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はるやま商事株式会社

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成27年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用均等・児童家庭局長奨励賞)

パートタイム労働者が多い販売業務で販売報奨金制度や年間表彰制度を導入し、意欲向上を図りながら貢献に応じた処遇を実現

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 岡山県 業種 小売業
従業員数 2,931名 パート労働者数 1,484名
事業概要 紳士服及び紳士服関連商品の販売
ポイント
  • パートタイム労働者を対象に月次の販売報奨金制度を設け、販売意欲を奨励。
  • パートタイム労働者も対象とした売上高、CS、永年勤続等の年間表彰制度を実施。
  • 育成には自社独自の教育工程表を利用し、新規採用時にはマニュアルに従って研修を実施。
  • パートタイム労働者が長期間勤務を継続できるよう、雇用形態や勤務地、休業や定年後の継続雇用等、可能な限り調整。
  • 本人の意欲と希望に基づき資格取得を支援し、正社員転換を促進。

審査委員はここを評価

戦力化できている販売職のパートタイム労働者を大事にするという視点で、個人都合を重視し、各人の家庭の事情による店舗間異動を可能にし、家庭と仕事の両立はもちろん、勤務継続の支援をしています。

1. 企業概要・人員構造

1974年に設立し、紳士服と紳士服関連商品を中心に、一部婦人服や用品を開発・販売し、ライフスタイルの提案をしている。地域に密着した専門店を全国展開し、各地で417店舗を運営している(2015年9月末現在)。

正社員、契約社員、嘱託社員、パートナーの4つの雇用区分があり、パートナーと呼ばれるパートタイム労働者が従業員の約半数を占めている。パートナーの大半は地域の主婦や学生で、大多数が店舗の売場に配置され、販売を担当する。一部はバックヤードでの商品整理や事務に従事している。パートナーの契約期間は1年間で、勤務時間と日数は個人の都合により決定し、平日のみ勤務する者もいる。給与は時給制で、賞与はないが、毎月の販売実績に応じて報奨金を支給している。定年は、正社員と同じ60歳だが、希望者は60歳以上でも継続して契約しており、2015年7月時点で約90名を雇用している。

2. 取組の背景とねらい

店舗で顧客に応対し、商品を販売する従業員の大多数がパートナーであることから、質の高いパートナーに長期間勤務してもらうことが、販売増加と収益向上につながると考えている。創業者はパートを大切にすることを命じ、自ら実践していた。それに倣い、同社ではパートタイム労働者を「パートナー(さん)」(ただし、学生のアルバイトは「学生パートナー」)と呼び、顧客との関係を育み、店舗経営を支える重要なプロの販売員として処遇してきた。同社では、パートナーが家族の転居に伴って異動することや、出産や育児で離職した者が再復帰することも多い。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

パートナーを対象とした月次の販売報奨金制度で、販売意欲を奨励

パートナーを対象に、月次の販売報奨金制度を設けている。個人の売上実績に応じてパートナーに報奨金を支給する制度で、同じ店舗で販売を担当していても正社員や嘱託・契約社員には適用されない。

店舗によって規模や集客力に差異があるため、前年度の年商額に基づいて店舗をランク分けする。所属店舗のランクと個人の売上高に対応する支給率を、売上高にかけた金額が報奨金額となる。売上高が高いほど支給率も上がるため、販売増加を目指す意欲の原動力となる。毎月多くのパートナーが報奨金を得ており、2014年度には、通算で約1,700名が約3,700万円を支給された。扶養控除範囲内の収入での勤務を希望するパートナーが一定数いるため、報奨金の支給は優秀なパートナーの勤務日数を減らすことにつながり、社内では制度改定の議論もあるが、パートナーにとっては、分かりやすく好評な制度であるため、継続している。

そのほかに、「秋の買い替え促進」等の、期間を限定した報奨金付きの季節キャンペーンも実施しており、店舗・事業所単位で前年を上回る実績を目指す。また、売上高に関係なく、何か特筆すべき点があった場合に、店長、ブロック長又は本社課長の推薦により、社長が表彰する「月間MVP」制度もある。表彰内容は資格取得や、後述するCSハガキの内容等、勤務時間が短く売上高が少ないパートナーにも配慮したものとなっている。

パートナーも対象となる売上高、CS表彰、特別表彰等の年間表彰制度

年度ごとの成績に基づく表彰制度があり、上位のブロック、店舗又は個人(正社員とパートナー)を年1回表彰している。表彰者には現金等の賞金・賞品等が支給される。

ブロックや店舗については、規模や年商の差を調整するために、売上計画値や前年実績に対する達成度を、個人については年間の売上高を対象としている。個人表彰の上位常連となっているパートナーも多く、2014年度は、個人売上高1位と3位を始め、上位10名のうち4名をパートナーが占めた。上位者の販売状況を分析すると、リピーター顧客による指名での購入や、リピーター顧客からの紹介で来店する新規顧客獲得が多く、顧客との信頼関係を構築できていることが分かる。

サービスの質を向上するために、売上以外の視点からも表彰を実施している。前年に新規開店した中から優良な店舗を選ぶ新店表彰や、会計の際顧客に渡すCSハガキの戻り率の高い店舗や個人、戻ってきたハガキで高い評価を受けた個人に授与するCS表彰、特に優れた点があった個人を部室長以上が推薦する特別表彰がある。2014年度は7名のパートナーがCS表彰を受賞した。

同時に長期間勤務者への永年勤続表彰も実施している。この表彰を受けるパートナーも多く、2014年度は、10年勤続表彰を34名、20年勤続表彰を2名、30年勤続表彰を3名が受賞した。

パートナーの新規採用時には、自社のテキストを利用して研修を実施

パートナーを新規採用した時には、本部で制作したテキスト「HAL Navi」と「Jr. Stage Light」という工程表を用いて、各ブロックの教育担当と店長が教育マニュアルに従って研修を実施している。店長の任命した指導担当者が、従業員としての心得や基本動作をマンツーマンで指導し、テキストに対応したチェック表を用いて、指導内容を実践できているか確認し押印することにより、制度の形骸化を防いでいる。入社から1か月でStep0からStep3まで、3か月でStep6までを終了する。新規店舗で指導が行き届かない可能性がある場合には、本部の人事部教育担当者が3日間の研修を実施するなど、適宜人事部がフォローしている。

Jr. Stage Light(新規採用者用)

教育工程表を利用した教育指導を実施し、時給に反映

教育工程表という独自の教育ツールを活用して、パートナーの教育と進捗管理を実施している。店長が任命した指導担当者(正社員)は教育マニュアルに基づき、工程表に記載された教育実施項目をパートナーに指導する。毎月1回、パートナーが前月を振り返り、月次の教育工程表の自己評価欄と売上実績欄を記入し、店長との面接を受ける。店長は本人とともに達成度を確認の上、評価欄とコメントを記入し、必要な指導を実施する。本人は店長の評価とコメントを確認して、反省や改善、目標を記入して保管し、年度が終了したら店長に提出する。1年間の評価内容は、次年度の時給に反映される。勤続年数が長く優秀なパートナーの時給は、入社時より100円程度高くなっている。

日報で管理していた時期もあったが、店長が毎月同表にコメントを記入することで教育的な側面を強化した。毎月進捗を管理することで、成長や進歩を実感でき、意欲や技能の向上につながっている。

販売業務だけでなく、店長代理や店舗責任者を務める意欲と能力があるパートナーについては、店長又はブロック長が推薦し、社員に準じた業務内容を担う「アドバンスパートナー」に任命し、時給も高く設定する。2015年度は134名が任命されている。

そのほかにも、ブロック又は地区ごとに、パートナーを対象とする研修や勉強会を不定期で開催している。年2回、春と秋に実施している商品展示会にもパートナーは自由に参加することができる。

教育工程表

スキルアップを目指した社内ライセンス制度を導入

販売力の向上とプロ意識を高めることを目的として、正社員とパートナーにライセンス制度を導入しており、取得ライセンスに応じて名札の色を変えている。かつては年間の個人売上高に応じて級位を認定していたが、勤務時間が短い販売員に配慮して、顧客満足度も反映させた新制度「HALMaster制度」を2014年に導入し、一層のスキルアップを目指している。

パートナーでは、旧制度のブロンズライセンスを9名、シルバーライセンスを25名が取得していた。ゴールドライセンスは正社員も含めて取得者がいなかった。

新制度でのライセンス取得者は、2015年4月現在、正社員とパートナーを合わせて、サービスマスター225名(うち、パートナーは17名)、コーディネートマスター219名(うち、パートナーは32名)である。ライセンスは職位と連動していないため、店長よりも上級の色の名札をつけているパートナーもいる。

HAL Master制度

販売に役立つ各種資格取得について受験料と報奨金の支給により支援

正社員とパートナーのスキルアップを目指し、資格取得補助制度を適用している。対象となる資格は、販売士、日商簿記、カラーコーディネーター、色彩検定、TES(繊維製品品質管理士)等で、合格時に受験料と報奨金(5,000円又は10,000円)を支給する。資格取得者は、顧客に渡す名刺に資格名称を記載する。

販売士資格取得は、正社員への昇級基準に含まれているため、正社員転換を視野に入れているパートナーは取得していることが多い。

コーディネート販売で顧客当たりの購入点数が増える可能性が高くなることから、カラーコーディネーター資格を取得する者もいる。

2014年度には、販売士3級を4名、同2級を1名、カラーコーディネーター3級を1名のパートナーが取得し、受験料と報奨金を支給した。

正社員転換の条件を緩和したことで、正社員転換が促進

職歴が2年以上で、顧客づくりへの意識と店舗業績への貢献度が高く、将来店長に見込まれる人材については、上長からの推薦の下、契約社員又は正社員への転換を勧めている。正社員への転換には、簡単な記述テスト(企業理念や社員マニュアルの内容の理解)とブロック長による面接が課される。パートナーから契約社員、契約社員から正社員への転換については、以前から就業規則に明記し実施してきたが、制度利用者は、2014年度に4名(正社員と契約社員各2名)と実績が少なかった。

要因分析とパートナーへのヒアリングを実施したところ、転換要件の学歴制限と、全国転勤可能かどうかの2つの基準が障害となっていることが分かった。そこで、従来の正社員(総合職)に対し、学歴は高卒以上で勤務地域限定の正社員(一般職)を新設し、2015年9月に募集を告知したところ、多数の応募があった。その結果、38名のパートナーが正社員(一般職)に転換する見込みであり、その内、関東地区に勤務する12名については、通年採用している中途社員と合同の集合研修を11月に実施した。今後、若年層を中心として、正社員への転換者数の増加を見込んでいる。

正社員転換のための段階と要件

社長や役員、バイヤーと直接コミュニケーションをする機会を設ける

情報を共有するために、社長メッセージVTRや社内報を各店舗や事業所のiPadでパートナーを含めた全従業員が閲覧できるようにしている。

パートナーからの意見や提案を聞くための場も、社長を始め役員が頻繁に設けている。年2回開催する役員出席の座談会においては、参加者の半数程度をパートナーが占めている。

社長や役員は日頃から店舗を巡回しており、パートナーに直接意見を尋ねてコミュニケーションをとっている。バイヤーも店舗を訪問し、パートナーから次期商品についての意見を聞いている。

本部にも相談窓口を設置し、直接意見を言える仕組みにしている。パートナーが社長に直接電子メールや手紙を書いて、制度や商品について意見を述べることもある。

社内では言いにくい内容の相談をするために、外部の相談窓口とも契約している。内部通報や、パワーハラスメント・セクシャルハラスメントの相談窓口にすることを想定していたが、人間関係の相談が多く、じっくりと話を聞いて励ますことで解決している例が多いようである。

業務以外でも、事業所単位で食事会や歓送迎会等を不定期に実施し、コミュニケーションの場を大切にしている。

能力や働きぶり、実績等を踏まえて、社会保険適用される勤務を推奨

パートナーの能力や働きぶり、個人実績等をふまえて、社会保険が適用される週30時間以上の勤務を勧めており、平成26年度は68名が、平成27年度は上期までで20名が社会保険適用の勤務となった。

社会保険に加入しているパートナーだけでなく、受診を希望するパートナー全員の健康診断を会社で費用負担している。2014年度は、社会保険加入に満たない勤務時間のパートナー約100名が受診した。

また自社商品の購入に当たっては、パートナーにも正社員同等の社員特別価格を適用しており、多くのパートナーが利用している。また、パートナーの家族も正価より安く購入することができる家族特別価格を利用している。

家庭と仕事の両立支援のために、個別事情を最大限配慮する仕組み

伝統的に同社は制度の運営に当たり、個人都合を重視している。例えばパートナーの勤務シフトは、1週間前までに申請すれば変更可能である。学校行事は事前に分かるが、参観や進路相談等は直前の告知が多いというパートナーの要望に応えたものであり、年次有給休暇を使わずにシフトの変更で対応している。

年1回、各店舗や拠点に設置されているPC経由で、全パートナーに身上書を提出させている。転居、結婚、出産、家族の進学や看病、介護等、勤務に影響を及ぼしそうな事柄について、パートナーが人事部に直接相談できる。例えば、パートナーが結婚して転居する場合に上司又は人事に相談すると、転居先の近隣店舗への異動等の対応がとられる。正社員同士が結婚して、一方が仕事を減らしたい場合にはパートナーに転換して勤務する形をとる。また、これまでに50名以上のパートナーが育児休業制度を利用している。もし勤務店舗が統廃合・閉店した場合は、パートナーは正社員と同様に近隣店舗に異動する。

販売力の源である販売員の多数を占めるパートナーを支えることの優先順位は高く、パートナーが家庭や子育てと仕事を両立できるよう、実効的な支援をしている。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

同社創業者が「パートを大切にしなくてはいけない」と言い続けていたことから、パートタイム労働者を「パートナー(さん)」と呼び、意欲的に働きやすいよう職場環境を整えてきた。1週間前のシフト変更や異動への対応は、店長を始め正社員の手間がかかるが、それは正社員の責務だと認識している。そのため現在の取組において、特別に苦労や工夫を要することはないという。

またコミュニケーションを重要視しており、日頃から社長自らが店舗を巡回し、直接パートナーの声を聞いて情報を収集し、制度の整備や運営に活用している。

5. 取組の効果と今後の見通し

同社では、長年にわたりパートナーを大切にしてきたことが、業務に対する意欲の高い販売のプロを多く確保し、店舗の販売力向上と、事業拡大・発展に寄与してきたと考えている。近年では、店舗数の増加により、結婚や転勤で転居した後も同社の店舗で勤務できるパートナーが増えている。また、産前産後休暇及び育児休業の制度を整備したことで、パートナーの制度利用者が増加している(2015年10月時点で15名が利用中)。

その結果、学生パートナーの3月卒業時の大量離職に関わらず、全パートナーの平均勤続年数は、2012年度の4.07年から、2014年度の5.03年に延びており、まさにこれが各個人の販売力、そして会社の利益の向上にも貢献している。

パートナーに長期間勤務してもらうためには、時給を上げるだけでなくパートナーが働きやすい制度を整えることが重要であると考えている。これまでパートナーの処遇については対外的にアピールしてこなかったが、社会全体にパートタイム労働者の働きやすい職場が増えるよう、今後は社外にノウハウを共有するとともに、社外の認定を受けるなどして周知していきたい。

高齢者の雇用についても、百貨店や他社を定年退職した者の応募が増えており、社会的にニーズが高まっていることを実感している。パートナーの継続雇用の実績を活かして、高齢者が活躍する場を提供したいと考えている。

従業員の声

勤務経験のない主婦がパートナーとして就職し、トップ販売員として活躍中
(店舗勤務、販売、勤続24年)

専業主婦で勤務経験はなかったが、子どもが不在の時間にパートタイムで働くに当たり、開店したばかりの店舗なら働きやすいのではないかと考え、1991年10月に5時間勤務のパートナー販売員として入社した。接客経験がなかった上に、当時は研修制度も整っていなかったため、入社当初は緊張して採寸することもできなかった。しかし、倉庫や事務の業務を手伝いながらOJTでスキルを身につけ、販売職の面白さを知った。

1993年から勤務時間を8時間に延ばし、個人売上を伸ばせるようになった。2001年に大規模な店舗に異動し、更に多くの顧客の支持を得て、個人売上高表彰で何度も首位となった。心から販売職が好きなことからパートナーを継続しているが、休日には小売店舗を見学し、気づいたことや新しいアイディアを店舗に情報共有し、店舗では若手販売員のOJT指導も行い、店長を助けている。

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