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株式会社イズミ

平成27年度パートタイム労働者活躍推進企業表彰受賞企業事例集より

平成27年度「パートタイム労働者活躍推進企業表彰」
優良賞(雇用均等・児童家庭局長優良賞)

透明性のある職能資格制度と充実した研修制度により、パートタイム労働者のスキルアップ・キャリアアップを実現

2.賃金・労働時間
3.教育訓練等の能力開発
4.人事評価
5.キャリアアップ・
正社員転換推進措置
6.福利厚生・安全衛生
7.ワーク・ライフ・バランス
8.職場のコミュニケーション等
所在地 広島県 業種 小売業
従業員数 16,738名 パート労働者数 14,232名
事業概要 大型総合ショッピングセンター及び小型食品スーパー
ポイント
  • 正社員水準の待遇と役職を目指せる4つの等級からなる職能資格等級制度を導入。
  • 「パートナー業務ガイドライン」を用いた能力チェックと資格研修等により昇格する透明性の高いキャリアアップの仕組み。
  • 社内研修制度として、階層別研修・ビジネススクールを設け、通信教育・eラーニングの機会を付与し、スキルアップを支援。
  • 提案活動等を通じてコミュニケーションやサービスレベルの向上を図る。

審査委員はここを評価

正社員とパートタイム労働者を分離するのでなく、連続した社員区分制度に包含し、人材育成、キャリア管理、評価、処遇等が行われています。その結果、雇用形態の違いにかかわらずそれぞれの社員が円滑に連携して活躍できる職場になっています。

1. 企業概要・人員構造

同社は、大型総合ショッピングセンター及び小型食品スーパーを主力業態として、衣料品、食料品、住居関連品等を取り扱い、中国地方、四国地方及び九州地方に約100店舗を有する。

パートタイム労働者の大半は地域の主婦や学生で、多くは店舗の売場に配置されている。このうち、原則として、勤務時間が1日4~5時間未満の者を「アルバイト」(契約期間は半年)、1日5時間~正社員の所定労働時間未満の者を「パートナー社員」(契約期間は1年)と位置付けている。両者の比率はおおよそ半々である。なお、パートナー社員は、勤務時間にもよるが、社会保険の適用者が多い。

アルバイトは、商品補充や陳列等の比較的単純な業務を、上位職からの指示・指導により行うのに対し、パートナー社員は業務上、一定の役割を担っている。通常は、まずアルバイトとして採用され、その後希望者がパートナー社員へと移行するが、職務経験等を考慮し最初からパートナー社員(初級)として採用されることもある。また、アルバイトとして就業していた者のうち、能力が高いため、勤務時間はそのままでパートナー社員に移行する場合もある。

平均的な店舗の形態は、店長以下、衣料品・食料品・住居関連の各部門に次長が配置され、それぞれの部門配下にある売場ごとに主任が配置されている。店長、次長は正社員で構成されるが、主任には正社員の主任職とパートナー社員の主任職(パートナー主任)が混在して配置されている。

2. 取組の背景とねらい

2000年当時、業績が3期連続で減益となるなど、経営改善が大きな課題となっていた。そのような中、経営のあり方について見直す一環として、パートナー社員の比率を高めて正社員の業務の一部を移管し、経営の効率を高めつつ会社全体の人材力を強化しようという方向で各種制度の見直しが始まった。

2001年にパートナー社員に関わる処遇制度や教育制度の見直しを始め、後述するパートナー主任等、責任のある職務を担う人材育成を目指した各種制度改革を進めてきた。

3. パートタイム労働者の活躍推進のための具体的な取組

正社員水準の待遇と役職を目指せる職能資格等級制度

2002年、パートナー社員について、従来の年功制が根強く残っていた人事制度から職能資格等級制度を導入した。これは、勤続年数に関係なく、担当業務に応じて等級が決まり、等級に応じて契約時間給が決定する仕組みである。

具体的には、パートナー社員を初級、中級、上級、主任と職能資格を4等級に区分し、能力及び研修結果によって昇格できる仕組みとしている。職能資格によって職能資格給がレンジで設定されており、昇格の際には昇格・昇給も実施している。職能資格の最上位は、「パートナー主任」という名称で、2015年8月現在、約230名のパートナー主任が活躍している。

パートナー主任は、職場の売り場責任者を担い、職務は正社員と同一である。そのため、評価も正社員と同じ条件で実施し、昇給・賞与等は時間当たり水準ではほぼ正社員と同等の処遇としている。

職能資格等級の仕組み

人材活用の仕組みについては、パートナー主任は、転勤がない・シフトが固定等、正社員とは異なっているので、その違いを考慮して、賞与・昇給の水準が設定されている。具体的には、賞与の水準は正社員の90%水準、昇給の水準はエリア正社員(自宅から通勤2時間半以内での転勤あり)とほぼ同じ昇給率としている。

なお、職能資格給のレンジ設定については、2014年の制度改訂で見直しを行った。具体的には、店舗ごとに「初任職能資格給」を設けて最低賃金の上昇に対応し競合企業に負けない待遇とするとともに、職能等級ごとのレンジ幅を変更して等級間の重なりを廃止することで、従来残っていた年功制を是正した。

パートナー業務ガイドラインを用いた能力チェックと資格研修等により昇格する透明性の高いキャリアアップの仕組み

各職能資格等級に求められる職能水準については、「パートナー業務ガイドライン」で部門(課)ごとに詳細に定められている。同ガイドラインを用いて、各パートナー社員について能力の棚卸しを行い、セルフチェックの後、各売り場主任が評価(スキルチェック)を行う。評価の結果、上位資格基準を達成しているとみられる場合は、上司(店長)推薦によって上位資格研修に応募し、本社スーパーバイザーがガイドラインに基づいてスキルチェックの上、基準を満たしていると判断される場合に上位資格研修への参加が決定する。上位資格研修に参加し、確認テストで合格すると昇格が決定する。

上位資格研修は半期ごとに行われ、昇格のタイミングは3月と9月の2回である。「パートナー上級研修」及び「パートナー中級研修」は、それぞれ1日かけて研修を実施し、同日のうちに確認テストを行う。主任への昇格については、半年間に3回の研修を受けて確認テストを1回受ける「主任候補ライセンス研修」の受講・合格が必要であるほか、社内のビジネススクール(「イズミビジネススクール」)で主任の必須講座を受講すること、そして販売士3級の資格を取ることが条件となっている。実際に職能資格等級上で主任と位置付けられるのは、売り場に主任職として配属されてからであるが、主任候補者のライセンスを有すると月5,000円の手当が支給される仕組みとすることで昇格意欲を後押ししている。平成26年8月の実績でみると、主任候補ライセンスの認定者(手当支給者)は198名となっている。

なお、「パートナー業務ガイドライン」は、パートナーの職能資格等級格付けの適正化を目指して2014年に新たに策定・導入されたもので、同ガイドラインの策定は本社の各部門担当のスーパーバイザー(正社員)が担った。ガイドラインは生鮮食品部門、加工食品部門等の部門(課)ごとに定められており、その数は約30種類である。同ガイドラインを用いて2014~2015年の2年間をかけて各パートナーの格付けを見直し、処遇を適正化する取組が行われている。このガイドラインを用いて、各店舗の各売り場等では在籍するパートナー社員及びアルバイトのスキルを一覧で「育成マップ」として整理し、組織全体のスキルの達成状況と各人の能力開発課題を把握しやすいようにしている。

パートナー業務ガイドライン(イメージ)

評価表を用いて半期ごとに評価し、昇給等に反映

初級、中級、上級のパートナー社員については、評価表を用いて半期ごとに評価の上、年間評価結果をA・B・Cの3段階で評定して昇給に反映している。評価項目は、各自が業務に当たっての目標を設定し、それに対する実績を評価する「業務評価項目」、社内規定・ルールの順守やチームワーク等の取組状況を評価する「勤務評価項目」、経常利益及び売上の達成率を評価する「業績達成率」の3種類からなる。評価は、本人評価の後、上司(次長)が行う。

パートナー主任については、正社員の主任職と同様の評価表を用いており、経常利益や売上等の達成率を評価する「数値実績」、目標を設定し達成までのプロセスを含めた目標達成状況と成果を評価する「プロセス評価」、規律性・実行力・指導力等を評価する「能力評価」からなっている。パートナー主任の場合は、「数値実績」の評価の比重が高いことが特徴であり、半期ごとの評価結果は賞与に、年間の評価結果は昇給に反映される。

また、店舗ごとの毎月の業績達成状況に応じて、正社員同様にパートナー社員及びアルバイトにも報奨金を支給する制度もある。

技能ライセンス認定による手当支給

生鮮部門(鮮魚・精肉・惣菜)やレジ等の技能が必要な部署のパートナー社員及びアルバイトについては、技能レベルをスーパーバイザーがチェックし、レベルに応じてライセンス認定がされ、ライセンス手当が支給される。例えば、生鮮技能ライセンスの上級取得者は約200名おり、ライセンス手当が月額7,000円支給される。

社内コンテストを開催し、社員の成長を示す機会を創出

成長を示す場として、各種の社内コンテストも開催している。食品レジの速さや正確性等を競う「チェッカーコンテスト」、鮮魚・精肉・惣菜部門の盛り付けや出来映え等の商品化技術を競う「生鮮技能コンテスト」等が定期的に開催されている。これらの入賞者には、商品券が支給される。平成27年度のチェッカーコンテスト入賞者7名のうちパートナー社員の入賞者は6名、平成26年度の生鮮技能コンテスト入賞者8名は全員パートナー社員であった。

スキルアップを支援する社内研修制度

パートナー社員やアルバイトを含めて社員の能力開発を後押しするため、各種の教育制度が整備されている。前述した職能資格等級昇格のための階層別研修のほか、選択して受講できる「イズミビジネススクール」、自己啓発を後押しする通信教育やeラーニングの機会が設けられている。

「イズミビジネススクール」は、社員全員の能力向上を目的として実施している同社独自のものであり、約30講座が設けられ、社内講師あるいは社外講師による集合研修やテレビ会議等で受講できる。リーダーシップ、マーケティング、労務管理、計数管理等様々な講座があり、主任候補ライセンスを得るために受講が必須の講座も指定されている。講座の受講料は無料であり、参加に要する交通費は支給される。

通信教育及びeラーニングについては、同社が外部で実施する通信教育等の講座を社員に斡旋するものであり、修了した場合に受講料の半額を補助する。

なお、2014年度のパートナー社員及びアルバイトの受講者数は、ビジネススクールが70名、通信教育が61名である。

正社員転換制度で上級以上のパートナー社員を正社員に転換

パートナー社員から正社員への転換については、以前は内規で実施していたが、2015年4月に正社員転換制度を就業規則に規定して制度として明確化した。

正社員転換の要件は、原則として勤続1年以上のパートナー社員上級職以上、高卒以上で、店長からの推薦があり、店舗のある全ての地域での勤務、正社員と同様の勤務時間での勤務が可能であること、過去に転換試験を2回以上受けたことがないこととしている。

正社員転換の試験は、人事部長及び販売部長による面接と、一般常識及び適性検査からなる筆記試験である。正社員転換の実績は、2014年が14名、2015年が10名となっている。

短時間正社員制度について

短時間正社員制度を導入しており、2010年11月に36名登用した。短時間正社員になると退職金が支給される。同社の場合、パートナー主任が正社員とほぼ同じ職務、処遇を保障されるため、転勤等が生じうる短時間正社員よりも、パートナー主任を目指す方がパートナー社員のニーズに合致しているようで、近年は希望者が少なくなっている。

提案活動等を通じてコミュニケーションやサービスレベルの向上に努める

「職場をより良くしたい」という意欲的なパートナー社員及びアルバイトの声を取り上げるため、「カイゼン活動」を各店舗で実施して提案する活動「ゆめ感動物語」が推進されている。毎月15日を締め切りとしてパートナー社員及びアルバイトから改善提案を募り、各店舗の「カイゼンリーダー」(パートナー社員が任命されている)が提案内容をとりまとめ、店舗内の掲示版に掲示する。改善提案のうち優れたものについては、各店の予選、地域エリアの予選を経た後、経営幹部の前で発表する全体大会にて発表し、提案者には金一封が贈られる。同大会の結果については社内報に掲載され、広く社員に広報される。これまで、レジ袋のサイズを今よりも使いやすいものに改善するなど、お客様目線に立った提案が多くなされてきた。有用な提案は、全店舗で実施されることになるため、パートナー社員等の意欲向上につながっている。

また、各店舗にはフレンドリーサービス委員という、あいさつ、身だしなみ等について本社方針に沿ってチェックし、改善を推進する委員もパートナー社員を中心に配置されており、コミュニケーションやサービスレベルの向上に努めている。

なお、社内報は年5回発行しており、正社員・パートナー社員全員に配布している。社内情報の共有化とコミュニケーション促進につなげている。

パートナー社員全員に定期健康診断を実施、食事補助も実施

定期健康診断については、勤務時間に関わらずパートナー社員全員を対象として年1回実施している。

パートナー社員に対しては食事補助も実施し、食堂利用する場合は正社員と同様の食事契約(430円食費控除、140円食事手当支給)を適用し、食堂がない店舗の一部においては、昼食購入のレシートがあれば250円の手当を支給している。

労働組合と連携した両立支援の推進

同社では、中級職以上のパートナー社員は労働組合に加入となり、2015年現在約半数のパートナー社員が労働組合に加入している。このような中、パートナー社員の要望も取り入れながら、会社側は職場環境改善による定着率向上を目指し、労働組合側は待遇改善の強化を図れる体制となっている。

仕事と育児・介護等との両立支援に関しては、同社では、子が3歳に達する月の末日まで取得できる育児休業制度、子が小学校3学年度末まで取得できる育児短時間勤務制度、1年間取得できる介護休業制度や介護短時間勤務制度等、法を上回る両立支援策を制度化している。平成26年度にこれらの制度を利用しているパートナー社員数は、育児休業制度が125名、育児短時間勤務制度が75名、介護休業制度が11名、介護短時間勤務制度が1名である。

両立支援制度の実効性を上げるため、労働組合がその普及・促進に寄与している。労働組合は、積極的な制度周知活動のほか、育児休業者に情報誌の送付や、育児休業者・育児短時間勤務利用者向けにフォーラムの開催等を行っている。フォーラムでは会社の人事部担当者が相談対応するなどの連携により、労使で積極的な両立支援を展開している。

4. 取組に当たって工夫した点・苦労した点

2001年以降、従来は正社員が担っていた業務をパートナー社員に移管していく中で、基幹的な業務をパートナー社員が担うようになり、単純作業とは異なるため個々人の能力が把握しにくく、公平な処遇を行いにくいことが悩みであった。この課題への対応として、基幹的な業務の内容・水準を細分化して「見える化」するために「パートナー業務ガイドライン」を策定した。このガイドラインを策定することは新たなチャレンジであったので職務内容・水準の「見える化」という点では苦労はしたが、各部門における業務プロセスや職務内容に精通するスーパーバイザーが主体となって策定に関わりガイドラインができたことで、全社共通の基準・水準での能力開発や職能等級への格付けが可能となった。

また、同ガイドラインの策定を本社のスーパーバイザーが担い、ガイドラインを用いた各店舗のパートナー社員のスキルチェックにスーパーバイザーも関わっていくことで、従来は業績管理が主であったスーパーバイザーがパートナー社員の能力開発に積極的に関わる視点も強化された。社内研修の内容検討や実施にも一部のスーパーバイザーが関わる体制をとることで、ガイドラインの内容が研修にも反映されるよう工夫している。

5.取組の効果と今後の見通し

職能等級制度の導入及びパートナー主任への積極的な登用により、経営の効率化が進み、企業業績も2001年以降は概ね右肩上がりで推移してきた。人員配置を含めて生産性が効率化しただけでなく、研修制度等の充実により社員全体の能力向上が図られる中で、業務の質が向上した成果であると感じている。パートナー社員の退職率も2005年の11.8%から2014年には9.4%に低下している。

今後は、正社員、パートナー社員、アルバイトと区分けされている制度を改めて見直し、それぞれの社員の働き方に応じて活躍できる機会が与えられつつ適正に処遇され、制度間の行き来も可能な整合性のある仕組みとなるよう見直していきたい。

従業員の声

売り場責任者として責任とやりがいを感じつつ活躍、いずれは管理職を目指したい
(店舗勤務、パートナー主任、勤続13年)

月20日、1日7.25時間勤務でパートナー社員として働き、2013年にパートナー主任に昇格した。パートナー主任として、担当する売り場の予算立案、作業割当、公休表作成、アルバイト教育、売り場メンテナンス等の職務を担っている。主任として数値実績を見る中で責任の重さを感じており、新しい商品の仕入れ等で結果が出るとやりがいを感じる日々である。

正社員になることは、転勤も生じてしまうので今のところは考えていないが、いずれ職場で信頼される存在として認められ、制度面においても条件が整えば、パートナー社員のまま次長等の管理職も目指していきたい。

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