習慣である。研修で学んだことや本で読んだことを、各自が紙に書き出し、掲示・回覧を通して職場で共有している。管理職や正社員からの情報等を契約社員やショートタイムパートに共有する事例が多いが、職歴は浅いが勉強熱心なショートタイムパートが、イラスト力を活かして自らが学んだことを共有したケースもある。

現場の提案を反映させ、事業改善につなげる

同社では、「現場の叡智を集めて決定していく」を社是としており、全従業員から週報等を通じて上がってくる問題点の指摘や改善提案を業務改善に役立てている。ショートタイムパートからの提案を採用し、業務改善につなげた実績も多数ある。

例えば同社では、医療法人の従業員の子どもを勤務中預かる院内保育室と、患者の子どもを診療中預かる一時保育室を運営しているが、後者では初対面の子どもを短時間で楽しませる必要があるため、子どもの好みに対応しやすいよう、絵本やおもちゃを性別・年齢別に分類して収納する方法を作った。同施設は医療法人の所有で壁の装飾も変更が認められていなかったが、保育環境向上のために室内装飾を適宜変更したり、危険箇所を随時修繕したりする必要があるとの提案を受けて、医療法人と同社の契約を見直し、現場の判断で変更できるようにした。

グループ従業員用ホームページの活用等を通じて情報を共有する

全従業員が同じように社内情報を共有できるよう、社内のシステムエンジニアがグループ従業員用ホームページを作成し、ショートタイムパートを含め全従業員が活用している。入社オリエンテーションにて内容と操作方法を説明し、本人の給与明細、組織の予定表、本部からの通達等を閲覧することができる。各種制度に関わる届け出や申請書のフォームもある。拠点ごとに端末を配置している。

各拠点では、月1回のミーティングや毎日の朝礼等も、ショートタイムパートを含む従業員間の意思疎通に活用している。連絡事項の伝達だけでなく、業務上のミスやミスになりそうであったヒヤリ・ハット事例の要因分析や改善策を紹介するなど、有効な情報共有を図っている。

また、拠点が点在しているため、管理職が巡回して状況を把握するとともに、派遣先や受託元からの報告も受け、円滑な職場運営を目指している。

本業を活かした福利厚生と、外部企業と契約した福利厚生を利用可能

独自性のある福利厚生の一環として、社内及びグループ企業が本業を活かした福利厚生の各種サービスを提供しており、ショートタイムパートを含む全従業員が利用している。

給食事業部門OCKが運営する社員食堂では、昼食割引制度により、ワンプレートランチやお弁当を半額で購入できる。おせち料理や年賀状印刷についても割引販売を実施している。

資材部門は、薬の割引購入の斡旋サービスを実施し、医療法人では、医療費の優遇、グループの病院受診及び分娩費用の割引(勤続期間1年以上)や還付、人間ドックの割引、家族割引や紹介割引等、様々な優遇制度を設定している。ピンクリボン運動の一環として、乳・子宮がん検診を無料で受診できる制度も導入し、女性従業員を支援している。

一般的な福利厚生については、民間企業が提供する福利厚生代行サービスと契約しており、正社員だけでなく、社会保険加入対象のショートタイムパートも、宿泊やレジャーをはじめとする幅広いサービスについて所定の補助金を受けることができる。

出産、育児・介護と仕事の両立を支援するため、各種休暇と再雇用制度を整備

同社は、育児中の従業員が仕事をしやすいよう、未就学の子ども1名につき年間5日間の看護休暇等(上限は子ども2名で年間10日)の制度の整備と運用を実施している。2005年度からはショートタイムパートにも育児休暇制度を適用し「おかやま子育て応援企業」として宣言中である。また、2010年度には、妊娠・出産・育児を理由に退職した者を再雇用する制度も導入し、退職するショートタイムパートに説明している。再雇用制度については育児が落ち着いてから入社する者が多いこともあり、なかなか利用者が現れなかったが、2014年に離職した元ショートタイムパートから、2015年春に人事担当者に相談があり、4月に復職、9月からは本人希望によりフルタイム契約社員への転換を果たした。初の事例であったため転換後本人の意見を聴取したところ、同じ仕事に戻るメリットは本人にも職場にもあると確信できた。今後も利用者が増えるよう、ショートタイムパートの採用活動においても周知を図り、制度を活かしていきたい。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

同社では、全従業員が企業の理念や価値観を共有し、顧客サービスの質を高めていくことが企業の業績向上と事業発展につながると考え、雇用形態に関わらず個人の技能と精神面の双方の成長を目指し、その育成に注力しようと各種の仕組みを整えてきた。従業員は、成長を評価されることで、意欲が高まり更なる向上を目指すという好循環を生み出すことができる。こうした中で、時間や工数はかかるものの、金銭的報酬だけでは得られない従業員の満足度の向上とともにサービスの質の向上につなげている。

5. 取組の効果と今後の見通し

2014年度に顧客に対して事務スタッフの接遇についての満足度調査を実施したところ、85%が満足しているとの結果を得ており、これまでの取組の成果を実感した。同時に、改善余地がある事項も把握できたため、今後に活かしていきたい。顧客満足度調査は不定期に実施していたが、2015年度からは定期的に実施し、業務改善を推進していく予定である。

従業員の質の向上を目指して諸制度を整備してきたが、今後は採用活動においても制度や実績を紹介して人材を確保し、業績の向上と事業の発展につなげたい。

従業員の声

ショートタイムパートとして医療法人のクラークを担当。いずれはフルタイムパートへの転換を希望
(岡山中央病院勤務、勤続2年)

個人病院での医療事務の経験があったことから、2013年7月に入職し、医療法人の受付で、患者と医師・看護師をつなぐクラーク業務に従事している。

原則として1日6時間、週5日勤務しているが、育児中であるため、小学生の子どもの行事予定に合わせて勤務したり、未就学の子どもの体調が悪い日には看護休暇も取得している。制度があるだけでなく、人手が足りない時には他の拠点から応援人員を補充する仕組みであることから、少人数の職場でも、遠慮なく制度を利用でき、助かっている。

食堂のメニューが充実し味が良いのも魅力である。現在はとても仕事にやりがいを感じており、子どもが成長したらフルタイムで勤務したいと考えている。

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