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株式会社エー・ピーカンパニー

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成27年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用均等・児童家庭局長奨励賞)

主体的に考えるパートタイム労働者を育てる仕組みを導入し、雇用区分に関わらず企画・運営に関わる体制を実現

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
9.その他
所在地 東京都 業種 飲食サービス業
従業員数 3,959名 パート労働者数 3,119名
事業概要 飲食店及び食品販売店の経営、フランチャイズチェーン店の加盟店募集及び加盟店指導、養鶏場及び牧場の経営、漁業(定置網等)、農業(青果物等)、食鳥の処理、加工及び販売、食品の加工、流通、輸出入及び販売
ポイント
  • パートタイム労働者を能力等に応じて5段階にレベル分けし、レベルに応じた時給を設定。
  • 優秀なパートタイム労働者を選抜し、称号付与。
  • 店舗経営にパートタイム労働者の意見を反映。
  • 学生のアルバイトに対して就職活動支援を実施。

審査委員はここを評価

パートタイム労働者を正社員の人事評価に参加させたり、取扱商品の生産者とパートタイム労働者の交流機会を設けたり、パートタイム労働者の多くが学生アルバイトのため、卒業後の就職支援にも取り組むなど、人材活用施策として非常に斬新な取組が行われています。

1. 企業概要・人員構造

同社は2001年、「食のあるべき姿を追求する」というミッションの下、養鶏場と加工場を経営し、自社で漁師を雇用するほか、その他の漁師や生産者とのネットワークを作ることで食材を確保、経営する居酒屋で食材を調理・加工の上、提供する生販直結のビジネスモデルを展開し、1次産業から3次産業までをカバーする、いわゆる「6次産業」に当たる。2015年10月30日時点で直営店166店舗を有する。

従業員の雇用形態は、正社員、契約社員、アルバイト、嘱託社員の4区分で、このうち契約社員、アルバイト、嘱託社員がパートタイム労働者に相当する。全従業員の8割がパートタイム労働者であるが、そのうち9割が学生アルバイト、残りがフリーター等の契約社員や定年退職後のシニア嘱託社員である。

パートタイム労働者の主な業務は店舗の接客や調理である。店舗従業員のうち2割が正社員、8割がアルバイトとなっている。

2. 取組の背景とねらい

従業員感動満足度(EIS)を高めることは、顧客感動満足度(CIS)並びに売上高を担保することにつながる。同社ではアルバイトを中心にパートタイム労働者数が多いことから活躍の期待度は高く、彼らの主体的な業務取組姿勢が店舗運営の鍵となる。パートタイム労働者の労働環境を整備し、従業員感動満足度を高めるために、経済面と心理面を満たす取組を導入することとした。

従業員も顧客も、会社も生産者も、つながりを持つ全ての人々が満足するALL WINの関係構築をミッションとしており、そのために欠かせないのがパートタイム労働者の成長であると捉えている。また、パートタイム労働者の成長は、社会からお預かりしている、将来の社会人である若い人たちへの責任でもあると考えている。このような考えの下、キャリアアップの仕組み導入や感謝イベントの実施、前年度より時給を上げるための業務改善の取組を進めている。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

レベル0~4までの評価を実施し、昇給に反映する

本社で用意した評価項目をもとに、各事業部や店舗にて個別事情・特性に合わせて柔軟に対応しながら能力や取組姿勢を評価し、金銭・給与といった経済的報酬とやりがいといった心理的報酬に反映している。

同社ではパートタイム労働者に次の5つの評価項目を設けており、「自社への理解度と共感度」「仕事への取組方、マインド」「オペレーション能力」「ホスピタリティ」「おもてなし(真心)」の分野について103項目で評価する(基本は103項目であるが事業部により増減)。レベルの上昇に応じて昇給する仕組みとなっている。

店長は1~3か月に1回、面談を実施してアルバイトの各段階の項目の達成度を確認する。全項目を満たしていれば、翌月より新段階の時給を適用する(レベル4を除く、後述)。

レベル0からスタートし、通常入社後約3か月でレベル1に到達する。レベル2は店長の裁量により1,000円~1,100円の範囲で時給に20~30円を加給している。

レベル3はレベル2の全ての項目を満たすことが条件で、在籍期間の残りが1年以上あるかも考慮する(学生アルバイトについては卒業までの期間を考慮)。レベル3に該当するパートタイム労働者は、3,000名いるアルバイトの1%未満である。レベル3該当者に対しては、勤務扱いではないが、同社の接客戦略の立案者であり、現在でも現場に入って実際に接客も行っている副社長が講師となり、研修(座学研修2回+実技研修1回)を行う。レベル3該当者は社内資格のジャパンスタンダード(詳細は後述)に認定される可能性がある。

レベル4に該当するパートタイム労働者は社内に10名程度いる。レベル3の条件を満たした者に対して、副社長が店舗を巡回して職場での評価を考慮し、レベル4の条件を満たすと判断した場合、随時レベルを引き上げている。レベル4になるためには、ジャパンスタンダードの現場研修で行った内容についての実技試験があり、副社長が審査を行う。

レベル4になると、3か月に1回程度の副社長研修をはじめ、ネイリスト研修やディズニーランドのもてなしの精神を学ぶ研修といった、他業界の特別研修を受講することができる。

パートタイム労働者の評価基準項目(イメージ)

優秀なパートタイム労働者を選抜し、称号付与

顧客の期待を越える接客ができるレベルに達した者に対しては「ジャパンスタンダード(ジャパスタ)」、顧客に感動を与えられる接客レベルに達した者に対しては殿堂入りとして「ワールドスタンダード(ワースタ)」という称号を付与している。

ジャパンスタンダードの候補者は、年に1度、パートタイム労働者のレベル3の者から、店長とエリアマネージャーが推薦した者が対象となり選定される。認定されるためには、副社長研修を受け、31の評価項目をクリアする必要がある。更に実技試験を実施し、副社長と複数の社員が合否判断を下す。ジャパンスタンダード認定者は毎年5名程度である。ジャパンスタンダードの中からより優秀な者を副社長が選定し、「ワールドスタンダード」として認定している。

パートタイム労働者が主体的に業務に取り組める仕組みの導入

各店舗にほぼ1名リーダー職(アルバイトリーダー)を配置しているが、パートタイム労働者を任命している。レベル1、2の中から、ほかのパートタイム労働者に慕われリーダーシップがあることを基準として店長が対象者を推薦し、SV(スーパーバイザー)、AM(エリアマネージャー)、事業部長らで決定する。リーダー職は2か月に1度の本社研修を受けることが可能となる。また、店舗単位ではリーダー職に対して定期的に月1回の面談を実施している。

そのほかにも、パートタイム労働者が接客テクニック(後述の「ジャブ」)を考え、社内イントラネットに投稿できる仕組みがあり、アイデアに対しては「てげ!」(宮崎弁で「いいね!」の意)を送り合う。このほかにもパートタイム労働者の中で店舗運営に貢献した者を称える毎月MVP表彰を行っている店舗もある。

パートタイム労働者を研修として、副社長が見習うべき店舗として指定した模範店舗で経験を積ませることもあり、2015年10月時点、関東の錦糸町店に加え、名古屋でも実施している。

また魚業態(魚を中心に扱う店舗)では、パートタイム労働者が参加して教育手法の改善に取り組んだ結果、フィンランド式かるたを導入した。これにより140種類以上の魚の種類が覚えやすくなり、接客の際説明しやすくなったという成果をあげている。

ブログや会議等を通じて本社と店舗の結びつきを強化

パートタイム労働者は事業所である店舗に直接出社するため、本社からパートタイム労働者への連絡は、店舗を通して間接的に行われることが多いが、直接的な交流機会や経営側のブログ等を通して本社と店舗の結びつきを強化している。直接的な交流機会として、正社員及びパートタイム労働者のリーダーを集めた年2回の会議を開催している。

また、状況に応じて手法を変えながら、副社長が従業員への思いを伝えている。2015年8月からはブログ1で情報発信し、毎日300名程度の従業員がアクセスし、閲覧している。

1 メールマガジンを発行していたが、読者が受動的になるため、能動的に読みに行くという姿勢を醸成させたいという狙いから2015年8月よりブログに変更。

パートタイム労働者に採用時と採用後の研修を実施

パートタイム労働者の成長を後押しすることを重視し、職務の遂行に必要な教育訓練は最低限として、自ら取り組む意欲・姿勢の醸成を促している。

採用時には、店舗単位での職務の遂行に必要な全社的な戦略に関する研修に加え、仕事に対する取組方や接客姿勢等、人間性に対する現場施策レベルの研修を事業部単位で実施している。採用後は、企業戦略から現場施策について3か月をかけて教育を行う。この研修への参加は強制ではなく評価にも影響しないものの、参加率の目標を設定している事業部もある。

研修の内容は、同社と関わりのある第一次産業の現場を理解したり、接客サービスの工夫や営業戦略について学ぶものである。「うるるん滞在記」や「仮装大賞」、「鳥耕作」等テレビ番組名等をオマージュした親しみやすい名称を用いて、従業員が楽しみながら参加できるように工夫している。

パートタイム労働者も社内検定試験を受験可能

同社一番のオススメ料理である「じどっこ炭火焼き」の調理技術の検定制度として、「炎のマイスター検定」を実施し、筆記と実技による試験を行っている。正社員向けの社内検定であるがパートタイム労働者も受験が可能で、受験者の2割はパートタイム労働者である。2015年5月に第1回検定が開催され、24名中8名が合格、うち1名はパートタイム労働者であった。検定合格者には認定者用のユニフォームが提供される。

学生アルバイトを新卒採用、フリーター等は中途採用により正社員として受け入れ

意欲・能力のあるパートタイム労働者は正社員として受け入れている。学生アルバイトは新卒採用、フリーター等は中途採用という形で随時採用を行っている。筆記試験はなく、人材開発部による面接試験で合否を決定する。

アルバイトからの新卒採用者数は例年10名~15名で推移しており、新卒採用者100名弱のうちの10%強を占めている。中途採用者数は、2014年度37名であった。

なお、新卒採用時には、学生アルバイト向けの限定就職説明会も実施し、同社の経営理念等に共感し、同社で働き続けたいと思う人材の確保を図っている。

パートタイム労働者が社員の人事評価に参加する

正社員の人事評価に360度評価を導入しており、パートタイム労働者も参加する。直属の上司(1名)、正社員の同僚(2名)、パートタイム労働者(6名)の計9名が、「リーダーシップ」「チーム・組織環境」「モチベーション」「オーナーシップ」「働きがい」に関する43問について、匿名で正社員を評価する。2015年度上期評価では一定の勤務時間以上のパートタイム労働者(全パートタイム労働者の20%)が360度評価制度に参加している。

パートタイム労働者と生産者との交流機会の創出

契約養鶏場経営者や契約漁師とパートタイム労働者が交流するイベントを設けている。2015年7月開催の魚業態交流イベントには、首都圏の魚業態担当パートタイム労働者200名が参加した。このイベントによりパートタイム労働者の生産者に対する共感度が上がるため、接客の際、顧客に生産者の思いを伝えることができるようになり、接客の質の向上にもつながっている。

また魚業態では、パートタイム労働者が社内SNSに加入することができる。このSNSでは、当日どの漁師がどの魚を採ったかという情報が掲載されており、パートタイム労働者も店舗のPCや自身のスマートフォンで確認もでき、生産者との間で双方向でのやり取りをすることができる。希望するパートタイム労働者には生産者を紹介しており、生産者との交流も奨励している。

「ジャブ」制度によるサービスアイデアの共有

販促施策の一つとして、「ジャブ」制度を導入している。パートタイム労働者には顧客1組につき、400円分のサービスを提供する権限を与えており、この権限を活用したアイデアを「ジャブ」と呼んでいる。社内イントラネットに「ジャブ」を投稿し、情報共有が可能となっている。400円で何ができたかパートタイム労働者同士が評価し合うことで、優れた「ジャブ」の共有を促進し、再度考案するモチベーションを上げている。

ジャブ投稿画面

新企画コンテストには、パートタイム労働者も参加可能

新企画コンテストにはパートタイム労働者も投稿可能である。直近の新企画コンテスト「イノベンチャーワールド」には全応募のうち10%の10名超のパートタイム労働者が応募した。パートタイム労働者からは、「デザートの売上を上げるため、ラストオーダーのベストなお伺いの仕方を考える」「成功体験が共有できるホスピタリティチェックシートを作る」といった企画が提出された。

パートタイム労働者向け相談窓口の設置

パートタイム労働者からの相談窓口として人事部に一般相談窓口を設置し、パワハラ・セクハラについては、専門の相談窓口を設置している。セクハラについては異性には話しづらい場合もあると考え、相談者の性別に応じて同性の人事部社員が対応に当たっている。

学生アルバイトに対する就活支援を実施

パートタイム労働者の7割は学生アルバイトであるため、大学3年生を対象に就活支援の取組を行っている。具体的には「ツカラボ」(塚田農場キャリアラボ)と名付けた集団セミナーを開催し、個別面談のキャリアセンター運営も行っている。

「ツカラボ」は大学3年生7月から大学4年生の4月にかけて毎月開催し、副社長による就活セミナーや人事担当者による個別就活支援を行っている。

就活セミナーの内容は自己分析、価値観発見、企業研究、思考力&コミュニケーション養成、経営者視点の醸成等である。ツカラボ参加者を対象として、協力企業とともにインターンシップ募集説明会(秋)と新卒採用説明会(春)を実施している。2015年4月に実施した新卒採用説明会の参加企業数は10社、参加人数140名であった。

また、キャリアセンターでは専門のコンサルタントに委託し対応している。2015年7月第1回開催の就活支援セミナー「ツカラボ」への参加人数は132名、セミナーの満足度は10点中9.6点であった。

パートタイム労働者向け感謝イベントの開催

年1回、テレビ番組をオマージュしたパートタイム労働者向け感謝イベント「APオールスター感謝祭」を実施し、関東圏のパートタイム労働者約1,000名を招待している。招待者は各店舗の累積勤務時間上位の者から順に選出している。

上位者限定のイベントであるため、パートタイム労働者にとっては招待を受けることがステータスとなっている。店舗対抗のクイズ大会や「ジャブ」を考えたパートタイム労働者を表彰するなど、総額300万円の景品を提供している。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

「アルバイト経験は将来役に立たない」という学生アルバイトからの悩みを聞いたことから、学生に対して将来役立つ研修の提供と、就職活動による離職が多いため就職活動を早く終わらせることができるようにと、「ツカラボ」を通じたキャリア支援を実施することとした。

5. 取組の効果と今後の見通し

就職支援活動の「ツカラボ」には特に力を入れて取り組んでいる。この取組により、学生アルバイトが就職活動のために離職するケースが減少し、長期間働いてくれるようになった。また、こうした取組を知った両親からアルバイトを勧められ働くようになったという学生もいる。2015年9月からは「ツカラボ」の対象を大学1年生に拡大し、生産者のもとを訪問する「体験ラボ」を実施し始めている。

また、店舗での接客の主力となるパートタイム労働者が活躍しやすいよう教育訓練に力を入れた結果、「コミュニケーション能力が高く、ホスピタリティ精神あふれたパートタイム労働者による接客」が可能となり、顧客のリピート率55%を維持できている。

また、パートタイム労働者の応募理由は同社店舗への来店又は勤務している友人の高評価によるもので、応募単価・採用単価は業界平均とされる価格を下回り、店舗を拡大しても人材確保ができている。

こうした結果、2014年度まで8期連続で増収増益、2015年7月現在で全国で150店舗と事業規模を拡大できている。

従業員の声

アルバイトとして勤務するうちに経営姿勢に興味を抱き、正社員へ
(副社長室秘書、アルバイト採用担当、勤続7年)

2007年、専門学校の学生時代にアルバイトとして入社。学校の授業の合間に店舗で接客に従事した。

接客が好きで同社を選んだが、働くうちに接客スタイルや理念に引き込まれた。特にアルバイト向け研修を入社半年後から受けるようになり、身近な顧客だけでなく、生産者とのつながりを考えるようになった。仕事も次第に任されるようになり、アルバイトリーダーとなりアルバイトの教育等にも携わるようになる。会社の姿勢にも興味が膨らみ、貢献したいと考えるようになり、アルバイトとして勤務2年半後、面接試験を経て中途採用で正社員として2012年4月に入社した。

正社員として店舗に配属されたことで責任感が増し、店舗全体の運営や売上管理等も考えるようになった。正社員として2年半店舗での勤務を経験した後、本社の副社長秘書勤務となった。

後輩アルバイトには、幅広く仕事を捉え、会社の姿勢を理解して働いてもらいたい。会社のモットーであるALL WIN=自分自身、顧客、生産者、会社のつながりを大切にして、アルバイトから正社員となる人材が今後も増えてほしいと考えている。

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