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有限会社伊豆介護センター

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成27年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
奨励賞(雇用均等・児童家庭局長奨励賞)

子育て世代が働きやすいよう柔軟な働き方や雇用形態の変更への対応、研修や福利厚生の充実を図り、人材定着率が上昇

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 静岡県 業種 福祉
従業員数 324名 パート労働者数 138名
事業概要 高齢者・障害者の訪問・通所サービス事業等
ポイント
  • 等級制度に応じた昇給・昇格の仕組みの導入。
  • 子育て世代でも受講しやすい研修の工夫や資格取得支援。
  • 多様な働き方への柔軟な対応と正社員転換制度により、パートタイム労働者の意欲向上。
  • 保育料・学童保育料助成制度、キッズスペースの設置等子育て世代が安心して働くことのできる福利厚生制度の充実。

審査委員はここを評価

子育て期の女性にも働き続けてほしいという思いを、働きがい・生きがいを高める手厚い制度で表現し、「パートタイム労働者でも出産後の職場復帰が当たり前」なほど浸透させています。この一貫性が、今の成果の基だと思いました。

1. 企業概要・人員構造

同社は1996年に設立し、県内3地区の11か所の施設を拠点に高齢者、障害者支援事業を展開している。組織体系は、経営企画室、在宅介護事業部、地域包括支援センター、施設介護事業部の4つに分類され、在宅介護事業部は、ホームヘルプ(訪問介護)サービスチームとケアマネジメントチームに分かれている。施設介護事業部は、グループホーム、デイサービス、小規模多機能型居宅介護、ショートステイの運営を行っている。

従業員は、正社員と契約社員(有期契約)で構成され、契約社員は、常勤フルタイムとパートタイム労働者に分けられる。職種は介護職、看護職、事務職に分かれており、中でも訪問介護を担当する介護職には稼働した時間に対して賃金が支払われる登録型ヘルパー(パートタイム労働者)と予め設定された勤務時間に応じて賃金が支払われる時間拘束型ヘルパーがあり、採用時に本人の希望により決定する。いずれの職種も入社後の事情等により、勤務時間等の変更には柔軟に対応している。

2006年に「男女雇用均等推進企業表彰静岡労働局長優良賞」を、2008年には「静岡県男女共同参画社会づくり活動に関する知事褒章」を受賞している。また、経営者自ら静岡県ワーク・ライフ・バランスセミナーの講師や静岡県ワーク・ライフ・バランスシンポジウムのパネルディスカッションのパネリストとして参加しており、ワーク・ライフ・バランスの推進に積極的に取り組んでいる。

2. 取組の背景とねらい

介護業界は女性の力を存分に発揮できる場である。しかし、業界は慢性的に人材不足の状況にある。子育て中であっても、働ける範囲で働いてもらえるよう積極的にフォローをし、できるだけ多くの人材が活躍できる職場環境を目指している。多様な働き方を取り入れ、安心して長く働いてもらえるよう、保育料補助等を始めとした福利厚生制度の充実を図り、従業員のライフスタイルの変化等による雇用契約(勤務時間や雇用形態)の変更にも柔軟に対応している。また、一度採用した人材には、より一層活躍してもらえるように教育研修にも力を入れている。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

等級制度に対応した賃金設定と職務能力等の評価結果を反映した昇給・昇格制度

同社ではパートタイム労働者を含む契約社員について介護・看護・事務のそれぞれの職種で3段階の等級を設け、それに応じた賃金制度を設定している。

階級表

1級 対外的にも確立された職務能力・常識を身につけていることに加え、業務方針に助言をし得る能力を有しており、正社員への登用も検討する
2級 対外的にも確立された職務能力を身につけている
3級 看護(介護)に関する職務能力・常識を身につけていく段階

昇給・昇格は年に1回、契約更新のタイミングで行われる人事考課に基づいて行われ、評価結果によって同じ等級内では時給が50円まで引き上げられる。能力・勤務態度・資格取得状況・研修参加率等が評価項目となっており、それぞれを各部署の管理者が評価を行って決定する。能力評価については、自己評価表を用い、面談の際に本人と部署の管理者双方の認識を確認した上での評価となっている(下記の自己評価表は訪問介護のヘルパーの場合)。

自己評価表

職務内容に応じた各種手当や賃金加算制度

同社のサービスの中核を担う介護職員については、資格の取得状況に応じて、時給への加算がされる。

そのほか、登録型ヘルパーは、訪問時と訪問後にメールで連絡すると、連絡調整手当として1件につき40円が支給される。1か月間完璧に連絡業務ができた際には1件につき2倍の80円が支給される。現在同社では契約社員に対する賞与はなく、連絡調整手当はその代替的な位置付けで導入されたものであるが、公平性を保つため、契約社員の賞与を導入することを検討している。

正社員転換制度

同社では、有期の契約社員から無期の正社員への積極的な転換を推進している。採用時の面談では、本人の希望時間や日数だけではなく、差し支えのない範囲で家族の状況等も聞き取り、本人の希望に寄り添えるよう、配慮している。また、年1回の契約更新時の各部署の管理者との面談の中で、正社員転換を含めた働き方の希望等を確認しており、正社員転換の可能性がある場合には、転換のための面接試験を受けるよう促している。

契約社員から正社員の転換要件は、①勤続1年以上である、②心身ともに健康である、③過去1年間の勤務態度が良い、④所属長の推薦がある、の4点である。原則として、年2回の定期昇格時(4月、10月)に協議をし、課長職(及び担当職)との面接を経て、人事、社長の順に決裁を得たのち、転換される。契約社員時に短時間勤務であっても、転換後はフルタイムで働くことができれば面接を受けることができる。

過去9年間で39名が転換しており、2014年度は過去最高の11名が転換した。

参加率を高める工夫をした研修とキャリアアップのための資格取得支援

同社では全従業員を対象に毎月2時間程度の研修を実施している。研修の内容は、介護の知識・技術に関するものや介護を始めとした制度に関するものの他、法律・医療・健康等、業務や生活に役立つものとなっている。研修には全体研修と小グループで行う個別研修の2種類があり、個別研修はサービス提供等と重ならない空いた時間に参加する形態をとっている。

夜間に行う全体研修は、子育て中の契約社員等も安心して参加することができるようにするため、託児を設けている(乳幼児は対象外)。それでも、登録型ヘルパーは直行直帰の業務で、他のスタッフとの交流があまりなかったこともあり、研修の参加率が低かった。そこで、サービス提供責任者をリーダーにしたグループを作り、参加の声掛けを促したほか、同じ内容の研修を2回用意し、出席日を選択できるようにしたところ、全体で10%以上、登録型ヘルパーでは30%以上出席率が向上した。

なお、研修に参加した場合は、社内規定による研修手当を支給しており、参加状況を人事考課にも反映するなど、研修参加へのインセンティブも設けている。

また、介護職員のキャリアアップのために、外部講師を招いた介護福祉士の資格取得対策講座を無償で受講できるようにしている。開講については、社内報等で全体に周知し、受験案内の入手を同社で一括代行している。受講後の合格率は約80%と高く、契約社員の参加率は上昇傾向で合格者の6割が契約社員である。資格取得後は時給が上がることになっている。

サービス提供責任者を中心としたコミュニケーションの促進

登録型ヘルパーは直行直帰の業務で他の社員とのコミュニケーションがとりづらい状況にあった。そのため、サービス提供責任者をリーダーとして、いくつかのグループを作り、サービス提供責任者が業務上の相談にのったり、研修参加の声掛けを行っている。

その他、人事担当者が短時間雇用管理者を担っており、面接や契約時以外にも相談を受け、聞き取りを行っている。仕事内容や人間関係の悩み等、幅広く受け付ける旨、社内報等を活用して周知している。また、全従業員から広く悩み事を相談できる窓口としてエクセルスタッフ(1名)をおいている。エクセルスタッフは、キャリアがあり、社内での信頼の厚い人物を選定しており、相談は秘密厳守で公平・中立な立場で話を聞くこととしている。内容によっては社長に直接意見を通すこともできる。このような取組により、従業員が安心して働くことができる職場環境の整備を進めている。

子育て世代を意識した充実した福利厚生制度

同社では、契約社員も正社員同様の産休・育休制度を利用することができ、過去に6名が利用している。契約更新時に産休中である社員も不安にならないよう、制度利用を積極的に周知しており、職場復帰をすることが自然な風土が醸成されている。2人目、3人目での産休・育休取得者が多いことが同社の特徴であり、出産を理由に退職する者がほとんどいない。組織として従業員のライフスタイルの変化を受け入れる土壌が用意されている。

保育所や学童クラブに子どもを預けている従業員には、保育料・学童保育料の補助制度を設けている。正社員に対しては保育料の50%(上限2万円)、契約社員には保育料の25%(上限1万円)を支給している。現在は22名が利用しており、うち契約社員が20名となっている。

更に本社の施設内にキッズスペースが設置されており、子育て中の従業員の研修、従業員が資料を取りに来た時、打合せ、簡単なデスクワーク等に子ども同伴で出勤できるよう工夫している。天候不良等による急な休校等があった場合や、仕事が長引いてしまった場合も、保育園から子どもを引き取り会社に連れてくることができるので、大変安心感がある。子ども達との交流を楽しみにしている利用者もおり、「ただいま」と帰ってくる子どもの様子から、施設全体で見守り、共に育てる温かい眼差しが感じられる。従業員にも大変好評なため、更なる子育て支援の充実として新たに託児施設の併設計画を進めているところである。

地域の役員(PTA会長・子ども会会長・消防団員・町内会長等)をしている社員には、「地域貢献活動支援助成金」という名称の奨励金を渡し、表彰している。毎年5~8名が表彰され、うち半分が契約社員である。同社は年休取得率が70%以上と高く、職員同士協力し合う「お互い様」の社風であるため、年休が取りやすい上に、地域・学校行事への参加は優先的に休みが取れるようになっている。

従業員の父母・義父母・配偶者・子どもが同社の介護サービス、障害者総合支援サービスを利用した場合は、介護手当が支給される。同制度導入から6年が経過し、2015年は12名の利用があった。従業員が自分の家族を任せたい施設であるということは、同社にとって大変誇らしいことである。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

子育て世代等、時間的な制約のある社員でも働くことができるような取組(研修時間に託児を設ける、施設内にキッズスペースを設けるなど)を推進してきた。そうした中、パートタイム労働者はどうしても夕方時間帯の勤務や夜勤を希望しないことが多いため、正社員がその分を担うことになっている。

5. 取組の効果と今後の見通し

積極的な子育て支援の充実により、限られた時間の中でなら働くことができるという子育て世代を従業員として確保することができている。そして、従業員から評判を聞いた入社希望者が多いことが、従業員の満足度の高さを示している。

入社時や年1回の更新時に、仕事内容だけでなく家族の様子等について丁寧な面談を行うことで本人の希望に沿った勤務ができるよう工夫しており、正社員転換や自身のライフステージに合わせて多様な働き方ができることも、従業員の定着率を高める理由の一つである。

また、透明性のある人事評価とそれに連動した賃金制度によって、契約社員の仕事に対する意欲が向上しており、契約社員のホームヘルパー研修参加率は増加傾向にある。

女性の力が発揮できるよう、女性に働きやすい職場づくりを進めたところ、2007年~2010年(4年間)に平均18.83%であった離職率が2011年~2014年(4年間)には11.81%と低下し、勤続年数も伸びるなど大きな成果を上げている。

介護業界は慢性的な人材不足であり、在宅ケアは利用者の利用希望時間が重なるため、人手の確保に苦慮している。また同社の従業員も高齢化しており、今後人材不足が予想されるため、若い世代の介護職の育成と定着が喫緊の課題である。また、高齢の社員が働き続けられるよう、経験豊富な従業員のポジション作りや働き方を模索している。

従業員の声

利用者とより深く関わるために、幅広く学んでいきたい
(介護職・デイサービス担当、勤続8年)

2007年に3人目の子どもを出産後に入社した。入社時は、週5日、9:00~14:00の短時間勤務でデイサービスの介護スタッフとして従事していた。子どもの成長とともに少しずつ勤務時間を延ばし、入社から4年後にはフルタイムで働くようになった。なお、この間に介護職として働くことの楽しさを覚え、勉強時間を捻出してヘルパー2級を取得した。

2014年には、フルタイムの契約社員から自分の意思で正社員への転換希望を申し出て、正社員となった。正社員転換後は、仕事に対する責任感が増したほか、仕事の奥深さや面白みを実感するようになった。利用者と過ごす時間が長くなるほど、もっと深く関わりたいと思うようになり、それに伴い学びたいことが増えてきた。例えば、介護食、薬の種類や使用方法、機能訓練等、それぞれに専門性があり全て日常の業務につながるため、様々な分野に精通して利用者の役に立っていきたいと感じている。そういった思いを実現すべく、現在は介護福祉士の資格取得試験に向けて勉強中である。合格後には専門性が高い様々な道が開けているので、より興味がある分野は何か、どのように進みたいかをゆっくり考えたいと思っている。

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