3. 短時間正社員の労働条件(人事評価、賃金、教育訓練)について、検討する

人事評価(目標設定、評価、昇進・昇格)

  • 短時間正社員に付与する成果目標は、期待する役割を踏まえて設定します。
  • 同じ職種・職位のフルタイム正社員との比較においては、「量」的な目標は労働時間に合わせて減らし、「質」的な目標は変えないというのが原則ですが、職務の内容や性質、制度利用者の希望も考慮した上で、目標を設定する必要があります。
  • 設定した目標に対する評価は、目標に対する達成状況に基づいて行います。
  • 能力評価や行動評価等では、短時間正社員に対しても、基本的にフルタイム正社員と同じ評価基準・要素を用います。
  • 短時間正社員の昇進・昇格も、こうした人事評価に基づいて、公正に決定することが重要です。

成果目標による評価

短時間正社員に付与する目標は、労働時間の制約を考慮した期待する役割を踏まえて設定します。つまり、短時間正社員は労働時間が短いため、フルタイム正社員と比べて処理できる仕事の「量」が減少する場合が多くなることから、この点を踏まえて、目標設定を行う必要があります。同じ職種・職位のフルタイム正社員との比較で、短時間正社員の目標設定を「量」と「質」の2つの視点で整理をすると、「量」は労働時間に合せて減らし、「質」は変えないというのが原則です。ただし、制度利用に伴い職務内容が変更された場合には、同じ職務内容のフルタイム正社員の目標設定を参考にする必要があります。

また、目標設定においては、管理職と制度利用者とのコミュニケーションが重要なポイントになります。コミュニケーションを通じて、制度利用者の希望(長期的なキャリア・プラン、育児や介護等の状況等)も考慮の上、双方が納得できる目標を設定する必要があります。設定した目標に対する評価は、目標に対する達成状況に基づいて行います。

能力・行動等に対する評価

多くの企業は、前述のような成果目標に対する評価以外に、能力・行動等に対する人事評価を実施しています。
この場合は、基本的に、同等の職種・職位のフルタイム正社員と同じ評価基準・要素で評価します。評価要素としては、能力、行動の他、勤務態度等が挙げられます。
※行動に対する評価‥実際にとった行動が、あらかじめ定めた要件と合致するか否かを人事評価の判断に用いるもの

昇進・昇格

短時間正社員の昇進・昇格は、こうした一連の人事評価等を踏まえて決定します。昇進・昇格に向けて評価を行う際に、短時間正社員であるという理由で、機械的に低位に位置付けられることがないよう、公正な人事評価を行うことが重要です。

賃金(月例給与、賞与、退職金)

月例給与(基本給、諸手当)

  • 短時間正社員の場合、月例給与のうち、基本給については、同じ職種・職位のフルタイム正社員への支給額を、労働時間に比例して減額します。
  • 月例給与のうち、諸手当については、各々の手当の趣旨や支給基準を踏まえて、短時間正社員に対する支給額を検討します。

賞与

  • 短時間正社員の賞与は、フルタイム正社員と同じ基準で支給します。
  • 支給基準のベースが基本給の場合は、基本給が労働時間に比例して減額されているので、支給月数等の係数はフルタイム正社員と同じにするのが原則です。支給基準のベースが業績等の場合も、原則としてフルタイム正社員と同じ支給基準を適用します。

退職金

退職金の算定において勤続年数が考慮されている場合は、制度利用期間中の勤続年数も通算するのが原則です。ただし、通算に当たって、勤続年数をそのまま通算するか、労働時間に応じて制度利用期間中の勤続年数を補正するかについては、退職金の位置付け(賃金の後払い、功労報償、生活保障等)も考慮の上、検討しておく必要があります。

教育訓練

  • 短時間正社員に対する教育訓練は、期待する役割を踏まえて実施します。同じ職種・職位のフルタイム正社員がいる場合は、同等の教育訓練の機会を与えることが重要です。
  • 研修等を実施する場合は、短時間正社員の労働時間の範囲で時間設定を行う等、制度の利用による教育訓練の機会の制約を極力少なくするよう、配慮する必要があります。