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三井住友海上火災保険株式会社

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成27年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
優良賞(雇用均等・児童家庭局長優良賞)

充実した教育プログラムとパートタイム労働者の役割変革、リーダー登用を通じ、個々の能力向上と業務効率化を推進

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 東京都 業種 金融業・保険業
従業員数 19,521名 パート労働者数 4,384名
事業概要 自動車保険、火災保険、傷害保険等の保険・金融サービス事業
ポイント
  • 絶対評価により目標達成状況を処遇に反映。
  • 多種多様な教育プログラムの提供と指導担当者によるスキル習得のプロセス管理。
  • リーダー登用によるパートタイム労働者の役割向上とモチベーション強化。
  • 個々の状況の変化に応じた柔軟な勤務体系・雇用形態の変更。
  • 日々の業務における改善提案から仕事と企業に対する想いまで、パートタイム労働者の意見を広く聴取。
  • パートタイム労働者の能力向上による役割変革が、業務効率化と収益拡大に寄与。

審査委員はここを評価

目標達成度への評価・処遇や、リーダー登用等を通じて、パートタイム労働者のモチベーションを引き出し、業務上の成果を生んでいます。ワーク・ライフ・バランスへの充実した取組もそれを支えていると考えます。

1. 企業概要・人員構造

同社は、MS&ADインシュアランスグループの中核事業会社としてグローバルに保険・金融サービス事業を展開しており、現在国内に700の拠点を持つ。自動車保険、火災保険、傷害保険を主力商品・サービスとして掲げ、少子高齢化や様々な分野の技術革新に対応した先進的な商品・サービスの開発を進めることで、国民生活と経済を支える損害保険事業の担い手という立場から社会貢献に努めている。また、保険事業は顧客と保険会社との信頼関係によって成り立っており、それゆえに社員一人ひとりの行動こそが、同社の品質であるとの考えの下、社内の行動指針として「お互いの個性と意見を尊重し、知識とアイデアを共有して、ともに成長する」を掲げ、社員の育成に積極的に取り組んでいる。

同社におけるパートタイム労働者とは、1年契約の有期労働者である「スタッフ社員」のうち、パートタイム勤務の者を指す。所定労働時間7時間のフルタイム勤務に対し、パートタイム勤務は週4日の1日5時間勤務を原則としているが、実際には、個々の生活状況等に応じた柔軟な勤務時間の設定が可能となっている。スタッフ社員の職種は以下の3つに分けられる。

スタッフ社員の職種区分と主な職務内容(人事制度基準より抜粋)

職種区分 主な職務内容
キャリアスタッフ 営業部門における計上関連業務、損害保険サポート部門における簡易事案業務・電話対応業務、その他庶務業務など
MC スタッフ(MC:モーターチャネルの略) 自賠責保険集金業務、事務システム活用支援、その他営業推進業務など
コミュニケーター コンタクトセンターにおける電話オペレーター業務、スーパーバイザー業務など

なお、正社員の社員区分には全域社員、地域社員、アジャスター社員に加え、2015年度よりアソシエイト社員という新たな区分を導入した。これは勤務地と担当業務を限定した無期雇用社員の区分で、特定業務の範囲内でキャリアアップを目指すスタッフ社員からの転換を意図したものである。

2. 取組の背景とねらい

紙面でビジネスを展開し、顧客の信頼を勝ち取る業態の同社にとって、正確かつ効率的な業務プロセスの整備は競争力の源泉であるため、所内業務の大半を担うスタッフ社員の活躍は、企業の評価に関わると捉え、教育研修や雇用管理に工夫を凝らしている。

同社は、2011年に社内で「役割イノベーション」という取組をスタートした。これは、役割・働き方を変革し、業務の効率化を図ることで、より生産性の高い働き方を目指すための取組である。3年間の取組期間中、正社員だけでなく、スタッフ社員を含む全ての社員がこれまで以上にレベルの高い目標にチャレンジしたことで、正社員の担当していた業務の一部をスタッフ社員が担当する体制が整った。

2014年度からは、更なる役割変革の推進によって、社員一人ひとりが成長し、「最強の職場」を創造するために、「Be プロフェッショナル for al(l 略称:Beプロ)」の取組をスタートした。「Beプロ」では、人材育成のキーワードを「学ぶ責任」「育てる責任」と表現し、スタッフ社員を含む全社員がこれを強く意識しながら、更なる役割変革に取り組んでいる。

また、同社の中期経営計画における事務戦略の柱の1つとして展開している「業務プロセス改革“4つのなくす”」は、社内の定型業務を主として担うスタッフ社員を核としたものである。これは、①キャッシュレス、②ペーパーレス、③エラーレス、④ストップレスの取組を同時に推進することで業務プロセス全体の品質を高めるとともに、更なる成長領域への活動時間を創出するための取組であり、2014年度は各部支店・課支社で対策・目標を立てて具体的な取組を開始した結果、キャッシュレス93.6%、電子契約手続率54.1%等の成果が得られた。2015年度は、新たなインフラの導入等により、更に取組を加速させている。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

明確な評価基準を設け、目標達成状況を処遇に反映

同社では、スタッフ社員にも正社員と同様に、「目標チャレンジシート(以下の図を参照)」に「行動目標」、「成果目標」を設定した上で年3回(年初・中間・期末)の考課者との面談を経て各目標につき50点満点の絶対評価を行う「目標チャレンジ制度」を適用している。同制度下においては、行動評価と成果評価の合計点(100点満点)により決定した評定(5区分)は次年度の処遇に反映され、スタッフ社員の時給は、最大360円まで上がっていく仕組みになっている。

考課者による面談・評価については、考課者の目線を全社で統一できるよう、考課分布割合の目安を提示し、確認を促している。また、マネジメント研修を通じて公正な評価の実施を指導するとともに、スタッフ社員の短期的な成果、スキルアップのみならず、中長期的なキャリア形成に係る教育プログラムへの参加に対する評価も考慮するよう呼びかけている。

目標チャレンジシート(イメージ)

目標チャレンジ制度における評価方法と評定

社員の成果を称える社長表彰と技能大会

社員の成果を称えるため、全社の模範となる取組に対し、「社長表彰」を毎年実施している。2014年度には、地域社員とスタッフ社員とが一体となって新たに確立した販売手法に係る2件の取組が表彰された。

また、損害サポート部門社員の電話応対スキルの向上、顧客の期待に応える事故対応品質の定着を目的として、事故を想定した顧客との電話応対ロールプレイング大会を実施している。2014年度大会では、スタッフ社員が3位に入賞した。

多様な教育プログラムの提供と指導担当者によるスキルアッププロセス管理

同社では、スタッフ社員専用の教育プログラムを整備し、多種多様な教育手法・研修内容を通じて、スタッフ社員の能力開発を積極的に支援している。

具体的には、入社時に個々の能力・知識・担当業務に応じて行う「入社時研修」、更なるレベルアップを目指し、本人の希望により選択して受講する「ステップアップ研修」に加え、eラーニング、社外通信講座の受講料補助やオープンカレッジ開催等により、自己啓発の機会も随時提供している。また、それらに並行して、職場でのOJT教育も計画的に進めている。同社のスタッフ社員向け教育プログラムの運用状況は以下の図の通りである。

スタッフ社員 教育プログラムの全体像

各職場では、新規に採用したスタッフ社員の指導担当者としてスタッフ社員のリーダー(後述)や地域社員を任命し、各部門において丁寧なOJTを実施している。例えば、営業部門では、本人のセルフチェックをもとにした年3回の打合せを通じて、個々のスタッフ社員のスキル習得のプロセスを「習得状況チェック表」で明確に管理している。

OJTの実施においては、指導担当者向けに指導における留意点等をまとめたハンドブックを配布し、効果の高い丁寧なOJTを促進するほか、多様な職場に応じて作成できる「OJT計画書」を提供し、職場全体で計画的な指導が実施できる体制を整えている。

スタッフ社員のリーダー登用

原則3年以上の業務経験があり、特にその能力や働きぶりを上司が認めたスタッフ社員を、上司推薦及び選考を通じて「リーダー」に登用している。リーダーに登用されたスタッフ社員は、グループディスカッション形式のリーダー研修に参加し、リーダーとして求められる役割についての理解を深めたのち、職場においては「所属組織の方針・計画に基づき、全域社員・地域社員等と連携しながら、所属組織における基本的な業務を自ら考え自己完結的に行う」、「全域社員・地域社員等の指示に基づき、所属組織におけるスタッフ社員の教育や日常指導、とりまとめ業務を行う」レベルの業務を担うことを期待されるようになる。また、昇格により、時給も100円加算される。

同社では、中期的には全スタッフ社員のうち10%の者がリーダー職に就くことを想定しており、2013年度は160名、2014年度は74名、2015年度は71名のスタッフ社員をリーダーに登用した。

本人の状況に応じて勤務体系、雇用形態の変化にも対応

スタッフ社員の生活状況の変化に応じて勤務時間の変更に対応しているほか、配偶者の転居転勤があった場合には、本人の意向を確認した上で、引き続き同社の社員としてスキルを活かしてもらえるよう、スタッフ社員の勤務地の変更を実施している。

また、本人の能力や希望、上司の推薦により、正社員のうち勤務地を限定しながらも、より高度な知識と経験に基づく業務を担当する「地域社員」、「アソシエイト社員(2015年度以降導入の社員区分)」への転換も奨励している。

社員区分は年1回、4月1日付けで転換が可能であり、人事部による書類選考、筆記試験(SPI)、小論文(どのように仕事をしていきたいかなど)・小テスト、面接により可否を決定する。2014年度は応募者43名に対し7名、2015年度は応募者47名に対し15名のスタッフ社員が、地域社員へと転換した。また、2015年度からは、勤務地と担当業務を限定した「アソシエイト社員」という社員区分を導入し転換が可能な体制としたことで、より多くのスタッフ社員のキャリアアップの実現を支援している。

正社員と同様の社内情報閲覧環境を整備

本社各部より発信される業務連絡は社員全員が閲覧できるほか、毎週放送される社内衛星放送、社内報・グループ報も社員全員に公開し、情報共有のための環境を整備している。社内衛星放送や社内報では社員の働きぶり等を定期的に紹介しており、スタッフ社員の働く様子も取り上げられている。

また、スタッフ社員を含めた社員全員(育児休業中の社員も含む)がモバイル端末やパソコンからアクセスできる、専用サイトを通じた動画配信アプリ「Beプロオンデマンド」では、スキルアップ講座、商品改定情報、社内衛星放送等を視聴できる。

スタッフ社員からの意見を広く聴取し、施策に反映

スタッフ社員を含めた全社員からの業務改善提案の受付窓口として、「みんなの知恵の輪」と呼ばれる意見箱をWeb上に設置している。この意見箱には、業務システムの細かい改善提案、代理店等から受けた要望の伝達等、日々の業務で得られたアイデアや意見を、職場の賛同をあらかじめ得た上で簡単な手順にて投稿することができる。提案内容は該当部署の担当者へ転送され、回答を得られる仕組みになっている。また、スタッフ社員が主に担当する定型作業の効率化に向けたExcelツールのアイデアについても、IT推進部門が募集し、開発している(「ワンクリックツール目安箱」)。

更に、年1回社員意識調査をスタッフ社員も含めた全社員に対して実施しており、価値観の共有、やりがい、職場環境、人事評価、社員としての誇り等についての評価を定点観測した上で、社員の働きがいの向上、働きやすい職場環境の整備に向けた施策に反映させている。

労働組合と連携した取組

同社の労働組合にはスタッフ社員も全員加入し、同社と組合との定期的な意見交換においては、雇用形態に関わらず全ての社員の労働条件等に係る要望や意見を受け取る体制としている。また、スタッフ社員も労働組合に加入することにより、組合が主催するセミナー等への無料参加、宿泊施設やスポーツ施設の割引利用が可能となるほか、組合報でもスタッフ社員の活躍する様子を取り上げ、特集として掲載している。

ワーク・ライフ・バランスの実現に向け、多様な制度と機会を創出

同社では、ワーク・ライフ・バランスの実現に向け、個々の社員の生活状況に応じた勤務時間や勤務地の変更対応のほかにも様々な制度を整備し、利用を呼びかけている。

スタッフ社員が利用できる仕事と育児・介護の両立支援制度については、「ワーク・ライフ・バランス」ハンドブックにまとめ、社内のイントラネットで周知し、活用を推進している。同社で導入している仕事と育児・介護の両立支援制度(法定以上のもの)としては、次表のようなものがあり、なかでも育児支援は年間20名程度のスタッフ社員が利用している。

仕事と育児・介護の両立支援制度(法定以上のもの)

育児支援
  • 育休取得社員向け支援プログラムによる復職支援
  • 産育休中のeラーニングコース(IT、語学等100以上のコースを用意)
  • 保活コンシェルジュによる復職支援(外部委託)
  • シンクライアント自宅MS1(社内イントラ)、Beプロオンデマンドの利用
  • 各種育児支援サービスの割引適用
介護支援
  • 専門家による介護相談窓口(無料)
  • 介護サービス(有料)
  • シンクライアント自宅MS1(社内イントラ)、Beプロオンデマンドの利用

※ シンクライアント自宅MS1:社員が休業中も会社とつながりを持ち、スムーズに復職できるよう、自宅のパソコンから社内システムにアクセスできるツール

また、社員が就業し、能力を発揮するためには、家族の理解や支援も重要であるとの考えから、同社では全国の拠点や部支店単位での「ファミリーデー」の開催を推奨している。「ファミリーデー」は、社員を支えてくれている家族に会社・職場への理解を深めてもらうとともに、家族との交流を通じて、職場メンバー間の相互理解やワーク・ライフ・バランスに対する意識を高めることを目的としており、これまでに全国計5か所の拠点で開催し、延べ約800名の社員・家族が参加した。

社員と同等の福利厚生制度

社員食堂、社内販売等を含め、社内の施設やサービス等の利用は全社員共通となっている。また、同社が法人会員になっている宿泊施設、テーマパーク、スポーツクラブ等の厚生施設も、スタッフ社員を含めた全社員が利用可能となっている。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

同社では、スタッフ社員は働き方に制限はあっても高い能力や意識を持っており、仕事のやりがい、組織における自身の存在意義に価値を感じている、という点を重視し、スタッフ社員の日々の取組が会社にどのような貢献をもたらしているか、明確な形で提示することを常に心がけている。そのため、成果を数値等で明確化し、社内に明示していくことを意識的に行っており、先述の「業務プロセス“4つのなくす”」では、進捗状況を全社員のパソコンのデスクトップ画面に表示させることで、社員全員が取組の成果を常に認識できる環境となっている。

一方、雇用形態にとらわれ、積極的な意見や提案を控えるスタッフ社員が多いという点、年齢・キャリア・生活状況が多岐にわたるスタッフ社員を、組織内でどのようにして、更に効果的にまとめていくかが、今後の課題である。

5. 取組の効果と今後の見通し

2011年度から始まった「役割イノベーション」による社員の役割変革により、高い目標へのチャレンジやリーダーの登用等、正社員の業務の一部をスタッフ社員が担い遂行できる体制が整った結果、業務の効率化が進み、社員1名当たりの収入保険料が2011~2014年度間で約34%増加、事業費率が2.1%低下し、社員一人ひとりの成長と、会社全体の生産性と競争力の向上を実現することができた。2013年度及び2014年度の業績の増収、増益を背景に、スタッフ社員を含む全社員に対して、2014年度は特別賞与を支給し、2015年度にはベースアップを実施している。

また、職場のメンバー全員について、同じスケジュール及び運営方法にて評価を行う「目標チャレンジ制度」の実施により、組織目標達成のための役割付与と個人の目標設定がリンクし、全社員が組織目標達成のために能力を結集する基盤が確立された。

正社員同様の多種多様な取組や制度に対してはスタッフ社員からの評価も高い。先述の社員意識調査におけるスタッフ社員の回答結果(2014年度)は、「私は、三井住友海上に入社して、良かったと思っている。」4.7点(6点満点、以下も同様)、「私は、三井住友海上の社員であることに誇りを感じている。」4.7点、「私は、法令・ルールを遵守し、コンプライアンスに関する課題が発生した場合は直ちに上司や周囲のメンバーで共有し、組織で課題を解決するように努めている。」4.8点等、正社員の回答結果と同様に高水準となり、全社員が一体となり、やりがいを持って働くための環境を整備した結果が、社員の満足度の向上につながり、数値に表れたと言える。

今後は、スタッフ社員のキャリア形成の選択肢を広めるべく、アソシエイト社員への転換を更に奨励していきたいと考えている。

従業員の声

リーダー職に就くことで、チーム全体の業務と雰囲気に対する責任感を新たに
(傷害長期保険部、リーダー、勤続10年)

週4日の1日5時間勤務で、1年前よりスタッフ社員のリーダーとして、13名のスタッフ社員の仕事の分配・管理を行っている。入社当初は送られてきたものを受け付け、返却するという単純作業のみに従事していたが、「役割イノベーション」によりパンフレットの内容確認及び審査という責任ある業務を任されるようになった。もともと、チーム内のスタッフ社員の中では最も勤続年数が長かったため、リーダー的存在でなければという責任感を持って働いていたが、実際に「リーダー」という役職に就いたことで、更にモチベーションが上がり、積極的に意見を言えるようになった。今は自身の担当業務だけでなく、チーム全体の進捗状況や雰囲気を把握し、正社員との架け橋であろうという気持ちが強い。今後もチーム内のスタッフ社員の教育に注力し、チームの担当業務を確実にこなしていけるよう全員で努力したい。


状況の変化に応じてフレキシブルに勤務時間を変更し、仕事と家庭を両立
(傷害長期保険部、リーダー、勤続12年)

2年前よりスタッフ社員のリーダーとして、収支の算出及び分析を担当している。入社当初はパートタイム勤務であったが、職務内容の変化に伴い週5日に変更し、産育休取得後パートタイム勤務で復職。その後、フルタイム勤務になり現在に至っている。入社して間もない頃は簡単な業務しか担当していなかったが、徐々に責任ある業務を任されるようになり、同時に仕事も楽しいと感じるようになった。今後も家庭と両立させながら、チーム内の社員とのコミュニケーションを大切に、仕事を充実させていきたい。

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